日 本 歯 科 保 存 学 雑 誌 58 第 57 巻 第 1 号 日歯保存誌 57(1) :58∼66,2014 ニッケルチタン製根管口拡大器具の繰り返し使用が 切削動態に及ぼす影響 前 田 宗 宏 小 澤 稔 史 勝 海 一 郎 日本歯科大学生命歯学部歯科保存学講座 抄録 目的:ニッケルチタン製の根管口拡大形成器具は,根管口および根管上部 1/3 の切削用に設計されている. 本研究の目的は,2 種の回転数における 10 回の繰り返し根管切削で生じるトルクの変化を比較し,器具の損耗 を検証することにある. 材料と方法:ニッケルチタン製テーパー 8/100 のエンドウェーブ(モリタ,以下,EW)と真っすぐな根管 を有する樹脂製の規格化根管模型を用いた.模型は,象牙質と切削感を類似させたものを使用した.コン ピュータ制御の根管切削トルク測定装置を使用し,回転数はそれぞれ 300 rpm と 600 rpm に設定した.器具を 根管の 8 mm 内方まで進入させた.根管への器具の押し込み速度は 0.01 mm/sec に設定し,各実験条件での発 生トルクを記録した.切削後の刃部をナイロンブラシで清掃し,5 分間の超音波洗浄を行った後,根管の切削, 刃部の清掃操作を 10 回繰り返して行った.なお,各実験条件につき 5 本の根管模型を用いた.切削の評価は, トルク 進入距離を基としたトルク変動の算出(ΔT)により解析を行った.加えて,10 回繰り返し切削後の EW の形態の変化を観察した. 成績:根管口部の拡大では,根管内にファイルが進入していくに伴いトルクが発生し,EW のトルク 変位曲 線において,切削回数が増加すると切削トルクが増大することが示された.いずれの回転数でも切削回数の増 加によりΔT は増大し,切削効率は低下した.刃部断面の観察で,10 回切削終了後の切れ刃には損耗が認めら れた.この損耗がΔT の増大をもたらしていることが示された. 結論:これらの結果から,ニッケルチタン製テーパー 8/100 の EW を過度に繰り返して使用すると,切削効 率の低下を招くことが示唆された. キーワード:ニッケルチタン製根管口拡大器具,繰り返し切削,切削トルク
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