臨 床 Ⅱ (第2部) 一 般 演 題 看 護 部 門 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第 2 部) ① 離島での心肺停止から現職復帰を果たした AMI 患者の 1 事例 対馬病院 看護部 3 階東病棟 ○犬束 聡美 熊本 康子 八坂 るみ 1.はじめに 対馬において CAG、緊急 PCI が行なえる施設は当院だ けで、地理的条件もあり、119 番通報から病院に到着す るまで 30 分以上 60 分未満の地域が殆どを占る。今回 60 分以上かかる地域の方で、心筋梗塞の疑いで搬送途中に VF・心肺停止となったが、治療後に現職復帰している患 者(以下 A 氏)を経験した。A 氏の経過で現職復帰でき た要因に何が必要であったか比較し、検証したので報告 する。 2.対象と方法 対象は院外心肺停止から PCI 施行後、独歩で退院した患 者 A 氏で方法は、搬送にあたった消防署職員による聞き取 り調査(インタビュー形式)で A 氏の搬送時間・車内での 経過、N 病院を経由した理由を聴取。入院カルテからの情 報収集(記録・心カテ記録、心拍再開前後のバイタルサイ ン・意識レベル・処置、心臓リハビリテーション状況)AHA の救命の連鎖①から⑤に沿って検証する。 3.結果 救命の連鎖①心肺停止の即時の認識と救急対応シス テムへの迅速な出動要請については、胸痛を主訴に家 族が心肺停止前に救急通報し、救急搬送時間は 57 分で あった。救急車内での心肺停止であり即時の認識がで きた。救命の連鎖②胸骨圧迫に重点を置いた迅速な CPR 救命の連鎖③迅速な除細動については、救急救命 士同乗であり、3 点誘導のモニター心電図を装着して おり、意識消失・モニター上 VF であったため CPR は直 ちに行われ、AED を使用し、3 分後にはショックを施行 し、意識清明となった。救命の連鎖④効果的な ACLS については、 搬送途中に N 病院経由し静脈路確保行い、 22 時 03 分の当院到着後にはチームリーダーの医師の 下、事前連絡で集まっていたスタッフ・居合わせたス タッフ含め、医師 6 名、コメディカル 7 名により ACLS のアルゴリズムに沿って対応できた。⑤心拍再開後の 治療の統合については緊急 PCI 行い RCA1 が完全閉塞後 26 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第 2 部) ① 100%再灌流された。除細動を治療前に 5 回(搬送時含め)、PCI 治療中に 10 回、PCI 治療後に 1 回施 行された。低体温療法を行い、26 時間で復温できた。第 6 病日意識レベル清明と判断され第 30 病日 独歩にて退院された。 4.考察 患者を助け得て、現職復帰ができた要因として AHA のガイドライン救命の連鎖①から⑤すべてにおいて合 致していた事が検証できた。また、対馬という地形上 の特性を家族の判断で中継搬送を選択したこと、救急 救命士の AED の使用制限を加味し、N 病院へ連絡をと り医師が同乗し静脈路確保行ったことも、プレホスピ タルからの連携がなされており、本事例の救命できた 事の一端であると考える。今回 A 氏が救命・現職復帰 できた最大の要因は診療応援の日であったこと、夜間 産婦人科の手術後で外科医・産婦人科医共に来棟中で あったことで通常時よりもマンパワーが充実しており、 CPR と PCI が同時進行できたことであると考える。 5.まとめ 救命の連鎖 5 つの要因すべてにおいて一致していた。家族・救急救命士による迅速かつ的確な判断 があった。マンパワーの充実により CPR・PCI の同時進行が行えた。 【質疑応答】 ○フロア:島原病院の中島と言います。 最近、上対馬病院の先生と話す機会があって、そのとき疑問に思ったんですけど、対馬で 心カテを行えるのは対馬病院だけということで、対馬の北部のほうで胸痛などの急患があ ったときに、上対馬に運ばれてそこで心カテの必要性が指摘されて南の対馬病院に運ばれ るということが結構あったというお話をお聞きしまして、その対策は必要ということを先 生はおっしゃっていたんですけど、今、例えば心電図を先に送って判断をされるとか、上 対馬病院に運ばれる前に優先して対馬病院に運ばれるような取り組みはされているんでし ょうか。 ○犬束 :昨年度、対馬市のほうで予算が下りましたので、救急隊のほうに 12 誘導心電図をとるポ ータブルの機械が配置されていますので、現場でエピソードなどを救命士の方が聞き取り 調査をして、心臓疾患が疑われる場合は 12 誘導を現場で付けて、それを当院のほうに送っ ていただいて、その心電図を見てというような判断ができるようにはなっております。 ○フロア:ありがとうございます。 