【 2016年8月31日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ■ 【西原氏スペシャルレポート】 『9月FOMCで利上げ観測高まる! 対「豪ドル」で下値拡大か』 執筆者:株式会社CKキャピタル 代表取締役CEO ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 1)注目が集まった「ジャクソンホール」でのイエレン議長の講演 多くの市場参加者が夏季休暇を早めに終えるほどの注目を集めた、ジャクソンホールでのイ エレン議長の講演。 このジャクソンホールでの経済シンポジウムが脚光を浴び始めたのは、2010 年 8 月から。 2010 年 8 月のシンポジウムにおいて当時のバーナンキ FRB 議長が、量的緩和(QE2)に言及した ことがきっかけになっている。 そして今年は 8 月 26 日(金)に FRB のイエレン議長が 2 年ぶりに講演するため、マーケットの 注目が集まっていた。 そのジャクソンホールでのイエレン議長の講演であったが、結果はこれまでと変わらず。 イエレン議長は当地での経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で「米経済は緩やかな拡 大が続き、追加利上げの条件が整ってきた」と述べた。 (出所:BLOOMBERG) つまり、イエレン議長のコメントは米国の利上げが近づいていることは示唆するが、これまで と変わらず時期は明言せずであった。 結果、 「米ドル/円」は一時100.00円を割り込む展開となり米ドル安が進行。 2)伏兵フィッシャー副議長のタカ派コメントとグリーンスパンの米金利急騰予測 マーケットの注目を一身に集めていたイエレン議長のコメントで急落していた「米ドル/円」 に、思わぬ伏兵が現れた。 それはフィッシャー副議長のタカ派コメント。 フィッシャー副議長が米テレビ番組(CNBC)のインタビューで 9 月の利上げの可能性を認め、 FRB が早期利上げを視野に入れていることが鮮明となった。 加えてフィッシャー副議長は年内 2 回の利上げの可能性についても否定しなかったため、米ド ルは一気に反発へ。 ●FRB 正副議長発言のポイントは下記の通り。 イエレン議長は利上げ時期を明言せず、大局的に捉えたコメント。 そしてフィッシャー副議長は短い期間に焦点を合わせたコメント。 つまりフィッシャー副議長が CNBC でイエレン議長のコメントをうまく補強した形で、非常にバ ランスの取れたメッセージになっている。 言い換えれば、米利上げが近いことを示唆すると同時に、最終的に到達する金利水準がやや低 いことをほのめかしたことになる。 しかし、マーケットは米金利の早期利上げ観測により、米金利は急騰。 このようにマーケットが米金利の上昇に神経質になった要因のひとつにグリーンスパンのコメ ントも挙げられる。 グリーンスパン氏:米金利は近い将来に上昇へ、恐らく驚くほど急速に グリーンスパン元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は金利が近く、恐らく急速に上昇し始める だろうと予想した。 グリーンスパン氏はブルームバーグ・ラジオとのインタビューで、 「こうした金利水準をずっと 長く維持できるとは考えられない」と述べた。インタビューは今週末に放送される。 「金利は上昇し始めるはずで、そうなった場合は、その速さでわれわれを驚かす可能性がある」 と付け加えた。グリーンスパン氏は米経済が低い経済成長と高いインフレ率を伴うスタグフレ ーション1 の局面に向かっているとする懸念をあらためて表明。単位労働コストが上がり始め、 マネーサプライの伸びが加速し始める中、 「その非常に初期の段階に至ったことが明確になりつ つある」と指摘した。 (出所:Bloomberg) 1 スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価上昇)を合成させた言葉で、景気後退局面でもモノ不 足によるインフレ状態になること このコメントが報道されたのは 8 月 19 日(金) 。 しかしこの局面では、ジャクソンホールでのイエレン議長のコメントを控えていたため、マー ケットの反応は冷ややかであった。 ただジャクソンホール会合での FRB 正副議長発言(前述)により米国の早期利上げの可能性が 高まると、彼のコメントが米金利の急騰も連想させ、米金利の上昇と米ドル急騰を連想させた 展開となっている。 そして、こうした米金利の急騰により、米株は反落。 3)9 月利上げ観測の高まりから米株反落へ、株安から米ドル高は対「豪ドル」へ 9 月利上げ観測の高まりから、米ドルは急騰したが、米金利の上昇により米株は下落。 S&P500 種株価指数は 2 週連続安(8 月 26 日(金)時点)となり、NY ダウ工業株 30 種平均も反 落へ。 米ドル金利の上昇から、 「米ドル/円」は一転して反発したが、102.00 円近辺から上昇は緩慢に。 これは本邦輸出企業の米ドル売り需要が背景にあると想定している。 トヨタが通期の社内レートを 102 円台に下方修正していて、2Q は 100 円を想定。他の輸出企業 も追随しているところも多く、102 円台からは、本邦輸出企業からまとまった米ドル売り需要 があると見込まれている。 加えて前述の米株の下落はリスクオフ要因となり、 「米ドル/円」の上昇は緩慢。米ドル高、株 安の流れは、リスクオフの流れを誘引する。 そして、リスクオフ相場で筆頭にあげられるのは、 「豪ドル」となる。 下図チャートは「豪ドル/米ドル」の日足である。 鉄鉱石の上昇もあり、 「豪ドル/米ドル」は 4 月 21 日(木)に 0.7835 ドルの高値に到達。 そして今月再度上値をトライしたが前回の高値まで届かず、8 月 11 日(木)に 0.77556 ドルを つけ反落。この 2 つの高値は TD Sequential のカウントダウンを点灯していて、下落を示唆し ている。(TD Sequential は、トーマス・デマークが開発した indicator で copyright により、 表示配布できません) そして上図のディナポリ・チャートを見ると、日足の MACD は 8 月 26 日(金)のジャクソンホ ールでクロスして、下落を示唆。また日足は 25*5DMA を下抜けて 3 本の移動平均線の下側にな っていて、直近の 7 月 27 日(水)から 8 月 11 日(木)でフィボナッチ・リトレースメントし た 61.8%まで下げてきている。 9 月の FOMC での早期利上げ期待が、米ドル高と株安を誘引し、リスクオフ通貨の「豪ドル/米 ドル」の下値は拡大。 9月の米利上げに向け、 「豪ドル/米ドル」の行方に注目したい。 ----------------------------------------------------------------------------------【執筆者:西原宏一氏プロフィール】 株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO 青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。1996年まで同行為替部 門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャ パンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラ ー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。ロンドン、シンガポールのファンドとの交 流が深い。 ------------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは株式会社CKキャピタルより発行されているレポートであり、情報提供のみを目的と しております。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、株式会社CKキャピタル、およびワ イジェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示 的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権は株式会社CKキャピタルに帰属してお ります。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、株式会社CKキャ ピタル、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
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