極低温高速軸受の研究 (LE-5関連)

極低温高速軸受の研究 (LE-5関連)
軸受の破損がロケットの致命的な事故につ
ながることから、海外で使用されたガラス織
布で積層強化した、機械的強度が優れる
PTFE保持器を国産化。ガラス繊維の研磨
作用のため自己潤滑性が悪い保持器を、
フッ化水素酸を用いた表面処理で潤滑性を
高める技術を開発(平成元年度注目発明)。
液体水素中では、保持器フッ酸処理で形成
されるCa酸化物がPTFEのFとメカノケミカ
ル的に反応しCaF2膜になり、耐久性に優
れる潤滑膜が形成されることを検証。
軸受の補助潤滑剤として、PTFEやMoS2
のスパッタ膜をコーティングした軸受の、液
体水素中、50,000rpmでの約2時間にわた
る耐久性を評価。
極低温高速軸受の研究 (LE-7関連)
軸振動により大きなラジアル荷重が軸受
に作用すると、玉の公転速度のばらつき
(BSV: Ball Speed Variation)が発生、玉と
保持器ポケットが強く接触して、軸受の発
熱と摩耗が増加、スペースシャトルの
SSME軸受でも発生。
BSVによる玉の最大移動量を解析的に推
定。周方向に大きなポケットすきまが設定
でき、軸方向のがたつきを小さくできる、平
円ポケット形状の保持器を研究開発(国際
特許取得)。液体水素ターボポンプの軸受
の異常な温度上昇と摩耗は軽減。
液体水素中でPTFE潤滑膜が耐えることが
できる軸受荷重の限界が、内輪側の最大
接触面圧Smaxと最大スピン速度Vmaxの
関係に支配されることを実験的に解明。
極低温高速軸受の研究 (LE-7関連)
軸受の振動加速度測定装置を開発、
LE-7の液体酸素ターボポンプ軸受の高
ラジアル荷重下における疲労寿命や損
傷を検知。
液体窒素中、システムラジアル荷重1.2ト
ン以外に大きなモーメント荷重が作用、
短時間に初期フレーキングが発生した
場合(ピーク値増加)、冷却不足で転走
面の面荒れが大きくなった場合(実効値
増加)の振動加速度を評価。
バーンアウト加熱でPTFE潤滑膜が黒色
化、保持器の加熱試験で摩擦温度が
300℃以上になったことを検証。
総試験時間5.8時間の振動加速度を測
定、3.8時間で初期フレーキングが発生
したことを検知。