資料3 日本医療研究開発機構 「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業 (生命動態システム科学推進拠点事業)」 事後評価報告書(事業全体)について 評価委員会 委員長 高木 利久 1 本日の説明事項 1.事後評価(事業全体)の概要 (1)評価の目的、対象及び方法 (2)評価委員名簿 (3)評価項目と評点 2.事後評価(事業全体)結果 (1)総合評価 (2)事業の成果について (3)その他事業で定める事項 (4)今後の展望について 2 1.(1)評価の目的、対象及び方法 【目的】 研究開発事業終了前にその成果等を次の研究開発事業につなげ ていくための評価を実施する。 【対象】 事業を実施する以下の4課題 多次元定量イメージングに基づく数理モデルを用いた動的生命システムの 革新的研究体系の開発・教育拠点 (代表研究者:京都大学 松田道行) 転写の機構解明のための動態システム生物医学数理解析拠点 (代表研究者:東京大学 井原茂男) 複雑生命システム動態研究教育拠点 (代表研究者:東京大学 金子邦彦) 核内クロマチン・ライブダイナミクスの数理研究拠点形成 (代表研究者:広島大学 楯真一) 3 1.(1)評価の目的、対象及び方法(続き) 【方法】 (1)成果報告票の提出 4課題に関する成果報告票の提出。 (2)書面審査 評価委員は、成果報告票を査読し、書面審査を実施。 (3)ヒアリング審査 書面審査の結果を踏まえ、評価委員は4課題の代表研究者 からのヒアリング審査を実施。 (4)事後評価報告書の作成 評価委員による書面審査及びヒアリング審査の結果に基づき、 AMEDが事後評価報告書(案)を作成。 評価委員は、事後評価報告書(案)の内容を検討・修正し、 最終化する。 4 1.(2)評価委員名簿 ○ 黒田 真也 東京大学 大学院理学系研究科 教授 洪 実 慶應義塾大学 医学部 教授 高木 利久 東京大学 大学院理学系研究科 教授 月田 早智子 大阪大学 大学院生命機能研究科/医学系研究科 教授 長洲 毅志 科学技術振興機構 バイオサイエンスデータベースセンター 統合化推進プログラム研究総括 柳田 敏雄 理化学研究所 生命システム研究センター長 ○委員長 (五十音順・敬称略) 5 1.(3)評価項目と評点 【評価項目】 ①事業の成果について ・本事業の開始経緯・目的(以下、3項目)と合致した成果が得 られたか。 -「生命動態システム科学」という研究手法を活用して、生命現 象を動的なシステムとして理解する方法論の開発・実証 -数理科学(数学、統計学、計算機科学等を含む)的手法と 生命科学の融合研究の発展のため、人材育成や融合研究の 常勤ポストの設置等を行う恒久的な拠点が整備されること -生命動態システム科学の手法を創薬開発等に応用する道筋を 示すこと ・研究成果は医療分野の進展に資するものであるか ・研究成果は新技術の創出に資するものであるか ・研究成果は社会的ニーズへ対応するものであるか ・連携体制が適切に構築されていたか ・(特に異分野融合を行うような)人材の育成・輩出が図られたか ・若手研究者のキャリアパス支援が図られていたか 6 1.(3)評価項目と評点(続き) 【評価項目】 ②その他事業で定める 事項 ・中間評価の指摘事項について適切に対応できたか ③総合評価 ①、②及び下記の事項を勘案して総合評価する ・今後、研究開発成果のさらなる展開が期待できるか ・プロジェクトの意義と達成状況はどうか ・今後の『生命動態システム科学』の課題 7 2.事後評価(事業全体)結果 (1)総合評価 達成目標と 成果 優れている 【目標①】計測で得られたデータから数理科学的手法(数学、統計学、計算機科学等を含 む)を用いて生命現象を理解し、in vitro、in silico、in vivo での再構成系を構築する 「生命動態システム科学」の研究手法を活用して、生命現象を動的なシステムとして理解 する方法論の開発と実証を行う。 【成果①】生命科学を変革しつつある、分子の時空間的動態解析の方法論を開発し、さら に「生命動態システム科学」の研究拠点を確立して、実験科学と数理科学を融合させた点 では、一定の成果を上げた。 【目標②】数理科学的手法と生命科学の融合研究の発展のため、人材育成や融合人材 の常勤ポストの設置等を行う恒久的な拠点を整備する。 【成果②】各拠点において若手融合型教育プログラムが次世代の融合型人材の層を厚くす ることに貢献しており、一定の成果を上げつつあると評価できる。 【目標③】「生命動態システム科学」の手法を創薬開発等に応用する道筋を示す。 【成果③】定量モデ ルを用いた分子標的薬、特にMEK阻害剤とPI3K/mTOR阻害剤に対 する抗腫瘍効果の予測やバ クテリアが 抗生物質に対し生き残る「パ ーシスタンス (Persistence)」がゆらぎにより生じることを確証するなど、萌芽的ではあるものの成果を生 み出しつつある。 ・多様な生体レベル(分子のみならず、細胞・器官・器官系など)を対象としての推進 今後への期待 ・若手融合型人材の独立研究室設置等による分野のさらなる振興 8 ・創薬開発等への応用のさらなる発展 2.事後評価(事業全体)結果 (2)事業の成果について 研究成果 優れている 「生命動態システム科学」という研究手法を活用して、生命現象を動的なシステムとして理 解する方法論の開発・検証、即ち実験科学と数理科学の融合を目指して、実験デザイン の段階から数理系研究者が議論に加わることにより、数理解析にマッチした動態データの計 測系が各拠点において確立された。 実験科学そのもの、数理科学・数理モデルそのものとしても基礎研究としては極めてレベルが 高い顕著な業績が上がっている。 論文発表数も十分な結果を表している。特許は数は多くはないが、それぞれの拠点で1つ 以上の特許を出願しており、現時点においては成果が上がっていると判断する。 人材育成 各拠点において教育プログラムが準備され、若い世代ほど多様なディシプリンを学んだ融合 型人材の層が厚くなり、着実な取り組みがなされたと評価できる。新規ポストの設置につい ては、拠点毎に濃淡がみられている。 拠点形成 大学の中に講座・専攻などとして、拠点の継続のための仕組み作りに取り組んでおり、恒久 的な拠点の形成がなされつつある。 拠点ごとに達成度にばらつきは見られるものの、がん細胞におけるシグナル伝達の阻害効果 創薬等への道筋 予測や、バクテリアの薬剤耐性獲得メカニズムなど有意義な成果が上がっている。これらの成 果をもって、このような新規の創薬コンセプトとして萌芽的な成果を生み出したと評価できる。 9 2.事後評価(事業全体)結果 (3)中間評価への対応について 優れている 各拠点において融合研究の研究者育成を目的とした教育プログラムの企画や数理科学・ 生命科学をはじめとする多様なバックグラウンドを持つ学生・学部生によるサマースクールが 開催されるなど融合研究の若手研究者育成が着実に推進されるとともに、女性研究者や 人材育成 若手研究者の雇用や大学院生など学生への配慮にも改善が見られており、将来の進展に つながるものと期待される。 拠点によって濃淡があるものの、各拠点が特色のある先端的な計測技術の活用を通じた国 拠点外連携 内外の研究者との共同研究が実施されたことは、生命動態システム科学研究の裾野を広 げる有効な手段となった。 各拠点での実験系人材と理論系人材が同じ研究環境を共有し、明確な応用例を見据え 実験系と理論系 た特定分野の融合研究、密接な人材育成を集約的・有機的に行うことで、生命動態シス テム科学研究が効率的に推進された。今後は、トップダウンのリーダーシップによる融合を進 の連携 める必要がある。 シンポジウムなどは合同で開催しているが、直接的に研究で連携している印象はない。リソー スの共有や技術交流も乏しかったと言える。また、理研QBICやCRESTとの連携についても 4拠点の連携 不十分な面があったと思われる。ただし、これは事業全体のマネージメントの問題であり、拠 点だけで連携を強化するのは困難であると言える。 10 2.事後評価(事業全体)結果 (4)今後の展望について 数理解析ターゲットの絞込、ビッグデータ解析やバイオインフォマティクスの導入等による更な 実験科学と数理 る展開を目指し、「生命動態システム科学」から、従来の実験科学にも大きなインパクトを の融合 与えるような成果が創出されることに期待する。 各拠点の融合型教育プログラムでは次世代型融合系人材が育ちつつあるが、全生命科学 分野の学生に占める割合はまだまだ低い。幅広い学生が基礎的なリテラシーだけでも学ぶ 機会が得られる教育環境整備が必要である。若手のみならず、若手を牽引する中堅、ベテ 人材育成 ランの研究者への「生命動態システム科学」の研究手法を広める活動も積極的に行う必要 がある。 融合型人材のポテンシャルを生かせるキャリアパスはアカデミア、産業界ともにまだまだ十分と はいえない。今後の分野振興には産業界との共同研究推進などを行い、「生命動態システ キャリアパス ム科学」の方法論の認知度を高め、融合型教育プログラムを受けた人材がアドバンテージを 得るようにしていくことが重要である。 育成してきた人材や設備を、事業終了とともに散逸させないためにも、拠点間の人材交流 などにより、これまで得た知識や技術をさらに発展させていくことが必要である。そのためにも、 育成した人材や 現時点では、創薬への道筋を示すことを目標に見据えながらも、基礎研究の側からアプロー 設備の活用 チしていくことが重要であり、そのためには「生命動態システム科学」の研究振興の継続が必 須であると考えられる。 11
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