保険業の産業連関分析 - 生命保険文化センター

保険業の産業連関分析
『経済表』はニュートンの発見した諸法則以来の黄大発明(the grea.
test``invention"since Newton,slaws)である0
--ケネーと同時代の人々
谷 山 新 良
(大阪府立大学助教授)
本 稿 の 構 成
1.まえかき
2.保険業の産業連関表
3.保険業の産業連関分析
4.結 語
1 まえがき
保険業の産業連関分析についての理論的研究、これが本稿の研究テ
ーマである。
保険業の産業連関分析は、いわば保険業の生態学的研究である。保
険業の生態学的研究としては、産業連関分析のほかに国民所得分析、
資金循環論分析、国際収支分析(以Lフロー分析)、および国民貸借
対照表(国富)的分析(ストノク分析)などが考えられる。
(1)
産業連関分析(Inter Mindustry analysis,または投入産出分析
Inpu上Output analysis)は新古典経済学派の一般均衡理論(the
neo-Classical theory of general equilibrium)に立脚して、経
済活動間の有機的相互依存関係を数量的に追跡し、算定する研究方法
である。(2)
-123-
保険業の産業連関分析
図1国民経済計算の対象範囲
(吊1亡所得勘定、産業連関勘定、資金循環勘定)
.←‥一一一 実 物 取
I
引(産 業 連 関)一一一一一→;←…金 融 取 引一一一一㌢
l
:←産業連関内生部門ヰ一一・
・掴民所得勘定一…▼→i←一一一資金循環(最狭義)-→:
(マネー・フロー)
トー…一資金循環勘定(狭義トー-1
:+-"---…一資 金 循 環 勘 定(広義)一一‥一一三
資 金 循 環 勘 定(最広義)-‥r一一"一一一"ポ
それは、いわゆる線型経済学の一分野であり、1936年以来今日にいた
るまで理論と政策(実践)の両面にわたって、すぐれて威力を発揮して
きた分析方法である。㍉3)
注(1)保険業の生態学的研究の必要性、阿民経済計算の対象領域およびそ
れらの相互関係、産業連関論の紬済学における分析的位置、研究対象
研究テーマ、基本原理などについては谷山新良「保険業の産業連関分
析」川本保険学会FH本保険学会三十即信己念論文集』昭.46)
および谷山新良「産業連関分析」(大阪府統計課『大阪の統計』昭和
45年8月)を御参照たまわりたい。
(2)W.Leontief,Input-Output Econornics,New York,
(3)1936年は、W レオンチェフ教授か初めてアメリカ合州吊産業連関
分析"QuantitativeInput andOutput Relationsin theEconornic
Systemof the UnJted States"(バーウァート入学機関..JA、me Re-
-124一
保険業の庵業連関分析
産業連関論は方法論的には
(1)最終需要(finaldemand〕を経済活動の起動力と考えること∴
そして
(2)この起動力(妓終需要)または他のインパクトによって経済部
門間に誘発される波及効果(repercuSSion effects)を追跡し算
定すること、
を基本的特徴としている。
有機的相互依存関係にある経済体系に与えられるインパクトによっ
て、「風か吹けば桶屋が儲かる」式につぎつぎに誘発される直接間接
の誘発量を細大洩らさずに追跡し算定すること、これがまさに産業連
関分析国有独自の分析方法であり、メリ、ソトであるO そして、産業連
関分析の分析領域は投入産出量、価格、雇用量、消費量、付加価値、
利潤、輸出、および輸入などの広い分野にわたっている。
かくて、F.ケネーにおいてアイディア(モデル)的に芽生え、L.
ワルラスにおいて数′羊r畑こ花咲き、W.レオンチェフにおいて数学的
・計量的に実った産業連関分析(投入産出分析)は、理論的にも実践
的にも著しい発展を遂げ、今日ではあまねく人相の共通財産となって
いる。 とくに、それは産業経済の構造分析、経済予測、経済政策立
案(シミュ1レイション)、特定経済施策の効果測定などの実践的分
野において、他の経済分析では到底代替できない、まさに`Lかけがえ
のない"威力を発揮している。
のeWO gCOれ0研′C Sαか紬ビム,August,1936に掲戚)を発表した年で
ある。奇しくも同じ榊二、J・M.Keynesの 刀とe Ge71emJ m。。γ〝
0!どれが0ツ〝-ピ融,ム頼㌫倶豆,and 〟0花eyが出版されている。した
か一ノて、1936年は経済学説史上特に記念すべき年であるといえる。
-125一
保険業の産業連関分析
産業連関論は産業連関表の作成・分析から逆行列係数表の算出、そ
してそれを活用しての"投入産出分析'つこいたる一一連の研究過程であ
る。産業連関表(広義)的にいえば図2.に示されている3つの産業連
図2 産業連関表(広義)
① 物品裾碇業連関表〔R〕
(1雁業連関表
(狭義)
(理論的)
(実際的)
.t
(彰 冊酎勺産業連関表〔Ⅹ〕
l
(2)投入係数表(生産係数表)〔A〕
産業連関表(広義)
。2)′しチェフ行列。卜A〕
l
(3)逆行列係数表〔I-A〕F ユ
関表の作成、およびそれらを駆使しての分析のすべて(全体)、それ
か産業連関分析であるO
Lたかって、本来からいえば、この「保険業の産業連関分析」にお
いても、図2.に示してあるフロー・チャート(手川のにしたがって、
(1)産業連関表→(2)投入係数表→(2)レオンチュフ行列→(3)逆行列係
数表、およびそれを使っての投入産出分析という手順で論を進めるべ
きである。けれども、私はすでに、脚注(1)でお断わりしてあるように、
「産業連関分析」および「保険業の産業連関分析」において、(1)産業
連関表→(2)投入係数表→(2)'レオンチェフ行列→(3)逆行列係数表につい
注(4)F・ケネーからW.レオンチェフに至る産業連関分瀬の学説史、
およびW.ワルラスの「・般均衡理論」体系、産業連関分析体系、
およひケインズの「・般理論」体系の相互関係については、注(1)
にあげてある拙稿を参興いただきたい。
ー126-
保険業の産業連関分析
ては、かなりの程度において研究し、発表してある。さらに、最後の
研究段階である逆行列係数を駆使しての投入産出分析(狭義)につい
ても「投入産出分析における逆行列係数について」という論文で網羅
的かつ詳細に論究してあるさ5)
そこで、本稿では「保険業の産業連関分析」のうち、論点を逆行列
係数を活用して行なう投入産出分析(狭義)にしぼって、「保険業の
産業連関分析」を進めたいと思う。したがって、本稿は私か日本保険
学会『日本保険学会つ一周年記念論文集』に発表した「保険業の産業
連関分析」の続論にあたることになる。
また、この小論文は理論的研究であって、実証的計量分析ではない。
私は、出来うべくんば、 理論的「保険業の産業連関分析」のみでな
く、実際に計量的「保険業の産業連関分析」を行なってみたいと念願
しているっ すなわち、現在、産業連関表では保険業は「金融・保険業
」の中にグルーピングされ、理没している。そこで、保険業を「金融
・保険業」から分離独、工させた、しかもこれを損書保険業と生命保険
業の2産業に分けた産業連関表を作成し、それに基づいて「保険業の
産業連関分析」をしてみたいと考えている。本稿はそのための理論的
研究すなわち前提的研究である。
本稿は1.まえかき、2.保険業の産業連関表、3.保険業の産業連関分
析、および4.結語の4節から構成されている。そのうち、3.保険業の
産業連関分析か本稿の中心的テーマすなわち主題である。そして、1.
まえがきは問題提示、2.保険業の産砦連関表はそれ自体一一つのテーマ
であるとともに主題である3.保険業の産業連関分析への導入部でも
ある。4.結語は本稿の要約であり、結論であるO
注(5)紬相子良「投入産出分仰二おける逆行列係数について」、人l馴f立
入学経済学会『紆済研究』第17巻第1・2号(昭和47年3月)
ー127-
保険業の産業連関分析
II 保険業の産業連関表
産業連関表(広義)には(1)産業連関表〔Ⅹり〕(狭義)、(2)投入係数
表〔αの、(3)レオンチェフ行列〔I-A〕、および(4)逆行列表〔I
-A〕-1の4表があるO 図2.参照。
本節では、一賞して、まず産業連関表-・椴について要述し、つづい
て保険業の産業連関表について論究することにする。
1.産業連関表
(1)産業連関表の構造
産業連関表(Interindustry table,または投入産出表Input-Out
put table)はある期間一通常、1暦年聞-一内に--[司または一一地方
のすべての産業部門間に流れる財貸(material goods)およびサービ
ス(immaterial goods)の取引量を、複式簿記の思想によって、行列
の形に記入(entry)した社会経済的取引表であるO したがって、それ
はある同またはある地方の、ある期間の"Tableau Economique
(F.ケネー)である。
(力投人産出構造
産業連関表の横行(row)の数字は経済の各部門一産業部門および
拙寸加価値部門Jの産出坑(Output)が他の部門一 産業部門およ
び最終需要部門-pにどれだけ(how much)配分されたかを示して
いる。すなわち、販路構造であるO
他方、縦列(lCOlumn)の数字は産業部門が自分の必要とする財貨・サ
ービスの投入量(Input)を他の部門一産業部門および粗付加価値部
門-からどれだけ仕入れているかを示している。すなわち、購入構造。
したがって、産業連関表は一一回または▼一地方の、ある期間内における、
一128一
保険業の産業連関分析
財貨・サービスの仕入・販売構造を一表に表わした産業構造表に他な
らない。
表1.について、産業連関表の構造を示せば次のようになるO
まず横行すなわち販路構造について述べる。たとえば、農業は一一年
間に40単位を生産し、これを自部門に6単位、工業に20単位、商業に
4単位、そして最終需要部門に10単位販売(output)する。このとき、
帖売総儲=6+20+4+10こ40=産出総額0が成立する。工業、商業、
Jはび机付加価値部門についても同様の関係か成、工する。
他方、縦列すなわち投入構造についていえば次のようになる。たと
えば、農業においては、それは自部門から6単位、工業から10単位、
商業から8単位、そして机付加価値部門から16単位を原材料・生産要
素として仕入れるO このとき、投入総紙IはI=6+10+8+16=40
である。他の経済部門すなわち工業、商業、および最終需要部門につ
いても同様であるO
表1(1)貨幣的産業連関表
il-1た
農
寛っ
産ヱ
1
た辞去
業
工
2
業
商
3
業
最終需要
F
総産出額
Ⅹ
農
業 1
6
20
4
10
40
工
業
2
10
30
20
40
100
商 業
3
8
22
20
30
80
16
28
36
40
100
80
岨付加価
80
値 Ⅴ
総投入舗
-129-
80
300
保険業の叶 某連関分析
(2)産業連関表の構造
最終需要部門Yと′
中 間 需 要 部 門 R
総産出蝕Ⅹ1
支出国民所得Y。
=∑C十∑G
Ⅹり
0 こ∑Ⅹi
十∑工十∑(Ⅹ-M)
粗イ寸加 価 値 部 門 V gJ
分 配国 民 所 得 Y d
= ∑V gJ = ∑F 一
十
三P + ∑A
(丑 生産国民所得Yp
=総産出額0一一一中間品要総析R
(彰 国tC所得三面等価の原則
総
投
入
柚 X J
Yp 二Yd 二Yp
I 二∑X J
そして、産業連関表においては、つねに投入総額I…産出総額0が
成立する。正確に言えば、投入項目のうちの楯付加価値部門の構成要
素である営業余剰(利潤)を調整項目として、投入総額I…産出総額
0になるように、そのように産業連関表は作成されている。
表1.(2)産業漸閲表の構造に示してある記号を用いて、上に述べた投
入・産出構造を示せば次のようになる。
`. ∵
(1)産出構造式‡Ⅹり 瑞Y`′=Ⅹ′=0ェ
】ここ
′1 ㍍
(2搬入構造式嘉Xり+芸Vの=Ⅹノ こら ……(1)
そして、 0 ≡L
(彰国民所得二trli等価の原則
産業連関表の中には国民所得勘定が包含されている。集合論的に言
えば、国民所得勘定Yは産業連関勘定IOの真部分集合である。
ー1301
保険 砦のJ塵 業連関分析
表1.(1)産業連関表のモデルについていえば、
(1)生産固民所得Yp =総産出紬一中間需要総柚=(40+100+80)
一(6+10+8+20+30+22+4十20+20)=220-140=80
(2)分配国民所得Yd 二組什ノJ‖価値総紬
=16+28+36=80
(3)支出国民所得Y。ニ東終需要総領
=10+40+30二80
そして、3着の間には明らかに国民所得三両等価の原則が成立して
いる。
Yp ≡ Yd =Y。=80
表1(2J産業連関表の構造の記号を使って、一一般化すれば、次のよう
になる。
'こ .ヱ l`
(1)生産国民所得Yp=総産出畢1Ⅹ∼-中間需要総額ノざl且Ⅹり
=0-R
・l ムー
(2)分配国民所得Yd 二組付加価値総額
1‡lp‡lVダノ
(3)支出国民所得Y。=最終需要総額=
描Y∼ノ
そして、3者の間には
Yp =Yd =Ye
=…………‥(2)
すなわち国民所得三面等価の原則が成立するO
③産業連関表のブロック構成と部門数
(i)ブロック構成
産業連関表は、図1.(2)に分割表示されているように、5つのブロッ
クに区画することができるO 中間需要部門(生産部門)、最終需要部
門、総産出額部門、相イ寸加価値部門、および総投入額部門の5ブロッ
クであるO
そのうち、中間需要部門が産業連関分析の決め手となる中心的部分、
-131-
保険業の鹿 砦連関分析
すなわち本体であるO これが本来の意味の産業部門である。最終需要
部門は中間需要部門に対する条件付与部門であり、糊イ寸加価値部門は
生産要素提供部門であるO
(ii)部門数
産業連関表の部門数花は一定していない。
(イ)中間需要部門
まず、中間需要部門すなわち本来の意味の産業部門の部門数はいろ
いろあり、t一定していない。たとえば、アメリカ合州回の1947年表は、
分析用表は42産業部門に分けられているO その親表(master table)
は 500部門であるO わが国のそれは(分析用表)昭和26年表が36部門、
昭和30年表が54部門、昭和35年表が56部門、そして昭和40年表が56部
門である。親表は昭和26年表は行182×列182、昭和30年表は行310
×列278、昭和35年表および昭和40年表は行446×列335であった。
投入産出分析を精細にするためには産業部門数花は大きければ多い
ほどよいかもしれない。けれども、計算量一一とくに逆行列算出のは-一般に部門数乃の2乗または3乗に比例して増大し、困難になると
いわれるから、費用対効果的観点から考えれば、花か大きければ大き
いほどよい、というものではない。実用的には、したがって発表用と
しては、産業部門数花は40≦花≦60であればまず十分であろうO 昭和
40年全回表は56部門、大阪府地域間表は42部門である。
昭和40年表には56部門表の他に10部門表も作成発表されている。そ
こで、筆者も昭和40年大阪府地域間表について10部門表を作成し発表
してあるO
一般に、一国または一地方の産業連関構造を大局的にキャッチした
り、投入産出分析をしたりするためには産業部門数花が少ないほど単
純明快であり、また有効であるO ところが、実践的-政策立案、
-132-
保険業の産業連関分析・
特定施策の効果測定など-にはれは、前述のように40∼60がまず妥
当であろう。したがって、保険業の産業連関表にあっても、産業部門
数花が40∼60の実践分析用産業連関表と産業部門数10-15の理論分析
(大局把握)用産業連関表を併わせ作成することが望ましい。
(ロ)最終需要部門
長終需要部門は、昭和40年表では次の7項目から成っているO すな
わち(1)家計外消費支出Y.1、(2)家計消費支出Y.2、(3)政府消費支出Y。
(4)国内固定資本形成Y.小(5)在庫純増Y-5、(6)輸出Y-6、(7)輸入(
控除)-Y.丁の7項目であるO ゆえに産業乙の最終需要領Yは次のよ
うになる。
7
Yi=Y.1+Y,2+Yl,+Y14+Y15+Y.6-YrT=‡Y.f ……‥(3)
r=1
ちなみにアメリカ合州国の1947年表では(1)在庫純増、(2)外国(輸出)
(3)政府、(4)個人資本形成(粗)、およて月5)家計の5項目になっている。
なお、国民産業連関表ではなく、地域産業連関表の場合は、前述の
最終需要項目のほかに移出と移入の2項目を追加しなければならないO
レ、)粗付加価値部門
粗付加価値部門は(1)生産要素部門と(2)資本減耗引当て部分と(3)純間
接税部門の3大部門に分かれる。昭和40年表は(1)を3つ、(3)を2つに
