エネルギー変換機器 — 第 9 章 演習問題 解答例 — (1) 回転磁界,交番磁界を表わす式を記せ. (解答) 回転磁界: 時刻 t における位置 θ の磁束密度 B(θ, t) は,B(θ, t) = Bm sin(θ − ωt) 交番磁界: 時刻 t における位置 θ の磁束密度 B(θ, t) は,B(θ, t) = Bm cos ωt sin θ ただし,Bm は磁束密度の最大値(振幅),ω は角速度. (2) 交番磁界は 2 つの回転磁界に分けられることを数式を用いて説明せよ. (解答) 設問 (1) より,交番磁界は B(θ, t) = Bm cos ωt sin θ で表される. 一方,三角関数の加法定理 sin(α ± β) = sin α cos β ± cos α sin β より, sin θ cos ωt = 1 2 {sin(θ + ωt) + sin(θ − ωt)} となる. よって,磁束密度 B(θ, t) は次式で表される. B(θ, t) = 1 1 Bm sin (θ + ωt) + Bm sin (θ − ωt) = Bb + Bf 2 2 ただし, 1 1 Bm sin (θ + ωt) , Bf = Bm sin (θ − ωt) 2 2 Bb ,Bf はそれぞれ回転方向の異なる回転磁界であるので,題意を満たす. Bb = (3) 極数 4 の正弦波分布で,その最大値 1.0 [T] の直流の磁界中を,有効巻数 300 の巻数が毎分 1500 [回] で回転 するとき,その巻線にはどんな起電力が誘導されるか.波形,周波数,実効値について明らかにせよ.ただし 回転子の直径と軸方向有効長は 8 [cm] とする. (解答) 回転子の導体の起電力 e は e = vBl で表される.題意より,速度 v と長さ l は一定であるから,起電力 e の波 形は磁束密度 B の波形に依存する.したがって,波形は正弦波である. 周波数 f は次式となる. n0 1500 =2× = 50[Hz] (ただし,p : 極対数,n0 : 回転数 [rpm]) 60 60 √ 回転子に誘導される起電力 e の実効値を E0 とおくと,E0 = pωm Na Φ/ 2 となる (1.1 節 [例題 1.3] 参照).た だし,ωm ,Na ,Φ は,それぞれ機械角速度,有効巻数,1 極の有効全磁束数を表す. f =p· また,磁束密度の分布が正弦波の場合には,最大磁束密度 Bm は平均磁束密度の Φ/(τ l) の π/2 倍であるから, Bm = (π/2) · (Φ/(τ l)) で表される.ただし,τ は極間隔,l は回転子の軸方向有効長を表す. 極数が 4(極対数 p = 2)であることから,極間隔 τ は,τ = πr/2 Φ (ただし,r : 回転子の半径) となる.よって, 2 πr 2 · τ · l · Bm = · · l · Bm π π 2 = r · l · Bm = = 4 × 10−2 × 8 × 10−2 × 1.0 = 32 × 10−4 以上より,実効値 E0 は, E0 = 2πf Na Φ 2π × 50 × 300 × 32 × 10−4 pωm Na Φ √ √ √ = = = 213.2 · · · ≈ 213[V] 2 2 2 1 (4) 同期発電機の周波数 f [Hz],回転数 n0 [rpm],極対数 p の間にはどんな関係があるか. (解答) 電気角速度 ω [rad/s] と周波数 f [Hz] の関係は,ω = 2πf である. 極対数 p,電気角速度 ω ,機械角速度 ωm の関係は,ω = pωm である(テキスト 式 (1.12) 参照). したがって,極対数 p のとき,周波数 f [Hz],回転数 n0 [rpm] の間に成り立つ関係は,次式となる. f= ω pωm p · 2πn̂0 n0 = = = p · n̂0 = p · 2π 2π 2π 60 (ただし,̂ n0 [rps]) (5) 22 極の三相同期発電機がある.発生周波数は 50 [Hz] で,界磁電流を 50 [A] にしたとき,三相無負荷端子電 圧は 9900 [V] であった.