リソース整備・普及のための研究

資料4-3
脳科学研究戦略推進プログラム
融合脳
「うつ病・双極性障害等の克服に
関する研究」
「リソース整備・普及のための研究」
「脳科学に関する倫理的・法的・
社会的課題(ELSI)の研究」
の概要
1
うつ病・双極性障害等の克服に
関する研究
2
うつ病・双極性障害等の克服に関する研究
拠点長:山脇 成人(広島大学)
広島大学を拠点に5つの研究グループと1つの目標達成型探索研究がチームを形成し、う
つ病・双極性障害等の革新的診断・治療法の開発など臨床応用を見据えた脳科学研究を
戦略的に推進する。
山脇 成人(広島大学)
放医研(須原)、九州大(加藤)、奈良先端
大(吉本)と共同で、うつ病の病態に基づく
層別化と神経回路調整による革新的診断・
治療法開発を行う
岩田 仲生(藤田保健衛生大学)
理研(鎌谷・笠原)と共同で遺伝環境相互作
用に基づく気分障害の新規治療・診断法の
開発を行う。
富田 博秋(東北大学)
NCNP(功刀)、藤田保健衛生大(宮川)
と共同で栄養・生活習慣・炎症に着目し
たうつ病の発症要因解明と個別化医療
技術開発を行う
高橋 琢哉(横浜市立大学)
慶應大(三村、陣崎、幸田、掛川)、東京
大(田中)と共同でAMPA受容体標識PET
プローブを用いたうつ病の新規病型分
類と治療法の開発を行う
橋本 謙二(千葉大学)
高田 篤(横浜市立大学)
東京大(小池)・群馬大(福田)・大阪大(橋
本)・熊本大(岩本)と共同で、うつ症状の神
経基盤モデルに基づく診断・治療法の開発
を皮質・側坐核・中脳系へ着目して行う
目標達成型探索研究により、トリオサン
プルのシーケンス解析による、遺伝子型
によって定義される双極性障害の一群
の同定を行う
3
うつ病の病態に基づく層別化と神経回路調整による革新的診断・治療法開発
山脇 成人(広島大学)
(目的)
• うつ病の神経回路-分子病態に基
づくうつ病の層別化技術開発とそ
れを用いた診断法の確立
• 神経回路異常を直接的に調整す
る革新的非薬物治療法の開発
• DRUG RE-PROFILING研究による新
規薬物治療開発
• 診断・治療技術開発の基盤となる
発症メカニズムの探求
(業務内容)
• うつ病の層別化技術開発のための脳画像・血
液・臨床データの集積と機械学習による解析、
診断キット・ソフトウエアの開発
• ニューロフィードバック(NF)治療法の臨床およ
び非臨床POCの取得と医師主導治験の開始
• TSPO標的薬のうつ病モデル動物における脳内
作用機序の解明と企業治験への橋渡し
• 手綱核の役割の検証と、手綱核ニューロンの
興奮性を調整するグリア細胞機能異常の解明
(研究実施体制)
(課題の目標、将来の目的)
28年度・30年度・32年度
うつ の 態に基づく層別化と神経回路
調整による革新的診断・治療法開発
奈良先端大(吉本)
機械学習とデータ融合に
よるうつ の定量的層別
化と治療支援システムの
開発
病
革新的技術による脳機
能ネットワークの全容
解明プロジェクト
(将来の目的)
(課題の目標)
広島大(山脇)
病
病
脳プロ
BMI技術
長寿・障害総
合研究事業
抑うつ 候の神経回路
とその調節メカニズムの
解明
病
九州大(加藤)
うつ におけるミクロ
グリア 常の 態解
明とそれに基づく層
別化と診断法の開発
病
異
症
放医研(須原)
・病態に基づく
層別化診断法開発
・NFの探索的オープン
試験とPOC取得
・NFの医師主導治験
開始
・ TSPO標的薬の
POC取得
・手綱核およびグリア
細胞機能異常の解明
うつ病の病態解
明を実現し、病
態に基づく診
断・治療法を確
立する。また、
確立した診断・
治療法を企業と
も共同して一般
診療で利用でき
るよう実用化 す
る。
4
栄養・生活習慣・炎症に着目したうつ病の発症要因解明と個別化医療技術開発
富田 博秋(東北大学)
(目的)
大規模ゲノムコホート研究、臨床研
究、モデル動物研究を融合させ、栄
養・生活習慣・炎症に関連するうつ
病の病態要因を解明し、栄養性因
子・炎症性病態メカニズムに基づく
予防法、治療法、臨床決断補助シス
テムの開発を通して、うつ病の個別
化医療技術を実現すること
(業務内容)
・大規模ゲノムコホート・臨床研究に
よるうつ病のリスク要因同定、バイオ
マーカー群と臨床決断支援システム
の開発
