「校長会広報196号」を掲載しました。

№ 196
平成27年1月1日 校長会広報196号
発 行・ 財団法人 宮崎県校長会館
編 集・ 宮
広
崎 県 校 長
報
委
員
会
会
雑 感 三 話
椎葉村教育長 甲 斐 眞 后 椎葉村には、広大な森林を背景に豊かな自然や数
多くの伝統文化が息づいている。これらを学校教育
に生かす一例が焼畑体験学習だ。山を切り拓き、火
を入れて山を焼き、種を撒いて収穫し、脱穀し、調
理して食べる。この一連の作業をとおして、自然へ
の畏敬や感謝、命の大切さなど、体感による様々な
教育的効果を見ることができる。
子ども達は、楽しみながら自ら意識することなく、
このような時にはこのようにすればよいという生き
方を体験から自然に学ぶのである。いつの間にか生
活哲学を身に付けていくことになる。
教育は、実に奥が深い。直ぐに結果が出ない。行
政出身の私は、教育には素人だ。しかし、現場に接
する度に新しい学びがある。
今の世相から教育環境は益々厳しくなる。これま
での価値観では、最早、激変する教育への対応はで
きまい。矢継ぎ早に進められる教育改革。現場に求
められるより高度な専門性。厳しい環境の下だから
こそ役割としての喜びがある。真剣に向き合える幸
せがある。これからも関係者のみなさんの御指導を
仰ぎ、真摯に教育行政に努めたい。
□ 夜神楽の勧め
冬は、夜神楽がお勧めだ。夜神楽で心身を清める
のも歳の始めに相応しいのではあるまいか。
諸塚戸下神楽の「山守」に面白い問答がある。生
滅滅已。寂滅楽為。涅槃経と関わりがあり神佛混淆
の古態の神楽である証だ。いろは47文字が、この
涅槃経の深遠な仏教哲学を和文化したものであるこ
とからもこの神楽の資料価値が分かる。県内の神楽
にはこのように幾多の神佛が登場する。
神楽の魅力は、技能的な舞いや資料価値にもある
が、何と言ってもその酒宴性にある。誰もが、しば
し世相の柵から解き放され、心を開き、感謝し、祈り、
その中にそのひとときを共有する。「舞えばぞ巡る。
去年よりゃ今年。尚々優る。」
□ 魔法のことば
「先生。わたし東大に通りますか。
」ある県北の小
学四年生の少女が聞いた。先生は、突然の質問に少
し面食らったが、
「そうね。それは、あなた次第よ。
」
とさりげなく答えた。おそらく先生は、そう深く考
えていなかった。しかし、この少女にはこれが大き
かった。少女は、このことを両親に嬉しそうに話し
た。両親は、顔を見合わせ、笑いをこらえながら話
を聞いた。
その日を境にこれまでとは見違えるように勉強に
打ち込む少女の姿があった。
「あなた次第よ。
」この少女にやる気を起こさせた
魔法のことばだ。相手にやる気を起こさせるのは難
しい。時として教師の導きは魔法に等しい。さりげ
ない一言。生きた言葉。素晴らしいことだ。
□ 夜汽車の出来事
夜汽車が愛知県蒲郡市で突然停止した。線路事故
が発生。一夜明けて汽車は動き出す。車両が大幅に
減らされ、九州までの長旅だ。なのに乗客は座れな
い。ある学生が小さい女の子に席を譲る。すると女
の子は、
「お兄ちゃん。ありがとう。」に続けて、
「お
兄ちゃんみたいにみんなが席を譲れば、かわり番こ
にみんな座れるね。
」学生は、「そうだね。君みたい
に優しい心があれば、みんなが座れるね。」すると
車両内の光景が一変する。あちこちで席の譲り合い
が始まり笑顔が広がった。後日、学生が自宅に帰る
と母親がとても優し
かった。「私の娘も
貴女のお子さんのよ
うに育てたいと思い
ま す。」 そ れ は、 あ
の女の子の母親から
の電話だった。母親
冥利に尽きることば
だった。
−1−
「つながりを求めて」
串間市立都井小学校 前 田 健 かつて、都井小学校は、400名を超える児童が
在籍していたという。児童数の減少で本年度は児童
数30名である。保護者や地域の方々は、「子ども
は地域の宝!」と、子どもたちに寄せる思いも格別
で、子育て、見守りに一生懸命である。学校、家庭、
地域が一体となってこそ子どもは豊かに育ち、地域
への愛、社会の役に立ちたいという心も育っていく。
