行政法 実力診断テスト

160801TOKYO
辰已法律研究所&リーダーズ総合研究所
行政法☆実力診断テスト
試験問題
試験開始の合図があるまで開いてはいけません。
(注意事項)
1
問題は 1 ページから 9 ページまで 10 問あり、時間は 30 分です。
2
解答は、別紙の答案用紙に記入してください。
3
答案用紙への記入およびマークは、次のようにしてください。
ア 氏名は必ず記入してください。
イ 受験番号および生年月日は、所定欄に横書きし、該当箇所をマークしてください。
TOKYO・YOKOHAMA・OSAKA・KYOTO・NAGOYA・FUKUOKA
法 令 等
[問題 1 ~問題10は択一式 ( 5 肢択一式)]
問題 1 行政法の一般原則に関する次のア~オの記述うち、誤っているものはいくつある
か。
ア 法律による行政の原理の下において、
国が特定の者に対して補助金の交付を行う
場合には、侵害留保説によれば、補助金交付の根拠となる法律を定める必要はな
い。
イ 行政機関が定立する規範であっても、
国民の権利義務に直接関係しない性質を持
つ行政規則は、行政機関が法律の根拠なくして定立することができる。
ウ 通達は、上級行政機関が下級行政機関・職員に対してその職務権限の行使を指揮
する等のために発するものであるから、当該職務権限の行使を規律する法令の中
に通達を発することができる旨の規定がない場合には、上級行政機関はこれを発
することができない。
エ 行政行為が名宛人にとって利益なものであったときには、
当該行政行為を行った
行政庁自身が後にこれが当初から違法であったと認識したとしても、当該行政庁
は、取消しを認める旨の明文の規定がない限り、職権をもって当該行政行為を取
り消すことはできない。
オ 行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴い将来に向かって撤
回する場合、当該行政行為の根拠となる法令に撤回を認める明文規定がないとき
であっても、当該行政庁は、当該行政行為を撤回することができる。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
- 1 -
問題 2 行政裁量に関する次のア~エの記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照ら
し、正しいものの組合せはどれか。
ア 違法な高層マンションにより日照等を阻害されている周辺住民が、
行政庁に対し
てマンションの違法部分の是正命令を建築主に出すよう求める訴訟において、当
該是正命令について法令により行政裁量が認められる場合、裁判所が行政庁に対
し一定の処分をすべき旨を命ずる判決をするためには、行政庁がその処分をしな
いことが、裁量権の範囲を超え、またはその濫用となると認められることが必要
である。
イ 公立学校の学校施設の管理者が当該施設の目的外使用を許可するか否かは、
原則
として管理者の裁量にゆだねられ、学校教育上支障がないからといって当然に許
可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的および用途
と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許
可をしないこともできる。
ウ 在留外国人の在留期間の更新不許可処分に関し、法務大臣の「在留期間の更新を
適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断について、法務大臣に
広範な裁量が認められるとしたうえで、その判断が全く事実の基礎を欠きまたは
社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の
逸脱、濫用として違法とすることができるとした最高裁判所の判決は、いわゆる
効果裁量を承認する趣旨であると解される。
エ 公務員の懲戒処分については、懲戒権者の裁量が認められているが、裁判所がそ
の処分の適否を審査する場合、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分をすべ
きであったか、またはいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、そ
の結果が懲戒権者の行った懲戒処分と異なる場合には、懲戒処分を違法として取
り消すことになる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ
- 2 -
問題 3 行政手続法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 地方公共団体の機関がする処分で、その根拠となる規定が条例または規則に置か
れているものは、行政手続法の適用はない。
2 行政手続法は、審査基準については定めるものと規定するが、処分基準について
は定めるよう努めなければならないと規定するにとどまる。
3 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当でないと認めるときを
除き、公開する。
4 行政指導に携わる者は、
その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、
不利益な取扱いをしてはならない。
5 公務員に対する懲戒処分について、行政手続法の定める不利益処分に関する規定
の適用はない。