・栄養・炎症に関連するうつ病モデル
動物開発と病態の解明
・栄養性因子、抗炎症性物質による
うつ病治療の前臨床研究、臨床試験
(研究実施体制)
(課題の目標、将来の目的等)
東北大学(富田)
大規模ゲノムコホートに基づくうつ病の
リスク要因同定、臨床決断支援システム
の開発、食品成分、抗炎症物質による
個別化医療技術の開発
国立精神・神経
医療研究センター
(功刀)
うつ病における
食⁻脳軸の解明と
新たな治療法の開発
藤田保健衛生大学
(宮川)
うつ病モデル動物開発、
モデル動物に基づく
病態解明、
食品成分、抗炎症物質
の前臨床試験
(課題の目標)
28年度・30年度・32年度
・生体指標
開発
・動物モデル
開発
・分子病態
解明
・治療法・臨
床決断支援
技術開発
(将来の
目的等)
栄養性因子・
炎症性病態メ
カニズムに基
づくうつ病の
個別化医療
技術の開発
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うつ症状の神経基盤に基づく診断・治療法の開発–皮質・側坐核・中脳系への着目
橋本 謙二(千葉大学)
(目的)
うつ症状の新しい神経基盤(皮質・側坐核・
中脳系)に基づき、
① うつ症状の発症メカニズムをモノアミン光
測定技術により明らかにする。
② うつ症状を層別化する新規バイオマー
カーを開発する。
③ R-ケタミン等の新規抗うつ薬を臨床開発
し、企業導出を目指す。
(業務内容)
① うつ症状の発症メカニズム
における新しい神経基盤(右図)
モデルを構築する。
② うつ症状を呈する患者のMRI画像、臨床
指標、末梢血を用いて、うつ症状を層別化
するバイオマーカーを開発する。
③ 新規抗うつ薬R-ケタミン(特許出願)の作
用機序を解明と臨床開発を行う。
(研究実施体制)
(課題の目標、将来の目的等)
東京大学(小池)
発症メカニズム解析
とバイオマーカー開発
(革新脳との連携)
東京大学(笠井清登)
脳微小構造解析
群馬大学(福田)
バイオマーカー開発
千葉大学(橋本)
R-ケタミンの作用機序
解明と臨床開発
大阪大学(橋本)
R-ケタミン作用機序
熊本大学(岩本)
エピゲノム解析
(課題の目標)
28年度 ・30年度 ・ 32年度
• 発症メカニズムの解明
• バイオマーカー開発
• R-ケタミン作用機序
• R-ケタミンの非臨床POC
• R-ケタミン臨床開発
(将来の目的等)
• 新しい神経基盤モデルに基づき、うつ症状を層別
化するバイオマーカーを開発する。
6
• R-ケタミンを新規抗うつ薬として開発する。
うつ病・双極性障害等の克服に関する研究
高橋 琢哉(横浜市立大学)
(目的)
ヒト脳での興奮性神経伝達は、シナ
プス後部に局在するAMPA型グルタ
ミン酸受容体によって担われている。
横浜市立大学(拠点機関)はAMPA
受容体に特異的に結合するPET薬剤
の開発に世界で初めて成功した。本
プローブを用いた精神神経疾患の疾
患横断的研究により新規診断治療
法の創出を目指す。
(業務内容)
右図は世界ではじめて
AMPA受容体をヒトで
可視化したPET画像
である。
本PET薬剤を用いて、様々な精神神経
疾患患者を撮像し、シナプスにおいて
中核的役割を担っているAMPA受容体
の分布により疾患横断的に精神神経
疾患を解析していく。
研究体制
7
遺伝環境相互作用(GxE)に基づく気分障害の新規治療・診断法の開発
岩田 仲生(藤田保健衛生大学)
(目的)
双極性障害(BD):
脂質異常に着目し、BDと脂質代謝
経路の関連性、脂質代謝経路への
介入による治療有効性の確立を目
指す。また、脂質以外の新規リスク
・bio-markerの同定を目指す。
うつ病:
ゲノムコホートの解析を通じ、うつ
病の新規リスク・予防法介入法開
発を目指す。
(研究実施体制)
(革新脳との連携協力)
名古屋大学 大阪大学
・サンプル共有
(業務内容)
双極性障害(BD):
1)脂質異常に対する介入法の検討
2)脂質異常のBD発症における生物学的意義の評価
3)新規リスク遺伝子・biomarkerの探索
4)新規リスク遺伝子・biomarkerの診断応用の可能性
うつ病:
1)遺伝環境相互作用(GxE)の解明
2)予防介入法の開発
(課題の目標、将来の目的)
双極性障害
1) リピドミクス
ターゲットシーケンス
臨床研究