細分して6項目に分けているO すなわち、(1)家計外消費支出 ⅤU、
(2)雇用者所得 V2ノ、(3)営業余剰(利潤)Ⅴ。J;(4)資本減耗引当てV41
;(5)間接税V51、そして(6)補助金(控除)-V61。ゆえに、産業Jの
付加価値当は
6
VJ=ⅥJ+Ⅵ∫+ⅥJ+ⅥJ+ⅥJ Ⅵノ=g蔓1Ⅶノ
となる。
ー133一
……………‥(4)
保険業の産業連関分析
(2)保険業の産業連関表
本項では保険業の産業連関表について述べる。保険業は損害保険業
と生命保険業に分ける。
①保険業の産出額
保険業の産出額(生産額Output)は事後的付加保険料L(帰属サ
ビス料Gを含む)であるO営業保険料IではないO
周知のように営業保険料乙は純保険料αと付加保険料Jから成って
いる。i =α十g。これを事後的に、国民経済的規模で集計すればI
=A+LとなるO ただし、I=∑l、A=∑a、L=∑l O
保険業の生産額は事後的付加保険料Lと帰属サービス料G一一諸準
備金投資収益ほか一一であって、かってわが国の産業連関表やアメリ
カのそれが定義していた営業保険料Iではない。営業保険料I=A+
Lの構成要素である純保科部分Aは移転項目(移転支払一→移転所得)
であって、保険業の生産物に対する経常支出ではない。(6)
保険業の産出額(Output)について、アメリカ合州国労働統計局
産業連関産業連関経済課(theInterindustry Economics Division
of the Bureau of Labor Statistics)作成の産業連関表(1947年
表、1951年作成)、およびそれを引き写しにしたわが国の産業連関表
(昭和26年表、および昭和30年表)は、いずれも間違った定義を下し
注(6)詳細については谷山新良「保険の本質、構造、および循環」(『
保険の基礎理論』千倉書房)、および「保険経済論」(『所報』、
Vol・17、生命保険文化研究所)参照O
国民所得統計では金融・保険業の産出額=帰属サービス総額=(
受取り利子一支払利子)+手数料と定義している。(『国民所得統計
年報』昭和45年版、392ページ。
さらに、注(8)の定義およびG.Ackleyの所説を参照されたい。
ー134-
保険業の姥業連関分析
ているO すなわち、それらは生命保険業の産出額については正しく定
義しているが、損害保険業のそれについては明らかにミスティクして
いるO これは保険経済論、もっと正確に言えば保険本質論の「貧困」
に由来している。
昭和26年(日本)産業連関表では
「この部門(生命保険、谷山)の生産活動は、銀行の場合と同様、
営業経費総額をもって規定され、この部分は全額家計部門に家計消費
として配分される。」
「損害保険部門の生産活動は、保険料収入(再保険料を含む)と投
資部門の営業経費総額をもって規定されている。」
と生命保険業では正しく定義しながら、損害保険業では誤った定義が
下されているJ8)
この誤りはさらに昭和30年表においてもまた繰り返されるO すなわ
ち「(Ⅴ)金融業・生命保険業金融・生命保険業の生産活動は営業経
費をもって規定し、これを全額家計部門が支払う方式によっているO
注(8)通商産業大臣官房調査統計部編『昭和26年産業連関表による日本
経済の産業連関分析』、昭和31年、386-390ページ、および同上
『昭和30年産業連関表による日本経済の産業連関分析』、昭和37年、
241ページ。
この誤った定義はいずれもアメリカ労働省産業連関経済課(Inter
industryEconomics Division)作成の1947年アメリカ産業連関分析
源由しているO
この誤りを最初に指摘し、訂正に力められたのは故佐波宣平教授で
ある。この間の経緯については佐波宣平「産業連関表における保険業
の生産額」(退官記念講義)『損害保険研究』第30巻第1号(昭和43
年2月)を参照されたい。
-135一
保険業の産業連関分析
この方式によると金融・生命保険業の産業部門に対する配分は零とな
るので、各産業部門の最終需要の変動による波及効果から全く独立す
ることになる。
(vi)捕害保険 火災、船舶、積荷、運送、傷害、自動車、盗難、
信用等の保険をいう。また、政府部門から除外された森林火災保険、
輸出保険および外国の保険会社の在日支店等も含まれる。損害保険の
生産活動は保険料収入によって規定されるO ただし、投資関係の活動
はこの部門から除外されるO 保険料の定義は次のとおりである。
材)民営分 保険料-(解約返戻金+その他の返戻金+満期
返戻金)
桓) 官公営分(農業共済保険、森林火災保険、輸出保険)
事務費+支払共済金+繰越増+利潤一補助金
ここでもまた2元論的に定義されており、損害保険業についてミス
テェイクを犯しているO
ところが、佐波宣平先生の当局に対する直接的指摘もあって、昭和
35年表および昭和40年表においては、次のように、正しくかつ一元論
的に定義されているO(9)
再 保険の生産額は、生命保険については営業経費総額(帰属
賃貸料を含む)とし、損害保険については保険料収入(国内企業間
※
の再保険料収入を除く)一保険金(+解約払戻金+その他の払戻金
)としたO(+、谷山追加)
注(9)通商産業大臣官房調査統計部編『昭和35年地域間産業連関分析』、
200ページO
アメリカの理論経済学者アクリー(ミシガン大学教授)は次のよう
に述べている。「生命保険の場合は、問題は、保険会社か消費者に提
供▼ウるサービスを定義し、評価することであるO これを保険料の支払
ー136-
保険業の産業連関分析
すなわち、保険業一4般一一生命保険業、損害保険業、および共済事
業一一の生産絨(Output)は事後的付加保険料Lおよび帰属サービス
料Gであって、営業保険料総碩I(=A+L)ではない。言いかえれ
ば、産業連関論の分析対象となる保険業産山流量(insurance Output flow)は(L+G)のみであって、そこには純保険料総紬Aは
含まれない。A部分は産業連関論(表)ではなく、資金循環論(表)
で取扱われるべき価値であるっ
(彰 保険業の産業連関表
保険業の生産額(Output)xv は事後的付加保険料Lおよび帰属
サービス料Gである。盈ノこし+G。
いま、1年間の営業保険料総紬をI、支払保険金総額をA、解約返
戻金・満期払戻金・契約者配当・その他の返戻金総額をQで表わせば、
事後的付加保険料総額LはL=I一(A+Q)である。ゆえに保険業
紬で刷ることができないのは明らかだO なぜなら、保険料は大体に
おいて貯蓄であって、消費ではないからだ。ここでもまた、ある板想
のトに帰属を行なうのだが、それは、保険会社の投資所得の全部が
あたかも保険証券保持者によって在接受取られたかのように想定し、
その上でこの証券保持者たちが会社からサービスを買う。そしてそ
サービスのためにかかった費用(賃金、俸給、資材購入費、減価償
却、租税等。なお株式を発行している場合には、株主に帰属すべき
利潤をも含む)でもって評価されると見なすのである。かくて、全
社の貯蓄は家計部門に移され、したがって「個人貯蓄」は生命保険
会社の保険料積立準備金をも含むものと解されねばならぬ。個人部
門の勘定では、保険料支払楯も保険金受取額も、もちろん無視され
るOJ Gardner Ackley,几あcroeconom:CTheory,pp,63∼4、都
留垂人訳『マクロ経済学の理論』95∼6ページO
-137-
保険業の産業連関分析
の′主産碩ズUは
xu二L+G=〔Ip(A+Q)〕+G ・・‥・…(5)
のように書き表わすことができる。
生命保険業と損告保険業は、投入構造においてはほとんど変わらな
いが、産出構造においては著しく様相を異にしている。
表2 保険業の産業連関表
(1)金額的産業連関表〔Ⅹ.J〕
lい
ん 一ノた 産 業 \
小
J寸:鼠
産 ⊥
1
2
間
ノ
生 命 保
険 ′業
要
最終 需要
正 1
損 吉保
険
業
総 産
山 頼
家 計
外 国
ム
/
Ⅹ
内
岩
1
X ll
X .2
X li
X Hn
Ⅹ- "
Y ,ん
Y lr
X l
JJT 某
2
Xn
x 2
x 2J
x 2m
x 2。
Y 2ん
Y 2r
x 2
X J訂
Ⅹ h
Y /′
Y ノ/
Ⅹ!
X れ"
Y ,山
Y m /
X ,。
X
Y nん
Y れ/
X
間
接
日 淵 搬業 1
ヽ∴
-
X Jz
Ⅹ =
1lli.相 順 果
m
Ⅹ璃
Ⅹ戒
X m ′ l X m仇
Jヰ+ X の1 X n。
l
ノ
\
業
花
Ⅹ R .
Ⅹ "机
l
n"
n
(1日 り)0≦Ⅹり「たたし、トランス∵77方式)
(21′I_合保l墳てはⅩ′1=Ⅹ′2二 二Ⅹ紬=(),Ⅹ接=Ⅹ′(≠01
損,.胡腰 VXり≧0、上配的にはⅩ -1>0
生命保険業:-・般に企業や政府は生命保険には加入しないから、生
命保険業の生産額Ⅹ′は全額が最終需要部門の家計消費支出部門にOutputされるものとして記入(entry)される。ゆえに、Ⅹ′= Y川。
金柚的には僅かではあるが、生命保険は外同人にも「売られる_」か
ら、正確に言えばこれYLf(Fは外国foreign countryを表わす)を
加えて
Ⅹ.=Yは+ Y〃 (0≦ Yの ・(6)
のような書き表わすべきであろう。
一138一
保険業の産業連関分析
これに反し、生命保険業の投入パターンは他の産業のそれと大差は
ないOすなわち、中間需要部門からの投入量XJ′(z =1,2,
‥‥‥,ののすべてが0ではなく、そのうちのあるものは必ず正(プ
ラス)である。コⅩll、Ⅹヱ′>0。業態の性質上、それは損害保険
業や金融業の投入に酷似する。すなわち、財貨(material goods)
生産産業ではなく、用役(サービス)生産産業であるから、第一次・
第二次産業部門からの投入構成比
Ⅹ1I+X。I
XJ
はきわめて低く、代わ
って第三次産業からのそれ呈色は高いという特徴がある。これに加
Ⅹl
えて、多くの外務員を雇用しているので、生命保険業は他の産業に比
べ、粗付加価値値部門中の雇用者所得の構成比著が相対的に高くな
るであろう。(昭和40年表では、それは0.79に達しているO)
以上を要約すると、生命保険業の投入産出構成の特徴は次のように
なるO
(1)産出構造
家計消費支出部門 Ⅹ£= Y£h+Yけ
中間需要部門 ⅤⅩ日、Ⅹり=0 すなわち
Xll=XJ2=………=Ⅹ′。=0
(2)投入構造
中間需要部門 互Ⅹgj、Ⅹ↓上>0
Ⅹ11+Ⅹ2∼
低 い
Ⅹ′
Ⅹ3J V2J
XJ
XJ
商 い
損害保険業:損害保険業の投入産出構造は金融業のそれに西出以する。
まず、生産額(Output)は中間需要各産業l(l=1,2,……,n)
および最終需要部門(家計消費部門ん、投資部門J外国家計消費部門_
-139一
保険業の産業連関分析
f)にOutputされる。生命保険業の場合とは異なl上損害保険要
にあっては一般に0≦Ⅹ叫(ノ=1,2,‥=‥,れ)、しかも支配的には
は0<)Lである。ゆえに、産出構造は
71
Ⅹ椚事Ⅹ叫十Ymh+Ymヱ+Yれ′ =…………(7)
となるO
他方、投入構造は生命保険業と大同小異であるO 逼X.爪、XJm≧0
支配的にはX.れ>0。両者の違いは外務員投入構成比にある。すなわ
ち損害保険業の雇用者構成比は生命保険のそれよりも小さい。
1㍍2 Ⅵ2
- <
Xm
XJ
以上が保険業一般の投入産出構造である。保険業の生産額(Output)は、すでに述べたように、事後的付加保険料Lおよび帰属サー
ビス料Gであって、営業保険料IではないOI(=A+L)の主要構
成要素である純保険料部分Aは移転項目であって、保険業の生産額で
はない。これに対し、事後的付加保険料Lは保険業の生産物である保
険仲介サービスに対する代価(経常支払)であるO これはシュンペー
ターの言う「仲介所得」にあたるO
以上の理論に立脚して、保険業の産業連関表を示せば表2.のように
なるO
2.投入係数表
(1)投入係数表
生産物1単位を生産するに必要な投入量を投入係数(inputcoefficient)という。投入係数はまた生産係数(production coeffi,
cient)ともよばれるO
産業連関表を用いれば、きわめて簡単に投入係数αを求めることが
-140-
保険 業の産業連関分析
できる。すなわち、産業Jの生産額XJでその投入額Ⅹりを割れば、投
入係数けりが求まる。
αり =
すなわち、産業jの生産額主も(横行)で、産業Jの縦列の数字Ⅹ。を、
上から順に割っていけばよいO
公式(8)によって、表1.(1)産業連関表(129ページ)から投入係数〔
αり〕を算出すれば表3.のようになるO
表3 投入係数表
買 った 産 業
〔例〕 農業の列
農 業
1 .
売 っ た産 業
工 業
商 2 .
業
3 .
農 業 1 .
0 .15
0 .2 0
0 .0 5
工 業 2 .
0 .2 5
0 .3 0
0 .2 5
商 業 3 .
0 .2 0
0 .2 2
0 .2 5
αu=去=0・15
α21=昔=0・25
αn=浩二0・20
(注) 表1.より算出
(2)保険業の投入係数表
全く同様の手法によって、われわれは表2.保険業の産業連関表から
投入係数〔αり〕を算定することができるO それは表4・のような形にな
るO
すなわち、投入係数αりは算出公式(8)αり=告によって、金額的
産業連関表(表1.129ページ)から誘導されるO
生命保険業Jの行はⅤⅩ-j、Ⅹ==0、(J=1,2,…,れ)である
から、生命保険業上の行の投入係数α-jはすべて0になる。Ⅴαり、
α.j=00
-141-
保険業の産業連関分析
表4.保険業の投入係数表
(2)投入係数表〔A〕
討
売
った 産 業
産 業 1
産 業 2
生 命 イ果 険 業
J
損 害 保 険 業 m
産 孔
業 産 業
1
っ た 産 業
産
業
生 命保 険 業
損害 保 険 業
J
m
2
産 業
几
α 11
α 12
α1J
α 1 ,n
α1け
αn
α 翠
α 2J
α 2 Ih
α2 れ
0
0
αd
0
α 爪2
α m J
α がH れ
0
α lIM
0
α れ1
α"2
α れ2
αq巾
α IMn
(注)(1)αり=者ノ/gJ
(2)0≦α叫、支配的には0くα鵬
他方、損害保険業肌の行は0≦Ⅹ叫、支配的には0<Ⅹ叫、である
から、他の産業の投入係数と同様に、0≦α叫支配的には0<α融
となるO
以上を要約すれば、「保険業の産業連関表」の投入係数表〔断言
において、生命保険業/の行αJJ と損害保険業mの行αmJには、
それぞれ次のような関係がある。そして、これが生命保険業と損害保
険業の著しい相異点である。
(1)生命保険業J
Vαり、α-1=0、すなわち
αJl=αJ2 =……=αJm 二0
(2) 損害保険業仇
耳αmJ、αmJ>0 すなわち
0 ≦αmい支配的には0くα爪J
なお、(1)式(130ページ)
1142-
保険業の産業連関分析
れ ん
∑X.J + ∑VgJ =XJ
J=1 g=・
から、次の関係式が成立する。
互Ⅹり 真ⅥJ
∴三一1 +
=1 すなわち
Ⅹノ ⅩJ
n ん
∑αり+昌UgJ=1
jこ1
なる。ゆえに、投入係数匝り〕においては一般に
0く∑αり <1
0く∑UgJ <1
なる関係がある。この(9)式は、Solowの条件、すなわち産業連関分
析における均衡産出解が非負(nonr negative)となるための十分
条件を満たすきわめて重要な関係式である。
以上が保険業産業連関表の投入係数に関する要点である。
3.逆行列係数表
逆行列係数は産業連関分析(投入産出分析)の戦略的基礎数である。
それは(1)均衡産出量の決定、(2)2時点間の経済変動量の要因分析、
(3)影響力係数、感応度係数、(4)最終需要項目別生産誘発額、最終需要
項目別生産誘発係数、最終需要項目別生産誘発依存度、(5)価格分析、
およびて6)雇用量分析のすべてにおいて無くてほならぬ戦略的基礎数で
あるO
逆行列係数は、図2.に示されているように産業連関表〔Ⅹェ1〕→
投入係数表〔A〕=〔αの→レオンチェフ行列〔I-A〕→逆行
列係数表〔I-A〕 1=〔βのの手順によって算出されるO
-143-
保険業の産業連関分析
(1)レオンチェフ行列
レオンチェフ行列〔I-A〕は、投入係数行列〔A〕から逆行列係
数行列〔I-A〕 1を導き出すための、中間項である。
本項では、まずレオンチェフ行列の導き方(公式)について述べ、
続いてその意義と根拠を明らかにしたいと思う。
(彰 算出公式
(i)一般公式
レオンチェフ行列は単位行列〔I〕nxm から投入係数行列〔A〕
"Xnを差引いて
〔I〕… -〔A〕… =〔I-A〕れXれ …・(1功
のように、きわめて簡単に導き出すことができる。(1ゆ式かすなわちレ
オンチェフ行列の導出公式である。
たとえば、2行2列の投入係数行列〔αの2×2(ら ノ ここ1,2)
〔A〕つ芸
のレオンチェフ行列〔I-A〕2x2 は、公式(10)によって
〔I-A〕
:∴‥!
