学科共通科目(2016年度) 第15回 倫理的な正しさとは何か 質問に対する回答とディスカッション 今日の予定 • • • • レポートの返却 前回の質問に対する回答 ディスカッション 学生による授業評価アンケートの実施 ウォルツァーの多元的なコミュニタリアニズム • ・・・ウォルツァーの多元的なコミュニタリアニ ズムは複雑で理解がおいつきませんでした。 説明をお願いします。 • ウォルツァーの多元的なコミュニタリアニズム はたしかに理解しにくいものです。ウォル ツァーは社会的財が優越の手段とならない社 会を目指しています。ウォルツァーの正義の 理論は、多元的であり、特定主義という形を 取ります。その際、配分的正義が問題となりま すが、配分は問題となっている財の社会的意 味との関連で正しいか正しくないかのどちらか だとされます。社会的意味は一義的に決まらな いので、正義は相対的となります。また正義は 文化に相対的であるともされます。配分にさま ざまの基準〔取り決め〕-持つこと、在ること、生 産、土地、資本、アイデンティティ、地位、成員 資格、権力、名誉等-を設けるので、非常に曖 昧になり、多元的になります。評価軸を複数設 けると評価軸同士でコンフリクトを起こす危険性 もあるでしょう。それぞれの特定の社会には、 それぞれの社会的財とそれぞれの配分の領分 があり、そのための複数の基準があるとウォル ツァーは考えます。 コミュニタリアニズムと功利主義 • ・・・コミュニタリアニズムは功利主義と似てい るという説明が分かりにくかったので、申し訳 ないのですが、もう一度教えてください。 • 「似ている」という意味は、コミュニタリアニズ ムが個人よりも共同体という全体を重視する ことと、功利主義が個人の利益よりも、集団 や社会の利益(幸福)を優先することとの類似 性を指します。 後期ロールズとコミュニタリアニズム • ・・・なぜ後期ロールズがコミュニタリアン的思 想をもったのか、リベラリズムとコミュニタリア ニズムにどのような共通〔点〕がみえるのかを、 もう一度説明してくださるとありがたいです。 • ロールズはすでに『正義論』で現代の民主社 会が多元的であることを指摘していましたが、 それを詳しくは述べませんでした。後期になっ て、政治的リベラリズムを一つの一般的な 構想として立てました。彼は政治的であるような 正義の構想を探求しました。ロールズによれば、 現代の民主社会は、両立不可能ではあるが多 様な道理に適った包括的な宗教的、哲学的、 道徳的教説を含みます。現代の民主社会は、 単に包括的な宗教的、哲学的、および道徳的 な諸教説の多元論によって特徴づけられるだ けでなく、両立不可能な、しかし道理に適った包 括的教説の多元論によって特徴づけられるの です。 ロールズの熟議民主主義 • ・・・あいまいさは確かに感じるが、ロールズの 言う「熟議民主主義」は今の日本にとって、と ても大切な事柄だ。強行採決でなく、多元的 〔多様な?〕な意見が話し合われる中で決定 が下される。しかし、〔熟議民主主義は〕日本 のような政党政治、しかも権力を握った発言 力のある一部の人間の言葉にぞろぞろ付き 従うようなものでは到底実現されるものでは ない。私がここで一番大切だと思ったのは熟 議民主主義の三つの不可欠要素〔(1)公共的 理性の観念、(2)立憲民主的諸制度の枠組み、 (3)公共的理性に従い、自己の政治的行動にお いて公共的理性の理想を実現させようとする、 市民たちが有する知識と欲求〕のうち、第三の 要素である。今回の参議院選でも、10・20代の 投票数は少なかった。これは「分からない(知ら ない)から選べない」という人が多いからだと私 は考える。今、何が問題となり、それについてど れほど情報があるのか知り、学び、そこから考 えようとしなければ熟議民主主義はいつまで たっても成りたたない。いくら様々な意見が飛び かおうとも、数の多さでは無料である。 • ・・・私はその中でもロールズの主張する公共 的理性の概念に関係する熟議民主主義とい う概念が印象的に感じた。なぜなら最近の日 本の政治では「熟議」すなわち公共的な政治 問題にかんする見解を交換し、それを支持す る理由について討議を行う姿勢が希薄になっ ているように見えるからだ。私の私見では最 近の政治では、与党は法案を通したいがあま りに、審議をさけてしまい、強行採決なんてこ ともあった。一方の野党では審議というよりは 与党批判に力をそそいでいる様に見えてしまう。 与党・野党をとわず政治家の方々には公共的 理性の観念等を意識して熟議を行い、熟議民 主主義を実現してほしいと思ってしまった。 ・残念ながら、今の日本、否世界の多くの国で は熟議民主主義が実践されておらず、代議制 民主主義は危機的状況にあります。特に、指摘 していただいた熟議民主主義の第三の要素、 公共的理性に従い、自己の政治的行動におい て公共的理性の理想を実現させようとする、市 民たちが有する知識と欲求は重要です。これを われわれはどう確保すればよいのでしょうか? 「総合科学の基礎C」レポート(石田担当分) • 「能力のある者、努力をした者にはそれにふ さわしい報酬を受け取る権利があるが、能力 のない者、努力を怠った者が不遇な状態に置 かれるのは当然である」という新自由主義的 な自己責任の考え方について、ロールズのリ ベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリア ニズムに関連づけ、現代の格差社会、能力 主義(成果主義)、税制(所得税・法人税・消費 税等)や社会保障、社会の連帯性などにも触 れて、自分の意見を述べなさい。 ディスカッションのテーマ • • • • • • 自己責任論は正しい。 →自己責任論は必要である。 自己責任論は間違っている。 →自己責任論は勝者の論理である。 →自己責任論は格差を助長している。 自己責任論は克服すべき考え方である。
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