ミルカー点検事例 NO,47 検査01年06月00日 システム名 サージ 型式 4W ヘリボーンパーラー 設置年月 H13年00月 改良工事後の検査 洗浄システムの点検 サージヘリボーンパーラー 洗浄システムの点検 責任者 榎谷 静止時検査の結果概要 ①搾乳回数 1分間のパルセーターの稼働回数を示します。50回に統一されています。いつも同じ状態が 必要です。バケットミルカーを含めて、すべて同じ回数にします。55~60回が適当な回数で す。個体乳量が多くなってきていますので、回数を55回又は60回に調整した方が良いでしょ う。 ②バケットミルカー バケットミルカーを今後どのように使うかが大きな問題です。現在の横取り方式を継続して使 うことが、バケットミルカーのメンテナンスを考えても良いことだと思われます。 しかし、できるだけ空気が入らないようにバケットミルカーを取り扱うようにして下さい。大量 に空気が入ると、パーラーシステムの真空圧が低下してパーラーで搾乳されている牛に大きな乳 房炎の問題を引き起こします。 ③パルセーター電圧測定 電圧はコントロールボックスから最後のパルセーターまでのあいだで、電圧の低下が0.6V あります。搾乳時には他のところでも電気を使いますので、更に低下していることが想定されま す。通常はコントロールボックスの電圧は24VDCで出力します。電圧の問題が生じていない か検討が必要です。 ④システムバキュームの測定 各部分の真空圧を測定する事により、配管の詰まりや相互の位置関係を見るテストです。 問題ありません。 レシーバージャーの真空設定圧は、通常ローラインのパーラーではハイラインより低く設定し ます。それは、ローラインはハイラインとは異なり、牛乳を持ち上げる必要がないために真空圧 の損失が少ないからです。どれ位がよいかは、実際は動態検査(搾乳中の検査) 、フローシミュレ ター試験(流水試験)で決定します。 ⑤ユニット落下テスト 1ユニットより空気を入れ続け、どれくらい真空圧が低下するかを見るテストで、真空圧の保 持力を見ます。ミルキングパーラーでは1ユニット落下しても真空圧が低下しないぐらいの能力 が求められます。1人で多くのユニットを扱うので、多少の空気の流入は機械がカバーできる必 要があります。 1ユニット落下時で大きな真空圧の低下が見られます。これはメガフローのホースが太い為に 多くの空気が入る為です。これをカバーしようとすると更に大きなバキュームポンプが必要とな ります。バケットシステム使用時にも細心の注意が必要とされる大きな理由です。 搾乳中空気が入らないように注意してください。 ⑥エフェクティブリザーブの測定 41.3KPA で 63.0CFM(1783L) 1 インチ=2.54CM 1CM=0.75KPA 10CFM=283L/MIN この検査は、システム内にどれくらいの空気が入ったらレシーバージャー圧が2KPA低下す るかを見るもので、システム全体の余裕量と考えます。この量が少ないとすぐにレシーバーの真 空圧が低下して、乳房炎の発生が多くなります。やや不足する量です。 ⑦レギュレタークロージャーテスト 真空圧が低下したときには、レギュレターが感知して真空圧を低下させないようにします。そ れでも尚且つ真空圧を下げたときに、レギュレターがきちんと閉じて空気を入れていないかを見 るテストです。 ER(エフェクティブリザーブ)/MR(マニュアルリザーブ)*100で計算し、90%以 上が必要です。レギュレターの掃除が悪かったり、フィルターの交換がされていなかったりする と、この数値は低下します。乳房炎発生には大きな問題を引き起こします。 今回分解掃除をしましたが、内部の汚れはひどいものでした。定期的に掃除をする習慣をつけて 下さい。また、一度部品の交換をして下さい。 63.0/63.5=99.2% 問題ありません。 ⑧システムのエア漏れ配管ロスの計算 (77.5-67.5)/77.5*100=12.9% 大きな配管ロス、エア漏れがあります。バランスタンクのエア漏れ、配管のエア漏れ、ポンプ 点検口のエア漏れ(いずれも修理済み)があり、これらが大きく出たものと思われます。 まとめ 今回の静止時検査では乳房炎に関係する大きな問題点は見られませんでした。しかし、今後の事を 考えると乳房炎を発生させる問題点が多く見られました。 1 レギュレターのメンテナンス不足。 2 エア漏れが多いこと。 3 AVCバルブが割れていたことなどです。いずれも乳房炎発生に大きな問題となり得る事で、 定期的なメンテナンスが必要とされます。通常は年2回の点検整備が必要です。 また、ユニット落下テストで真空圧の低下が大きく出ているので、搾乳中の空気の流入(特 に装着時)バッケミルカー使用時には充分な注意が必要です。 緊急を要する提言 1 バケットミルカーの使用法、洗浄方法に注意する。 接続時できるだけ空気が入らないようにする。 洗浄はお湯のみを吸わせて、空気が入らないように注意する。 洗浄を楽にできるような工夫をする。(運搬、高さ、流量計など) 2 1ユニット落下時で大きな真空圧の低下が見られます。 バケットシステム使用時、空気が入らないように細心の注意が必要です。 