〔1二:二:j
となる。
-144-
保険業の産業1車間分析
そこで、いま、これをれ行花列の投入係数行列〔qり〕脚 白 言
=1,2,………、花)に拡張して-一般化すれば、そのレオンチェフ行列
〔I-A〕れ軸 は
1-α11 --α12 …… -α1わ
ーαn 1--α22 …… -α2m
……(11)
〔I一一A〕
-αれ1 -αね2 ……1-α乃"
である。(1わ式から明らかであるように、それは対角要素がすべて(1
-αり)、その他の要素は-αり(乙 こ≠J)の形をとるれ行几列のjlリブ
行列である。
(ii)保険業のレオンチェフ行列
ゆえに、表4.保険業の投入係数表〔A〕=〔αり〕れ×わ のレオンチ
ェフ行列〔I-A〕。X。 は表5.のようになる。いうまでもなく、そ
れはわ行乃列の単位行列〔I〕約 から表4・保険業の投入係数〔A〕
表5 保険業のレオンチェフ行列
(2r) レオンチェフ行列表〔I一一A〕
\
′
ノ
し
_、 胃 ′
1 た舟 昔
、
/- ′
日 子 \ \ \
中 葉
1
「命̀fl哉 え
産業
2
揮∴保検鼠
河 上
/
I
JI7 4㌧
1
絹
業
2
1
1111
r121
tTu
1 - (エ
な
′
l J。
津川‖二
′
日
り
持 ∴ 保 検 葉+
m
り
れ1
rJ m 2
一`111
- rllm
rユ1れ
rZ幻
ー
勘軸
く
72 "
1
▼rgm
l
。
l
Jl m
0
1 - rエ
mn
l
「
ノ
′
了
見
〃
れ
1
〃
戒
n nJ
ー145一
, l
〃m ln
保険業の産業連関分析
=〔αり〕。籾 を差引いたもの〔I-A〕れ印 である。
さて、生命保険業才の行では、自部門α〃のみが1で、残余の駒α.J(/≠ノ)は全部0である。記号的に書けば、αり=1;Aα日、αり
こ0(′≠の。行ベクトルで示せば/(0,0,……、0,1,0,‥=‥,0)O
他方、損害保険業仇の行は他の産業一般のそれとほとんど変わりは
なく、自部門のみは1-α相、他はすべて-α畑≦0、支配的には一
α酌<0(m幸ノ)である。
② 意義と根拠
では、何故、投入係数〔A〕のレオンチェフ行列は〔I-A〕であ
るか?その投入産出分析的意義と根拠を示せば次のとおりである。
いま産業1,2,……,花に対する最終需要量列ベクトルを白日
とすれば、それによって誘発される均衡産出量列ベクトルトルj X言
は、
Ⅹ1=αllX1+α比x2 + …・=…+αlnX"+Yl
竃 =α21Xl+α2x2 + …=…・+α紬X。+Y2
(1功
Ⅹれ =αノnlXl+αの2x2+ ………+α相Ⅹれ+Y。
なる乃元一一次連立方程式の解jX言 であるJlO (1功式を陽関数に書
きかえれば
(1-α11)Ⅹ1 一α.。x2 一α1。Ⅹ。=Yl
-αaXl+(卜α2)Ⅹ2 -α紬Ⅹ"=Y。
ーα"Ⅹ1 一α〃2X。 …… +(1一α〃")Ⅹだ=Yn
となるO これを行列演算式にあらためて書けば
146-
…‥(13)
保険業の産業連関分析
1-α11 -α2… -α1わ
ーαnl一物… -α紬
………(14)
-αnl αれ2…1-α舶
となるO
したがって、産業連関体系〔A〕=〔αlJ〕れXn に対し、外部から
与えられる最終需要葺け言に見合う均衡産出量日日(Z,ノ=1,2,
‥・…・,のは(1勿式またはそれの陽関数表示である個式あるいは(1㊥式一
いずれも几元一次連立方程式一一の解である。
そして、乃元一次連立方程式(13)式または(14)式の左辺にみられる1Xl
の係数行列〔I-A〕が、まさに、乃元一次連立方程式=均衡産出方
程式(12)の右辺に見られる投入係数行列〔A〕=〔αののレオンチェ
フ行列に他ならない。
いま、記号を使って上述のプロセスを示せば次のようになるO ただ
し、〔A〕は投入係数行列、1Yl は黄終需要量列ベクトル(与件=
外生変数)、そしてlX[はjYl に見合う均衡産出量列ベクトルを
表わす。
(1功式 j Xl =[A〕IXl +1Yl すなわち
[I〕1Ⅹ[=〔A〕1Xl +1Yl
注(1ゆ 産業連関分析では、一貫して、次の2つの基本仮定に立脚して
分析を展開する。すなわち
(彰 投入係数は一定とする(生産技術一定不変の仮定)
② 産出量0は投入量Iに正比例する0=んI(鬼は定数)
(規模に関する収穫一定の仮定、または、生産関数の一次同
次性仮定)
-147-
保険業の産業連関分析
を陽関数に変形すれば(1⑳式または(1㊥式
〔I-A〕1Ⅹl =jYl
が得られるO このとき、左辺にみられる行列〔I-A〕が他ならぬレ
オンチェフ行列である。
そして、それを花行れ列の行列に展開して、より具体的に示したも
の、それが㈹式に他ならない。
以上がレオンチェフ行列の意義と算出公式(川の根拠である。
ところで、均衡産出解1Ⅹl を求めるれ元一次連立方程式(1功一(14)は
未知数几すなわち産業部門数犯が5ぐらいまでなら、筆算または電動
計算機で何とか解くことができる。ところが、 花が大きくなるにつ
れて、計算量はれの2乗ないし3乗に比例して増加し、やがては、事
実上、.不可能になる。ましていわんや花が56(部門)にも達すれば、
もはや算出不可能である。
またもし、算出できたとしても、投入産出分析のたびごとに、旭大
な計算をしなければならない。
こうして、レオンチェフ行列で投入産出分析することは、理論的に
はいざ知らず、現実的には困難を伴うO この困難性ないしは不可能性
を回避して、実践的に役立つ投入産出分析を簡単容易化するために考
え出されたのが次項に述べる逆行列係数〔I-A〕 1=〔βのであ
る。
(2)逆行列係数
本項ではまず逆行列の数学的定義を述べ、つづいて産業連関分析に
おける逆行列係数について論究するO
(D 逆行列の数学的定義
(i)正則行列と逆行列
いま、もし、犯行乃列の正方行列Aに対して
ー148-
保険業の産業連関分析
AB = B A = I
となる犯行花列の正方行列B が存在するとき、行列Bを行列Aの逆
行列(inverse matrix)とよび、通常、A-1と書き表わす。ただし、
こ、に見られるIはn行n列の単位行列(unit matrix)または恒等
式(Identity matrix)であるO
たとえば、2行2列の行列A=〔αり〕2¥2、B=〔占言日周 の間に
AB=BA=I すなわち
日出= に: ∴∴∴なる相互関係が成立するとき、行列Bは行列Aの逆行列となるO
行列〔A〕の逆行列〔A〕 1が存在するための必要かつ十分条件は、
行列式IAlが0でないことIAlヰ0である。そしてIAI≠0の
とき、逆行列〔A〕 1は唯一つ存在する。 また、IAi≠0である
行列、すなわち逆行列が存在するような行列〔A〕を正則行列(re
gular matrix)とよぶ。
(ii)余因子行列と逆行列
れ次の正方行列A=〔αり〕の行列式IAIにおける(Z,の要素
αり の余因子(cofactor)AHを(ノ、-)要素とする行列を余因子行
列(adiugate matrix)とよびadiAと書く。(ll)
All
A21……A瓜
A12 A宏 …… A。a
adj A=
=……………・(16)
Alm
A2。……Ann
正則行列〔A〕の逆行列〔A〕 lは、余因子行列adj Aを用いれば
-149-
保険業の産業連関分析
All ん1…… Aれl
lAllAI T万「
〔A〕 1
舎一缶……1台
=……‥(17)
=L All adjA=
Aln
A。。‥ Ann
AllAl
lAl
一般に、逆行列の算出は計算量が大きく、困難である。上述の(1乃式
からも明らかであるように、IAln×れおよびれ2個の(几-1)次の
行列式Al】を計算しなければならないからである。直接的に逆行
列を計算する方法は、連立一次方程式法、分割法、反復法などがある。
(勤産業連関分析における逆行列係数
(i)逆行列係数の算出手順
注(川 一一般に行列〔A〕。,Xmからいくつかの行および列を取り出して得ら
れる正方行列〔B〕鵬×怖(m<のの行列式[βIを行列〔の ま
たは行列式1月Iのの小行列式(minor)という。これらの小行列
式に(-1)`+ノ を掛けたもの(-1)`+J[β-を要素αりの余因
とよび、A.ノ と書く。Aりを(ノ,i)要素とする行列、それが余因
子行列adj Aである。
(1功 一般に、逆行列の計算は作業量が大きく、困難である。IAl花火几
およびれ2個の(れ一1)次行列式丸.を計算しなければならないから
であるO直接的に逆行列を計算する方法は連立一次方程式法、分割法
反復法などがある。逆行列係数〔乱J〕は行列〔A〕の次数花が小さい
ときは、manual(手動的)に何とか解くことができるO ところが、
逆行列算出の計算量は花の2乗または3乗に正比例して加速度的に増
加するので、やがてmanual には算出不能になる。市村真一教授によ
ー151ト
保険業の産業連関分析
産業連関(投入産出)分析における逆行列係数〔β.のは
寓葦謂表 投入係数表 誓霜 逆行列係数翻
〔xi,〕→〔A〕=〔a.,〕→〔I-A〕→〔I-A〕 1=〔β』
の手続きによって求める。すなわち
〔I-A〕 1日-A〕=〔βJJ〕〔I-A〕= 白〕
を満足する犯行れ列の正方行列、それが産業連関分析における逆行列
係数行列〔I-A〕 1=〔B〕=〔β。〕である。
(ii)レオンチェフ行列と逆行列係数行列
本項ではレオンチェフ行列〔1-A〕とその逆行列〔I-A〕 1=
〔βiJ〕について研究する。
一般に、行列はある1つのベクトルを他のベクトルに変換する機能
をもっているO たとえばレオンチェフ行列〔I-A〕は産出額列ベク
トル日射 を最終需要額列ベクトル1Y言に変換する働きをもってい
る。すなわち
〔I-A〕1鋸 =1Y.1
れば、れ=10のときは、卓上電動機を使用して、一日8時間労働で約
7日もかかるという。したがって、乃が大きくなれば電子計算機に頼
らねばならぬことになる。
レオンチェフ教授によれば、1950年ごろ、42行42列の1939年アメリ
カ産業連関表の逆行列を計算するのにバーヴァード大学のMarkⅡコ
ンピューターは56時間かかった。ところがその後10余年間のコンビュ
ターの発達はすばらしく、1965年ごろには81元連立一次方程式の有効
数字5桁の一般解を求めるのにバーヴァード大学IBM7090コンピュ
ーターは僅かの3分間しかか、らなかったという。 W.bontief,
几pu O祝相加-gcollO机上C3、P.26,p.161。
ー151-
保険業の産業連関分析
これに対し、レオンチェフ行列の逆行列〔I-A〕、1=〔βlJ]は、
逆に、最終需要列ベクトル目早を産出額列ベクトル1ⅩiIに変換す
る役割を演ずるのである。
ローA〕 1日打 =1Xll
ゆえに、レオンチェフ行列〔I-A〕とその逆行列〔I-A] 1の
関係は、次のように図示することができるO それはあたかも加法と減
法、乗法と除法、微分と積分、作用と反作用などの関係に似ている。
事実、レオンチェフ行列〔I-A〕とその逆行列[I-A〕-1の間には
〔I-A]〔I-Arl=〔I〕
なる関係があるO これはあたかも数(scalar)α とその逆数α 1の
関係αα 1=1の関係に相当する。
図3.レオンチェフ行列と逆行列
I禁ヂト莞} 〔行列〕
レオンチェフ行列
〔I-A〕
[I-A] 1
逆行列
すなわち、レオンチェフ行列〔I-A〕とその逆行列〔I-A〕-1
との相互関係を均衡産出呈方程式または均衡最終需要量方程式で示せ
ば次のようになる。
〔I-A〕IX[◆ jYl
lXl◆[I-A〕つYl ‥(1ゆ
いま、レオンチェフ行列ローA〕と逆行列0-A〕 1との関係
を幾何学的に図示すれば次のようになるO 簡単化のために産業部門数
-152-
保険業の産 業連関分析
花=2のケースについて考える。
投入係数行列〔A〕を
α11 αは
〔A〕=
αn α2
とすれば、レオンチェフ行列〔I-A〕は
1-α11 一α竣
〔I-A〕
-αn 1-α詮
となるOその逆行列[I-A〕 1を
AI A2
〔I-A〕 1=
良1+/‰
とすれば、逆行列の第1列[釦ま
1-α11 一α㍑
(19)
-(In 1-(12
の均衡(産出量)
ほ]
解[芸 :]
である。すなわち
'二:]
全く同様にして、 第2:列
一一:二]
1-(Jll
一αu
Ⅹ呈
一一(1皿
1--(12
Ⅹ…
保険業の産業連関分析
の均衡解
である。すなわち
図4.において、OA。(1-α11、-αn)は産業1の単位アクティヴ
イチイであり、OB。(1α孔、1一α2)は産業2の単位アクティヴイ
ティである。他方、CとDとの座標は最終需要量列ベクトルを示し、
それぞれC(1,0)、D(0,1)。そして、図のように平方四辺形作
図によって、A.、A2、およびB.、B2を決定するO このとき、レオ
ンチェフ行列〔I-A〕の逆行列〔I-A〕 1=〔βのは
図4.〔I-A〕と〔I-ATl
OAl OA2
1-α忽 α竣
0A。 0ん
l.1! I.11
・‥…… 釦
OBl OB。
αn
OB。 OB。
l-αll
lA】 lAl
であるO ただし、IAl=(1-α11)(1-α包)-αuα皿である。
ー154-
保険業の産業連関分析
さて、こうして求めた逆行列〔I-A〕 l
β11 βは
〔I-A〕 1=
βn β忽
とその原の行列であるレオンチェフ行列〔I-A〕の間には、定義に
よって-したがって計算の結果から-当然、次の関係式が成
立する。
〔IMA〕〔I-A〕 1=〔I-A〕 1〔I-A〕=〔I]
1-α11 -αu
β11βu
β11β拉
1-α11 -α拉
ーαn l-α2
β孔 β忽
βn β2
-αa1-α2
1 0
0 1
逆行列のmeritはn元連立一次方程式X=AX+Yを、連立方程式
的にではなく、逆行列係数〔βの と与えられる定数IYJlの積和Ⅹ=∑β.JYJとして、単純明快に算出できることにある。たとえば
Ⅹ1
αn αu ‥ α1,1
Ⅹ1
YI
Ⅹ2
αn α訟 -… α加
x2
Y2
αれ1 α"2 …… α瑚
なる乃元連立一次方程式は、これを消去法などによって直接的に解く
かわりに、レオンチェフ行列〔I-A〕を求め、その逆行列〔I-A
rlを求めることによっても解くことができる。すなわち、上のれ元
連立一次方程式を、まず、陽関数に変えるO
ー155一
保険業の産業連関分析
レオンチェフ行列〔I-A〕
1-αu 一α竣 ‥‥‥ -α1カ
ーα孔 1-αを =…・ 一α2n
ーαけ1 -α,2 …… 1-α鵬
つぎに、左辺の係数行列〔1-A〕-レオンチェフ行列-の
逆行列〔I-A〕 1=〔βのを求め、それを両辺の左側から乗ける。
そうすれば、定義によって、〔I-ATl〔I-A〕t Xl=〔IA〕 liYl →〔I〕lXi=〔I-ATつYl →IXi 二〔I∼
A〕 つYl=[βのlYl となる。 くわしく書けば
Ⅹ1
1-α11 一αは …… -α1m
x2
-αn l-α2 ・ -α2m
Ⅹれ
ーαれ2 一α"2 ……1-α間
β11 βu …… β1れ
βn β宏 …… β加
βnl βれ2 …… β棚
となるOゆえに、れ元連立一次方程式Ⅹ=AX + Y の解lXllは、
逆行列〔I-A〕 1=〔βのを使えば一般に、上の式から
X.=β.汀,+β.2Y。+…………+β∴㌦
穐
=昆βlJYJ
のように、逆行列係数βりと定数YJの積和として、-几本の一次式連
立方程式を解くのではなく-簡単に求めることができるO
ー156-
保険業の産業連関分析
ゆえに、もし、Ⅹ=AX+Yの係数行列A=〔αのが固定しており、
走数列ベクトル‖吊 のみが変動するようなれ元連立一次方程式体系
場合は、一度、レオンチェフ行列〔I-A〕の逆行列〔I-A〕 1=
〔βの を計算しておけば、与えられる走数列ベクトル1YJI に対する
均衡解列ベクトルj X」は
Il
Xl =∑ βり戦
lこ1
によって、きわめて容易に解くことができる。
ところで、産業連関分析の主要テーマは、(1)最終需要lYJl を経済
活動の起動力と考える、(2)投入係数〔αIl〕は一定という仮声の下で、
この起動力(最終需要)によって経済部門間に誘発される波及効果
(repercussion effects)を分析算定することである。
したがって、前述した花元連立一次方程式Ⅹ=AX+Yで、係数行