問題 4 行政手続法に定める意見公募手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 命令等制定機関は、法律の施行期日について定める政令を定めるとき、行政手続
法第 6 章の規定に従い、意見公募手続を実施しなければならない。
2 命令等制定機関が実施する意見公募手続において、我が国に在留する外国人は意
見提出をすることができない。
3 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、必ず当該命令等の案およ
びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先および意見の提出のため
の期間を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
4 意見公募手続を実施する場合には、やむを得ない理由があるときを除き、命令等
の案および関連資料の公示の日から 30 日以上意見提出期間を確保しなければなら
ない。
5 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出
期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見に拘
束される。
- 3 -
問題 5 処分性に関する最高裁判所の判決についての次のア~オの記述のうち、正しいも
のはいくつあるか。
ア 市町村の長が住民基本台帳法に基づき氏名等の事項を住民票に記載する同法所
定の行為には、処分性が認められるから、出生した子につき住民票の記載を求め
る親からの申出に対し市町村の長による当該記載をしない旨の応答には、処分性
が認められる。
イ 労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給または不支給の決定は、
被災労働
者またはその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、
処分性が認められる。
ウ 特定行政庁が建築基準法に基づいて行う 2 項道路の指定は、
それが告示による一
括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果と
して具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影
響を与えるものであるから、処分性が認められる。
エ 過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者が、登録免許税法に基づいて、登
記機関に対し税務署長への還付通知を行うよう請求した事例において、登記機関
が当該請求を拒否する旨の通知を行った場合、当該拒否通知は、登記等を受けた
者に対して簡易迅速に還付を受ける手続を利用することができる地位を否定する
法的効果を有するから、処分性が認められる。
オ 食品衛生法に違反する旨の検疫所長の通知は、
この通知により直ちに輸入許可が
得られないという法的効果が発生するわけではないから、処分性が認められない。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
- 4 -
問題 6 行政事件訴訟法に定められた仮の救済に関する次の記述のうち、妥当なものはど
れか。
1 執行停止は、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避け
るため、他に適当な方法がないときに限り、することができる。
2 仮の義務付けの申立てについて、裁判所は、一定の場合には、義務付けの訴えの
提起がなくても、仮の義務付けを命ずることができる。
3 裁判所は、仮の差止めを命ずる決定をする場合は、あらかじめ申立人の相手方の
意見をきかなければならない。
4 執行停止は、本案の訴えが適法に係属しているか否かを問わないのに対して、仮
の差止めは、本案の訴えが適法に係属していなければすることができない。
5 執行停止の決定については第三者に対しても効力が認められるのと同様に、仮の
義務付けおよび仮の差止めの決定についても、第三者に対して効力が認められる。
- 5 -
問題 7 国家賠償法に関する次のア~オの記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照
らし、正しいものの組合せはどれか。
ア 外国人が被害者である場合、国家賠償法は、1 条の責任についてのみならず、2
条の責任についても、相互の保証があるときに限り本法の規定を適用するとして
いる。
イ 国家賠償法 4 条には「民法の規定」と定められていることから、公務員の失火に
よる国または公共団体の損害賠償責任については、重大な過失がある場合にのみ
責任を負うことを定めた失火責任法の規定は適用されず、当該公務員に重大な過
失がなくとも、国または公共団体は賠償責任を負う。
ウ 国家賠償法には過失相殺に関する規定がないところ、国家賠償法 4 条において
「民法の規定」が適用されると定めていることから、民法の適用により、損害の
算定につき過失相殺を行うことができる。
エ 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法または公害健康被害の補償等に
関する法律に基づき、水俣病と認定すべき旨の申請を知事に行ったものの、何ら
の応答処分を相当期間内に受けなかったという場合、処分に必要な期間に比して
更に長期間にわたり遅延が続いたといえるときには、常に国家賠償法に基づく損
害賠償請求が認められる。
