平成28(2016)年度リカレント教育・公開講座 建築構造における最新の設計法 ∼外力に対する建物の保有性能の考え方∼ 2011年の東北地方太平洋沖地震,2016年の熊本地震のような巨大地震は,建築構造物に甚 大な被害をもたらしました。前者は広域にわたり長時間の震動を,後者は特定の地域にごく短 期間に複数回の震動を生じており,地震動の複雑さと多様さを示したものでした。1回目の地 震動では耐えたものの,2回目,3回目の地震で倒壊したケースがあった。従来の耐震設計で は,許容応力度設計をベースにした保有水平耐力設計・塑性設計であるが,これらは一方向( 単調)外力によるものであり,これらの地震による被害を想定したものではない。本講義では ,最新の地震工学・建築構造工学の知見を動員しつつ,未来の耐震設計のあるべき形を示すも のである。 日時:2016年8月4日(木)8:50-17:50 場所:東北大学青葉山東キャンパス人間・環境系教育研究棟102講義室 時間割及び講義要目(詳しい講義内容は裏面をご覧ください) 8:50-10:20「地震荷重と地震被害」 講師:源栄正人教授 10:30-12:00「建築物の風応答と風荷重評価」 講師:植松康教授 13:00-14:30「鉄筋コンクリート造建築物の耐震設計の最新の動向」 講師:前田匡樹教授 14:40-16:10「鋼構造建築物の許容応力度設計から許容変形設計へ」 講師:木村祥裕教授 16:20-17:50「構造設計の新しい視点」 講師:金箱温春氏(金箱構造設計事務所 代表取締役, 工学院大学特別専任教授,東京工業大学連携教授) 受講料:2,000円 申込方法: 受講申込書をWebからダウンロードし,必要事項を記入の上,所定の受講料 を添えて,下記の申込先宛に郵送または直接持参してください。 申込期日:平成28年7月29日(金) 申込先:東北大学工学部・工学研究科教務課大学院教務係 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-04(東北大学青葉山東キャンパス センタースクエア中央棟3階) Tel:022-795-5820 Email:[email protected] Web:http://www.eng.tohoku.ac.jp/edu/extension.html 平成28(2016)年度リカレント教育・公開講座 建築構造における最新の設計法 ∼外力に対する建物の保有性能の考え方∼ 8:50-10:20「地震荷重と地震被害」源栄正人教授 過去の地震被害を踏まえた地震荷重の変遷,および3.11後の地震荷重の変更点と被害の実 態を踏まえた地震荷重設定の課題と展望,さらに,国際視点から諸外国の耐震規準との比較に よる我が国の地震荷重の位置づけについて述べる。超高層・免震建物など特殊構造物の耐震設 計や地震リスク評価のための地震動評価手法について,国際的な動向も含め概説する。 10:30-12:00「建築物の風応答と風荷重評価」植松康教授 近年,超高層建築物や大スパン構造など,風の動的作用に敏感な構造物が多く建設されるよ うになった。また,低層建築物では,相変わらず強風被害は減っていない。風応答や風荷重を 評価するには,風のもつ時間的・空間的変動特性を適切に考慮する必要がある。建築物の耐風 設計において利用される日本建築学会「建築物荷重指針」が2015年に改訂された。前回の改 定(2004)以降の新しい研究成果に基づき,新しい考え方がいくつか導入されたほか,規定値 の見直しも行われた。 本講義では,建築物荷重指針の改定を中心に,建築物の風応答並びにその荷重評価について ,最新の知見を講義する。 13:00-14:30「鉄筋コンクリート造建築物の耐震設計の最新の動向」前田匡樹教授 我が国の鉄筋コンクリート造建築物の耐震設計法は,許容応力度設計(1次設計)と保有水 平耐力計算(2次設計)によっている。1982年に導入された保有水平耐力計算は,手計算が 一般的であった時代に開発された終局強度計算の手法である。一方で,近年は電算プログラム を用いた構造計算・構造設計が主流になり,新しい破壊性状や強度・性能評価法も開発されて いる。 そこで,本講義では,鉄筋コンクリート造建築物の保有水平耐力計算の最新の知見や考え方 ,建築学会の規準などについて講義する。 14:40-16:10「鋼構造建築物の許容応力度設計から許容変形設計へ」木村祥裕教授 鋼構造は,高強度・高靱性であり,薄板断面部材で構成されることから,「座屈」に対する 設計が重要である。現在,中地震に対しては許容応力度設計,大地震に対しては保有水平耐力 設計が行われるが,これらはベースシア係数C0とDsによる耐力設計を基本としてきた。一方 で,地震エネルギーを吸収する制振部材が取りつく制振鋼構造では,従来の耐力設計では評価 できないことから,変形制限による設計が必要となる。 本講義では,鋼構造建築物の許容応力度設計・保有水平耐力設計から変形制限設計へのプロ セスについて,設計法の成り立ちと最新の知見を講義する。 16:20-17:50「構造設計の新しい視点」金箱温春氏 20世紀は近代建築が花開いた時代であり,普遍的な合理性に基づく構造設計が目指された 。21世紀に入って十数年が経過し,これまでと異なる社会状況を受けて建築や構造の目指す ものが変わりつつある。これからの建築・構造には,環境配慮,自然災害からの安全確保,多 様で複合化する建築,建築生産システムの変化などの視点が重要と思える。構造設計で扱う具 体的な領域としては,中大規模木造建築,耐震改修,地震に対する性能設計,非構造部材の安 全確保などが加わって広まりを見せ,新たな視点での 構造設計・構造デザイン を考える必要 もある。こうした視点に基づいた構造設計事例を紹介し,これからの構造設計を考える。
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