列A=〔αのが不変であり、走数列ベクトル1ul のみが変動する
ようなれ元連立一次方程式体系、それこそがわが産業連関(投入産出)
分析体系に他ならないO産業連関分析において、固定不変の投入係数
行列A=〔αのからレオンチェフ行列〔I-A〕=〔1一α1.〕を導
き出し、さらにそれから算出した逆行列〔I-A〕 1=〔1-αJl
があらゆる分析の戦略的(決め手的)基礎数として活用される所以で
あるO
(郭 逆行列係数の経済学的意味
本項では逆行列係数〔I-Arl=〔βのの経済学的概念について
研究するO
結論を先に言えば、1単位の最終需要のインパクト(jmpact)に
よって、直接的・間接的に誘発される生産総額、それが逆行列係数〔
I-A〕 1=〔βのであるOすなわち
ー157一
保険業の産業連関分析
妄禁票㌣票票ち禁票=逆行列係数……包め
逆行列〔卜A〕 1=〔β。〕の第J列の係数列ベクトル白ヲの
(乙=1,2,日…・,几)は産業ノの最終需要1単位によって誘発される
全産業の均衡産出副Xの(z=1,2,……、乃)である。したがっ
て、それは財(商品)Jの最終需要に対する産業別乗数、すなわち財
ノの産業別最終需要乗数に他ならない。
理解を容易にし深くする 表6・投入係数表〔αの
ために、表6.のモデルによ
って、逆行列係数〔I-A
rl=〔βのの経済学的意
意 志 \ ヱ
農
工
業
業
農
業
工
業
0 .150
0 .2 50
0 .20 0
0 .30 0
味を明らかにしたいと思うO
いま、もし、表6.のような投入係数構造をもつ国があったとするO
このとき、もし、農業部門には1単位の最終需要があるが、工業には
最終需要が全くないものとするO このとき、貴終需要〔吉〕に照応
する均衡産出量
〔王i)
は幾何(how much)であるか?それは次の
2元連立一次方程式を解けばよい。すなわち
鍔:霊:漂∴≡:: …・=……‥¢劫
の解がそれであるO この式は(1幼式に当たるO この陰関数を陽関数に直
せば
(1-0.150)Ⅹ11-0.200Xn=1
………・=・‥伽
-0.250Ⅹ11+(1-0.300)Ⅹn=0
または
仁:::::1二::慧=芸日:「……‥伽
ー158-
保険業の産業連関分析
となる。これは、それぞれ(13)式または(14)式に相当する。そして、左辺
の係数行列〔I-A〕
::l:∵ 二∴
0.150
なわち表6.の投入係数行列〔A〕=
〔
のレオ
0.250
ンチェフ行列〔I-A〕に他ならないO
さて、2元連立一次方程式を解けばⅩ11≒1.284、Xn≒0.459 と
なるO これが、実は、前述のレオンチェフ行列〔I-A〕=
急
0.250
(0.150
の逆行列〔I-Arl=〔βのの第1列ベ
であるO
クトル(‡三]
すなわち
(芝目霊日笥 ‥……………・¢①
全く同様にして、表6・の投入係数体系に最終需要
これに見合う均衡産出量
クトル
芸:]、
[-】-]
を与えれば、
すなわち逆行列係数行列の第2列ベ
が得られる。そして、それは
:ニ:
Ⅹ拉
[ Ⅹ包
である。
日芸:日豊
………‥㈹
ゆえに、郎せ佃から、表6・の如き投入係数構造をもつ国の逆行列係
数〔I-A〕 1=〔βのは
ー159-
保険業の産業連関分析
〔卜A〕-1=〔βの≒(::::;:::::〕
であるO
いま、表6.の投入係数行列〔A〕、レオンチェフ行列、〔I-A〕、
および逆行列係数行列〔I-A〕 lの3着を整理して表示すれば
(1)投入係数 →(2)レオンチェフ行列 →(3)逆行列
〔A〕 〔I-A〕 〔I-A〕.1
に芸霊‖1霊::1二::計工㌃笥
いうまでもなく、〔I-A〕〔I-A〕-1二〔I〕すなわち
〔上A〕〔トA〕斗::::: 笥鑑笥
≒(言)
が成立するO
さて、こ、で、最終需要別ベクトル1Y言 と逆行列係数白緑 と
の関係を解析と図解の両面から研究してみたい。
具体的実例を前述の幽式のケース
0.200
0.300
]
、`:_:
丑)
にとって波及効果構造を追跡することにする。
まず、最終需要
による波及効果構造を図示すれば図5.のよう
になるO
-160-
保険業の産業連関分析
図5・最終需要〔吉了の波及効果構造と逆行列係数
璃品射 農業(霊定議)(霊憲効芸)(慧諾議)
Ⅹ(£)-0
璃)一一一一,
l
l
l
つぎに、波及効果構造を解析的に追跡すれば次のようになる。
0)まず、当初効果1蛾 は
闇=日
すなわち、1Ⅹ!?)l=1Y-11
1)つぎに、第1次波及効果1Ⅹ(雪)白土
/こ∴_ll.:∴∴..∴::、
記号化すれば、lX(カ ニ〔A〕1iYlll
3) 第2次波及効果iXェll は
馴霊剖凱
150 0.200
250 0.300
すなわち、日脚 =〔A〕つYlll
である ゆえに、一般に、第m次波及効果1耳詔は
闘器訳井烏等〔:〕
ゆえに、は盟 =〔A〕爪性11
-1(うトー
保険業の産業連関分析
となる。そして、これらの波及効果の間には次の関係式が成立する。
(1)limX霊)二〔0〕,lim蛇)=〔0〕。
れ一ウ`ニこkプ れ→△て7
(2)1+Ⅹ恕+璃)+Ⅹ曾+‥‥‥=β11(≒1.284)‥‥・…‥‥帥
0+璃)+増+Ⅹ曾+……=βn(≒0.459)
全く同様にして、最終需要列ベクトル 〔冒〕 に対しても次の関係式
が成立する。
(1)1史Xu=〔0〕・嘉聖Ⅹ恕=〔0〕
(2)0+Ⅹ隻)+璃)+Ⅹ曾十日‥‥=β竣
1+優+Ⅹ隻)十が曾+……=β包
(≒0.367)…………㈹
(≒1.560)
ゆえに、㈹式と㈹式から
0.200
[::芸
0.300
H
∴l「∴∴:
が成立するO これを一般化すれば、
〔昔6:::黒:出 北器誅A的
‥…‥‥‥…・…‥‥‥…脚
となる。そしてlim〔Ⅹの=limAm=〔0〕
IR ト一、・ m.°1\`
注(13)(iff=if and onlyif もし、n次の正方行列〔A〕n n の
すべての固有傭人(‡=1,2,‥・、れ)の絶対値が1より小さい
Ⅴら,一1くらく1ときは、そしてそのときにかぎり、無限ベキ
級数1+A十〟+…は逆行列〔1-A〕 1に収束する。そして、
このときIim Am=0である。それは、あたかも、スカラーにお
In-ナCフ
ー162-
保険業の産業連関分析
さて、これまでの論述から
完出警(芸等芸)(波及効果)電器荒票芸)
〔芸:出 輝霊需≒に霊
=彊〕
が成立するO これが、まさに、表6.投入係数行列〔A〕=〔αのに照
応する逆行列〔I-A手1である。いま、これを記号的に書き表わせ
ば
〔IrATl=〔β,,]=I+Al+A2+〟+……=≡Am………柄
mこ0
となる。
そこで、この帥式を几行れ列に拡張し、一般化すれば
(外生的最終需要)(第1次波及効果)
1 0 … 0
α11 α竣'日 αlIl
0 1… 0
αn α包'‥ α加
0 0 …1
αd αれ2 ‥'α仰
〔I-A) 1=
いて、1αIく1であるとき無限等比級数1+α+α2+…か(1αrlに収束し、また1im。m=0であるのと似ているO なお、本
▼lh・ヽ.
文中の〔A〕2K2の固有値はAl=0.46、人2=-0.0L Robert So
low,``on the Structre of Linear Models''Econo柁etrica
Vol.20,1952,pp.29∼46,とくにp32,p36,p・38。
ー163-
保険業の腫業連関分析
(第2次波及効果〕(第3次波及効果)
α11 αu ‥.α171
α11 αu ‥' α1,1
αn α2.‥ α加
α2 α宏 ‥. α加
+・・‥‥
α畑.1α昭.‖ α珊
αd αmZ ` α刑
(総波及効果=逆行列係数)
β11βは…β1m
12
β盈 β :聖 ‥・β伽
……………………鋤
β趨 β咄…βM
となる。ゆえに、記号的に書けば、これもまた次のようになるO(ユ㊨
〔I-A〕 1=Imx勧+軋れ十傑×。+査×れ+……=三Am=〔βの几メれ
Mニ0
……‥……‥…=(321
以上が逆行列の数学的概念および経済学的概念の大要であるO
④ 保険業の逆行列係数
保険業のレオンチェフ行列〔IvA〕である表5.の逆行列〔I-A
ylを計算すれば表6.のようになるO
表7.を一見すれば直ちに明らかであるように、逆行列〔I-A手1
注(1㊥ 逆行列展開式¢飢まケインズ経済学における投資乗数m=(1-の 1
=1+α+α2+α3+…に照応する産業別最終需要乗数であるO 投
資Iは最終需要Yの構成要素(Y三∋I)であり、また、産業連関分
析がれ産業部門(多部門)分析であるのに対し、ケインズ経済学は
-一部門分析であるから、いうなれば産業連関分析か"generaltheor
ry''であり、ケインズ経済学は"special theory"であるといえ
るであろうO
一一1641
保険業の産業連関分析
表7 保険業の逆行列係数
(3)逆行列係数表〔I-A〕 1
買 っ た産 業
産 業
産 1
売 っ た産 業
業
2
生 命保 険業
J
韻 書保 険 業
産 業
m
71
産 業 1
β 11
β拉
β山
βb
βh
産 業 2
βn
β2
J J
β加
β加
生 命 保 険 業 J
損 害 保 険 業 m
β れ1
β爪2
β叫
β 簡
β Ⅷ
産 れ
β■
β融
β. J
β .M
β 個
業 0
0
1
0
0
もまたレオンチェフ行列〔I-A〕と同じパターンにな′るO
すなわち、生命保険業Jの行ベクトルiβ〃[(ノ=1,2,……,れ)
は、自部門β〝のみは1,残余の係数β〝(J幸ノ)はすべて0である。J
(0,0,……,0,1,0,……,0)。記号的に書けばβ〝=1、Ⅴ風、
蝕=0 (J幸の。
損害保険業仇の行ベクトル1β訂(ノ=1,2,……,のは、他の産
業一般とほとんど変わりはなく、β的ノ≧0、支配的にはβ刑j>0(j
=1,2,……,几)であるO
165-
保険業の塵 業辿僕「分析
III 保険業の産業連関分析
産業連関分析(投入産出分析)の戦略的基礎数は投入係数(r一定)
から導き出した逆行列係数〔I-A〕 1=〔βり〕である。
産業連関分析で取扱うテーマは(1)均衡産出量決定1YJl→1Ⅹ言、
(2)2時点間経済変動量i△Xllの要因分析△Ⅹ=B。・△Y+△B・Y。
+△B・△Y、(3)影響力係数、感応度係数、(4)最終需要項目別生産誘発
額、最終需要項目別生産誘発係数、最終需要項目別生産誘発依存度、
(5)総合付加価値係数、総合輸(移)入係数;(6)価格分析、および(7)雇
用量分析である。
そして、これらの産業連関分析を通じて、一定不変(仮定)の投入
係数〔αり〕から導き出された逆行列係数〔I-A〕-1=〔1-αり〕 1
が決め手的分析手段(analytical tool)となっている。
1.均衡産出量分析
(1)均衡産出量の決定
すでに述べたように、産業連関分析の主要特徴は
(1)最終需要(final demand)を経済活動の起動力と考えること、
そして
(2)この起動力(最終需要)によって経済部門間に誘発される直接・
間接の波及効果を分析・算定する、
ことにある。
すなわち、外生的に与えられる産業別最終需要1YJl によって外発
された産業連関体系が、その産業相互間の依存関係によって次々と波
及効果を誘発する。その直接的間接的産業別誘発額1XJl を計量的に
算定すること、これがまさに産業連関(投入産出)分析の本命的テー
マである。図8.参照。
166-
保険 業の確 砦連関分析
図8.投入産出構造
最終需要iYJl →投入係数〔αの →均衡産出量1射
αn
α竣
αH
α 1爪
α 1,-
α皿
α怒
α 21
α 2 In
α 加
0
0
0
0
0
αが止
α餌2
αm J
α
がm
α Im
q ml
α 舶
α 飢
α I榔
α
・
的
そして、最終需要列ベクトル1Y昌 から均衡産出量列ベクトル1
Xl を算定する戦略的基礎数が逆行列〔I-A〕-1=〔βのであるO
それは表7.に示されているOすなわち、最終需要列ベクトル日射 と
逆行列〔I-A十1=〔βlj〕から
β11βu
βが β加 … β1。
YI
Ⅹ1
βn β2
β表 β加 … β加
Y2
Ⅹ2
YI
耳
Y,n
Ⅹ爪
0 0
βが止 β爪2
1 0 ・‥ 0
β仇′ β柵 … β鵬れ
β畑 β。2 … 仇J β珊 … β珊
のように計算するO記号的に書けば〔I-A〕一つYI =〔βの1Yl
=1Ⅹ!。(19
ー167-
(ィ、lノ木 上のJl ⊥止問うナ=
ゆえに、与えられた産業別最終需要量1Vl に対するある産業乙 の
均衡産出量Xは
准=β1111+β-2)ち十…+β.荘+β川ym+…+β川端=∑βlJy……㈲
Jニ1
であるO
(2)保険業の均衡産出量の決定
生命保険業J と損害保険業肌の均衡産出量准、Xmは、それぞれ次
のように算出するO
(i)生命保険業J Xl=YJ
…\35)
(ii)損害保険業m X刑事β叫Y1
個式から明らかであるように、同じ保険業ではあるか、同じ最終需
要け吊 に対して、生命保険業/と損害保険業mの波及構造にはき/つ
立った相違が見られる。すなわち、損害保険業机は他の一般産業/と
同じであるが、生命保険業/はユニークな波及構造Ⅹ′=Y、すなわ
ち均衡産出量Ⅹ′=生命保険業に対する最終需要Y′を示している。言
いかえれば、生命保険業Jにおいては自分自身に対する最終需要量Y.
=直接的注文量Ⅴだけが産出され、他産業∼(J≠/)および自部PL一
からの間接的波及効果は一切ない。
(3)保険業の最終需要量構造〔YId〕
最終需要1℃[部門は、全国産業連関表の場合は、通常、家計外
消費支出Yl、家計消費支出Yi2、政府消費支出Y。;回内固定資本形成
㌦、在庫純増Y-5;輸出℃6、輸入(控除)Y7、の7項目に分けられて
いるO地域産業連関表の場合は、これに移出Yi8と移入Yg(控除)が
加えられる。
注(19 公式的から明らかであるように、逆行列〔I-A〕 1=〔βのは、
与えられた最終需要列ベクトルlYll を均衡産出量列ベクトルiX
[に変換するための行列に他ならないO
-168-
保険∵業の1稚二業近間分析
保険業の最終需要は、生命保険業J も損害保険業mも、ともに次の
ようになるO まず、生命保険業Jの場合は、回内および外国の家計が
契約すると考えられるから、Y11=0、YL2>0、YL。=0;YL4=0、
Yl,=0;YL6≧0、】YL71≧0、Y18≧0、IY191≧0となる。
他方、損害保険業刑の場合は、国内・外国の家計(家計保険)およ
び外国の企業(企業保険)か契約するから、1㌦1=0、Y,n2≧0、YmB
=0;Y融≧0、Ym6≧0;Ym6≧0、E Y,れ汀I≧0;Y鵬≧0、そして
IY鵬i≧0となる。
すなわち、両者は構成内谷は相違するが、形式は一致するO構成要
素は生命保険業が国内・外国の家計保険のみであるに対し、損害保険
業は国内・外国の家計保険および外国の企業保険より成っている。
ゆえに、最終需要構造〔Yのは
Y11Y遁 Yユ。YⅡY遁Y】6Y】8 PY,, 一Yl。
Y21Y22 Y2,Y2B
〔Yの =
Y2,YぁY28 -Y27 -Y2,
0 V2 0 0 0 YL6YL8 -Y, -Y2,
O Ym20Ym4Ym5YL6Y鵬 -Ym7 rYm9
YnlYn2Yn3YmYn5YL6Y鵬 -Yn7 rYn
のような形をとる
ゆえに、㈲式は
れ 几 9
XJ=∑ 勘JYJ=吾1′亨,βりⅤ′
Jニ1
となり、㈹式は具体的には次のようになるO
169
‥…‥・(361
保険業の産 業ノ虫!幻分析
(i)生命保険業′ Ⅹ′=折′
ニYJ2+Y′6+Y′8-(YJ7十Y′9) …㈹'
れ g
(ii)損害保険業仇 Ⅹm=J亨,菩1βりur
=Ym2+Y鵬+Ym5+Ym6+Y7n8LYm7-Ym9
2.生産変動量の要因分析
(1)生産変動量△X.の要因分析
2時点の産業連関表が与えられているときは、産業連関分析によっ
て、経済成長の要因を(1)技術構造の変化による変動部分〔△月・y〕、
(2)最終需要の変化に基因する変動部分〔月。・△y〕、およびて3)技術構
造の変化と最終需要の変化の協働に基づく変動部分〔△β・△y〕の3
つに分離することができる。
いま基準年次の産業連関逆行列表を〔。βり〕=塙、最終需要列ベク
トルを1。Y言 =Y。、生産総額列ベクトルを1。Ⅹ言 =X。で表わす。
他方、比較年次のそれらをそれぞれ〔1β.J〕=月1言11日 =㌫言
