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軸ねじれ検証装置の製作
学生員
小白方 猛
正員
藤田 吾郎
(芝浦工業大学)
Production of Torsional Oscillation Test Device
Takeshi Koshirakata, Student Member, Goro Fujita, Member (Shibaura Institute of Technology)
1. はじめに
米国・モハベ発電所で発生した軸ねじれ共振現象による
回路,他系統を模擬する同期発電機から構成される。
図 2 は多質点系のタービン発電機の構成を示している。
タービン部分は単相誘導電動機 (4 極,3 相 200V 用を単相
軸破損事故以来,軸ねじれに関する多くの研究が行われて
100V で使用) で模擬し,最大 3 台までの直結運転が行える。
いる。その内容は多岐にわたり,
各電動機間および電動機と発電機間は,直結およびバネに
(1) 制御系との相互干渉
よる接合のいずれも可能である。
(2) 直列コンデンサ補償送電系統との副共振
(3) 系統操作による軸疲労
などに大別される。その定式化は比較的容易であるため,
SM
RLC回路
他のタービン発電機
T
タービン発電機
研究は主として計算ベースで行われるが,実験データとの
負
荷
比較は十分とはいえない。特にサンプリング周期や非線形
性などについての考察が不足していると考えられる。
ねじれ検出
測定器
このなかで実測値を収集した文献 [1] は,実験装置につい
PC
電圧・周波数測定
ても詳述した貴重な例であり,本研究の参考となっている。
この論文では
(1) 軸ねじれ自然周波数とモード形状の測定
(2) 負荷を変化させた場合の制動係数の値
図 1 実験装置全体の構成
Fig.1. Configuration of experimental system
(3) 軸ひずみと回転偏移信号との関連付け
SM
(4) 送電線に電気的過渡現象に対するタービンの機械的
応答の測定値と計算値の関連付け
IM
IM
IM
系統側へ
などが行われている。本研究でも同様の検証を行い,また
今後の軸ねじれ関連の検証を行うために,実験装置を製作
最大4ヶ所まで測定可能
する。その構成は
(1)
軸ねじれを模擬するためのバネ結合原動機群
(2)
単相同期発電機
(3)
系統を模擬する RLC 回路
(4)
他系統との同期運転を行うための単相同期発電機
測定器
PC
図 2 タービン発電機の構成
Fig.2. Configuration of turbine generator
である。従来この種の実験は 3 相 200V∼数千 V の範囲で
行うのが通常であるが,本研究では電源電圧を単相 100V,
系統電圧を 12∼24V と設定することで,コンパクト化を
図っている。また,軸ねじれ振動は通常数十 Hz であるが,
3. 測定条件
全体の回転速度はタコメーター (サンプリング周期 0.1
バネと測定装置の都合により,数 Hz になっている。結果
[s]) で測定を行う。また各軸点に設けた円板とフォトカプ
として測定が非常に容易になり,検証実験が簡単に行える,
ラにより回転位置の検出を行い,データ処理を行うことで,
またグラフからではなく目で見てもその現象が把握できる
任意の回転角度偏差を計算している。バネ係数は 0.126[N・
というメリットがある。
m/rad] 程度であり,以下の模擬テストでは ±20 [deg]程度,
数[Hz] 以下の低振動が観測されるため,サンプリング周
2. 実験装置の構成
図 1 は実験装置の全体を示している。多質点系のタービ
ン発電機,直列コンデンサ補償を考慮した等価 LRC 送電
期は 0.1 [ms] に設定した。計算された角度変化のサンプリ
ング周期は 0.1 [s],精度は ±0.9 [deg] である。
 0

 0
K12
d
x = x& = Ax = −

M1
dt
 K
 12
 M 2
4. 測定例
図 3 に測定結果の例を示す。図2のタービン発電機の構
成にある同期機を除く 3 台の誘導機をばね軸でつなぎそれ
ぞれの誘導機間にセンサーを入れ測定した。
3 台の誘導機を単相 100 [V]で回転させ,回転速度 24.8
0
0
K12
M1
K
− 12
M2
1 0
 ∆δ
0 1   1 
∆δ
0 0  2  (3)
  ∆ω1 


0 0 ∆ω 2 

[rps]に保ち,それぞれの誘導機に設けられた遮断器を操作
し,回転偏移の測定を行う。すなわち,外乱が発生したこ
が得られる。この A 行列の固有値より固有振動数などを計
とを模擬し,各誘導機に考えられる遮断パターンを実験に
算することができる。
より確認する。
そして,実験結果の妥当性を検証するために,ブロック
ここでは例として,中央の誘導機の ON→OFF, 両端の
線図を MATLAB/SIMULINK 上に作成してパラメータの検
誘導機の OFF→ON が行われたとき,回転位置がどのよう
討を行っている。図 4 は例として 2 質点系モデルを示して
に変動するかを示す。図 3 は中央と片端の誘導機の回転角
いる。このなかで誘導機の特性も考慮するため,そのモデ
度偏差を示している。約 2 [s]あたりで切替が行われ,最大
ル作成においては 3 相誘導機の定数算定をベースとして,
振幅 40 [deg]程度,減衰には数秒を要し,また定常偏差が
単相に換算した等価回路を用いている。
発生することが確認できる。
s lip
om ega
T
360
T e rm i n a to r1
delt a
1 /(2 *p i )
o m e g a 1 [H z}
co n ve rt1
Td
Te
355
1 8 0 /p i
In d u cti o n M o to r 1
350
d e l ta [d e g ]
co n ve rt3
1 8 0 /p i
relative angle [degree]
345
sp ri n g 1
re l a ti ve a n g l e [d e g ]
0 .1 2 6
340
sp ri n g co n sta n t [Nm /ra d ]
335
s lip
om ega
330
T
T e rm i n a to r2
delt a
1 /(2 *p i )
co n ve rt2
o m e g a 2 [H z]
Td
325
Te
1 8 0 /p i
In d u cti o n M o to r 2
320
co n ve rt4
315
310
0
0.5
1
1.5
2
2.5
time [s]
3
3.5
4
4.5
図 4 数値計算モデル
Fig.4. Numerical calculation model
5
図 3 測定例
Fig.3. Measure Example
d e l ta 2 [d e g ]
6.
むすび
本研究では軸ねじれ検証のためのミニチュアモデルを紹
5.
理論検証
介し,第1報として装置の構成について説明した。本装置
多質点系の回転の振る舞いは,よく知られているように
証などの検証も簡単に行えるようになり,これまでの理論
連立微分方程式であらわされる。
各質点の慣性モーメントを Mn,質点間のバネ定数を Km
とすると,2 つの質点間には次式の関係が成り立つ。
1
d
∆ω1 =
K12 (∆δ 2 − ∆δ 1 )
(1)
dt
M1
1
d
∆ω 2 =
K12 (∆δ 1 − ∆δ 2 )
dt
M2
(2)
ここでδn,ωn はそれぞれ各質点の変位角,回転速度を表し
ている。また,(1),(2)式より状態方程式
を使用することにより,共振現象の発生や,励磁制御の検
研究の妥当性検討に活用したいと考えている。
文
[1]
[2]
献
D. N. Walker, C. E. J. Bowler, R. L. Jackson, ‘Results of
Subsynchronous Resonance at Mohave’, IEEE Transactions on
Power Apparatus and Systems, vol. PAS-94, No.5, September /
October 1975
P. Kundor, ‘Power System Stability and Control’, McGraw-Hill
Inc, 1994