平成 27 年度に実施した個別指導において保険医療機関等に 改善を求めた主な指摘事項の割合等について 四国厚生支局調査課 1.はじめに 当支局においては、四国管内保険医療機関等(医科・歯科・薬局)に対する個別指導の主な指摘事項をまとめ、当 支局ホームページへ「個別指導において改善を求めた主な指摘事項」として掲載しているところです。 つきましては、更なる適正な保険診療等及び診療報酬等の請求に努めていただきますことを目的に管内で指摘の多 かった項目とその具体的な指摘事項をいくつか紹介させていただきます。 管内の保険医療機関等の皆様におかれましては、併せてご確認いただきますようお願いいたします。 2.指摘件数割合について (1)医科 ① 保険診療等に関する事項(図1参照) ☞指摘件数の多かった事項について ア 診療録(23.3%) (ア) 必要事項の記載が乏しい診療録が認められた。診療録は保険請求の根拠となるものなので、医師は診察の都度、 必要事項の記載を十分に行うこと。 (イ) 電子カルテについて、最新の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.2版」に準拠していな い次の事項が認められたので改めること。 ・ パスワードの更新期限を設定し、定期的に変更すること(最長でも2か月以内) 。 ・ 職種ごとのアクセス権限等の設定について、見直しを行い、付与する権限は必要最小限にすること。 イ 傷病名(21.8%) (ア) 傷病名を重複して付けている例が認められたので改めること。 (イ) 不適切に付けられた傷病名が認められたので改めること。 ・ 診療報酬明細書の内容が、診療録に記載された内容と一致しない例が認められた。 ・ 急性・慢性の別、左右の別、部位(何番目)の記載がない例が認められた。 ウ 医学管理等(14.1%) (ア) 算定要件を満たしていない例、又は不適切に算定された例が認められたので改めること。 ⅰ 特定疾患療養管理料 ・ 療養上必要な管理内容の要点を診療録に記載していない例が認められた。 ・ 傷病名欄の傷病名について、主病の区別は記載されているが、厚生労働大臣が別に定める疾患以外の疾患を 主病と記載している患者に対して算定していた。 ⅱ 薬剤情報提供料 ・ 診療録に薬剤情報を提供した旨の記載がない例が認められた。 ・ 薬剤に係る主な情報(用法、用量、効能、効果、副作用、相互作用)を文書により提供していない例が認め られた。 エ 在宅医療(11.6%) (ア) 在宅患者診療・指導料 ⅰ 算定要件を満たしていない例、又は不適切に算定された例が認められたので改めること。 (ⅰ) 往診料 ・ 定期的ないし計画的に患家に赴いて診療を行った場合に算定していた。 ・ 緊急往診加算について、緊急に求められて往診を行った場合とは認められないものに対して算定していた。 (ⅱ) 在宅患者訪問診療料 ・ 訪問診療の計画及び診療内容の要点を診療録に記載していない。 ・ 患者又はその家族等の署名付きの同意書の作成が無く、診療録に添付していない。 ・ 訪問診療を行った日における在宅患者に対する診療時間(開始時刻及び終了時刻)及び診療場所について、 診療録に記載していない。 (イ) 在宅療養指導管理料 ⅰ 算定要件を満たしていない例、又は不適切に算定された例が認められたので改めること。 (ⅰ) 在宅自己注射指導管理料 ・ 初回算定時に、当該在宅療養を指示した根拠、指示事項(方法、注意点、緊急時の措置を含む。)及び指 導内容の要点を診療録に記載していない例が認められた。 (ⅱ) 在宅酸素療法指導管理料 ・ 当該在宅療法を指示した根拠、指示事項(方法、注意点、緊急時の措置を含む。)及び指導内容の要点の 診療録への記載がない例が認められた。 オ 基本診療料(7.7%) (ア) 初・再診料 ⅰ 算定要件を満たしていない例、又は不適切に算定された例が認められたので改めること。 (ⅰ) 再診料 ・ 直接患者本人の診療を行わず、患者の家族が検査結果を聞きに来たものについて算定していた。 【夜間・早朝等加算】 ・ 保険医療機関が表示する診療時間外に算定していた。 【外来管理加算】 ・ 患者から聴取事項や診療所見の要点を、診療録に記載していない例が認められた。 ・ 消炎鎮痛等処置、鶏眼、胼胝処置を行った日に外来管理加算を算定していた。 (イ) 入院基本料 ⅰ 不適切に算定された例が認められたので改めること。 (ⅰ) 入院診療計画書 ・ 入院診療計画の策定に当たり、参考様式として示された項目の中で記載されていない項目のある説明文書 が認められた。 (ⅱ) 「医療区分・ADL 区分に係る評価票」 ・ 評価した区分に該当していない算定例が認められた。 ② 診療報酬の請求等に関する事項(図2参照) ☞指摘件数の多かった事項について ア 届出事項等(38.4%) (ア) 次の不適切な例が認められたので改めること。 ⅰ 変更の届出ができていない例 ・ 休診日、病床数、標榜診療科の変更 ・ 非常勤を含む保険医の異動(採用、退職) 、勤務日・勤務時間及び勤務形態の変更 イ 一部負担金等(23.3%) (ア) 一部負担金の徴収について、次の不適切な事項が認められたので改めること。 ・ 徴収すべき者から徴収していない(従業員、近隣の患者、家族、親戚、知人) 。 ・ 徴収すべき金額を的確に徴収するよう改めること。 ウ 保険外負担等(11.6%) (ア) 次の不適切な事項が認められたので改めること。 ⅰ 療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないものについて患者から費用徴収していた。 ・ あいまいな名目での実費徴収「施設管理費」 ・ テレビ代金(電気代) 図1 保険診療等に関する事項 診療録 21.5% 23.3% 在宅医療 21.8% 11.6% 14.1% 7.0% 診療報酬の請求等に関する事項 届出事項等 9.3% 一部負担金等 傷病名 医学管理等 7.7% 図2 38.4% 10.5% 診療報酬明細書 の記載等 投薬・注射 11.6% 基本診療料 その他 保険外負担等 23.3% その他 (2)歯科 ① 保険診療等に関する事項(図3参照) ☞指摘件数の多かった事項について ア 診療録等(35.3%) (ア) 診療録第1面(療担規則様式第一号(二)の1)の記載内容に不備が認められたので、必要な事項を適切に 記載すること。 ・ 部位、傷病名(P 病名、う蝕症度数、歯周炎の進行度数等) 、開始年月日、終了年月日、転帰、主訴、口腔内 所見(口腔内図示、歯式等)の記載がなかった。 ・ 傷病名、開始年月日、終了年月日、主訴、転帰、口腔内所見を誤って記載していた。 (イ) 診療録の記載方法、記載内容、訂正方法に不適切な例が認められたので改めること。 ・ 欄外への記載、判読困難な記載、塗りつぶしによる訂正が認められた。 ・ 一段に複数行の記載、経時的でない記載、行間(空白)を空けた記載が認められた。 イ 医学管理等(11.7%) (ア) 歯科疾患管理料 【管理計画書】 ⅰ 算定要件を満たしていない歯科疾患管理料を算定していたので改めること。 ・ 2回目以降の維持管理計画書を適切な時期に提供していない例が認められた。 ・ 管理計画書の内容について、検査に基づいた適切な情報提供が行われていない例が認められた。 ⅱ 管理計画書に記載すべき内容について、記載の不十分な例が認められたので、適切な記載を行うこと。 ・ 管理計画書の提供年月日 ・ 患者又はその家族が記入すべき内容(患者氏名、歯科疾患と関連性のある生活習慣の状況) ・ 患者の基本状況(全身の状態、基礎疾患の有無、服薬状況等) ・ 生活習慣の改善目標 ・ 口腔内の状態(プラーク及び歯石の付着状況、歯及び歯肉の状態等) ・ 歯周病検査の要点 ・ 治療方針の概要 ・ 当該管理の担当歯科医師の氏名 (イ) 歯科衛生実地指導料 ⅰ 算定要件を満たしていない歯科衛生実地指導料1を算定していたので改めること。 ・ 歯科衛生士に行った指示内容等の要点を診療録に記載していない例が認められた。 ・ プラークチャートを用いたプラークの付着状況の指摘について実施していない例が認められた。 ⅱ 情報提供文書に記載すべき内用(指導等の内容、主治の歯科医師の氏名、保険医療機関名、指導を行った歯 科衛生士の氏名)について、記載の不十分な例が認められたので、適切な記載を行うこと。 ウ 歯冠修復及び欠損補綴(8.9%) (ア) 補綴時診断料 ⅰ 算定要件を満たしていない補綴時診断料を算定していたので改めること。 ・ 製作を予定する部位、欠損部の状態、欠損補綴物の名称及び設計等についての要点を診療録に記載してい ない例が認められた。 ⅱ 診療録に記載すべき内容(製作を予定する部位、欠損部の状態、欠損補綴物の名称及び設計等の要点)につ いて、記載の不十分な例が認められたので、適切な記載を行うこと。 (イ) 有床義歯 ⅰ 有床義歯の製作 ・ 補強線を歪曲、鋳造バーとして誤って算定している不適切な例が認められたので、改めること。 ⅱ 有床義歯修理・有床義歯内面適合法 ・ 有床義歯修理の算定に当たって、診療録に記載すべき内容(修理内容の要点)等について、記載の不十分 な例が認められたので適切な記載を行うこと。 エ 処置(8.6%) (ア) 咬合調整 ・ 初診月に歯周病による2歯のみの咬合調整の算定が散見されているものの、「側方運動時に違和感あり」との 画一的な所見の記載のみで、その他の症状、所見、予後にかかる一切の記載がされていないので改めること。 (イ) 歯内療法 ⅰ 加圧根管充填処置 (ⅰ) 算定要件を満たしていない加圧根管充填処置を算定していたので改めること。 ・ 根管充填後に歯科エックス線撮影で根管充填の状態を確認していない例が認められた。 ・ 根管充填後に撮影した歯科用エックス線フィルムが根管充填の確認に利用できない例が認められた。 ⅱ 消炎拡大処置 ・ 抜歯を前提とした急性症状の消退のための根管拡大等の算定において、急性症状の消退を図ることを目 的とせずに算定している不適切な例が認められたので改めること。 オ 画像診断(6.4%) (ア) 診断料 ⅰ 算定要件を満たしていない画像診断における診断料を算定していたので改めること。 ・ 歯科エックス線撮影、歯科パノラマ断層撮影を行った場合に、写真診断に係る所見を診療録に記載してい ない例が認められた。 ⅱ 歯科エックス線撮影、歯科パノラマ断層撮影、歯科用3次元エックス線断層撮影を行った場合に、診療録に 記載すべき写真診断に係る所見について(画一的に記載している、記載の不十分な)例が認められたので、適 切な記載を行うこと。 ⅲ 歯科パノラマ断層撮影を行った際には、費用を算定しない場合においても診療録に記載すること。 ② 診療報酬の請求等に関する事項(図4参照) ☞指摘件数の多かった事項について ア 掲示事項(49.2%) (ア) 施設基準等の届出事項に掲げる掲示が行われていなかった。 ・ 歯科外来診療環境体制加算 ・ 歯科治療総合医療管理料 ・ CAD/CAM 冠 ・ 歯科口腔リハビリテーション料2 ・ 明細書発行体制等加算 ・ クラウン・ブリッジ維持管理料 ・ 金属床による総義歯の提供 ・ う蝕に罹患している患者の指導管理 (イ) 施設基準等の届出を行っていないものを掲示していた。 ・ 在宅療養支援歯科診療所 ・ 在宅かかりつけ歯科診療所加算 ・ 明細書発行体制等加算 イ 診療報酬請求(18.3%) (ア) 診療録と診療報酬明細書において、(診療内容、実施時刻、部位、病名、所定点数、合計点数、傷病名)につ いて不一致が認められたので、十分に照合・チェックを行うこと。 ウ 届出事項(13.5%) (ア) 次の事項について、変更が届け出られていないので、速やかに四国厚生支局に提出すること。 ・ 保険医の異動 ・ 金属床による総義歯の提供 ・ う蝕に罹患している患者の指導管理 エ 一部負担金等(11.1%) (ア) 一部負担金 ⅰ 一部負担金の徴収について、適切に徴収していない例が認められたので改めること。 ・ 徴収すべき者から適切に徴収していない例(従業員及び家族) 図3 保険診療等に関する事項 図4 診療報酬の請求等に関する事項 4.8% 3.2% 診療録等 医学管理等 29.1% 6.4% 35.3% 8.6% 11.7% 8.9% 歯冠修復及び 欠損補綴 処置 画像診断 その他 掲示事項 診療報酬請求 11.1% 13.5% 18.3% 49.2% 届出事項 一部負担金等 施設基準等 その他 (3)薬局 図5参照 ☞指摘件数の多かった事項について ア 処方せん(36.6%) (ア) 処方せんの「処方」欄の記載不備 ⅰ 受け付けた処方せんの処方内容について、不適切な例が認められたが、そのまま調剤している事例が見られた。 処方せんの受付にあたっては、不備な点がないことを確認し、不備な点がある場合は、必要な疑義照会を行う こと。また、このような不備が続く場合は、処方医・処方せん発行医療機関に改善を申し入れること。 ・ 用法・用量の記載が不完全である。 ・ 外用薬の使用部位に係る記載がない。 (イ) 処方内容に関する薬学的確認 ⅰ 副作用の眠気に対して運転等危険な作業に注意を促していない事例が見られたので改めること。なお、車の運 転の有無については、薬剤服用歴に記載しておくこと。特に、 「車の運転禁止」とある薬剤の服用に当たっては、 運転に注意するようにではなく、禁止と伝えるとともに、その旨を薬剤服用歴に記載しておくこと。 ⅱ 薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義照会が行われていない(処方医 へ疑義照会を行っているものの、その内容等を処方せんまたは調剤録に記載していないものを含む。 )例が認め られたので、積極的に疑義照会を行うこと。 イ ・ 薬剤の処方内容より禁忌例への使用が疑われるもの ・ 医薬品医療機器等法による承認内容と異なる用法で処方されているもの 薬剤服用歴管理指導料(36.6%) (ア) 薬剤服用歴の記録 ⅰ 薬剤服用歴の記録について、不適切な例が認められたので改めること。 ・ どのような副作用等に着目して聴取を行ったかなど、薬学的な観点から聴取・確認した内容を記載し、患者 への指導により活用できる記録となるよう努めること。 ・ 薬剤服用歴管理指導料の算定にあたっては、算定要件を認識し、処方せん受付の都度、患者の服薬状況・服 薬期間中の体調の変化を確認し、重大な副作用を中心にモニターを行う等、指導内容の充実を図るとともに、 薬剤服用歴への指導内容の要点記載をさらに充実させること。 (イ) 特定薬剤管理指導加算 ⅰ 特定薬剤管理指導加算について、不適切な例が認められたので改めること。 ・ 特に安全管理が必要な医薬品に該当しない医薬品に対して算定している。 ・ 特に安全管理が必要な医薬品について必要な指導を行っていない。 ⅱ 特定薬剤管理指導加算の対象医薬品が複数処方されてる場合は、すべての医薬品について必要な薬学的管理及 び指導を行うよう努めること。 ウ 調剤等(8.9%) (ア) 調剤済になった処方せんについて、次の事項を記載していない(記載が不適切、記載が不明瞭、記載が誤って いる等も含む。 )例が認められたので改めること。 ・ 調剤済年月日 ・ 調剤した保険薬局の名称及び所在地 ・ 保険薬剤師の署名又は氏名の記載及び押印 図5 2.7% 3.3% 処方せん 11.9% 薬剤服用歴管理指導料 36.6% 8.9% 36.6% 調剤等 調剤料又は調剤技術料 に係る加算 一部負担金の取扱い その他
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