1g言 =ズ1とする。このとき、既述のように
ガ。二月。y。、 gl二月lyl
なる関係式が成立する。そこでgl二月1,yl=△Ⅹ,月1-月。=△B、
yl-y。=△Y とおけば、次の関係式が成立する。
i△Xi=〔β。封△Y「十〔△8月△Yl+〔△B月△YI…・個の
ここで1△Xlは基準年次から比較年次にいたる期間の生産高の変
化=増減を示す。〔△B〕はその期間における逆行列係数の変化、す
なわち技術(構造)の変化を表わす。またi△Yl は最終需要の変化
である。
したがって、佃式は生産高の増減1△勘 を(1)技術構造の変化によ
170
イ某険 業のノ寸 業通関分析
る変動部分〔△β〕iY。〕と、(2)最終需要の変化に基因する変動部分
〔B。つ△Yi と、(3)両者の交絡相乗変動部分〔△B〕1△Y[の3
つに分離する式である。
もし、最終需要列ベクトルiYi を、家計外消曹支出、民間消費支
出、一般政府消費支出、固定資本形成、在庫純増、および輸出に内訳
すれば、各産業の生産増減1△Xll をこれらの内訳的最終需要Ⅴ 別
要因に内訳することも可能である。こうして要因分析にとって産業連
関分析はまことにすぐれた研究方法である。
この帥式を、念のため、詳しく書き表わせば次のようになる。
生産額 最終需要
逆行列係数行列
ヘクトル ヘクトル
。β11。βu oβ11。β1m・ βl。
。β皿。β2 。β2上 。β2,. .々2れ
(1)
0
基
0
準
年
〔。βの・
0 0 1 0 0
。β叫。βmj 。βmJ 0β脚 ‥ β胴
次
。βnl Oβ山 0βnZ 0β…㍉‥+/タ…
1β111βu・1βH
1β1,n…1βln
lβa lβ2・ 1β。J
lβ1m・.1β2n
(2)
比
O
O
O
lβ明11β如 .βml
較
O
O
lβ爪的・・1βM。
年
次
1β。,1βポ2・1β"′ 1βnm…1β。れ
一171-
保険 葉のノ車1連関分析
ゆえに
】△Xll=I,Ⅹバ ー」。X′[
】△YJl=ilYバ ー】。YJl ニ
△β1, △βは ‥ △β.′ △β1桝 … △β1。
△βn △β2 ‥・△β2【△β2m ‥ △β2n
〔△βり〕=〔1β。〕-〔。β。〕=
0 0 0 0
△β爪1 △β爪.・△βm′ △βmm
△βⅧ
△β信 △β。Z・ △βが △β川
′‥
となる。したがって郎)式は
(最終需要の変動による変動部分)
㌦1. ㌔12 。β1′ 。β1m・‥+β1。
㌦a Cβと 。β2上 。β。爪 β2。
0 0 1 0 0
㌦机.0(ヲ鵬 。β叫 。β間 β徹
㌦ゎl qd。2 ㌔,.′ 。βnm ∂…
1172
保陥㌧L の 所_ 某近間分析
(技術構造の変化による変動部分)
△β11△βは … △β= △β1m‥・△β‥"‥・△β1"
oY
△βa △β忽 …△βiJ △β2m‥・△β2m…△β紬
。Y
0 0 0 0 0 0
OY
△β叫 △△戒 … △β瑚 △β椚所・‥△βmm・‥△β耶
。Y
△β叫 △β。2 …△βn′ △βれ椚‥・△β。椚‥・△β痢
oY
(技術構造・最終需要の変動による相乗変動部分
△β11△βは … △βリ △β1飢・‥△β1。
△βn △β2 … △βゴ △β2痢‥・△β2m
0 0 0 0 0
…仰
△βd △β椚2 … △β勅 △β椚れ・‥△β那
△β。1△β爪。‥・△βれ′ △β相…△β棚
となるO
ゆえに産業乙 の産出量の変動呈△Xェの要因分析は
△准=ノ草1品誼㍑+三△βlJYノ+J葺△βェJ△YJ ・欄
ノこ1
(芸芸慧=(警禁慧鵠+(豊笠票一鴇+(誓讐誉:荒霊宝芸芸莞)
となる。
(2)保険業の産出額変動量の要因分析
173-
保険業の産 業連関「分析
生命保険業/の産出額△Ⅹ′の要因分析は抑式から
△XJ=△Yl
である。すなわち、生命保険業Jの産出額△Ⅹ′変動量は最終需要変動
量△Y声こ等しい。
他方、損害保険業仇のそれ△Xmは、㈱式と全く同じであって
△Xm=J互β椚ノ△YJ+貴△β爪7YJ+ノ草,△β爪′△YJ ……・㈹
となる。
そこで、以下において、具体的実例を昭和40年(比較年次)および
昭和35年(基準年次)の全国産業連関表にとl上 5年間の産業別経済
成長額の要因分析を試みれば次のようになる。(1疎
まず、表8.(1)は昭和40年全回産業連関表〔lB〕および昭和35年仝
仙座業連関表〔。B〕から作成した〔△βの、1。YJl、1△Y‖
および1△Ⅹ言 の表である。
さて、これら〔お〕、〔△βの、1。YJl およびつ△Y言を帥式に
代人して生産変動額1△Ⅹ言 の要因分析すれば表8.(2)のようになる。
内生部門産業小計でいえば、昭和35年から昭和40年にいたる5年間の生
産額増分32兆9672億円のうち37兆6590億円が最終需要変動による増加
部分、2兆3477億円が技術構造変化に基づく減少部分、そして2兆34
77億円が最終需要変動技術構造変動相乗変動による減少部分である。
見られるように、5年間の生産絨増加分の全部が最終需要増加分16
兆4103億円によって誘発されたものである。技術革新の結果、技術構
注(畑 残念ながら、これは保険業を分離独_、上させた産業連関表ではない。
保険業は10部門表においても56部門表においても、商業や金融業や
不動産業とともにグルーピングされている。 近日中に保険業を独立
の産業として、しかもこれを′ヒ命保険業と損害保険業に分けた「保険
笠の産業連関表」を作成し、研究発表する考である。
一一174一
保険業の産 業連関分析
造変化部分払勘ノ〕の要素△βのま支配的にはマイナスとなり、ために
技術構造変化に基づく変動部分払βの・。Al および最終需要変動・
技術構造変化相乗部分払βり〕l△YJl は、ともにマイナスとなって
いるO両者合計で実に4兆6944億円の減少になっている。
内訳的には、(内生部門)産業は2つのグループに大別することが
できる。財貨=物質財貨(material goods)を生産する第1次産業
・第2次業と用役=非物質財(immaterial goods、SerVices)を
生産する第3次産業の2群である。前者は技術革新=生産性向上→中
間需要(原材料)節約型の産業部門であるが、後者はそれが困難な産
業部門であるO この間の事情は表8.によく表われている。生産額変動
の要因分析公式即式
j△Ⅹ言 =〔。βlJ〕j△ul +払βlJ〕j Jの +払仇J〕1△YJl
において、支配的には、第1グループは
(+)=(+)+(-)+(一)
の形をとっている。これに反し、第2グループは
(+)=(+)+(+)+(+)
の形をとっているO これは両者の性格をよく反映している。
ついでながら、電気・ガス・水道業は、通常、第3次産業に配属さ
れている。ところが表8.から見れば、それは第3次産業型ではなく、
むしろ第2次産業型になっている。
この生産変動額の要因分析から、昭和35年∼昭和40年の5年間の日
本経済は(1)最終需要のいちぢるしい伸びと、(2)めざましい技術革新を
特徴としていたことがわかるO このことはとくに第2次産業において
著しい。
さて、保険業の生産変動額の要因分析は次のようになるO
(i)まず、生命保険業上の生産変動額要因分析公式は帥式によっ
ー177-
保険業のJ小業連関分析
て△Ⅹ∼=△Ylであるから、それはつねに
△Ⅹェ=〔。βェノ〕1△Y言 +〔△βり〕1詳言 +〔△仇ノ〕1△1吊
(±)=(±)+(0)+(0) (複号同順)
のようなユニークな構造式となる。したがって、それは要因分析の3
構成部分のうち、(1)最終需要変動による変動部分〔。′β′ノ〕1△Y昌
のみがあって、(2)技術構造変化変動部分 〔△βの1Vl および(3)
技術構造変化・最終需要変化の相乗変動部分〔△βの1△ulはつ
ねに0である。しかも、〔。βの1△Y言 も生命保険業Jの行の逆
行列係数βIJの特殊性βfJ=1,βり=0(l幸J,ノ二1,2,…,几)か
ら、つねに
△Ⅹ′=〔。βり〕1△YJl =△Y′
であるから、生産変動額△Ⅹ古土最終需要変動績△Y′そのものである。
(ii)他方、損害保険業仇のそれは㈹式に示されているように、
一般に〔△βの.日射 ≠0、〔△βの1△Ⅴ[≠0である。しかも、
それは仲介サービス業であるから、第3次産業型なかんずく金融業と
全く同じパターンをとるに違いない。すなわち
れ 11 れ
△Xm=ノ互0β飢ノ△YJ+ノ芋l△β射(勘+ノ亭1△βml△YJ
(±)=(±) + (+) + (±) (複号同順)
である。
保険業の生産変動額要因分析式は、可能性としては
(i)生命保険業J (±)=(±)+(0)+(0)
(ii)損害保険業m (±)=(±)+(+)+(±)
であるが、現実的(傾向的)には
(i)生命保険業J (+)=(+)+(0)+(0)
(ii)損害保険業肋 (+)=(+)+(+)+(+)
であるO したがって、損害保険業mは第2グループ型をとり、生命保
-178-
保険 業の産 業連関分析
険業Jは独特の型をとっているが、基本的には第2グループ型と考え
てよいO
3.影響力係数、感応度係数
産業連関体系の1産業に対する1単位の最終需要によって誘発され
る波及効果係数(指数)は、理論的にも実践的にも役に立つ指標であ
る。それには影響力係数と感応度係数の2概念がある。前者は能動的
波及効果係数であり、後者は受動的波及効果係数であるJl乃
影響力係数にも感応度係数にも、それぞれ、第1種、第2種、およ
び第3種の3つの係数がある0 第1種係数には外生的に与えられる最
終需要1単位が含まれている。第2種係数にはこの外生的初期需要1
単位は含まれていない。第3種係数は当該産業Zの自部門内における
波及効果を全部オミットした、純粋に他の全産業ノ(ノ=1,2,…,花,
i辛目に及ぼし与える波及効果係数(第3種影響力係数)、または
他の全産業から及ぼされ与えられる波及効果係数(第3種感応度係数
)である。
これらの諸係数もまた逆行列係数〔I-All=〔βのから計算さ
れる。
(1)影響力係数
産業ノに対する最終需要のみが1単位で、他の全産業に対する最終
需要がすべて0であるとき、記号的に書けばYl=1、VYた(克≠ノ
)、Yよ=0であるときの産業ノの能動的波及効果係数を産業ノの影
響力係数とよぶ。
たとえば第1種影響力係数についていえば
注(17)影響力係数(index of the power of dispersion)
感応度係数(index of the sensitivityof dispersion)
ー179-
保険∵業の産業連関分析
β11β受 …… β1れ
YJ =1
βJl βJ2 ‥‥‥ βJれ
Yた= 0
0≠J)
β瓜 βが2 …… β間
のとき、このYJ=1、Y農=0 (元手のによって直接的・間接的に
誘発される生産される生産係数、それが産業Jの影響力係数中こ他な
らない。
(丑 第1種影響力係数
産業Jの第1種影響力係数勘は、逆行列係数〔βのの第J列の列
和平均膏Jを、逆行列係数βりの全平均岳で割って求める。(1㊥
ル
薫βヱJ
BJ
れ ▼l
長.写1βが
白
‥‥‥‥・‥‥‥・㈱
几 ×れ
11
(注)J亨1男=花
第1種影響力係数が単位1を超える産業は自産業を含む全産業に対
する影響力の大きい産業である。これに対し、係数が単位1に及ばな
い産業は影響力すなわち能動的波及効果の小さい産業である。表8.に
示されている9産業について言えば、製造業と建設業が単位1をオー
ヴァしており、商業、金融・保険・不動産業およびサービス業などは
単位1に満たない。
さて、㈱式によって保険業の第1種影響力係数を求めれば、
注(18)巳 坤rregaardRasmussen、StudiesinInte,-SeCl。,al
Relations、Amsterdam、1956,p.134
一180-
保険業の産業連関分析
(i)生命保険業よ
,l
主βl′
71
・日ト
………………‥= ㈹
l1 11
1芋1芦1βlJ
几 ×れ
(ii)損害保険業m
,l
互βlm
71
・.エ
= れ れ
‥=……………・㈹
ノ亭l主乱J
n \71
である。
保険業の性格上、勘も礼もともに小さく、第3次産業なかんずく
金融業のそれに似て、単位1未満と考えられる。すなわち
0 く り(7)<1
0 < 兢)<1
であるに違いない。
ただし、第1種影響力係数のみならず、保険業の第2種および第3
種の影響力係数も、ともに小さい。
衷9.昭和40年全国産業連関表
第1種 影響力係数・感応度係数
産
業 係
農 林
・ 水 産 鉱 製 造 建 設 電 気 ・ ガ ス ・水 道
商 業 ・ 金 融 ・保 険
運 輸 ・ 通 イ言 サ ー ビ ス 業 ・ 公 分 類 不 数
影 響 力 係 数
業
業
業
業
業
業
業
務
明
ー181-
0
0
1
1
0
0
0
0
1
.9 16
.92 0
.33 9
.28 3
,88 1
.74 6
,87 2
.78 9
.25 4
感 応 度 係 数
1
0
2
0
0
0
0
0
0
.0 1 7
.6 9 8
.8 5 1
.6 1 4
.6 6 3
.9 8 4
.8 4 6
.6 5 3
.6 7 4
保険 業の産 茸、,セ性いけ持
② 第2種影響力係数
第2種影響力係数刺ま、逆行列係数〔βのの対角要素β誹1ら1を
引いて作った準逆行列〔βJJ-1〕(これを第2逆行列とよぼう)につ
いて、第1種影響力係数と全く同じ要領で算出する。
すなわち、第2逆行列〔β〃一1〕
β11-1β12 … β裏
βlJ ‥・βln
βn β云rl‥・βゴ β2m ‥・β。。
(第2逆行列)
〔B〕。こ〔βJJ-1〕
0 0 1-1 0 ‥・0
βml 乱。… βれ′ β蒜1‥・β畑
β。1 βの2
β。ノ β。刑 ‥・βれ。
から次のような公式によって算出する。
7l
.互βり 1
喜βり 1
(2)
㈲
りJ =
(ノ草景βり一犯) 砲
JI 、 ′l
(注)革1拷二九
ゆえに、保険業の第2種影響力係数槽榔ま、それぞれ
(i)生命保険業J
i互βlJ 1
71
主βl「1
花B2
nll
(え.互βlJ一花)
Jl \ 71
ー182-
㈹
保険業の産 業連関分析
(ii) 損害保険業m
ll
∑ β用一一1
n
1こ1
∑β川一1
1こ1
寝2)=
(三三βり一花)
乃B2
Jこ1ェニ1
/J ヽ\JI
である。
③第3種影響力係数
第3種影響力係数は、逆行列〔I-A十1ニ〔βのの対角行列を全
部0とおいて作った準逆行列〔βり-βり〕(第3逆行列)
0 β通 … βlJβ1m… β1れ
βn O … β21β2m… β。れ
(第3逆行列)
〔B〕。=〔AJ一βJJ〕=
0 0 … 0 0 … 0
β仰1β椚2 … β脚′0 … β伽
β鵬 β昭 … βね′βnm… 0
について、第1種および第2種の影響力係数と全く同じ手法で計算す
る。
(亘βり-βの
lこ1
(3)
りJ =
Il
菩β11 βJJ
……‥…・㈹
IIIl
(,亨11三βり 吾βの れB3
mX几
(注)ノ葺可3)=れ
保険業の第3種影響力係数は
(i) 生命保険業J
ー183-
保険業の軽業連関分析
m
主βl「β〝
曹=
1l
.亘βェ「β〝
=‥㈹
nれ れ
(l三主βェJ ノ互βの 鴫
71×れ
(ii)損害保険業m
沌
主β川 βmm
璃)=
m-βmm
11
(喜J姜βり一鉢) 鴫
(2)感応度係数
すべての産業に1単位の最終需要ⅤY、u=1があったとき、た
とえば
β11 β12 … β1J β1,け・= βln
0 0
β椚ユ β椚2
1 0 ‥・0
β椚′ β椚椚+・= βm"
β血 β"2 ‥・βnJ β九m・‥ βれ。
のとき、産業乙 に直接的・間接的に誘発される生産係数、それが産業
乙の感応度係数である。したがらて、.これは受動的波及効果係数であ
るといえる。いうなれば感受性指標である。これにもまた3つの種類
がある。
① 第1種感応度係数
産業iの第1種感応度係数は、逆行列〔I-A十1=〔βのの第乙
ー184-
保検業の産業連関分析
行の行和平均B.を全平均Bで割って求めるO
11
ノ互βり
れ Bi
♂ェ(1)=
Il
Il
J葺き、βり 白
花 I(.柁
(注)∑JJ)=れ
lこユ
保険業の第1種感応度係数は
(i)生命保険業/
n
ノ茎β′ノ
(1) 花
lTJ
71 m
菩善βり
B′ 1
・…・(511
百 m膏
り ㌧、′!
