要 旨 腫瘍血管新生は腫瘍の進展や転移に重要な役割を果たしている.近年, 腫瘍血管内皮細胞は正常 血管内皮細胞と比較し,様々な点で異なることがわかってきた.われわれもこれまでに,腫瘍血管 内皮細胞が正常血管内皮には見られない染色体異常や遺伝子発現を示すことや,血管新生能が高い ことなどを報告してきた.さらに最近,癌の悪性度の違いによって腫瘍血管内皮細胞の性質には違 いがあり, 高転移性腫瘍内の血管内皮細胞は低転移性腫瘍内にはみられないがん幹細胞のマーカー, ALDH活性の高い血管内皮細胞が存在することやABCトランスポーターp-gpの発現が高く薬剤耐性を もっていることを見出した. さらに A375SM(高転移性ヒト悪性黒色腫細胞株)培養上清処理によ り,HMVEC(ヒト微少血管内皮細胞)において IL-6 や ALDH などの幹細胞マーカーの発現や,スフェ ロイド形成能や骨や脂肪への分化能などの一部の幹細胞様性質が誘導された.さらに,5-FU に対し ての耐性が獲得されることもわかった. そのメカニズムとして,高転移性腫瘍と低転移性腫瘍由来の Extracellular vesicles(EV) 内 の microRNA の網羅的比較により,A375SM 培養上清中の miR-X に着目した.miR-X は HMVEC における STAT3 の活性化を介し,ALDH や IL-6 の発現を亢進させた.また,miR-X は HMVEC における Akt を活 性化させることにより,5-FU に対する薬剤抵抗性の獲得に寄与していることがわかった. このことから,腫瘍微小環境において,高転移性腫瘍から分泌された miR-X は EV によって血管内 皮に運ばれ,薬剤耐性獲得に関与していることが示唆された. 参考文献 1. Maishi N.et al. : Tumour endothelial cells in high metastatic tumours promote metastasis via epigenetic dysregulation of biglycan, Sci Rep, in press 2. Ohmura-Kakutani H. et al.: Identification of Tumor Endothelial Cells with High Aldehyde Dehydrogenase Activity and a Highly Angiogenic Phenotype, PLoS ONE, 9(12): e113910, 2014 3. Ohga N. et al.:Heterogeneity of Tumor Endothelial Cells: Comparison between Tumor Endothelial Cells Isolated from Highly Metastatic and Low Metastatic Tumors, Am J Pathol, 180(3), 1294-1307, 2012 4. Akiyama K. et al.: Tumor endothelial cells acquire drug resistance by MDR1 upregulation via VEGF signaling in tumor microenvironment, Am J Pathol, 180(3), 1283-1293, 2012 5. Hida K. et al.: Tumor-associated endothelial cells with cytogenetic abnormalities. Cancer Res, 64(22), 8249-8255, 2004
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