脂質に関する基礎知識

脂質に関する基礎知識
血中脂質の種類 コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸
遊離脂肪酸はアルブミンと結合
他はアポ蛋白と結合し、リポ蛋白を形成
リポ蛋白=HDL・LDL・VLDL・カイロミクロン (比重で区分)
カイロミクロンは小腸→肝臓の脂質吸収に関与
VLDL・LDLは肝臓→組織の脂質輸送に関与
HDLは組織→肝臓のコレステロール逆輸送に関与
コレステロール→(異化作用)→胆汁酸
脂質異常症診断基準
高LDLコレステロール血症
血中LDL値140mg/dl以上
低HDLコレステロール血症
血中HDL値40mg/dl未満
高トリグリセリド血症
血中TG値150mg/dl以上
アテローム病変→動脈硬化の危険性が高い
脂質異常(高脂血)症治療薬
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)
アトルバスタチン
コレステロール合成の律速酵素を阻害→
肝内コレステロール減少→ 血中LDLの取込促進
高コレステロールでの第一選択薬、まれに横紋筋溶融症
フィブラート系薬
ベザフィブラート、フェノフィブラート
肝のTG合成阻害+TG分解促進
中性脂肪(TG)の減少に優れる、まれに横紋筋溶融症
陰イオン交換樹脂
コレスチラミン、コレスチミド
腸管内で胆汁酸の再吸収を阻害+肝の異化作用を促進
主にLDLが低下、便秘・脂溶性ビタミンなどの吸収阻害に注意
コレステロール吸収阻害薬
エゼチミブ
小腸のコレステロールトランスポーターを選択阻害し、吸収抑制
胆汁酸に関係せず併用禁忌や注意はない
リパーゼ阻害薬
セチリスタット
リパーゼと結合し、食品中の脂質の吸収を抑制
糖尿病と高脂血症を併発しBMI25以上に適応、下痢が多い
抗肥満薬・肥満治療薬とも呼ばれる
ニコチン酸系薬
ニコモール、ニコチン酸トコフェロール
腸管からの脂質吸収抑制+利胆作用+中性脂肪の分解促進
HDL増加・LDL減少するが効果は弱い、循環改善作用も持つ
デキストラン硫酸ナトリウムイオウ(MDS)
リポ蛋白分解酵素を活性化
TGの減少に使用するが作用は緩和、血液凝固を抑制する
プロブコール
シンレスタール、ロレルコ
コレステロールの胆汁酸への異化を促進+血管壁への沈着防止
HDL・LDLとも減少、心筋組織に蓄積し不整脈誘発
PCSK9阻害薬
エボルグマブ
過剰LDLを取り込む受容体の分解抑制、スタチン系無効に併用
貧血の分類
分
化
関連成分
骨髄幹細胞
影 響
障害→
再生不良性貧血
赤血球前駆細胞
エリスロポエチン
低下→
腎性貧血
前赤芽球
ビタミンB12・葉酸
不足→
巨赤芽球性貧血
(悪性貧血)
赤芽球
鉄
不足→
鉄欠乏性貧血
崩壊→
溶血性貧血
赤血球
貧血治療
鉄 剤
クエン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、(徐放性)硫酸鉄
鉄欠乏性貧血に使用、組織鉄→血清鉄→貯蔵鉄の順に補充
貧血症状は数週間で消失するが、貯蔵鉄の充足には数か月必要
吸収率は低い (キレート形成薬との併用に注意)
便秘・下痢・吐気などの胃腸系有害作用に注意、過剰症もある
ビタミンB12・葉酸
メコバラミン、フォリアミン
核酸合成補酵素の補充→正常赤血球への分化
巨赤芽球性貧血に使用 (悪性貧血には内服では無効)
蛋白同化ステロイド 造血作用があり、再生不良性・溶血性貧血へ
シクロスポリン
骨髄機能回復を目的に再生不良性貧血へ
造血因子
エリスロポエチン
腎臓のサイトカイン、赤血球への分化・増殖を促進
腎不全による腎性貧血や自己血貯血に使用
血圧上昇、連用で赤芽球癆の可能性
コロニー刺激因子(CSF) 白血球(顆粒球)系細胞の分化・増殖を促進
エルトロンボパグ
トロンボポエチン受容体刺激で血小板を増加
速効性を要する場合は輸血
先天的な溶血性貧血では脾臓摘出 も行われる
血液凝固・線溶系
血管内皮損傷→血小板凝集→血液凝固因子刺激
促進