2) モデルマウス
理研IMS
藤田保健大
(鎌谷)
(岩田)
理研BSI
ターゲット
シーケンス
GWAS
統計解析
サンプリング
臨床研究
リピドミクス
メタボロミクス
(笠原)
マウス解析
3) GWAS
メタボロミクス
4) 統計解析
うつ病
1) GxE解析
2) 認知行動プログラム
28年度・30年度・32年度
(将来の目的)
双極性障害
脂質異常の介入の
有効性
新規リスク(脂質・そ
れ以外)の同定
新規診断・治療法
メカニズム同定
うつ病
新規リスク同定
予防法提案
新規治療法
メカニズム同定
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リソース整備・普及のための研究
9
リソースの整備・普及のための研究
代表研究者:齊藤 祐子(国立精神・神経医療研究センター)
【背景】
米国や英国のブレインバンク
・ブレインバンクを知的資源獲得のための国家戦略プロジェク
トとして運用。
・各ブレインバンク拠点は、データベースを共有し、品質管理
を行っている。
・知的資産が国家財産として蓄積されている。
本邦のブレインバンク
施設ごとにブレインバンクを運営。
・疾患に偏りがあり、各施設ごとでは研究に必要な数が
揃わないことが少なくない。
本邦の研究者
欧米のブレインバンクを利用せざるを得ない。
・知的財産は本邦に帰属しない。
・研究結果は、人種差により、厳密に本邦の治療に還元
出来ない。
【目的】
死後脳リソースを、オールジャパンで協力し、管理・運用する
「日本ブレインバンクネット」を構築し、融合脳研究者に研究資
源を提供する。
・研究者が必要な症例(数)を公開されているデータベー
スで確認できる。
・問い合わせ窓口を一本化することで、迅速な研究の遂
行が可能となる。
・ヒト材料使用にあたり、研究方法・倫理面での相談窓口
を開設し、研究者をサポートする。
【業務内容】 ~「研究実施体制図」は2ページ~
<事務局>
・倫理指針の策定
・事務局の整備:各種委員会の設置、各種学会との連携
・ホームページの開設
・データベースの構築
・研究者からの問い合わせから提供までの流れの道筋の構築
・研究者のニーズ調査
・リソースの分与目標に向けたリソース拡充のための情報宣伝
・自立案の検討に向けたワーキンググループの発足
・若手病理医・研究者の教育
<各施設>
・病理解剖と研究資源として、質の担保されたリソースの構築
・生前同意登録等のシステム導入によるリソースの確保の工夫
【課題の目標】
研究開発項目
28年度 ー 30年度 ー 32年度
・日本ブレインバンクネットの構築
・同発展
・ニーズ調査
・バイオバンクとの結合および
生前同意登録システムの促進
・精神疾患ブレインバンクの構築
・老化・認知症ブレインバンクの構築
・神経疾患ブレインバンクの構築
・患者・遺族関係構築に関する研究
・統計学的サポート
【将来の目的等】
・研究者の依頼に、より迅速に応じることを可能とする倫理面の整備
・精神疾患・小児疾患のリソースの拡充
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リソースの整備・普及のための研究
代表研究者:齊藤 祐子(国立精神・神経医療研究センター)
【研究実施体制図】
日本ブレインバンクネット(JBBN)
国立精神神経医療研究
センター(齊藤)
運営委員会
倫理委員会
HPなどを通して情報交換
(協力)
神経疾患
新潟大学
脳研究所(柿田)
(運営の評価・助言)
外部評価委員会
(関連学会代表者・法医学担当者)
[ゲノム(池内)]
愛知医科大学
加齢研(吉田)
バイオバンク連携
)
徳島大学、大阪大学、
順天堂大学、国立相模原
倫理アドバイザリーボード
東京大医科学研究所(井上)
(
各施設
老化・
認知症
都健康長寿医療センター
高齢者ブレインバンク
[国立長寿医療研究セン
ター委託](村山)
(
各施設 )
都立医学研(河上)
学術審査委員会
事務担当
岡山大学精神科
リソース(寺田)
統計アドバイザリーボード
(田中)
研究者
名古屋大学精神科
コンソーシアム(入谷)
検体情報一括管理(
共通データベース)
福島医大精神疾患
ブレインバンク(矢部)
倫理委員会
精神疾患
生
認知症学会・日本神経学会・
日本神経病理学会・
日本病理学会
※物学的精神医学会・