(ii)損害保険業m
Il
菩β扉
‥t521
れ れ
J互`三βェj
れ ×花
第1種感応度係数の大きい産業は製造業と農林漁業である。表9.参
照。これは他の産業の好況・不況を、よきにつけ悪しきにつけ、大き
く受ける感受性の強い産業群である。これに反し、建設業・サービス
業などの感応度の低い産業群は、他の産業から余り影響されない、感
受性の弱い産業であるO
保険業は第3次産業なかんずく金融業と同様に、感応度係数の小さ
い産業である。とくに生命保険業はそうであってJil)=藷二すぎな
い。生命保険業に対する中間需要はなく、家計からする最終需要Y′
1185一
角 険業の産 業連関分析
のみが需要であるからである。したがって、他の産業の景気変動は直
接的には生命保険業界には影響を及ぼさず、景気変動→所得変動一→生
命保険契約の増減という迂回的影響を受けるにすぎない。
これに対し、損害保険業のそれは、海上保険や運送保険などは内生
部門産業から直接影響を受けるであろう。他方、家計保険はさきに述
べた生命保険業のそれとやや似た動きをするであろう。
いずれにしても、保険業の感応度係数は、大きくない。これはただ
に第1種感応度係数のみならず、第2種および第3種の感応度係数に
ついても妥当する。
② 第2種感応度係数
産業iの第2種感応度係数は、さきに第2種影響力係数で作った第
2逆行列〔βェl-1〕から、第1種感応度係数と全く同じ手法で算出す
る。
71
∑βり一1
J こl
1l
-、∴・1
(2)
……………‥郎)
Jェ (,葺.葺βり一の
花B2
花×乃
(注)三Jヲ)=乃
lこ1
保険業の第2種感応度係数は
(i) 生命保険業J
O
71
0
(2)_
_ こ= O
け′=(三三βり一花)
ノニ11ニ1
B
乃 ×几
(ii)損害保険業m
ー186一
……………餌
保険 業の14 業連関分析
Il
∑β扁-1
ノこ1
れ
∑βmJ-1
Jニ1
・・.ご
且董仇「Ⅷ)
…………・個
几B
花 ×乃
見られるように、生命保険業の第2種感応度係数は0である。これ
に反し、損害保険業のそれは0<売)<1であろう。そして、それは
金融業のそれよりも小さいに違いないO
③ 第3種感応度係数
産業iの第3種感応度係数は、第3種影響力係数のところで作った
第3逆行列〔βり一βェヱ〕から第1種および第2種の感応度係数と全く
同じ要領で導き出す。
几
(∑βり-βり)
Jこ1
れ
三βり-・′ら
Jニ1
(3)
trJ =
‥‥‥‥ 56-
Il
(.蔓真βヱ1-菩βり) 乃B。
Jl \/I
(注)王君これ
Iニl
保険業の第3種感応度係数は
(i)生命保険業J
O
几
Il
J′=(三三βIJll茎β′.) 践
ノこlJこ1
rlXrJ
(ii)損害保険業机
ー187-
= 0 ………・仰
・保険業の産業連関分析
J芋,βmJ βmm
∑βmJーβmm
Jニ1
・‥㈹
Jm(3)
善主βり 主βll
mB3
fl、\円
である。見られるように生命保険業の第3種感応度係数もまた0であ
るO これに対し、損害保険業のそれは0ではなく、0と1の間にあるO
そして、これもまた金融業のそれよりも小さいであろうO
4.最終需要項目別生産誘発額、生産誘発係数、生産誘発依存度
数終需要1Y言 は全回産業連関表では7項目、地域産業連関表では
9項目から構成されている。
全国産業連関表7項目とは、家計外消費支出YJl(=CJl)、家計消
費支出も2(=q2)÷一般政府消費支出V3(=CJ。)、国内資本形成
V4(=IJl),在庫純増u5(二も2)、輸出YJ6(=池)および輸入一℃7
(ニーMJ)である。
他方、地域産業連関表では上の7項目のほかに移出u8(=坊)、
および移入-Yj。(二一DJ)が加わる。
ゆえに最終需要Ⅴは
全国産業連関表Y(れ)=ul+u2+V3+V4+V5+V6斗7
地域産業連関表 Y(r)=YJl十℃2十℃。十℃4十V5+u6-耳,+V819
のように内訳される。
(1)景終需要項目別生産誘発額
①最終需要項目別生産誘発額
そこで、均衡産出量算出式㈹式(167ページ)にこの最終需要項目
別ベクトル1羊の を当てはめれば
iXl/[=〔I-A〕 1日晶 =〔βの1℃バ …………‥醐
ー188-
保険業の産 業連関分析
によって、最終需要項目別均衡産出量1Ⅹ詔 を決定することができるO
詳しく書けば(1㊥
11β通… βln
YlnY12Y冶Yh
aβ2・‥ β2n
Y21Y22Y2,Y2h Y2,Y2STY27Y2B Ya,MY2,:Y2
n1βれ2… βnn
=F1
Y.,Y鳩-Y.7Y18Y18-Y,,:Y.・
d Y。2Y,J n4Y,6Y.,-Yn7Yn7Yn8-Y鵬:Yn
ⅩlZ Xu
XM X遁 Ⅹ鳩一Xl,Ⅹ選一Ⅹ遁
Xを Xa
Ⅹ激 Ⅹ5 Ⅹ葛-Ⅹ訂 Ⅹ功一Ⅹ為
X.2Ⅹね。 X。4Xn5Ⅹ"6-Ⅹれ7X。8-Ⅹ鵬
のように展開される。右辺に見られる均衡産出量行列〔 :〕のう
ち点線:の左側は最終需要項目別均衡産出量〔Xの を示し、右側はそ
の行和X.=∑Xlrを示すO
このとき佃式の右辺の行列〔Ⅹのにおける列ベクトル1Xlr[がすな
わち本項のテーマである最終需要項目別生産誘発額であるO そして、
各entryであるXl/が産業別(i)最終需要項目別(f)生産誘発額
(均衡産出量)に他ならない。
ね
Xが=菩β㍉新 (ノ=1,2・………,9)
9 9 Il
Xェ=′亭1Ⅹl′=r亨lj写1鋸YJ′
(わ保険業の最終需要項目別生産誘発額
注(1㊥ 地域産業連関表における移出Y8と移入Y轟Lで、全国的に集計す
れば∑Y8-∑Y。=0となって、全図産業連関表になるOゆえに、地
域産業連関表が一般的産業連関表であり、全国産業連関表が特殊的
産業連関表であるといえる。
-189-
n 険業の産 業連関分析
保険業の最終需要項目別生産誘発額は表7.逆行列係数表〔βのに㈹
式で示した最終需要行列〔ur〕を、㈹式の公式にしたがって乗け、保
険業について求めればよい。
β11 日 β〟 β1れ …β1"
0 ‥ 1 0 … 0
βml … βmlβ,間 …βmn
βnl ‥ βd βnm …βれれ
Y.1Y,。 Y13 YⅡ Y遁 Y16 -Yl, Yl烏
X
Y19
YI
O YL2 0 0 0 YL6-Yl,YL8 -Y19
Y。
0 Ym。O Y融 Yn5 YmB-Y,n7 Ym8 -Ym。
Y
Ynl Yn2 Yn。Yn4 YnS Yn6-Yn7 Yn8 -Yn,
Xll
O
Xu
X娼 XⅡ
Ⅹ遁 X15 -Ⅹ17 Ⅹ退 一XD
YL2 0 0 0 YL6 一一YL, YL8 -YL9
0 Xm2 0 Ⅹm4 Ⅹれ5Ⅹ爪。一Ⅹ叫 文叫 -Ⅹ印。
Xnl Xゎ2 Ⅹ姻 Xn4
Ⅹ瘡 Ⅹ鵬TXm7 Ⅹ鵬 -Ⅹ。,
-190-
J
Y
m
Il
/
Ⅹl
YJ
Xm
Xn
保険叉の薙業.連関分析
なお、支配的にはYJ=YJ2であるO
(i)生命保険業′
生命保険業昌まきわめてユニークな産業であって、
βり = 0 (ノ=1,2,・‥,れ;J幸の
βJJ = 1
YJ2> 0 (Y′6,Y′7,YJ8、Y′9)≧ O
Yね ≒ YI
(¶1、Y∼3、Y`4、Yg5)=0
という構造をもつ産業である。したがって、その最終需要項目別生産
誘発板Ⅹ〟は㈱式により
範′=言1βりⅤ′=Y′′(!二2,6,7,8,9)
9 11
XL=,互,亭1βL]YJ/=YL2+Y16JLYI7+Yl8Hlg
となる。そして、支配的にはⅩ′ ≒YJ2。
(ii)損害保険業m
損害保険業別の最終需要項目的生産誘発額Ⅹれ/は、Ⅹ椚/は、生命保
険業J と一般の産業Z との中間的性格を帯びているO すなわち、最終
需要行ベクトルj Ym月 が
Ym2> 0、Ym。>0,Yれ5>0
(Y巾。、Y姉Ym8.Ym9)≧0(Yml、Ym3)=0
である点においては生命保険業と同じであるが逆行列係数βmj(ノ =
1,2,…,れ)が(0,0,‥・1,0,‥・,0)ではなく一般産業iのそれ
と同じである点においては他の産業と変わりないO ゆえに、損害保険
業仇の最終需要項目別生産誘発額Ⅹ勒/は
Ⅹ朔′=J互βmlYJ/ (!=2,4,5,6,7,8,9)
9 9 n
Xれ=菩Ⅹ〟=昌昌β叫Ⅴ′(′=2,4,5,6,7,8,9)‥…‥欄
=Ⅹm2十Ⅹ椚4+Xm5+Ⅹ鵬-Xm7+Ⅹ鵬-Ⅹ鵬
-191-
保険 業の産 業遵閲分析
となるO
(2)最終需要項目別生産誘発係数
(む最終需要項目別生産誘発係数
項目別最終需要合計Y′(=亘㌦、列和)でさきに算出した妓終需
Jニ1
要項目別生産誘発紬Ⅹ〟を割った値
Xlr ∑β㍉新
- Jこ1
…(綿
.llJ!
Yr 至YJr
Jこ1
を座業別表終需要項目別生産誘発係数β.!とよぶ。
そして、Ⅹ-′・の列軋∑XJ′= XrをⅤ′の列和1号1Yけ=Y′で割ったもの
lこ1
Ⅹ′ l写1Ⅹヱr
‥㈹
・LJ・′
Y/ ∑YJr
ノニ1
か最終需要項目別′主産誘発係数である。
とくに、最終需要が投資(=国内固定資本形成二設備投資1Jl二℃。、
在庫純増=在庫投資も2=u5)であり、産業数花を1としたときの生
産誘発係数βが実にケインズの投資乗数に他ならない。
②保険業の最終需要項目別生産誘発係数
保険業の最終需要項目別生産誘発係数巧/および紬は個式、鵬成お
よび個式、㈹式から求める。
(1)生命保険業/
生命保険業/の最終需要項目別生産誘発係数仇′は咽式と㈹戌から
XJ
Y′r
・111/
Y! Y!
そして、
Ⅹ′2 Y′2.X′
Y Y2 Y2
となる。
-192-
(!=2,6,7,8,9)………㈹
保険業のヰ 紫檀閲分析
(ii)損害保険業m
損害保険業仇の最終需要項目別生産誘発係数伽は㈲式と個式から
Ⅹふ′J亭1βmノYJ′
・一-1巾!
…‥㈹
Yr ∑YJr
Jこ1
となる。
(3)最終需要項目別生産誘発依存度
(彰最終需要項目別生産誘発依存度
最終需要項目別生産誘発額行列〔Xの(㈹式190ペーのの各要
素恥を産業別産出量Ⅹ`で割った値、すなわち行構成比
おけ =
Ⅹ-/
_」葺β㍉臣
…………・㈹
Xl J芋1乱Ju
を産業別(Z)最終需要項目別(J)生産誘発依存度♂Jdとよぶ。
g
そして、′互Yり=YJであるから
m
准1+准2+……………+Xig=′亘Xlr=Ⅹェ
である。ゆえに
Ⅹ‖ Ⅹヱ2
Xi
Xェ
Xz息
=-=勘1+勘2+……‥「+お一g=1
Xl
…㈹
となる。
(2)保険業の最終需要項目別生産誘発依存度
(i)生命保険業J
生命保険業Zの最終需要項目別生産誘発依存度おけは㈹式および冊式
から
Ⅹ汀
の′・ XJ
仔1)
-193-
f-1⊥ 接「上 の 月 _ 近 間 分村
♂′2+勘6-お′7+♂0-の。=1
勘。≒1
であるJ
(ii)損雷保険業椚
損雷保険業机の最終需要項目別生産誘発依存度ざれ/ほ、㈲式と郎)式
により
ざれ/
Ⅹm′ 喜βmJu/
Xm J互βmノⅤ
ざm2+ざm4+おれ5+♂m6-ざm7+針鵬-♂m。=1
である。けれども、生命保険業の場合とは違い、-一般に♂m2≒1で
はない。
-194-
保険業の産業連関分析
5.総合粗付加価値係数,総合輸入・移入係数
粗付加価値係数には個別粕イ寸加価値係数と総合粗付加価値係数の2
種かある。
他方,輸入係数または移入係数にもまた個別輸入係数と個別移入係
数,および総合輸入係数と総合移入係数の2種がある。
本項では総合粗付加価値係数,総合輸入係数および綺合移入係数に
っいて研究する(ぎ)
(1)総合粗付加価値係数
ある産業iの総合粗付加価値係数とは、産業Jに対する1単位の外
生的最終需要によって、直接間接、必要とされる粗付加価値量を言うO
ゆえにそれは総合粗付加価値率とよんでもよい。
総合粗付加価値係数在 は個別(粗)付加価値数UJと逆行列係数
〔βり〕とから計算される。
① 個別粗付加価値係数
(i)個別粗付加価値係数
産業iの個別粗付加価値係数中土、その産業ノの粗付加価値VJ
を産出総額ズノで割って求める。
㈹
ところで、産業連関表では、営業余剰(利潤)を調整項目として、
投入総額(∑ガリ十㌧)が産出総額ズノに等しくなるように作成さ
ェ=1
れている。
帥 産業連関表における粗付加価値は束の6項目から構成されている。
家計外消費支出Vl、勤労所得坑、営業余剰(利潤)V3、資本減耗引当
て坑、間接税(除関税)塙、補助金(控除)坑。粗付加価値(gorss
ヽ
value added)の粗は資本減耗引当てを含むときに冠せられる。資本
減耗引当て(allowance for capitalconsumption)を除いた残余の
5項目小計を純付加価値(net value added)とよぶ0
-195-
保険業の産業連関分析
ズ1ノ+為ノ十品ノ+・‥より+VJ二gノ
ゆえに、投入係数αリと粗付加価値係数Uノとの間には次の関係が
成立するO
αり十αZJⅥ3ノ+‥・+αだノ+むノ=1 ………………… ㈹
この式でαりは非負0≦αりであり、他方中ま正0くのノであるO
.1
ゆえ堅1αり<1であるから、さきに述べたSolowの条件-産出方
.程式の非負解の十分条件-か成立する。
(ii)保険業の個別組付加価値係数
(イ)生命保険業の個別粗付加価値係数U′は
Ul
VJ
V′
㈹
.Y.・ 1㌧
である。そして、投入係数αりと粗付加価値係数叫との間には
αlJ+α2′+……+αの 十m=1
なる関係かある。
何損害保険業においても事情は全く同様であって、その個別粗_付
加価値係数umは
Um二㌢ ………仔㊥
α1け汁α2′n+……+α融が十Um=1
である。
① 総合粗付加価値係数
(i)総合粗付加価値係数
総合粗付加価値係数有は各産業の個別粗付加価値の行ベクトル
i"1,U2,・‥,Umlを逆行列係数〔βり〕の左側から掛けて求める。
β11β12‥・β1。
β21β22…β2。
勅「=演の・‥訂
…………… 開
βnlβれ2…βnn
…196一
保険業の産業連関分析
すなわち、産業ノの総合岨加価値係数有は
'I
㈹
¢ノ=Ulβ1ノ+U2β2ノ+…+Unβ。ノ=∑むよβり
l=1
となるO
ところで、先に述べたように、粗付加価値VJは6項目から構成さ
れている。佑=坑ノ +佑ノ十佑ノ 十仇ノ +佑ノ +坑ノ。ゆえに、個
別粗付加価値係数UJもまた6項目からなっている。ひノ=Ulノ+U2ノ+
U3ノ+U4J+U5J+U6J。
そこで、開式を次のように内訳けすれば、総合粗付加価値係数¢ノ
と項目別総合粗付加価値係数¢gJか算出できる。
Ul U2 ‥'のn
Alβ2…β1,と
q2 均2'=l Ulm
β1戌2…β2n
乙セ1物2.‥ U2R
〔少の7×。
………… ㈹
的1鴫2 日`U3m
的1均2'H U4れ
埼1鴫2 ‥`の5m
βnlβれ2…βnn
礪1鴫2 ‥'ひ671
実際の産業連関表では、そのうち、総合粗付加価値係数¢ノと勤労
所得総合粗付加価値係数¢2ノと営業余剰総合粗付加価値係数¢みの
3つか算出され発表されている。
(ii)保険業の総合付加価値係数
保険業の総合付加価値係数1¢ノIは、㈹式を詳しく書き表わした
n
β1
均1均2‥'均」的m ‥.叛け
βzl
UlU2‥'UJ
U
m …u
β2 ‥・β2 βm・‥An
A2 ‥・戌2 βm …β,.
域1物2‥.物J物m ‥`残れ
〔¢gノ〕=
物1qH‥'残り zbm`‥均n
均1均2'‥均`拘れ ‥'均れ
0 0 …1 0 …0
βmlβれ2…β両β加…β相
塙1埼2.‥祷1鴫的 ‥'鴫,l
てあ1塙ブ‥鴫l乙もれ'‥塙高
β。lβn2‥・β扇βⅧ・‥β鵬
-197-
…㈹
保険業の産業連関分析
によって求めることかできるO
伸生命保険業J
生命保険業Jの総合粗付加価値係数舶ま
¢/=∑Uノβノ/
ノ=1
ニUlβ1′十〃2β2′+‥・+勘β〝+抽β〃J+…+U′lβれノ =… 輌
となるOまた、最終需要項目別(g)総合粗付加価値係数¢g′は
¢gJ=Uglβ1/+Ug2βJ/+・‥+UgJβJ′串叫鈷+‥・+Ug′lβれ′
=∑UgJβノ′
ノ=1
(g=1,2,・日,6) ㈱
となる。
(ロ)損害保険業m
損害保険業仇もまた全く同様にして
¢m =Ulβ1〃一十UZβ2肌+‥・+町β′け.+む′けβmm+…+Un仇m
Jl
=∑むノβノ璃 ……………………… 鋤
ノ=ユ
転=叫タユ肌+のg2β2机+‥・+Ug蘭′t+Ug華抑+…+Ug′`βnm
=∑のg.βノm (gここ1,2,‥,6)
幽
Jこ1
であるO
これらの公式によって、われわれは保険業の個別粗付加価値係
数Uおよび総合粗不用口価値係数¢を算出することができる。
(2)総合輸入係数、総合移入係数
1単位の最終需要によって、直接間接、誘発される輸入量、それ
か総合輸入係数である。
他方、同じく1単位の最終需要によって、直接間接、誘発される
移入量が総合移入係数である。
産業連関表には全回産業連関表と地域的(内聞)産業連関表(re一
gional andinterregionalinter-industry table)がある。前者に
は総合輸入係数が算出され、後者には総合輸移入係数、総合輸入係
ー198-
保険業の産 業連関分析
数および総合移入係数が算定されるO
そして、これらの係数はいずれも、(1)輸出によるものと(2)国内最
終需要によるものとの2つに分けて計算されているO
そこで、以下、(1)総合輸入係数(全回産業連関分析)と(2)総合輸
移入係数(地域産業連関分析)に分けて論述を進める。
(彰総合輸入係数(全国産業連関表)
全国産業連関分析の総合輸入係数βは個別輸入係数ml、投入係
数4=〔αり〕、および逆行列係数月=〔βり〕から計算される。
、:11
(i)輸出による総合輸入係数
材)輸出による総合輸入係数
産業鬼の輸出による総合輸入係数β1㍍ま
i勘の=z〔〔M〕〔A〕〔B〕〕(22)
仇10 … 0
0 m2… 0
α11α12 ‥'α171
021(】之2 ‥ q2m
=(1,1,…,1)
0 0 … mn
ヽαれ1αれ2… α醐
Alβ2 ‥・鮎
戌1戌2 ‥・過れ
………………… 糾)
βれ】βれ2・‥ β肌
によって算出するO
帥 個別輸入係数恥にはいろいろな定義(算出方法)があるO その
詳細については次章で論究することにして、ここでは、すでに個別
輸入係数が算定されているものとして論を進める。個別移入係数乃Z
についても同様であるO
ー199-
保険業の産鷺連関分析
産業んの輸出による総合輸入係数顎kは、伽式を展開して、
.- r. ・.