プロトロンビン
トロンビン
(第Ⅱ因子)
凝固系
フィブリノゲン
促進
フィブリン
分解
線溶系
プラスミノゲン
プラスミン
凝固系はCaイオンがないと進行しない
血液凝固因子(第Ⅱ、第Ⅶ、第Ⅸ、第Ⅹ因子)生成にはビタミンKが必要
第Ⅷ因子・第Ⅸ因子の遺伝的欠損→血友病
プラスミンは血漿中で速やかに不活化される
抗血液凝固薬
血液凝固因子阻害薬
ワルファリン
ビタミンKの類似構造により血液凝固因子の合成阻害
凝固因子を直接阻害しない=効果発現が遅く、個人差あり
薬剤・食品で影響 → 定期的にプロトロンビン時間を計測
胎盤関門を通過するため妊婦に禁忌
アピキサバン 直接第Ⅹa因子阻害薬
個人差が少なく食品などで影響されない、適応は限定的
抗トロンビン薬
ヘパリン
体内物質
アンチトロンビンⅢと複合体形成→トロンビンの作用を阻害
経口投与不能、作用時間が短い、胎盤関門を通過しない
アルガトロバン トロンビンの活性部位に結合して作用を阻害
用量調節や定期的な検査が不要(モニタリング指標がない)
Ca除去薬
クエン酸ナトリウム
Caの除去で凝固系を抑制
輸血時や採血後血液に使用
血栓溶解薬
ウロキナーゼ(UK)
血漿中のプラスミノゲンをプラスミンに変換し、血栓外側から溶解
効力が弱いために大量を要する → 出血性の有害作用
ヘパリンとの併用では、強酸性による失活に注意
組織型プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)
アルテプラーゼ
フィブリン上のプラスミノゲンをプラスミンに変換し、血栓溶解
急性心筋梗塞や脳梗塞に、発症後数時間以内に使用
抗血小板薬
作用機序
①強力な血小板凝集作用を持つTXA2の産生阻害
②血小板内c-AMP濃度上昇で遊離Caを減少
③血小板5HT2受容体拮抗でCa濃度上昇を抑制
アスピリン
血小板シクロオキシゲナーゼを阻害→TXA2の産生阻害
非可逆的阻害 (他のNSAIsは可逆的阻害)
高用量:血管内皮細胞のCOX阻害→PGI2産生抑制で相殺
チクロピジン、クロピドグレル、チカグレロル
血小板ADP受容体結合→ATPからc-AMPの変換を促進
肝障害・白血球減少に注意、定期的な血液検査が必要
シロスタゾール 血小板内ホスホジエステラーゼⅢ阻害→c-AMP分解抑制
血管拡張作用を持つ、高度危険検査時の交換薬
リマプロスト、ベラプロスト
PG受容体刺激→アデニルシクラーゼ活性化→c-AMP増加
血管拡張作用あり、サブタイプにより適応に違い
妊娠中禁忌
サルポグレラート
血小板5HT2受容体遮断
血管平滑筋5HT2受容体も遮断し、血管収縮抑制
妊娠中禁忌
オザグレル
血小板内TXA2合成酵素を阻害
注射薬はクモ膜下出血術後・脳血栓症急性期に適応
内服薬は気管支喘息に適応
止血薬
トロンビン
上部消化管出血に使用、牛乳等で胃酸中和が必要
注射は致死的凝血やアナフィラキシー誘発のため禁忌
ビタミンK
ビタミンK欠乏症やワルファリン使用に伴う出血へ
作用発現に12時間以上を要する、肝障害時は無効
トラネキサム酸 抗プラスミン薬、フィブリン分解を抑制
抗炎症作用・色素沈着抑制作用もある(OTC薬で活用)
カルバゾクロム 毛細血管の抵抗性を増大して止血?
単独では弱いために併用使用される
アドレナリン
血管収縮作用により局所止血に使用
外用止血
アルギン酸ナトリウム、ゼラチン
タコシール:フィブリン・トロンビンをコラーゲンシートに固着
手術創の止血・接着に使用
血液製剤
未知ウイルスや検出空白期間・免疫過敏症などの問題あり
全血製剤
血液成分製剤 赤血球製剤:貧血・出血などの赤血球減少へ
血小板製剤:血小板減少による出血へ
抗HLA抗体除去のため白血球除去フィルターを使用
血漿製剤 :複数の凝固因子が欠乏する出血へ
血漿分画製剤 アルブミン製剤:(等張)出血性ショックや重度熱傷へ
(高張)腹水・肺水腫などの浮腫へ
免疫グロブリン製剤:低グロブリン血症や重症感染症へ
凝固因子製剤:血友病などの先天性欠乏症へ
フィブリン製剤は手術時の接着にも使用