JBBN事務局@NCNP
NHO東埼玉、下総、東京、犀潟、
東名古屋、刀根山、南岡山、広島西
(施設認定・
診断の標準化・
品質管理)
日本神経病理学会
(ブレインバンク委員会)
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脳科学に関する倫理的・法的・
社会的課題(ELSI)の研究
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脳科学研究の倫理的・法的・社会的課題の解決に関する研究
東京大学 瀧本 禎之
目的
脳科学研究に関するELSIに適切かつ迅速に対処し、脳プロ・革新脳に参画する研究者を倫理面から支えると共に、社会、
市民と共にある脳科学研究の推進に寄与する
方法
倫理支援・倫理教育・倫理研究の三項の循環関係を作り、その成果を「倫理ガイド」としてまとめ上げる
倫理研究
倫理支援
(1)倫理相談窓口の整備
脳科学研究者がいつでも利用できるものとして
(2)サイトビジットおよび分科会への参加
積極的な潜在的倫理的問題の掘り起こしと迅速な対処を目
的として
(3)倫理担当者会議の開催
倫理的問題を共有するための年2回・情報提供とディスカッ
ション
(4)倫理審査申請書類の確認と助言
人を対象とする研究を実施する脳プロ・革新脳の各課題の倫
理審査申請ごとに全て
(5)倫理審査委員会対応についての助言
倫理審査における問題解決をサポート
(6)IC文書のひな型やチェックリストの整備
多機関共同研究に配慮
(1)精神・神経疾患研究の倫理
同意能力判断、代諾者の選定、研究参加者(患者)家族の役割、研究参加者の自律性の促進、研究参加
における意思決定プロセス
(2)デコーディッド・ニューロフィードバック等新規の技術を含めたBMI研究の倫理
喫緊の問題(安全性評価の枠組みの確立、脆弱な研究参加者に対する追加的保護策、同意能力判断、
リスク・ベネフィット評価)、中長期的問題(医療(研究)資源配分、マインドリーディング、心の操作、エンハ
ンスメント利用)
(3)データベース・バイオバンクと多機関共同研究の倫理
データベース・バイオバンクに関する同意(包括的同意)、コオペレイティブグループ研究
(4)偶発的所見への対処を含めた個別結果の返却に関する倫理
遺伝学的研究を含む脳科学研究における個別結果の返却に関する倫理的問題
(5)倫理道徳判断の構造解明を含めた研究の現場において生じつつある倫理的問題
の萌芽の前向きの掘り起こし
サイトビジット、分科会等における情報収集と、倫理道徳判断の構造解明を含めた倫理的問題の萌芽の
析出
(6)社会的合意形成に関する研究
倫理教育
(1)研究者教育
倫理担当者会議による最新の研究倫理トピックスの情報提
供。研究者の要請に応じた出前での倫理セミナーの実施。
(2)研究倫理委員会委員・研究倫理支援職への教育
研究倫理のセミナーによる研究倫理審査と研究倫理支援の
質の標準化。
(3)脳科学研究の倫理を担う専門家の養成
大学院教育と連携しインターン実習の実施により、早期の
業務経験を提供。積極的に若手研究者を雇用し、実践の場
で専門家として養成。
(4)社会的合意形成のためのアウトリーチ
科学コミュニケーションを通したアウトリーチ活動を実施。
社会的合意形成の科学コミュニケーションを含む方法論に関する研究
達成すべき目標
研究開発体制
• 支援・教育・研究の成果に基づく倫理ガイ
ドの作成
• 積極的な倫理支援の発展・継続
• 多施設共同研究の推進
• 倫理ガイドを含む支援・教育・研究の成果
の脳プロ外への波及
• 次世代を担う脳科学研究倫理支援者の養成
• 研究倫理審査委員会の質の標準化の推進
代表研究者
脳プロ・革新脳への貢献+枠を越えた展開
アドバイザ
リーボード
瀧本禎之
(医療倫理学・准教授)
全体の総括
中澤栄輔(医療倫理学・助教)
全体マネジメント
倫理支援チーム
倫理研究チーム
倫理研究チーム
特任研究員A・B
赤林朗
(医療倫理学・教授)
代表研究者へ
の助言
三浦竜一
(ライフサイエンス研究倫理支援室・教授)
上竹勇三郎(研究倫理支援室・講師)
倫理教育チーム
倫理支援チーム
特任研究員C・D
倫理教育チーム
特任研究員E・F
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