オ 国家賠償法 1 条により国または公共団体が損害賠償責任を負う場合で、
公務員の
選任・監督にあたる者(以下、「事務処理者」という。)と、公務員の俸給、給与
その他の費用を負担する者(以下、「費用負担者」という。)とが異なる場合、事
務処理者が公務員の選任および監督につき相当の注意をしたとき、または相当の
注意をしても損害が生ずべきであったときは、費用負担者のみが損害賠償責任を
負う。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ
- 6 -
問題 8 国家賠償法 2 条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤ってい
るものはどれか。
1 国家賠償法 2 条 1 項にいう設置・管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性
を欠いていることをいい、当該瑕疵に基づく国および公共団体の損害賠償責任につ
いては、国および公共団体が無過失であることが免責事由になることはない。
2 点字ブロック等のように、新たに開発された視力障害者用の安全設備を駅のホー
ムに設置しなかったことが、当該駅のホームに係る設置または管理の瑕疵に該当す
るかを判断するに当たっては、その安全設備が、全国的ないし当該地域における道
路および駅のホーム等に普及しているかどうかをも考慮する必要がある。
3 国道に故障車が 87 時間にわたって放置されていたところ、夜間に原動機付自転車
が故障車に追突した事故について、道路管理者が、故障車が放置されていたことを
知らずに道路の安全保持のために必要な措置を全く講じなかったという場合であっ
ても、道路の管理に瑕疵があるとはいえない。
4 幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から降りようとしたために転倒してき
た審判台の下敷きになって死亡した事故において、このような幼児の行為が当該審
判台の設置管理者の通常予測し得ない異常なものであった場合は、審判台の設置管
理者は、当該事故につき損害賠償責任を負わない。
5 未改修河川または改修の不十分な河川の安全性は、財政的、技術的、社会的制約
のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応する
いわば過渡的な安全性をもって足り、道路その他の営造物の場合とは、その管理の
瑕疵の有無についての判断基準もおのずから異なったものとならざるを得ない。
- 7 -
問題 9 条例に関する地方自治法の規定について、次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 条例とは、普通地方公共団体の長が制定する自主法である。
2
市町村および特別区は、当該都道府県の条例に違反して事務を処理した場合で
あっても、その事務の処理が地方公共団体における民主的かつ能率的な行政の確保
のために必要であるときは、市町村の行為は無効とならない。
3 市町村の議会の議員の定数は、条例で定められるが、都道府県の議会の議員の定
数は、法律で定められる。
4 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要がある
と認めるときにおいて、指定管理者に当該公の施設の管理を行わせるには、規則に
よってその旨を定めなければならない。
5 普通地方公共団体には原則として議会が置かれるが、町村は、条例で、議会を置
かずに選挙権を有する者の総会を設けることができる。
- 8 -
問題 10 産婦人科医Xは、A県医師会Yから、人工妊娠中絶等を行う指定医師としての指
定(母体保護法 14 条 1 項)*を受けていたが、人工妊娠中絶の時期を逸した女性に
出産を勧め、新生児を第三者の実子としてあっせんする行為を繰り返していた。X
が医師法違反、公正証書原本不実記載・行使の罪で罰金刑に処されるに至り、Yは
Xの指定を取り消すことを検討している。この事例に関する次の記述のうち、誤っ
ているものはどれか。なお、母体保護法には、行政手続や訴訟に関する特段の定め
はなく、また、人工妊娠中絶等を行う指定医師の指定は行政手続法上の「申請に対
する処分」に、指定の取消しは「不利益処分」に当たる。
1 YがXの指定を取り消す場合、行政手続法に基づき、Xに対して不利益処分の理
由を提示する必要がある。
2 YがXの指定を取り消す場合、行政手続法に基づき、Xに対して弁明の機会を与
える必要がある。
3 YがXの指定を取り消した場合、Xは当該処分を対象として取消訴訟を提起でき
るところ、この際の被告はYである。
4 YがXの指定を取り消した場合、当該取消しは、講学上の撤回に当たる。
5 YがXの指定を取り消した場合、その効力は将来に向かって消滅する。
(注) * 母体保護法 14 条 1 項(医師の認定による人工妊娠中絶)
都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指
定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、
人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあ
るもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠
したもの
- 9 -
辰
已
法
律
研
究
所
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