子どもたちの「つなぐ心」を育てるためにも、私た
ちが、家庭や地域とつながり、よりよい教育環境を
築いていくことが大事である。
20数年前に串間市の小学校を御退職された元女
性校長先生が、毎朝、子どもたちと共に歩いて登校
を見守り、学校まで送り届けてくださる。私が子ど
もたちに声をかけると、「はいっ、校長先生の顔を
見てお話を聞くのですよ。」とおっしゃってくださ
る。有難いことである。お礼を申し上げ、学校の様
子などをお伝えして校舎に向かう。
月に1度、地域の読み聞かせクラブの方々が、朝
の時間に来てくださっている。子どもたちの心を育
て、さらに読書への意欲を高めている。年度始めに
おいでいただいた際に、このつながりを大事にして
いることをクラブの方々に申し上げた次第である。
みどりの少年団が、プランターに花を植え、感謝
の言葉を伝えながら、市役所支所、郵便局、駐在所
などに配っている。人々が、花を見て心を和ませて
もらえると有難いと思う。
異世代交流ふれあい大会では、小中学生、職員、
保護者、地域の方々が参
加し、海浜のゴミ拾い、
グラウンドゴルフやサロ
ン競技などをして楽しく
交流を深め合う。正につ
ながりをつくる絶好の機
会である。学校と家庭、
地域が互いに信頼し合え
る関係をつくるために、
これからもつながりを求
めていきたいと思う。
なかなかの凝り性
都城市立沖水小学校 別 府 英 樹 教職員の年数が人生の半分以上を占めるようにな
ってだいぶ経つ。その間、凝り性の私はいろいろな
ものに手を出してきた。仕事に役立つものもいくつ
かはあったかもしれない。
結構長かったものは木工である。夏休みになると
1週間ほど休みをもらって、テラスにこもって今年
の我が家で使えそうな作品づくりに励んだ。机、椅
子、棚、台、掲示板など大汗をかきかき挑戦した。
これは、
学校でも役立つことになった。収納ボックス、
テント立て、掲示板、作品額、図書机、パーティシ
ョンなど、今でもいくつかの学校に処分に困る作品
として残っていると思う。
花作りに凝った時期もあった。仕えた校長先生の
影響で種から育てることを覚えてからは、膨大な数
の苗ができてしまい処分に困ってあちこちの方にプ
レゼントの押し売りをしたこともあった。学校では
役立つ場面もあり、少ない学校予算の中から種を購
入して花いっぱいの学校にすることができた・・と
言いたいが、必ずしもうまく育たないことも多く、
結局苗を買った方が早かったかななどと後悔するこ
ともあった。
お菓子作りに励んだこともあった。受け持ちの子
ども達にプレゼントしようとお菓子のレシピ本を片
手に小麦粉の中に卵を入れて混ぜて、丸めて、焼い
てなど四苦八苦した。いろいろな種類を作ってはみ
たものの、市販のクッキーにはかなうはずもなく、
市販品はさすがによくできているなあと感心させら
れることも多かった。いくらかは子ども達にプレゼ
ントすることはできた。
ギターとの出合いは学生時代からだが、ピアノの
弾けない私にとっては、学校でも伴奏をするために
役立つアイテムであった。学級担任時代はずっと手
放すことはなかったが、学担を外れてからは、手に
することすらなくなってしまった。
これ以外にも、似顔絵、英会話、パチンコ、ゴル
フ、スケッチ、資格試験などあれこれ手を出し、ブ
ームが去って、その残
骸 が 今 でもあ ちこち
に散らばっている。
退 職 すると現 在の
勤務時間と同じくらい
余 暇 の 時 間 が できる
そうである。この凝り
性 がいよいよ本 領 発
揮の時かもしれない。
−2−
私の二つの信条
高原町立後川内中学校 柴 岡 三 郎 来年三月で、いよいよ36年間の教職員生活にピ
や指導困難校での生徒指導主事などを任されてきた
リオドを打つことになった。
が、この期間に、猪野照男校長先生との出会いで、
この36年間を振り返って見ると長かったなぁと
「見届ける教育は仕上げる教育である」という教え
思う反面あっという間だったようにも思う。宮崎の
を受けたことも大きかったと思う。この教えで、自
