2016年8月号掲載

企業広報研究
企業広報研究
ツイッターと企業広報
西窪恭未子
(さいくぼ・くみこ)
Twitter Japan
(株)
グローバルビジネスマーケティング シニアマーケティングマネージャー
だ。
向もある。ツイッターは一方的な意見の場ではな
○リアルタイムで多くの情報を得る
く、双方向のコミュニケーションの場なので、企業
ツイッターはリアルタイムの情報を素早く得るこ
との誠実なツイートのやり取りを見ると印象が良く
とができる。特に最新の商品やサービスの評判を知
なり、自分もツイートしたくなり、フォロワーが増
りたい場合、ツイートを調べ、商品やサービスのク
え、コミュニケーションが深まり、良好な関係が生
チコミを検索することで生の情報をいち早く知るこ
まれやすくなる。
とができる。また、ツイートを通じて、実際の使用
詳しい人からの意見を聞くことで、商品やサービス
経済広報センターは、ソーシャルネットワークと企業広報・PRの関わりをテーマに、Twitter Japanの
西窪恭未子グローバルビジネスマーケティングシニアマーケティングマネージャーによる講演会を6月14日
に開催した。当センターの会員企業・団体の広報担当者など79名が参加した。
に対する本音の情報を得ることが可能となり、それ
○より多くの人に拡散してもらう
ツイートを広く拡散させるための初歩的な手段が
らのツイートが購入の決め手となることも多い。
リツイートである。リツイートとは、ボタンをク
○企業がユーザーとのコミュニケーションを深める
リックするだけでフォロワーにそのツイートを届
方法
けることができる機能である。多くの人がリツイー
企業がツイッターのアカウントを作ると、最初に
トすることで情報をさらに広く拡散することがで
報交換を行った。さらに動画のツイートを見たメ
目標とするのは、自社にツイートしてくれるフォロ
きる。また、希望の文字列をハッシュタグとして設
ディアは、ユーザーに直接、動画の許諾について問
ワーを増やすことである。さらに、ツイートするこ
定しツイートすることで、そのハッシュタグを使っ
ツ イ ッ タ ー は 今 年10周 年 を 迎 え た。Twitter
い合わせのツイートを入れた。また、あるニュース
とでユーザーとコミュニケーションを深め、良好な
たツイートを検索画面で一覧表示できる。このハッ
Japanは2011年3月に設立され、月間アクティブ
サイトでは、この事件の全容をひとつにまとめたサ
関係を築こうと考えるようになる。
シュタグを利用した検索で、同じイベントの参加者
ユーザーは3500万人(2015年12月)に達し、日本語
イトが作成され、その中に事件に関する多くのツ
のツイート量は世界のトップクラスである。直近の
イートが埋め込まれた。
ツイッターの特徴
フォロワーを増やすには、例えば、こまめにプレ
や、同じ経験、同じ興味を持つ人の様々な意見が閲
ゼントキャンペーンを継続的に行ったり、クリスマ
覧しやすくなる。商品やサービスの情報にハッシュ
2013年から2015年までの2年間でもユーザーが倍
このように、ツイッターは、ユーザー同士の会話
スなど季節のイベントに合わせたキャンペーンを
タグを設定することにより、検索などを通じて企業
増している。また、スマートフォンでどのインター
から話題が醸成し大きく拡散することで、ツイッ
行ったりするなど、できるだけツイートしたくなる
のツイートをより多くの人の目に触れる機会を作る
ネットサービスを使っているかを示す時間占有率で
ター上だけにとどまらず、オンライン上のほかのメ
環境を提供することが重要である。その際、ハッ
ことができる。ツイッターではテキスト140字に加
も、ツイッターは第2位(ニールセン調べ)と上位で
ディアでも取り上げられ、さらにテレビや新聞で話
シュタグ(#)と呼ばれる機能に季節のイベント名を
えて、画像、動画、生中継、さらに短い動画のルー
ある。
題になるなど、最終的に多くの人に届くパブリシ
使って、イベントに関する検索で自社のツイートが
プ再生など、幅広い表現が可能であり、ツイートを
ティ効果を秘めている。
ユーザーに見つけてもらいやすくすることで、さら
より多くの人に拡散するためのツールを提供してい
にフォロワーを増やすことができる。
る。
ツイッターの特徴は、「今が分かる」「開かれてい
る」
「会話が生まれる」
「拡散される」である。
特に「開かれている」では、検索エンジンでツイー
ツイッターの活用
○ユーザーの声を聞く・検索する
ユーザーとのコミュニケーションを通じて関係を
○ツイートを分析・活用する
深めていくには、ツイートの内容を工夫する必要が
今、ツイッター上でどのような話題で盛り上がっ
サイトに、ツイートが埋め込まれているなど、ツ
日本のツイート量は非常に多く、その中には商品
ある。ユーザーが企業のツイートから受ける印象
ているかを知ることができるのが、トレンド機能で
イッターにはユーザーでなくてもツイートに触れる
やサービスの使用者からのものも多い。従って、ツ
は、新たな製品やサービスの発見の場であり、鮮度
ある。この機能により話題のキーワードが分かる。
機会が多いといった公共性があると考えている。
イッターを日本一のクチコミ情報のプラットフォー
の高い情報、モバイルへの最適化、人間味、素直な
適切なツイートをすることで企業名や商品名、サー
トが検索結果として表示されるネット情報のまとめ
「会話が生まれる」は、ツイッターユーザー同士は
ムと考えることもできる。ツイッターは単にツイー
声などである。新製品や新サービス発表会の実況中
ビス名がキーワードとなれば、多くの人に拡散する
ひとつのツイートを機に会話が始まることを示して
トし拡散することだけが使い方ではない。拡散して
継をツイートすることで、関心を集め、それらにつ
ことできる。また、発したツイートが、いつ、どれ
いる。
「拡散される」はツイートの拡散のことである
増えたクチコミ情報は、企業広報やPRにとっても
いてインターネットでさらに詳しく調べるキッカ
くらいの人の目に触れ、どのような反応があったの
が、ツイッターのイメージとしては、これが最も強
非常に有益なユーザーの声と捉えることができる。
ケ・気付きを与えることができる。
かが分かるアナリティクス機能もある。分析結果
またツイッターを検索ツールとして使う場合、2
ツイッターはスマートフォンでの利用が多いの
は、今後フォロワーを増やすために発信する情報の
これら4つの特徴を示す現象として、ある事件に
つの大きな特徴がある。ひとつは、今、世の中で何
で、スマートフォンの画面での利用を想定した、画
選択やタイミングなど、その精度を上げることに活
居合わせたツイッターユーザーがその場で動画をツ
が起きているかを検索するツールであり、もうひ
像やテキスト、コミュニケーション内容を工夫する
用でき、ツイッターを活用した企業広報・PRの方
イートするという事例があった。ほかのユーザーが
とつは、ツイートのクチコミ情報から企業や製品、
など、モバイル環境への対応は必須である。また、
針を検討する材料となる。
そのツイートを見て、多くのユーザーに拡散、ユー
サービスに対する意見など、みんながどのように
誠実なツイートのやり取りをしている企業に対して
ザー同士が事件の交通機関への影響などについて情
思っているかを検索するツールでもあるということ
は、良いフォローのツイートが集まりやすくなる傾
いと考えられる。
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ツイッターの効果的な使い方
者の感想や、その商品やサービスについて自分より
〔経済広報〕2016年8月号
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(文責:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
2016年8月号〔経済広報〕
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