「住まいの健康」を支える新型除湿機を作れ!

「住まいの健康」を支える新型除湿機を作れ!
対話が生んだ結露・カビ防止ユニット開発の記録
大命題「新商品を開発せよ」
目標は「壁掛け型」
「A3サイズ」
1998年、
ダイキン工業の商品開発者たちは、
皆一様にある大
だが、
水タンクの代わりとなる配管穴が必要だった。そこで着
フィールドテストで
夏冬の結露・カビ問題を検証
きな課題を抱えていた。ルームエアコンの普及率が高まり市場
目したのが、
エアコンの配管穴だ。過去のユーザー調査の結果
2000年冬、
実際の住宅で試作機を使ってのフィールドテスト
が飽和状態に近づく中で、
いかに強力な差別化ポイントをもった
を再分析してみると、
マンションの北側の部屋のうち約7割が、
居
が始まった。ある日、
モニター対応窓口に電話があった。結露
新商品を開発するかである。当時、
商品企画部に配属されたば
室ではなく、
納戸として使われておりエアコンが設置されていない。
が一向に改善されないという苦情だった。開発メンバーは現場
かりの香川は、
「うるるとさらら」の開発のため、
一般モニターを
また、
日当たりも風通しも悪いため、
湿気がたまりやすく、
結露とカ
へ出向き、
ヒーターの出力数やファンの回転数など、
各要素の
対象に湿度調査を行っていた。冬のエアコン暖房による室内の
ビの悩みが集中していることに気づいた。マンションのエアコン
設定を再分析した。問題は吸着ロータの水分吸着量にあるこ
乾燥について確認するためだ。その結果、
大方の予想通りほと
保有率は平均2台。一般的なファミリータイプのマンションは3LD
とがわかった。ロータの面積を拡大し、
回転数を上げることで問
んどの家庭では冬場の室内は乾燥状態にあることがわかった。
Kだから、
エアコン用の配管穴が1つ空いていることになる。壁
題は解決した。
しかし、除湿量アップにより、排気ダクト内の水
しかし、
一部の住宅では昼間から室内の窓がベトベトに濡れて
掛け型除湿機を作れば、
場所をとることもない。ルームドライヤー
分量が飽和状態に達し、
ダクト内に結露が起きた。
これには、
「う
結露していることも発見した。
の形が見えてきた。
るるとさらら」で採用したダクト内の乾燥運転を取り入れること
「冬の住まいに必要なのが、
加湿だけだと決めつけるのは早
2000年夏、
商品開発が始まった。
まず最初に決まったのは「サ
で問題を解決した。ダイキン工業が今までに培ったあらゆるノウ
すぎるんじゃないか」
イズ」だ。壁掛け商品となる以上、
小型・軽量であることが要求さ
ハウ、
技術が導入された。
この疑問が、
ダイキン工業初の結露・カビ防止商品となる「ル
れるのは必至。お客様に説明するときにわかりやすいサイズが
家庭のカビ・結露問題は冬だけのものではない。約2年に及
いい。開発チーム内での議論の末、
A3サイズが1つの目標とな
ぶ実験と検証が繰り返された。カビセンサーによる実験で、湿
った。
度を60%以下に保てば実生活の中でもカビを防止できることが
コンセプトは「水捨て不要」
デシカント技術を応用し、
A3サイズに収めるにはどうしたらい
明らかになった。
疑問を検証するためのデータ収集が始まった。正規の開発
いのか、
そのサイズに対応させたロータで十分な除湿をするに
「結露がなくなった」
「カビ臭さがなくなった」。次々と朗報が
テーマではないために、
仕事の合間をぬって細々と検証を続けた。
はどうすればいいかが課題となった。開発テーマは決まった。
舞い込み始めた。
先の見えない戦いだった。まず、
住宅のプロである工務店から
送風ファンが解決の鍵となった。「うるるとさらら」では、
室内と
話を聞くことにした。幸い滋賀製作所のショールームには工務
屋外に空気を吹き分けるために、
2つの送風ファンを配置してい
