明石昇一 郎

福島第一原発事故のあと
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明石昇一
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きるのは福島県だけなのだから。
チェルノブイリ原発事故でも、
事故翌年の1987
年から、スク
リーニングをしていないのに大人
の甲状腺がんが増加しているので
す。その過剰発生数から考えると
むしろ、子どもより大人の甲状腺
がんのアウトブレイク︵大流行︶
を警戒すべきなのです﹂
官島県は困頼みにせず、自ら検
証するよう一要請したい。それがで
今回の検証結果は、疫学と因果
推論などが専門の津田敏秀・岡山
大学大学院教授にも見てもらっ
た。津田教授は語る。
﹁私も掛暗証しようと考えていたの
ですが、先にやられてしまいまし
たね︵笑︶ O
った。ちなみに、その﹁ロ年のデ
ータ﹂が国から公表されるのは、
およそ1年先の来年6月末頃にな
るとみられる。
﹁日年のデータまで見てみないこ
とには、何とも言えない﹂
とも話していた。ならば、県が
独自に﹁口年のデータ﹂やそれ以
降のデータを調べてみればいいの
である。
だが平課長にその考えはなく、
あくまでも国︵国立がん研究セン
ター︶の公表待ち、という姿勢だ
腺がんが増加しているとなると、
﹁スクリーニング効果﹂では説明
がつかない。さらに検証を進める
ことにした。
日本全体の年齢階級別﹁甲状腺
がん﹂梶忠率は、人口問万人当た
り何人発症しているかという﹁人
数﹂で表わされる。それと同じ割
合で福島県でも甲状腺がんが発生
していると仮定して、実際の権息
数と比較する検証方法がある。疫
学の専門用語で﹁樵準化権思率比﹂
︵標準化発生率比ともいう。略称
はSIR︶というものだ。全国一平
均を100として、それよ旦高け
れば全国平均以上、低ければ全国
平均以下を意味する。
福島県の甲状腺がんについて、
された。︵提供/東京電力︶
福島第一原発から大量の放射性物質が放出
大人の申状腺かんが増えていた
福島県で増えているのは﹁小児甲状腺がん﹂だけではなかった。国の
﹁全国がん登録﹂データを検証したところ、新事実が次々と判明。福
島県当局による早急な実態調査が望まれる。
しようにこうじよ主ん
タ集計﹂データを使い、福島県に
おける甲状腺がん権患率を、 5歳
ごとの年齢階級別に検証してみ
た
。
現在入手可能な最新のデータ
は
、 4年前の2012
年分。日年
分以降が公表されるまでにはしば
らく時間がかかる見込みのため、
手始めに侃年からロ年までの5年
聞のデータを精査した。その結果
が、左ペ1ジの表である。
ロ年の欄を見てほしい。太ゴシ
ックで強調してあるのは、日年以
前と比べてロ年のデータが際立っ
て増えている年齢階級だ。
中でも、男女ともに増えている
のは﹁
歳﹂﹁日1ゆ歳﹂﹁
歳﹂﹁必1却歳﹂﹁
歳﹂﹁河1
百歳﹂の六つの年齢階級。彊罵
で増えているのは﹁小児甲状腺が
ん﹂だけではないのは、一目瞭然
だろ、っ。
かった
若年層での甲状腺がんの増加
は、症状が何も出ていない人にま
で範囲争広げて甲状一腺検診を行な
うことによって、がんの発見率が
高まる﹁スクリーニング効果﹂に
よるものだと、これまで説明され
てきた。
しかし、甲状腺検診の対象外で
ある初歳以上の年齢階級でも甲状
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あかししようじろう・ルポライター。
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号
)
週刊唯眼目
きっかけは、小児甲状腺がん
なム刀どお
の娘を持つ一稲島県中通り地方在住
の女性の証言だった。
﹁福島県立医科大学附属病院を受
診するたびに、甲状腺の患者が増
えているような気がするんです。
最近は、若い子だけでなく大人の
患者も目につくんですね﹂
修女の娘は一裕島第一原発事一故発
生時、時歳未満の学生で、同原発
事故後の﹁県民健康調査﹂に基づ
く甲状腺検診で甲状腺にがんが見
つかっていた。今年3月末現在、
小児甲状腺がん、またはその疑い
がある子どもの AH
計は172人に
上っている。今年9月には、県立
医大に甲状腺がん治療を目的とし
た新施設も主成する壬定だ。
だが開決腺がんは、子どもに限
った病気ではない。ついに福島県
の大人たちの慌でも、甲状腺がん
増加の兆しが現れたのか||。
そこで、今一 6月末に公表され
た国の﹁全国がん惨劇モニタリン
平均を上回ってしまっている。
植島県は自ら検証を
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まで否定しようとする姿勢は、県
民の﹁保健福祉﹂を預かる担当謀
として、いかがなものだろうか。
平課長は、
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川旧年からロ年までのSIRを計算
してみた結果は、次のとおり。
福島県羅患数 SIR
m年 男 引 位 ・
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凹年男円相花・
0
叩年男川町印・
o
什年男四百・
8
男相関・
9
回− B
この事態を、福島県当局はどう
とらえているのか。
岡県保健福祉部・地域医療認に
よれば、甲状腺がんが想定以上に
増え過ぎ、県内に九つある﹁がん
診療連携拠点病院﹂だけでは対処
できなくなるような。非常事態。
は発生していないとのことで、現
時点で何らかの草凧を講じること
写真上/[県民健康調査j検討委員会を
聞いている福島県。(撮影/明石昇二郎)
右/星北斗座長は甲状線がんの増加を知
っているのか。(提供/共同)
福島県の甲状腺がん『年齢階級別羅患率J
(
人
口 10万人あたり人)作成/明石昇二郎
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人)と比べると、いかに甲状
腺がんが弘ないかがわかるだ
ろう。(明石昇二郎)
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害考?
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:胃がん(同
率だ。ポピュラ t
48.2
人)や大腸がん(同52.1
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で計1万2926人。がん針本に
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2012
年全国男
たい
白血病(同 6.3人)といった
珍しいがんと同じ程度の発症
4E円U円U
占める割合は 1.5%に過ぎな
いという。
は考えていなかった。ただ、県立
医大に甲状腺がん治療の新施設が
定成することも﹁知らない﹂のだ
と
い
、
っ
。
発症率)は人口 10万人当た
り7
.
5
人。勝目先がん(同6.9人
)
、
・
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日本における甲状腺がん患者
数は、男3348人、女9578人
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年男
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1年男
20 2
年男
同諌の平信二課長は語る o
﹁
2011年は震災のため、病院
で検査を受けられなかった人も多
く、そんな人たちの分までロ年の
データが取り込んだ結果、増えた
ように見えるのではないか﹂
原発事故との因果関係はともか
く、甲状腺がんが増えていること
同年の年齢調整擢患率(=
什年女
円以年女
「全国がん擢患モ二世リング
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型堕杢里
担盟主塁
ここから明らかになるのは、福
島県はもともと、全国平均と比べ
て甲状腺がんの権感率が大変低い
県だったーーとい主事実だ。それ
が一市島第一原発事故の翌年に、一
足飛びに全国平均に近づいてい
た。福島県の女性に至っては、わ
ずかではあるものの、すでに全国
集計Jによると、 2012年の