地に根をおくことになったのは、宮崎ふるさと国体
分自身の教師という職務への意識が変容したと考え
の選手兼コーチとして選任されたことがきっかけだ
ている。若い頃は、仕事も指示を受け、最前線で動
った。飛び込み競技未開の地に舞い降りて、選手の
くことですんでいたが、年齢が上がるに従い、自ら
育成と飛び込み競技の普及活動をする傍ら、中学校
が指示を出し、先生方を動かす立場になった。その
の保健体育の教員として、生徒への指導を行ってき
際も、「何事にも心一杯・精一杯全力を尽くす」と
た。
「見届ける教育は仕上げる教育である」を胸に生徒
どちらの指導も亡き父親から幼き頃より言われて
の育成・先生方の育
きた「何事にも心一杯・精一杯全力を尽くしなさい」
成に全力で駆け抜け
この言葉を胸に自分のできること・すべきことを行
てきた。
ってきたつもりだ。
この二つの私の信
国体の年(昭和54年)は、新規採用(体育振興指
条はこれからも変わ
導員)でありながら、当該校の体育教員の人数の関
らぬつもりだ。今後
係で、授業時間0時間という状況だった。だが、自
も宮崎県の教育のた
分のできる・やるべきことに対しては全力で取り組
めに鋭意努力して行
んできたつもりだ。その後、大規模校での学級担任
きたいと思っている。
〈 串 間 支 会 〉
串間市立大平小学校 穴 井 雅 之 本支会は小学校11校、中学校6校、17名の校
上、地域に貢献できる人材の育成を目指している。
長で構成されている。うちへき地校が2校、複式学
また串間市を中部・北部・東部の3ブロックに分
級を有する学校が8校あり小規模校が多い。また、
け、研究授業や研究内容の公開を行っており、他校
平成29年度に中学校を再編し、現在の6中学校を
の取組を参考に、自校の教育実践に生かすようにし
1校に統合するという議案が本年9月の串間市議会
ている。その串間市小中高一貫教育を中心となって
で可決された。したがって本支会は、3年後には小
推進していくのが校長会の役割でもある。
学校が11校、中学校が1校、12名の校長で構成
それぞれの学校規模は小さいが、その学校経営に
されることになる。
対する情熱は熱く、大きい。教育長をはじめ教育委
本支会では、校長会連絡会を月1回計画し、教育
員会と校長会が一枚岩となって、これからも串間市、
委員会との連携協力のための共通理解を図り、県校
宮 崎 県、 日 本 を
長会理事会の報告や各専門部からの連絡・報告及び
支えていく子ど
各学校の情報交換等を密に行いながら運営してい
もたちへの教育
る。また、研究関係では小中学校部会に分かれ、テ
を行っていきた
ーマごとに共同研究を行いながら、校長としての資
い。 ま た、 校 長
質向上を図り、各校における学校経営に生かしてい
相互で緊密な連
る。
携をとりながら、
串間市は平成20年度より連携型の小中高一貫教
串間市ならでは
育を教育方針の一つに掲げ、くしま学(地域学習)
の学校経営を行
や英語教育、読書教育等に取り組みながら、学力向
っていきたい。
−3−
〈 都 城 支 会 〉
三股町立三股小学校 上 原 英 俊 都城支会は、
都城市(小学校37校、
中学校18校、
小中一貫校1校)と三股町(小学校6校、
中学校1校)
の1市1町の校長会で組織されている。
今年度は、
新しく白雲小学校、
白雲中学校が加わり、
62名の校長で構成されている。
さて本会は、時代の進展や社会の変化に対応しつ
つ、都城支会の義務教育の充実・発展を目指して、
それに応じた諸教育活動を推進するとともに、校長
としての資質向上、喫緊の課題の解決を図ることを目
的として、様々な活動を展開している。活動内容によ
っては、小学校校長会、中学校校長会に分かれ、県
校長会の分科会発表に向けた取組や学校運営上の諸
問題の情報交換・対応策などを協議している。
また、小中合同の研修会も行っている。本年度は
部外講師(デル株式会社金子知生氏)を招聘して「人
材育成方法」について研修を深めた。
さらに退職校長会との懇親会も年1回実施してい
る。この中で地元企業の霧島酒造伊賀崎繁氏を講師
