概要集 - 愛知教育大 三浦研究室

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超潤滑系の物理
超潤滑系の物理
愛知教育大学 物理領域
三浦 浩治
Physics of Superlubrication System
Kouji Miura, Department of Physics, Aichi University of
Education
本講演では、グラファイト及び C60 単層膜をグラファイトにインタ
ーカレートした試料でおこる超潤滑現象に焦点を当てる。
(1) グラファイト表面における超潤滑[1,2]
グラファイト表面における超潤滑[1,2]
探針(プローブ)とグラファイト表面の間で生じる摩擦力像は、
探針(プローブ)とグラファイト表面の間で生じる摩擦力像は、
グラファイト表面の原子構造を反映したものを与える。この像は荷
重に依存してドラステックに変化する。さらに、物体を引っ張るた
めのばねの強さ K p が、滑り方向の相互作用ポテンシャルによるばね
の強さ(相互作用ポテンシャルの2次微分係数) K w より相対的に大
きい場合には摩擦力ループに履歴がなくなる。このときこの系では
エネルギー散逸は起こらず、平均摩擦力(時間平均)がゼロになる。
グラファイト表面間の摩擦力においても、ある滑る方向を選択する
グラファイト表面間の摩擦力においても、ある滑る方向を選択する
と時間平均摩擦力がゼロの場合が起こる。どちらの場合も、滑り方
向のポテンシャルバリアが極めて小さく、 K p > K w を満たしている。
(2) C60 フラーレンをグラファイトにインターカレートした膜の超潤
滑[3,4]
C60 フラーレン分子は、化学処理、熱処理によって簡単にグラファ
イトの中にインターカレートすることができる。この試料は、グラ
ファイト単層膜(グラフェン)と稠密構造をもつ C60 単層膜が交互に
積層した構造をもつ。図に、この構造モデルとこの試料からの摩擦
力像、摩擦力ループを示す。面白いことに、100nN
力像、摩擦力ループを示す。面白いことに、100nN(
100nN(GPa の圧力に相
当)以下の荷重では、摩擦力はノイズレベルで常にゼロを示す。こ
の場合、(1)
の場合、(1)で示したグラファイトの場合と異なり、時間平均摩擦力
(1)で示したグラファイトの場合と異なり、時間平均摩擦力
ではなく、定常的に摩擦力がゼロである。荷重 100nN では、C
では、C60 フラ
ーレン分子のグラフェンによる圧縮により、回転や転がり等の自由
度が失われ、C
度が失われ、C60 単層膜を反映した摩擦力像が出現すると同時に有限
な摩擦力が発生する。
(3) 超潤滑機構
系のエネルギー散逸をなくすに
は、(1)
は、(1)で述べたように、物体を引
(1)で述べたように、物体を引
っ張るためのばねの強さ
っ張るためのばねの強さ K p が、滑
り方向の相互作用ポテンシャルによるばねの強さ K w より大きけれ
ばよい。このときは、摩擦力は時間平均的にゼロになる(動摩擦ゼ
。C
C60 フラーレン分子を介在させた場合、分子の回転、転がるな
ロ)。
どの自由度が増えることにより、滑り方向のポテンシャルバリアを
ゼロにしている可能性がある。このときには、定常的に摩擦力ゼロ
を示す(静摩擦、動摩擦ともにゼロ)。
[1] N. Sasaki, K. Kobayashi, M.Tsukada,
M.Tsukada, Phys. Rev. B54
B54(1996)
54(1996)
2138.
[2]
[2] K. Miura, N. Sasaki, S. Kamiya, Phys. Rev. B41(2004) 075420.
[3] K. Miura, S. Kamiya, N. Sasaki, Phys.Rev. Lett., 90 (2003)
055509.
[4] K. Miura, D. Tsuda, N. Sasaki,eSasaki,e-J. Surf.Sci. Nanotech. 3
(2005)21.