ユニット装着時空気が入らないように注意してください。 3 レギュレターを定期的に掃除する習慣をつける。 フィルターの掃除、内部の分解掃除。 4 レギュレターの交換部品の交換をする。 5 パルセーターの電圧をチェックする。 6 ゲートバルブに安全装置(カバー)を取り付ける。 7 配管のつなぎ目のコーティングを行い、エア漏れを防ぐ。 将来変更したが良いもの 1 パルセーターの回数を60回に変更する。 2 設定真空圧を検討する。 (00月00日検査予定) 3 パートの人が搾乳するのであれば、バキュームポンプを大きくする。 洗浄システムの検査概要 ①改良後の洗浄ライン 3インチ洗浄ラインをレシーバーより立ち上げ、立ち上げ部分に洗浄槽からの2インチ洗浄ラ インを繋ぐ。ミルクラインは3インチで、傾斜は1スロープで構成されている。(8台/スロー プ 傾斜1/80) ②改良後のミルクラインと3インチ洗浄ラインの接続部 パーラー断端のミルクラインと洗浄ラインの接続部 共に3インチにすることにより、形成されたスラグがスムーズに流れるようになる。 ローラインのパーラーにハイラインの洗浄システム配管方法を取り入れる。 バルクタンクの洗浄システムと、ミルクラインの洗浄システムは異なります。異なる洗浄システ ムなので、使われる洗剤も異なります。洗浄の仕方、洗剤の選択などきちんとした知識が必要で す。特に酸性洗剤と酸性リンスを濃度が違うだけで、同じものと思わないことが重要です。 ③洗剤の選択 パーラーの洗浄ダイヤルは すすぎ――アルカリ洗浄――酸性リンス――搾乳前の殺菌――搾 乳 のプログラムです。アルカリと酸性リンスの間にすすぎはありません。アルカリ洗剤と酸 性洗剤が混じり、塩素ガスを発生し、そのまま搾乳まで放置されますので、ゴム類、パッキン 類が傷みます。洗浄の仕方(プログラム)により洗剤を選択しなくてはいけません。通常はこ のようなときには「酸性リンス」という洗剤を選択します。これは混ざることを念頭においた 洗剤です。 バルクの洗浄システムとは違うことに注意してください。 (ダイヤルを良く見る) ④パーラーの洗浄システム(サージ社) 搾乳 すすぎ アルカリ洗浄 酸性リンス 搾乳まで放置 殺菌 搾乳 パーラーではアルカリ洗浄と酸性リンスとの間にすすぎが無いので、アルカリ洗剤と混ざるこ とを想定した酸性リンスを使用し、酸性リンス使用時の洗浄水温度は35~40度くらいです。 ⑥バルクタンクの洗浄(サージ社) 集乳 水すすぎ お湯すすぎ アルカリ洗浄 お湯すすぎ すぎ 搾乳 搾乳前まで放置 殺菌 す 酸性洗剤使用の日には、アルカリ洗浄後のすすぎの後(タイマーは止まっている)に、再度ダ イヤルを回してアルカリ洗浄部分で酸性洗浄を行う。その後殺菌をして搾乳を開始する。殺菌剤 は常温で使用し、酸性洗剤はお湯(70度位)を使用します。 ⑦トライスキャンによる測定 現状 波形図①(第1段目Ⓐ)ではポンプ稼動直後から測定しています。 (1目盛り1秒)エアインジェ クターON後、終わり側タップで急激な真空圧の低下が起きており、急激なスピードでスラグが通 過しています。通過スピードは秒速 11.4m/秒で、速度が早すぎます。エアインジェクター のON時間も設定時間は3.5秒ですが、実測値は2.1秒しかなく、エアインジェクター配管 の長さ、口径が影響しているものと思われます。 試験4以降エアインジェクターをサージの今までのもので試験をして見ましたが、吸入空気流 量が不足しており、明瞭なるスラグを形成することができませんでした。 今後エアインジェクターを修理すると共に、再度設定を検討しなくてはいけません。 設定の方向 エアインジェクターON時間 4.5秒 OFF時間 5.0秒 空気流量をもっと絞る。 スラグの形成、スピードを確認後、ミルクポンプの稼働時間を設定する。 洗浄水量の設定をする。洗剤の使用量を決定する。 まとめ 今回の検査では、色々な問題点が出てきました。洗剤の選択、洗浄作業のやり方などです。基 本的には洗浄システムの知識をしっかり習得し、それを現場の機械でどう実践するかが重要です。 機械には新しいものから、古いものまで現場では可動しています。それをどう上手く使うかが洗 浄問題解決の重要なポイントとなります。 また、機械的にはスラグ流の形成をどのようにするかが問題で、システムとしての分析が重要 です。分析の結果は良いものではなく、初期設定から見直しを掛けなければいけません。今回で は調整ができませんでしたので、再度システム全体の調整が必要です。 緊急を要する提言 1 送乳配管の可動部分をたまには手洗いする。パッキンの交換をする。 2 洗浄に対する知識を習得する。 3 パーラーはパーラー専用の洗剤を使い、酸性リンスを使用する。 4 パーラーの洗浄システムを再構築する。再度の試験調整が必要です。 コメント パーラーのシステムを改良後、洗浄システムの検査も行った。古い部分があり、調整しきれな い部分があったが、パーラーの搾乳能力はかなり改善された。その後再度洗浄システムを調整し た。
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