刑鋸=∑mlα1ノβノ九十∑m2α2ノβノん+…+∑mmα誹ん
ノ=1 ノ=1 ノこ1
=皇 至れるαり鋸 ………………… 脚
「=1ノニ1
のように計算する。詳しくは次項を御覧いただきたいO
(ロ)保険業の輸出による総合輸入係数
保険業の輸出による総合輸入係数胡乱、〝珠′-は次の脚式から算出
する。
Im舶 =I〔〟〕〔4〕〔月〕
=(1,1,…,1)
mlO…・ 0・‥0
α11CZ12 ‥`α1 α1m ‥.cl71
01乃2…0 0 …0
α21α22 ‥.α21α21m ‥'α2m
00・‥m↓ 0 …0
O
O …0 0 …0
00…0 mm・‥0
αmlαm2.‥αmJ α〃動 ‥'αけけI
0 0…0 0 …mm
J nlαm2'‥αnJ Ch調‥-2醐
松の 王 は1を成分とするれ次元行ベクトル(1,1,・・・,1)であって、れ
行列ベクトルまたは犯行m列の行列の列和をとる演算記号であるO
また〔〕乙 の場合、乙 は同じく1を成分とするれ次元列ベクトルで
あって、m次の行ベクトルまたはm有几列の石列の行和をとる演算
記号である。L はラスムッセンの演算記号(Rasmussen,s operdtOr)
とよはれる。
また式中に見える〔〟〕は個別輸入係数恥を対角線上の元素とす
る対角行列であるO
一200-
保険業の産業連関分析
戌1β2…β2g彪m・‥βn
×β1β2…β1JAm・‥βn
O O・‥β= 0・= 0
βmβm2…β叫β瑚‥・βmn
βれ晶2…β。Jβれm・‥βね。
mlαll mlα12 ‥'mlq椚 '‥ mlOlれ
机2(迦1 仇2曜1‥'m2(勘所 ‥'m2(迦n
=(1,1,…,1)
O
O ‥・0 … 0
〝い=αml mmα2 °‥m初α別れ ‥`m加amm
mれαnl mれcね2 ‥'mhαなれ'‥ 耽れα…
β1β2・‥βJβ初 βln
All22・‥鮎β軸.・β2。
0 0 ‥・1 0 0
∑mlqlJβノ1∑叫qJβノ2
∑仰2鞄Jβノ2∑m2(鞄ノβノ2
=(1,1,…,1)
0 0
β叫鮎2・‥βm2βmm β椰
∑の,ねα叩Am∑れ粛叩βノ鋤
βnβ。2‥・β。1βnm β。れ
∑机。αれノβJ言∑れ周恒βノね
…∑mlαりβノ1
∑mlα1ノβノ勿・‥∑mlαlJβノれ
・‥∑椚2α2ノAJ
∑仇2(鞄ノβノ机・‥∑m2(迦′βノれ
・‥ 0
0 … 0
…∑仇的叫βノJ
∑m粛坤βノ机・‥∑肋融呵βノれ
…∑恥α再βノJ
∑仇。αりβノ刑・‥∑彿れαりβノれ
一201-
…………………・= ㊥ゆ
保険業の産業連関分析
(a)生命保険業の輸出による総合輸入係数
生命保険業の輸出による総合輸入係数m鋸ま㈱式から
'1 1 `l ・こ
m鍬=∑mlqノβノ汁∑m2勒A′ +…+0+∑mmαm姉妹・‥+∑
ノ=1 ノ=1 ノ=1 ノ=1
.i 'l
甑的動 =∑ ∑吼勒動 ………………… 卯
と=1ノ=1
となるO
(b)損害保険業の輸出による総合輸入係数
損害保険業の輸出による総合輸入係数m鮎は、これもまた㈱式
から
1l ・. .- ・i
笥椚ニ∑mlα強靭+∑m2`迦ノβノ椚+‥‥+0+∑mmα町A加+∑恥α。イβル
ノ=1 ノ=1 J=1 J=1
'l 'l
=∑ ∑机とα誰机 …………………(鴫
l=lJ=1
が得られるO
(ii)国内最終需要による総合輸入係数
(イ)国内最終需要による総合輸入係数
産業んの国内最終需要-最終需要6項目から輸出を除いた残り
り5項目小計-による総合輸入係数海は次のように定義される。
一一、ヽ
1協言=月〔崩〕〔の〔β〕〔1一〟〕〕+崩………………… 幽
mlO …0
α11α12 ‥`(取れ
β1β2∵乱
01柁2…0
(な1(な2'‥qれ
β1β2・‥風
。れ1α。2…。。nj
β。β。2・‥βね。
=(1,1,・‥,1)
O‥・0
mlO‥・0
0 1-m2・‥ 0
0 7柁3…0
1-ml
…‥‥…‥‥…‥・・伽)
0 0…1-mれ
0 0…mR
大鋸ま、この式を展開し、あるいは(89式から類推できるように
ー202-
保険業の産業連関分析
れ n
観=∑(1一肌ん)ml。JA止∑(1-m4)的狗βノ汗…+ ∑(1-恥)
ノ=l ノ=1 ノ=1し
叫娠十mん
=皇皇(1-のmヱαりβノ鳥十mた …………………… ㈱
1=1ノ=1
のように計算できる。
伺保険業の国内最終需要による総合輸入係数
㈹式からすぐわかるように、保険業の国内最終需要による総合
輸入係数は次のようになるO
b)生命保険業J
'こ 'ご 1
ん島′=∑(1
ノ=1
れ′)mユαlノA′1蔓1(1-m′)勒拘βノ′+つき1(1m′)m′αわれ十m′=∑ ∑(1-m′)恥α`動+m′ …………・幽
る=1ノ=1
(b)損害保険業m
'こ `l 'こ
ん‰〒∑(1-恥l)mlαりβノm+∑(1-m酌)仇狗乱れ+…+∑(1-m,n)刑れ
ノ=1 ノ=1 ノ=1
.e
α誹ノm+mm=∑∑(1-mm)m沸βノm十mm ………………㈹
`ニこ1ノ=1
② 総合輸移入係数(地域産業連関表)
(i)総合輸移入係数
地域産業連関表に照応する総合輸移入係数は個別輸入係数ml、
個別移入係数恥、投入係数行列A=〔αリ〕、逆行列月=〔βり〕か
ら、次の公式によって算定する。
(i)輸出による総合輸移入係数
(イ)総合輸入係数
昌叫 =乙〔〔〟〕〔A〕〔β〕〕
(ロ)総合移入係数
/ヽ
竹狛 =i〔〔Ⅳ〕〔の〔β〕〕
(バ 総合輸移入係数
_一一一、、
門‰可 =よ〔〔〟+Ⅳ〕〔A〕〔月〕
′ヽ
=i〔〔崩〕〔の〔月〕〕+月〔Ⅳ〕〔の〔β〕〕
一203一
保険業の産業連関分析
=1-の+冊告
(ii)国内最終需要による総合輸移入係数
(イ)総合輸入係数
(a)粗鷹合輸入係数
一′一、、 ′ヽ
主項 =i〔〔〟〕〔4〕〔月〕〔1-〟〕+〔〟〕〕 …………㈹
(b)純総合輸入係数
ヽ ・一〈-
主β月 =i〔〔〟〕〔A〕〔β〕〔1-〟〕+〔〟〕
ノヽ
-〔〟〕〔A〕〔月〕〔Ⅳ〕〕
…………郎)
(ロ)総合移入係数
(a)粗総合移入係数
/一・一′、、-
五頼=月〔Ⅳ〕〔4〕〔月出-〃〕+〔ぷ〕〕…………㈹
(b)純総合移入係数
ノヽ ノへ
拉頼=i〔〔〃〕〔A〕〔β〕〔1-〟〕+〔〃〕
/ヽ
一〔〃〕〔4〕〔β〕〔〟〕〕
…………(的
H 稔合輸移入係数
′一一一・一、-、.
紬当==〔薪詣〕〔月〕〔β〕〔ト〟-〃〕+〔広遠〕〕
……・‥…㈹
巾lけ
そして、稔合輸移入係数仇と総合輸入係厳談、および総合移
入係数祝との間には次のような関係式が成立する。
__へ 一 / 、-、
湘=i〔〔〟+Ⅳ〕〔A〕〔β〕〔「箭〕+〔〟+Ⅳ月
ノヽ ′/、\・、 〈
=乙〔〔〔〟〕〔A〕〔β〕〔1-〟〕+〔〟〕一〔〟〕〔A〕
ヽ
〔β〕〔Ⅳ〕〕+〔〔ガ〕〔A〕〔月〕〔了二面〕+〔Ⅳ〕一
ノヽ
〔Ⅳ〕〔A〕〔月〕〔〟〕〕〕
ノヽ /\ /ヽ
=i〔〔gβ仁一〔〟〕〔A〕〔β〕〔〃〕+〔gβ仁一〔〃〕〔4〕
〔月〕〔〟〕〕=ト調+れ坤 =………・㈹
′ヽ ノヽ
佃式に見える‖崩〕〔の〔月〕〔Ⅳ〕および-〔Ⅳ〕〔の〔月〕
一204-
保険業の産業連関分析
〈
〔M〕は、輸入impactと移入impactか交絡し共働する相乗
効果部分であって、二重に計算されている部分であるO ゆえ
に、総合輸移入係数、純総合輸入係数、および純総合移入係
数を算出するときは、これを差引かねばならない讐3)
さて、この醐式を行列を使って展開すれば次のようになるO専
業九の総合輸移入係数鋸ま帥式の展開式
幽 試みに、上の諸公式を使って 昭和40年大阪府経済の総合輸移入
係数(地域内10産業部門表)を算出すれば、表10のようになる。
表10 昭和40年大阪府総合輸移入係数(地域内表)
総合
輸移 入
係数
産業
I . 国 内最終 需要 に よる
II . 輸 出 に よ る総 合
輸 移 入係
組合 輸移 入係数
(1 )
(2)
(3 )
(4 )
(5)
(6 )
純 総 合 輸 純 総 合 不 総 合 輸 不 純 総 合 l純 総 合 不 念合 輪 ≠
入係数
入係数
入係数 人係数
入係数
入係数
1 農 林 水 産 業 0 .25856 5 .6 7552
2
2 鉱
業 0 .3788 56 .53908
.9 340 9
.0500 09 .28 27 1
.33 272 1
.9 17945 .0360 98 .18832
.22 44 18
3 製
造
業 0 .0652 6
.7 308 17 .7960 8
.066 522 .4 2994
.496 467
4建
業 0 .0494 1
.4 1201
.46 14 3
.0494 19 .4 120 1
.46 14 35
0 .0702 1
.2 1976
.7899 76 .0762 95 .15114
.227 442
設
5 悪 意芸 ス '
6 結
晶
保
0 .03577
.15 844
.1942 1
.01470
.09 096 1 .10 56 64
7運
輸
業 0 .1172 1
.6 3148
.7466 9
.7466 9
.2 2669
.258 993
8 サ ー ビ ス 業 0 .0 3747
.24 892 1 .2863 9
.0308 5
.20 219
.2330 52
9公
務 0 .00 000
.000 00
.0000 0
.00000
.00 000
.0000 00
10 分 類 不 明 0 .35753
.39 682
.7 54 35
.05787
.36 054
.4 184 18
資料:大阪府統計課:「昭和40年大阪府産業連関表(2地域間42産業部
門表)」より算出
(注)(1)+(2)=(3)(4)+(5)=(6)
ー205-
仕上陳 某のJヰ_業止関分析
怖I=∼〔〔〟+〃〕〔の〔月〕〔f-〟一Ⅳ〕+〔〟+Ⅳ〕〕
=(1,1,日・,1)
ml十几1 0 … 0 0
0 〝12+花2… … 0 0
0
… … m!+勘 0
0
0 m′′l+几朋…
m
α11α12 ‥'α1/ αl椚 ‖ αl用
β1β2…β′ βけ一
β
C2l q22.‥(わJ d2′′1 日(なり′
越1/笈2‥・晶 ′‰
β
0 0 … 0 0 ‥・0
十一化
0 0 ‥・1 0 0
αmlα川2‥`(ユ栖Jl〇mm ‥'α〃川
β′′りβ川2…β机Jβ……β′′川
αnlαは2`‥ α仇l α′=〃.‖ α′川
β′.1β〝2・‥仇/β……β…
0
1-ml一物 0
0
0 1-m2-喝 …
0 0 …1-m/一門′ 0
0 0 0 1-m川「け′け‥・
0 0 0 0 …1-mり一丁1′2」
ー206
保険業の産業連関分析
0
′ml+現 0 … 0
0
0 m2+確… 0
0 0 ‥・mJ+れ′ 0
0
0 0 … 0 7円周十柁m
0
0 ‥・ 0 0 0 …仇。+れル
(ん列の列和をとる)
のん列の列和
`こ 'l
βた=(1-mぇ一花七)∑ ∑(〝ヱ+れ`)αりβノ大+(れん+柁え)………(100)
i=lJ=1
である。舶式参照。
(ii)保険業の総合輸移入係数
保険業の総合輸移入係数は(100)式から次のようになる。
(イ)生命保険業J
`こ ..
β=(1-mrm′)∑∑(mェ+乃`)αり勘+(勒寸勘)………(101)
1=lJ二1
(功損害保険業m
n け
βm=(1 mm 九m)ヱノ至1(mm+犯の)α。βJm+(mm十mm)………(102)
6.価格の産業連関分析
(1)価格の産業連関分析
投入産出(産業連関)分析では、たたに均衡産出量主項 や均衡
最終需要日月 の決定のみならず、均衡価格分析も行うことができる。
均衡価格分析の形式的特徴を端的に言えば、それは列(縦)方向
の均衡分析である。これに対し均衡産出量・均衡最終需要分析は行
(横)方向の均衡分析であるO
-207-
保険業の産業連関分析
いま産業Jの製品の価格を勘(粗)付加価値率叫とし、列方向
の投入係数をlαりl(i=1,2,…,れ)とすれば、一般に次の式か
成立するO
恥pl+物J趣+…‥ヰα仇+UJ=p1 日…‥………‥(103)
そこで、いまこの関係を(転置)投入係数4′=〔αノ.〕と価格
列ベクトルIpノ上および付加価値率列ベクトルIUJlをもって
一般化して書けば
α11物1‥.αル1
α12 鞄2'‥ αれ2
………………(104)
αln q絢 ‖'α=
(104)式の第1項の行列〔α」は均衡産出量決定方程式におけ
る投入係数A=〔αり〕と、丁度、対称形になっているOすなわち、
均衡価格分析における行列〔αノー〕は均衡産出量分析の投入係数
(24)
〔αり〕の転置行列(transl氾Sdmatrix)〔Aつになっている。
ゆえに、記号的に書けば
(1)均衡産出量決定方程式 Ag+y=ズ
(2)均衡価格決定方程式 A'p+Ⅴ=P
となる。
さて、この〔AつIPl+ 日月 =けIをこれまで愛用してき
た方法によって変形すれば
(24)(1)4'=Aである行列を対称行列(S押Imetric matrix)という。
産業連関投入係数行列では、一般に、4'≠Aである。
(2)4'=一月である行列を交代行列というO産業連関投入係数行列
は、A'幸一A。
〔1-月'〕 1け[= 廿1
-208-
保険業の産業連関分析
∴け[ニ〔1-月′〕1 つVl ‥(105)
となる。これが均衡価格決定式である。これは均衡産出量決定
式紬こ対応する式である。そして、〔1一一月つの逆行列βつま
〔1-のの逆行列βの転置行列であるOゆえに良一dTl
l!.1ニ
月=〔βり〕とすれば〔1-4つ 1二月′二〔βノ′〕であるO
Al戌1… … β′11
β2戌2 … … βn2
〔1-月つ l=〔βノ`〕=
……(106)
βれ&… … β…
したがって、もし、(1)(粗)付加価値率列ベクトル五ノlが
与えられれば、(105)によって、一般に
釦=且朔+風湖+……+β訂娠 …………………(107)
のように、産業古の商品価格pヱを決定することができる。このこ
とからわれわれは粗付加価値(構成項目6項目)Vの変動に基因
する価格変動分析を行なうことかできる。
また、もし、粗付加価値uJの構成項目内訳(6項目)がわかれ
ば、価格の粗付加価値構成別分析かできるO すなわち 序言 =
〔1-4つ 1〔UJg〕である。具体的に書けば価格Pヱは
β11β!1… βnl
Ul :功1 均2 の13 均4.均5 む16
β12 戌2‥・βバ2
均1 物2 綾3 均4.均5 物6
β1ね 晶,t・・・β=
Unl un2 Un3 Un4 Un5 ひれ6
(注)むノ=∑むノg
g=1
・て ′Tl、
Pェ=∑βノエUJ=∑ ∑βJAUノg
(109)
ノ=1 ノ=1g=1
のように組付加価値構成項目別に内訳けることかできる。
また、もし、逆に(2)価格列ベクトル序言 が与えられれば、そ
ー209-
保険業の産業連関分析
れに見合う均衡粗付加価値率列ベクトルIv言 を決定することもで
きる。
適用頻度からいえば、均衡価格分析は均衡産出量分析よりも少
ない。けれども、それはある特定の商品の価格一一たとえば米価
や国鉄運賃など一一の上下が物価にどう反響するかを調べるのに
活用されている。さらに、投入産出分析の創始者であるW.レオ
ンチェフ教授は公害費用負担-一家庭ないし政府か負担するか、
公害発生企業が負担するか一一の価格分析を、モデルによって試
伽)
みておられる。ここでもまた逆行列か活き活きと働いている。
(25)Wassily Leontief,工nput-Output Economics,N.Y1966,pP.
