バクテリオファージ療法 (Phage Therapy) 魚類細菌感染症の防除への応用 広島大学大学院生物圏科学研究科 中井敏博 日本における魚病被害 生産額に対する被害率:4~7% 被害額:100~200億円 細菌病:50 ~140億円 ウイルス病:10~40億円 (農林水産省 消費・安全局 平成16年資料より) 従来の魚類感染症の防除対策 化学療法 高コスト 薬剤耐性菌 環境汚染 予防免疫 高コスト ワクチン無効(難病) 商業化が困難 新しい防除法:バイオコントロール 微生物を微生物で制御する 病原細菌を細菌で制御 病原細菌をウイルスで制御 病原ウイルスを細菌で制御 病原ウイルスをウイルスで制御 バクテリオファージ(ファージ) = 細菌を食べる 細菌に感染するウイルスと して1917年に発見された ファージの電子顕微鏡写真 溶菌斑(プラーク) ファージ 1 吸着 3b タンパク質 の合成 ファージ DNA 2 核酸注入 3a 核酸の複製 3c ウイルス粒子 4 子ウイルスの放出 の組立て 吸着から放出まで : 約 30分 子ウイルス数 : 約100-200 溶菌斑(プラーク) 研究の流れ 環境水中の ファージ 培養 ファージの分離 宿主菌 菌のファージ型別・ファージ株の選定 分離 ファージ株の形態・遺伝学的特徴 治療・予防効果試験(人為感染) ファージの大量培養と保存技術 ファージ製剤 投与方法 野外治療・予防効果試験 クローニング 浸漬 経口 注射 魚類細菌感染症のファージ療法 ブリのレンサ球菌症 アユの冷水病 アユの細菌性出血性腹水症 ヒラメ・マダイのエドワジエラ症 ヒラメのレンサ球菌症 養殖アユの細菌性出血性腹水症 原因菌 Pseudomonas plecoglossicida 血清型・ファージ型:単一 有効薬剤なし 菌 ファージ 対照区(ファージなし) 93% PPpW-4 PPpW-3+W-4 40% 死亡率 ファージ投与 53% PPpW-3 20% アユ細菌性出血性腹水症のファージ治療 死亡量 (kg) ファージ(経口) 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 ファージ(経口) ファージ耐性菌なし ファージ中和抗体なし -7 -5 -3 -1 0 1 3 5 7 9 11 13 15(日) アユ細菌性出血性腹水症の野外治療試験 ファージの大量培養・長期保存 (P. plecoglossicida ファージ) 長期保存条件(12か月) 大量培養条件 10 12 8 6 過酷試験(温度) 4 2 0 ファージ数 log10PFU/ml 8 6 4 2 0 4 6 24 0 10 時間 ファージ数 (log10PFU/mL) ファージ数 (log10PFU/mL) 10 pre -80℃ -20℃ 4℃ 25℃ 温度 8 6 4 2 0 4℃ 25℃ 37℃ 温度 50℃ ファージ療法の特徴 (1) 原因体のみを 特異的 に速やかに殺滅し、 常在菌 などに影響しない。 (2) 生体に対する 毒性 がなく、残留せず、自然 から分離したものであるので 環境汚染 の 心配がない。 (3) 場所、種類およびサイズを問わず広範囲に 適用できる。 (4) 既存の治療・予防法に比べて、低コスト である。 想定される用途と業界 細菌感染症の治療・予防 養殖魚 水産業 人 医療 家畜・家禽 畜産業 殺菌・除菌 水 水処理業 食品 食品製造・加工業 試薬(細菌の同定) 本技術に関する知的財産権 発明の名称: バクテリオファージを含む 細菌性感染症治療用の薬剤 出願番号 : 特願 2005-276501 出願人 : 国立大学法人広島大学 発明者 : 中井敏博, 松岡 学 お問い合わせ先 広島大学 産学連携センター 産学連携部門 コーディネーター 榧木高男 TEL: 082-421-3704 FAX: 082-421-3788 e-mail: [email protected]
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