界磁巻線と電機子巻線 1 相との相互誘導係数はいくらか.ただし,電機子巻線は星 形結線とする. (解答) 三相同期発電機の起電力を E0 ,極対数を p,機械角速度を ωm ,相互誘導係数を M ,界磁電流を If とすると, これらの間には次の関係が成り立つ(テキスト 式 (9.11)0 参照). E0 = pωm M If √ 2 この式を M について整理すると,次式を得る. √ M= 2E0 pωm If 題意より, 9900 E0 = √ , 3 を代入すると, p= √ M= 22 = 11, 2 2× 11 × ( ωm = 2πf 100π = , p 11 If = 50 ) 9900 √ 3 100π × 50 11 = 0.5145 · · · ≈ 0.515 よって,相互誘導係数は,0.515 [H] である. (6) つぎの術語を説明せよ.(i) 同期速度 (ii) すべり (iii) 電気角 (iv) リラクタンストルク (解答) (i) テキスト 9.3 節 a. 同期電動機を参照のこと. (ii) 誘導電動機において,同期速度が n0 [rpm],回転子の回転速度が n2 [rpm] のとき,すべり s は, s = (n0 − n2 )/n0 で表される.すなわち,すべりとは,回転子の回転磁界に対する相対速度 (n0 − n2 ) の回転磁界の速度(同期速度)n0 に対する比である. 回転子が回転磁界と同方向に同期速度で回転している場合には,すべり s = 0 である.また,回転子が静 止しているときは s = 1,回転子が回転磁界と逆方向に回転しているときは s > 1 となる(テキスト 9.3 節 b. 誘導電動機を参照のこと). (iii) テキスト 1.4 節 (p. 15) を参照のこと. (iv) テキスト 9.3 節 (p. 147) を参照のこと. (7) 不平衡三相電圧で駆動されている 4 [極],50 [Hz] の三相誘導電動機がある.1450 [rpm] で回転しているとき の電動機のすべりは,(i) 正相分に対してはいくらか. (ii) 逆相分に対してはいくらか. (解答) 同期速度を n0 [rpm] とすると,n0 = (f /p) × 60 = (50/2) × 60 = 1500 [rpm] である. 2 (i) 正相分に対するすべり s は, s= n0 − n2 1500 − 1450 1 = = ≈ 0.033 n0 1500 30 (ii) 逆相分に対しては,回転子は反対方向に回転していることになるから,n2 = −1450 [rpm] となる.よって, すべり s は, s= n0 − n2 1500 − (−1450) 1500 + 1450 = = ≈ 1.967 n0 1500 1500 (8) 回転磁界をつくる方法を分類して簡単な説明を加えよ. (解答) 回転磁界をつくる方法として,電源が (a) 直流の場合と,(b) 交流の場合に分類される.後者をさらに分類す ると,(b-1) 三相交流によるもの,(b-2) 二相交流によるもの,(b-3) 単相交流によるものに分類される.さら に,単相交流より回転磁界を発生させる方法は,(b-3-1) くまとりコイル形と,(b-3-2) コンデンサ分相形があ る.各方式の説明に関しては,テキスト 9.4 節に説明があるので,省略する. (9) 図 9.37 において固定子,回転子ともに 4 [極] の三相対称巻で,固定子には 50 [Hz],200 [V] の平衡三相電 圧が印加されている.回転子が静止時には 150 [V] の平衡三相電圧が誘導されている. いま,回転子巻線は開放のままにし,他機でこれを時計方向に 1000 [rpm] で回転したとすれば,2 次の起電 力の周波数と大きさはいくらか.また反時計方向に 1000 [rpm] に回転したときはどうか. (解答) 同期速度を n0 [rpm] とすると,n0 = (f /p) × 60 = (50/2) × 60 = 1500 [rpm] ただし,f は周波数,p は極対数を表す. 