143∼5.産出解(ouLpu亡 SOluとion)と価格解(price soluとion)
との関係を言えば、行列の行と列が逆になっている。すなわち、A
=〔αり〕と4′=〔αノエ〕、〔1-の=〔1-αノ`〕とり一月つ=
〔1-αノ′〕、月=〔βり〕と月'二〔βの。すなわち原行列と転置行
列の関係であるO W.Leontlef,IbLd.,P.144.
個 W.Leontjeら "EJ"jronmental RepereussioLl and EconomlC
Structure,ALIInput-OutpuL Approach",AChallange to SocIαJ Scほ几hS占,A泊hi Eゾening NeWS,1970,およびTんe Reのeぴ
0/£co几0mzCgα几d Sαわざ-gcg,1970,pp.262∼271、谷山新良
「W.レオンチェフ教授、環境汚染の産業連関分析について」、
大阪府統計課『大阪の統計』1971年1月号O なお、レオンチェフ論
文は取急いで公刊されたせいか、ミスプリか若干あるように思うO
たとえば、ACんαJJe几ge∼o Soc,柏J Scze几加古の117ページの逆
行列などかそうである。
(2)保険業の価格の産業連関分析
保険業の価格=仲介サービス料金一一(事後的)純保険料部分を
一一21(トー
保険 業のト 鼠 辿l現分析
含まず一一もまた、(109)式によって産業連関分析することかでき
る。表7.逆行列係数の転置行列〔1
Aつ 1=〔AZ〕と准旧寸加価
値行列〔Ugノ〕を用い
Alβ1…0β′。1…β′。1
均1112 均31力4.均5 ノ巧6
β2β2…0β椚2…β′一2
物1物2 物3 物4 む2。堕6
乱&…1βmJ…β′′ノ
び/1m2勘3勘4勘5UJ6
β椚戌〃1…0β′川…β…
む′′ll U耽2UJJ23U刑4Um5U肋6
乱戊′ヱ…0βmm …β′川
む′り 〃′`2軋りU′′4 U′`5の′16
6
(止) UJ崇㌢耳J
…(110)
のように分析するO
① 生命保険業J
生命保険業Jの価格=保険仲介料p′は(110)式から
・. .-
P′ヲ1βノ′Uノ=∑∑βノ′即ノg (111)
ノ=1gニl
(彰 損害保険業仇
損害保険業mの価格=保険仲介料p′′握(110)式から
刑 Jlb
折∑βノ′′jUノ語g芋戸川〃ノg ‥(112)
ノこ1
となるO
7.労働力の産業連関分析
(1)労働力の産業連関分析
産業連関分析を活用すれば、最終需要によって誘発される生産活
動に必要な労働力を算定することかできるO
労働力の産業連関分析を端的に示せば次のようになる。
211-
保険業の産業連関分析
(1)労働力係数
表11労働力係数
まず、労働力係数ら
を定義する。それは産
業z の生産縁組者で若
を生産するに必要な労
労働投入係数J′
生 産 総 額(億円)
所要労働者数 (人)
労働投入係数(人/億円)
働者数上l人を割って求
めるO
…………………(113)
すなわち、労働力係数Lは生産額1単位当りの必要労働者数一
たとえばJ人/億円-である。
(2)均衡必要労働者数の決定
最終需要列ベクトルけノIに照応する均衡必要労働者数列ベク
トルは′‖ま、この投入労働者数1日 と逆行列係数〔βり〕に
ょって、次の要領で算定するごZ刀
はつ=げ〕1幻二〔γ〕〔ト4手つ自=〔自〔月月日
O・‥0
βll A2
0g2‥・0
β21l22
Jl
(114)
0 0…J n
留の 労働大臣官房労働統計調査部『労働力の産業連関分析』昭和40年、
11∼13ベーンO
ゆえに、産業iの均衡労働者数上エは(114)式から
上l=∑Lβりyノ …………‥=‥(115)
、・1
なお、(ユ14)式にみられる〔γ」〔β〕を労働誘発係数とよふ。
1つの準逆行列(quasiinversematrix)であるO それは行列
の演算によって次のような彬になる0
--212-
保険業の産業連関分析
/1β11Jlβ12 …らβ1。
′2β2日2β22 … ′2β2n
ノヽ
〔り〔1一の 1=〔り〔月〕
Jnβけ1㌦βね2…らβふ
(114)式から明らかであるように、均衡必要労働者数 は[を算
ノ`ヽ
出するためには、この労働誘発係数行列〔り〔β〕=〔Jβ〕に、最
終需要ベクトル日月 を右側から掛ければよいO
ゆえに、この労働力の産業連関分析は雇用理論・政策および経済
理論・政策に適性有効に活用することができる。
(2)保険業の労働力の産業連関分析
保険業の労働力係数行列〔O、表7.逆行列係数、および最終需
要列ベクトル1円 から、(114)式および(115)式によって、保険業
の労働力産業連関分析を行なえば次のようになる。
ノヽ
け[=〔川幻=〔γ〕〔1-の 1け[=〔り〔月〕廿[
O ‥・0 0・‥ 0
β11β12 …β1′β1机…β1m
y
0 g2‥・0 0 … 0
β21β22 …β2′β2の‥・β2′と
y
Jl
0 0 ‥・JJ
0 0 …O
O …
Jm… 0
0 0・‥0 0 … ら
0 0 ・‥1 0 …0
y
βmlβJR …β的′βmm…βm〃
y
β。1β〃。…βれ′β相…β…
y
①生命保険業J
生命保険業Jの均衡労働者数⊥′は(116)式と(115)式から
`ヒ
上戸=∑自動JyJ二g言質 ・‥‥‥・(117)
ノ=1
'・'Fβノノ,βり=0 (ノこ1・2,‥・花・ノ幸J) β′J=1
一213-
保険業の産 業連関分析
②損害保険業m
損害保険業机の均衡労働者数上〝鳥、他の産業一般Z と変わりな
く、
上,′′=∑g値β′′りyJ =(118)
J
l
となる。
以上か保険業の産業連関分析であるO
Ⅳ 結 語
F.ケネーに芽生え,L.ワルラスに花咲き,W.レオンチェフに
実った投入産出分析(産業連関分析)は,理論的にも実践的にもいち
ぢるしい発展を遂げ,今日では人類のすばらしい共通財産となってい
る。とくに,それは産業経済の構造分析,経済予測,縮済政策立案,
特定経済施策の効果測定など,実践的分野において非代替的lかけカ・この
ない)威力を発揮している。
1.本稿の目的
さて,産業連関分析は,保険業の構造分析,他産業との相互依存関
係分析,将来予測,特定経済施策の効果測定などにもまた,非代替的
威力を発揮するにちがいない。ところが,これまで「保険業の産業連
関分析」は,洋の東西を問わず,理論的にも実践的にも,かつて行な
われたことがない。そこで,・本稿ではまず,「保険業の産業連関分析」
の理論的研究を試みることにした。これは,言うまでもなく,具体的
統計値に基づく実証的「保険業の産業連関分析」の前提的研究にあた
る。
-2ユ4-
保険業の産業連関分析
2.本稿の要約
第1節「まえがさ」は開題である。すなわち,問題提起と研究方法
についての要約であるO
第2節は,「保険業の産業連関表」についての研究であるO そこで
は,まず,産業連関表(広義)-(1)産業連関表(狭義)
〔Ⅹり〕,(2)投入係数表〔A〕=〔αり〕,(2つレオンチェフ
行列〔トA〕=〔トα‖〕,そしてその(3)逆行列〔トA子1
=〔βり〕について要論してある。「一般理論」につづいて,保険業
の産業連関表についての「特殊理論」を展開したO
保険業の産業連関表においては(1)保険業の生産額と(2)保険
業の産出(販路)構造がポイントである。
(1)保険業の生産額
保険業-・般一一生命保険業,損害保険業,および共済事業など一一
の生産額(output)は事後的付加保険料Lおよび帰属サービス料
Gであって,営業保険料総額I(=A+L)ではない。
言いかえれば,産業連関論の分析対象となる保険業生産短の中には
営業保険料総額I(=A+L)の主要構成要素である純保険料総額部
分Aは含まれない。Aは保険業の生産額(output)ではなく,移
転項目(transferitem)である。
ゆえに,保険業の産業連関分析にあたっては作表においても,まず,
保険業の生産額がI(=A+L)ではなく、(L+G)であることを
バツキり認識しなければならないO
(2)保険業の販路(産出)構造
産出(販路)構造においては、損害保険業と生命保険業との間には
いちぢるしい相違がある。すなわち,損害保険業仇の販路構造は他の
一215-
保険業の産業連関分析
産業一般と殆んど変りないが,生命保険業/のそれは他の産業には見
られないユニークなものとなっているO
①損害保険業刑の内生需要部門に対する生産額ⅩmJ(ノ=1.2.
・れ)は,-一般にⅩmJ≧OJ支配的にはⅩmノ>0であるO他方
最終需要部門Yに対する産出額y用ノ は,家計消費出部門ym2,回内
固定資本形成y叩4,在庫純増ym5,輸出ym61輸入一ym7,移出
ym8 および移入-y椚9 の7項目から成っている。
ゆえに、X7TF∑XmJ+仔m2+Ym4+Ym5+Ym6-Ym7+Ym8-Ym9)
ノ=1
……(118)である。
これに反し
②生命保険業lの内生需要部門に対する販売頬Outputは全部0で
あるO VXり,XJJ=OOそして生命保険業Jの販路は全部最終需要
部門に対するものYけであった。それは、可能的には、家計消費支出
YL2 輸出Y16.輸入一Yl7、移出YI8および移入Yl,の5項目から構
成されるが、現実的にはそのほとんどが家計消費支出部門に対する
outputである0ゆえに、生命保険業Zの販路構造は
ⅤⅩ〝,ⅩJJ=0 (内生部門)
XL=YL2+Y L6PYl7+YL8rY/9
(119)
≒Y∼2 (最終需要部門)
である。
(119)式に端的に示されているユニークな販路構造、それが生命保
険業の特徴であるO これに対し、(118)式に表わされている損害保険
業の販路構造は、他の産業一一般のそれとほとんど変わりなはいO すな
わち、生命保険業と損害保険業は、同じく保険業ではあるが、両者の
販路構造には大きな相違点が認められるO
なお、投入(購買)構造においては、両者の間にはほとんど差違は
ー216-
保険業の産業連関分析
ないO それは第3次産業なかんずく金融業の投入構造に酷似する。
以上の投入・産出構造、とくに(118)式および(119)式に表わされ
ている販路構造は、当然に、販路構造次。′〕+ 打の→投入係数払〕
一1
=伝り〕→レオンチェフ行列庄一A〕=〔1-¶り〕→逆行列〔I-ノ=
〔βり〕のプロセスによって逆行列係数「β。〕に反映し、第3節
「保険業の産業連関分析」を規定することになるO
投入係数、逆行列係数:(118)式から明らかであるように、損害保
険業間の産出構造は一般の産業のそれと変わりないから、その投入係
数、レオンチェフ行列、および逆行列係数は行方向および列方向のい
ずれも他の産業一般のそれとほとんど変わりはない。表2、表4、表
5および表7参照O
問題は生命保険業JであるO(119)式に示されている生命保険業J
の産出構造から、その投入係数〔αののJ行は全部0であるO記
号論理的に表わせば、ⅤⅩり,Ⅹ。=OO∴ⅤαいαlJ=0。 (ノ=
1,2…‥,可その結果、レオンチェフ行列および逆行列係数のJ行は
(1)(2ト……の 玩ト……・の
産 出 量(Ⅹり) 0 0………0 0………0
投 入 係 数伝の 0 0日目…‥0 0・=……0
レオンチェフ行列(1一αの 0 0………10日……・0
逆行列係数卸ノ〕 0 0………10………0
のような.きわめてユニークなものとなる。このことは表2、表4、表5
および表7に端的に示されている。
なお、産業連関表(広義)の列方向は、損害保険業刑も生命保険業Z も
他の産業iのそれと殆んど変わりはない。
第3節は「保険業の産業連関分析」である。産業連関(投入産出)
一217-
保険業の鹿砦連関分析
1-1
分析のr軋、的テーマは逆行列け-の=「βり〕を駆使して、産業連
関体係に対して外生的に与えられる経済量列ベクトルに照応する均衡
を決定することにある。
そのうち主なものは(1)投入産出分析、(均衡産出量、均衡殺終需要
量分析)、(2)経済(生産量)変動量の要因分析、(3)影響力係数、感応度
係数、(4)最終需要項目別生産誘発楯、同生産誘発係数、同生産誘発依
存度、(5)総合付加価値係数、総合輸移入係数、(6)価格の産業連関分析、
および(7)労働力の産業連関分析である。本稿でも、保険業について以
上の7つのテーマについて研究してある。研究・叙述の方法は、まず
産業一一般についての-一般的研究を述べ、続いてこれを保険業に適用し
た特殊的研究か展開されている。
保険業の産業連関分析の結論を先取りして言えば、(1)損害保険業仇
の産業連関分析の結果は他の産業一一・般乙 とほとんど変わりない、とこ
ろが(2)生命保険業Jのそれは他の産業一一一・椴といちぢるしい相違を示す
こと、これが結論である。これは、さきに述べた(118)式および(119)
式に示されている両者の販路(産出)構造、したがってそれから導き
出される投入係数bり〕→レオンチェフ行列け一の=〔トⅦり〕
→逆行列け一の1=勘〕の性格構造の当然の帰結である。
産業連関(投入産出)分析の戦略的基礎数は逆行列数田り〕であ
る。(28)産業連関(投入産出)分析とは、要するに、この逆行列勘〕
を活用してすでに述べた7つのテーマを分析する経済学研究方法であ
るO
さて、まず産業連関分析の中心テーマである均衡産出量分析につい
て要約すれば次のようになる。いま、産業連関体係に対し、外生的に
与えられる最終需要量列ベクトルを 廿日 とすれば、これに見合う
均衡産出量列ベクトルは言は(33)式こよって
▼218-
保険業の産業連関分析
確言=〔βり〕甘言 ………(33)
であるO ゆえに、ある産業Iの均衡産出量若は(34)式によって
ズー=革βりyノ ………(34)
-.1
そして、埠害保険業机の均衡産出量は(34)式においてi二mのおいたも
..
の、すなわちズm苧Iβ乃yJ
であるO(35)式参照。これは-1投の産業Z と全く変わらないO
これに対し、生命保険業Jの均衡産出量ズ′は(34)式に見られるよう
に ズ′=y′という、きわめてユニークなものになる。これは、すで
に再々述べてきた生命保険業/の販路構成の特殊性軒端,ズむ=0に基
因する逆行列係数の日子の特殊略′,βむ=0,(Jカ,ノ=1,2…,乃)
β〟=1の結果である。試みに、これを(33)式に通用すれば、ひと(人)
n
はただちにズ′吾βむyノ尋〟y′=yJ
であることを確認するのであろう。
残余の6テーマについて結論的に言えば次のようになるO
まず、損害保険業仇については、残余の6テーマについても、他の
産業一一般と何等変わるところはない。
これに対し、生命保険業Jは、そのJ行逆行列係数¢のが
(1日2) の玩) h)
担°二(0 0……・10‥‥・‥ 0)
(28)産業連関表区。〕から芭行列田り を最出する方法にはいろいろな方
--1
式がある。そのうち主なものは(1佃通産省方式〔上武 、通産省方式
〔卜4十〃〕 1ぉよび(3)行政管理庁方式〔ト〔上前の 1などがあるO
この諸方式および均衡産出量の非負条件言いかえれば叩リ,βり≠0であるた
めの条件-サイモン・ホーキンズ条件およびソロー条件1一一については、
谷山新良「投入産出分析における逆行列係数について」大阪府立大学経済学
部『経済研究』第17巻1°2号(昭和47年3即において詳細に論究してあ
る。,
-219-
保険業の産業連閲分析
であることを反映して、∑βむ棚ノの形をとるものはすべて他の産業一
般には見られない独特の姿をとっているO それは(a生産変動量の要因
分析、③感応度係数、④敢終需要項目別生産誘発額など、そして⑦労
働力の産業連関分析である。すなわち
② 生産変動量の要閥分析 △ズ′=△y′ (公式39)
③ 感応度係数
(イ)第1次感応度係数
回 第2次感応度係数
0 第3次感応度係数
用 1
1丁. 〒l
(2) 花月
J/ ここ0
(公式51)
(公式54)
(3)
♂ ′ =0
(公式57)
④ 最終需要項目別生産誘発額など
(イ)最終需要項目別生産誘発額
者≒y′2 (公式63)
伺 〝 〝 〝生産誘発係数
・-(公式67)
β′2=葺亭主Ⅹ′
y2
0 〝 〝 生産誘発依存度
お1.2≒1
⑦ 労働力の産業連関分析 エ′=J′y′ (公式117)
である。
以上が第3節の要約であr上生命保険業の特殊性と損害保険業の一
般性の指摘である。
3.結 び
本稿は谷山新良「保険業の産業連関分析」日本保険学会『日本保険
学会三十周年記念論文』(昭和46年)の続稿でありその解析篇であるO
そして、谷山新良「投入産出分析における逆行列係数について」大阪
府立大学経済学会『経済研究』第17巻第1.2号(昭和47年3月)を、
一220-
保険業の産業連関分析
とくに保険業に適用した保険業の立場から見た産業連関(投入産出)
分析である。
つぎに、本稿は、I.まえがきにも断わってあるように、保険業の
産業連関分析の理論的研究であって、実際の投入産出量に基づく実証
的産業連関分析ではない。保険業の実証的産業連関分析は、国の内外
を問わず、いまだかって行なわれたことがないO これまで発表されて
いる産業連関表では、保険業は分離独立した1産業としてではなく、
「保険・金融業」(56産業部門表)または「商業・金融・保険・不動産業」
(10産業部門表)に集計され、理没しているO
保険業(2部門)を分離独立させた実証的「保険業の産業連関分析」
これが私の夢であったO ところが、幸にも、さいきん資料が入手でき
たので、近い将来に「昭和40年 保険業の産業連関分析」を発表した
いと思うO
(1972,7,4)
一一二2「