27 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第2部) ② 僻地離島における中核病院での摂食嚥下リハビリテーションの 7 年間 ―多職種によるチーム作りと地域連携― 五島中央病院 摂食・嚥下障害看護認定看護師 ○久保 桂 1.はじめに 長崎県五島中央病院は五島列島の五島市にあり、人口は約 39,200 人、高齢化率は国が約 23%に対 し、五島市は約 34%を締め、3 人に 1 人が高齢者となっている。 その中で、当院は病床数 304 床の総合病院で、離島の中核病院となっている。そのため、多種多様 な役割があり、高齢化が進む中摂食嚥下リハビリテーション(以下嚥下リハ)に対するニーズも高い。 摂食嚥下においてチームアプローチは重要であるが、当院には中心的な役割を担う摂食・嚥下障害 看護認定看護師や言語聴覚士、歯科医師は院内不在であった。そこで、院外の言語聴覚士に協力を仰 ぎ連携を図り、嚥下チームとして活動を開始した結果、現在は多職種によるチーム構成となり、地域 への働きかけも可能となった。今回は 7 年間の嚥下チームの活動経緯と内容を報告する。 2.経過 H20 年 5 月、老健施設に勤める言語聴覚士に嚥下チームへの参入を依頼。院内の医師、看護師、管 理栄養士、理学療法士、作業療法士、介護職で嚥下チームを立ち上げ、週 1 回の嚥下ラウンドを開始 し、摂食機能療法マニュアルを作成した。それに伴い、院内のスタッフを対象に勉強会を開催し、知 識や技術の向上を図った。また、当院にはスポンジブラシしか口腔ケア用品がなかったため、売店で 様々な種類の口腔ケア用品を揃えることができるよう整備した。 食事に関しては、嚥下訓練に対応できるよう、ゼリー食、ゼリー粥、柔らか食などを導入し、従来 からあったペースト食や刻み食においても見た目を考慮した食事を提供できるようにした。現在は周 辺の施設においてもゼリー粥の普及がなされている。 評価はスクリーニングテストが主であったが、H21 年 3 月に耳鼻咽喉科の協力で嚥下内視鏡検査が 可能となる。さらに H25 年 12 月より放射線科の協力で嚥下造影検査が可能となった。外来では他の病 院の患者や施設入所の方、在宅の方を対象に診察しており、同時に食形態や摂取方法のアドバイスを 行っている。 H22 年 6 月には歯科診療所の歯科医師に協力を仰ぎ、チームメンバーに参入する。依頼方法は、院 内の医師や看護師から歯科診療所の歯科医師に直接診察を依頼し、時間日程を調節したのち、患者が 歯科診療所を受診するか、もしくは歯科医師が病院まで往診に来るという方法をとっている。このこ とにより、義歯の調節だけでなく、PLP、PTP の作成が可能となった。同年、チーム所属の看護師が摂 食・嚥下障害看護認定看護師を取得し、院内での教育基盤が充実。周辺施設に対しては H24 年 6 月よ り定例研修会を開催。周辺施設との連携は、NST 摂食嚥下情報提供書を作成し情報共有している。H25 年には、耳鼻咽喉科の協力で長崎大学病院の医師を招き、ワレンベルグ症候群の患者に対し当院で初 めての輪状咽頭筋切断術を施行する。 H26 年、長崎大学病院の歯科医師が不定期に嚥下ラウンドへ参加し、アドバイスをいただいている。 また、このことをきっかけに長崎大学病院と五島市保健所が共同主催となり地域施設を対象にした勉 強会も開催されることとなった。 3.結語 当院の嚥下チームは院外スタッフとの連携で成り立っている。このチームで活動してきたことで院 内の嚥下リハを充実させることができた。また、周辺施設のスタッフを対象とした講習や NST 摂食嚥 28 臨床Ⅱ ●一般演題● 看護部門(第2部) ② 下情報提供書の利用効果もあり、地域での認知度も高まってきている。 【質疑応答】 ○フロア:上五島病院の山野則子と申します。 久保さん、貴重な講演をありがとうございました。 私も一昨年、久保さんと同じ摂食嚥下障害認定看護師を取得して、認定看護師としての活 動の難しさを日々感じながら活動しています。看護師さんが継続していくための久保さん の関わりというのを教えていただきたいんですけど、よろしくお願いします。 ○久保 :ご質問ありがとうございます。 継続というのが一番の課題だと思うんですよ。勉強会を 1 回、2 回開催したとしても、そ のときだけで忘れられてしまうということが結構多々ありますので、私が特に心がけてい るのは、一人の患者さんを通して成功体験を積み重ねていって、患者さんがよくなる喜び を感じていただいて進められていったらいいのかなと考えています。 でも、自分一人だけでは結構きついというのもあるので、今からの課題としては、嚥下リ ハをできるようなコアスタッフを育てていかないといけないのかなと考えております。こ れからの課題にしたいと思っています。 ○フロア:ありがとうございました。 29
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