以下,時計方向,反時計方向それぞれについて 2 次の起電力の周波数と大きさを求める. (i) 時計方向に 1000 [rpm] で回転した場合 すべり s は, n0 − n2 1500 − 1000 1 s= = = ≈ 0.333 n0 1000 3 2 次の起電力の大きさを E2s ,周波数を f2s とすると,それぞれ次式で求めることができる(テキスト [例 題 9.7] 参照). 1 E2s = s · E2 = · 150 = 50[V] 3 1 f2s = s · f = · 50 = 16.66 · · · ≈ 16.7[Hz] 3 (ii) 反時計方向に 1000 [rpm] で回転した場合 反時計方向に回転するので,回転子の回転速度 n2 = −1000 である.このとき,すべり s は, s= n0 − n2 1500 + 1000 5 = = ≈ 1.67 n0 1000 3 (i) と同様に,2 次の起電力の大きさを E2s ,周波数を f2s とすると, E2s = s · E2 = f2s = s · f = 5 · 150 = 250[V] 3 5 · 50 = 83.33 · · · ≈ 83.3[Hz] 3 (10) 交流電磁石においてくまとりコイルを付ける目的とその作用を説明せよ. (解答) テキスト 9.4 節 例 2 くまとりコイル付き電磁石を参照のこと. 3 (11) V̇a = 100(基準),V̇b = 1006 120◦ の二相交流電圧の正相分電圧 V̇1 ,逆相分電圧 V̇2 を図上で計算せよ. (解答) (i) 正相分電圧 二相対称座標法を用いる.二相交流電圧 V̇a ,V̇b を分解して,次式とする. } V̇a = V̇1 + V̇2 V˙b = j V̇1 − j V˙2 (1) 式 (1) より,正相分電圧 V̇1 は次式で表される. V̇1 = ) 1( V̇a − j V̇b 2 ベクトル図を描くと,図 a (i) となる.これより,−j V̇b は,次式となる. (√ ) −j V̇b = V̇a 6 30◦ = V̇a (cos30◦ + jsin30◦ ) = 50 3+j したがって,正相分電圧 V̇1 は,次式となる. ) 1{ (√ )} 1( V̇1 = V̇a − j V̇b = 100 + 50 3+j 2 (2 √ ) = 50 + 25 3 + j25 (ii) 逆相分電圧 式 (1) より,逆相分電圧 V̇2 は次式で表される. V̇2 = ) 1( V̇a + j V̇b 2 ベクトル図を描くと,図 a (ii) となる.これより,j V̇b は,次式となる. (√ ) j V̇b = V̇a 6 210◦ = V̇a (cos210◦ + jsin210◦ ) = −50 3+j したがって,逆相分電圧 V̇2 は,次式となる. )} ) 1{ (√ 1( V̇2 = V̇a + j V̇b = 100 − 50 3+j 2 (2 √ ) = 50 − 25 3 − j25 • Vb • Vb ° 30 • ° 30 ° 60 − j Vb ° 120 • 1 • Va − 2 • ° • Va − j Vb 90 j Vb ° 120 1 • Va + 2 • Va • j Vb • j Vb (i) 正相分 • • Va + j Vb (ii) 逆相分 図 a: ベクトル図(フェーザ図) 4 • Va (12) 単相交流より回転磁界をつくる方法を 3 種挙げて簡単な説明を加えよ. (解答) 単相交流より回転磁界を発生する方法として,(i) くまとりコイル形, (ii) コンデンサ分相形の 2 種類が挙げら れる.また,(iii) 整流回路により単相交流を直流に変換し,直流より回転磁界をつくる方法もある.各方法の 説明については,テキスト 9.4 節に説明があるので(整流回路についてはテキスト 14.3 節を参照のこと),省 略する. 5
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