に招き、
「地域への貢献と人材育成」について講演を
いただいた。講演会後は地区ごとに懇話会を行い、
学校教育に地域の教育資源を活用した実践紹介や今
後学校教育に生かせる地域の教育力について、先輩
校長と意見交換を行った。懇話会後は、懇親会とな
りさらに絆を深める会となった。
研修会以外には、印刷物の発行を年1回行ってい
る。一つは、小中学校別研修会で行われる協議題ご
との発表・協議の中で使用される原稿をまとめた資
料集である。もう一つは、文芸、随筆、趣味の紹介
等内容・題材は自由な「べぶ通信」である。校長と
しての思いや一個人としての思い等が綴られており、
人間味あふれる冊子となっている。
このように、様々なつながりを重
視した取組が行われ、校長としての
資質向上が図られたり、心安らぐ場
が設定されたりしている。社会が複
雑・多様化している時代だからこそ
校長同士、校長と地域、校長と教
育機関等の結びつきは大切になって
くる。今後とも、
「盆地は一つ」を
合い言葉にコミュニケーションを大
切にしながら、各学校の実践や教育
的課題等を出し合い、ともに考えて
いく都城支会でありたい。ともに支
え合っていく都城支会でありたい。
〈 西 諸 支 会 〉
小林市立細野中学校 甲 斐 昭 児 本支会は小林市(小学校12校、中学校9校)
、え
びの市(小学校4校、中学校3校、小中一貫校1校)
、
高原町(小学校4校、中学校2校)の35校で組織さ
れている。
主な活動は年2回の研修会である。その目的は、組
織的・計画的な研修活動を通して校長の資質及び指
導性を向上させ、学校運営を充実させることであり、
西諸県地区の教育水準の維持向上に貢献することであ
る。
今年度の第一回の研修会は7月に高原町で行われ
た。来賓あいさつのなかで、小林市教育長の中屋敷史
生先生が「今は経験では測れない想定外の事故や災
害が起こりうる」とか「児童生徒の現象面だけをとら
えるのではなく、彼らの本質をとらえての指導を」と
いった危機管理のお話をされた。また、南部教育事務
所長の金子文雄先生には「雑草という名の草はない」
という演題で御講話をいただいた。雑用という仕事は
ない。人のためにと思ってする仕事が自分に良い結果
をもたらしてくれる。仕事の意味や価値が分かる校長
にというメッセージが新鮮であった。
後半は小・中別の部会を持ち、それぞれお二人の先
生方に準備していただいた県の校長研究大会での発表
原稿を基に協議を重ねた。
第二回は来年1月に実施の予定である。二回目の研
修会では、例年、さまざまな分野の方々に講演をお願
いしており、昨年度は大塚幸治弁護士に「学校を取り
巻く環境と危機管理」
の演題でお話をしていただいた。
保護者や地域住民との関係作りが学校運営上重要にな
っている昨今、
時宜を得た内容で大いに参考になった。
また、本支会は退職校長会との研修・情報交換や高
等学校、PTA等の各種団体との連携協議にも努めて
おり、教科及び教科外部会に
対する指導も適切に進めてい
る。
「教師が伸びれば子どもも伸
びる」
、
「校長が伸びれば子ど
もも学校も地域も伸びる」と
考える35名の校長が、
日々、
自己の資質を高めつつ、西諸
の各地で職務に励んでいる。
編 集 後 記
新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞ
よろしくお願いいたします。さて、ここに県校長会広報紙第196号をお届けいたします。本年
度最後の広報紙となります。椎葉村教育委員会の甲斐 眞后教育長におかれましては、御多忙の中特別に寄稿していた
だき誠にありがとうございました。また、串間・都城・西諸支会の執筆者の皆様、本当に感謝申し上げます。会員の皆
様におかれましても、新しい年の始まりの中、どうぞ御自愛いただきますよう心より祈念申し上げます。毎度のことな
がら、心温まるすばらしい原稿とカットをありがとうございます。この広報紙が会員の皆様にとって何らかの「絆」と
なれば幸いです。
【カットは川南町立東小学校 波平剛司校長にお願いしました。】
−4−