新カテゴリーの創造
店や販売店からの見学者が多い。見学に来た人に片っ端から
た。小型化するためには、
これを1つにするしかない。そこで、
安
2002年3月、
発売開始。
「いい商品だから、
もっとPRすればい
住宅の湿度について質問を投げかけた。北陸のある販売店の
定した運転で、
パワフルな風を送りだすことができるターボファン
いのに」など、
商品購入者から喜びの声が寄せられた。
担当者が言った。
を採用した。さらに、
送風ファンと吸着ロータを片側に寄せて配
ルームドライヤーは、世の中に存在しない全く新しいカテゴ
「冬になると室内が結露するので除湿したいが、
エアコンで
置することで、
乾燥した空気を室内に戻し、
水分を含む湿った空
リーの商品だ。これはダイキン工業が、
人と住まいに目を向けて
は冬に除湿できない。従来の除湿機では毎日、
水を捨てるのが
気を屋外に排出する2つの経路を確保し、
1つのファンで2つの
「住まいの健康」を支えるという新しいステージへの一歩を踏み
大変。氷点下でも使える、
水捨て不要の除湿機のようなものは
風の流れを制御可能にした。その結果、
小型化、
重量の削減が
出したことを意味している。数多くの人との対話がこの商品誕
作れないものか」
と。これが突破口になった。
実現した。
生の原動力となった。今後ダイキン工業は、
ユーザーはもちろん、
ームドライヤー」開発のきっかけとなった。
後発のダイキンが除湿機を販売するには、
強力な差別化ポイ
ントが必要である。そのポイントを「水捨て不要」
とした。除湿の
内の湿気を露点温度以下にして凝縮し、
水に変えて捨てる方
式だった。ルームドライヤーでは、
室内の湿気をデシカントロータ
ら、
この商品をよりいいものにしていきたい。そして、
新しい暮し
■ダイキン独自の濃縮換気方式「デシカント除湿」
方を提案できるような商品に育ててきたいと考えている。
室内
屋外
乾いた空気
湿った空気
に吸着し、
その水分をヒーターで加熱し水蒸気に換えて屋外へ
フ
ィ
ル
タ
ー
モーター
排出している。ルームドライヤーの「水捨て不要」は強力な差別
化ポイントだ。
吸
着
・
パ
ー
ジ
再
生
デシカント
エレメントに
水分吸着
送
風
フ
ァ
ン
連続自動運転
適度な湿度に
コントロール
こんな場所&こんなお客様に「ルームドライヤー」
湿気
日当たりの悪い
部屋の湿気対策に
●北側に面しているお部屋
●高層住宅の低層階部分
●地下室 ●ピアノを置いて
いる部屋
結露
冬の結露が気になる
お部屋に
●寒冷地域、
ファンヒーター
使用のお客様への
結露対策に
うるるとさららの
湿度コントロール
技術を応用
ヒ
ー
タ
ー
湿った空気+排熱
収納
衣類・布団の
湿気対策に
●戸建住宅、
マンションの
納戸部屋
●旅館、ホテルの布団部屋
モ
ー
タ
ー
壁
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年中パワフル除湿
住宅のプロである工務店や住宅関係者の意見を参考にしなが
仕組みとして採用したのは、
「うるるとさらら」の基幹技術にもな
っているデシカント方式だ。従来の家庭用除湿機の多くは、室
水捨て不要
香川 早苗 かがわさなえ
ダイキン工業株式会社 滋賀製作所
空調生産本部 商品開発グループ
<職歴>
平成4年入社、
デザイン部門に配属後、平成11年に設計
部門に転籍。平成12年ルームエアコン「うるるとさらら」
の開発チームの一員として、訴求戦略を担当。その後、
家庭用新商品戦略担当として「ルームドライヤー」を企画・
発案。現在は、空気清浄機「光クリエール」を中心とする、
家庭用空気商品戦略を担当。
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