米国研究留学の体験 Fox Chase Cancer Center, Philadelphia USA

Fox Chase Cancer Center, Philadelphia USA
Zaret lab.
でのポスドクとしての研究活動と
帰国後の医学研究への発展
留学期間:Aug/1999 - Aug/2003
吉富秀幸
千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学
日米医学医療交流セミナー 11/14/2009 京都
•米国研究留学までの経緯
•Philadelphiaについて
•米国での生活、研究室
•研究の内容
•まとめ
私の経歴
1990年
1991年-1994年
1994年-1998年
1998年
1999年-2003年
2004年-
千葉大学医学部卒業、
千葉大学医学部第一外科入局
初期研修
千葉大学大学院
発達生理学教室 清野進 教授
千葉大学医学部
第一外科(肝胆膵外科)医員
Fox Chase Cancer Center
(米国、フィラデルフィア)留学
Zaret研究室
千葉大学大学院臓器制御外科学
(肝胆膵外科) 助手→助教
千葉大学医学部附属病院
大学院入学まで
研修医時代に考えたこと
外科治療の重要性:特に、術後合併症の問題点 合併症
をどのようにしたら減らすことができるのか?
外科治療の限界:外科切除は悪性腫瘍、特に消化器系の
癌治療の中心である。しかし、術後再発が多い。
外科治療に、他の治療法を組み合わせた集学的治療が
重要になっていくのではないか?
基礎研究の重要性→大学院時代に基礎研究室へ
大学院時代:清野進研究室
清野進教授(発達生理学)
(現 神戸大学 細胞分子医学 教授)
糖尿病の分子機構の解明
特に膵β細胞からのインスリン分泌調整機構の解明
分子生物学的手法を使った研究
DNA library の作成、screening、RNA抽出、PCR、
DNA sequencing、Western blotting、
Northern blotting、など
助教授:
助手:
稲垣暢也 現京都大学糖尿病・栄養内科学 教授
三木隆司 現千葉大学自律機能生理学教授
研究テーマ:
膵β細胞由来のMIN-6細胞におけるソマトスタチン受容体の
発現と腫瘍増殖作用に対する役割
実は、外科学、腫瘍学などとは研究分野が完全には重なって
いない。しかし、当時の先端実験技術であるMolecular
biologyの手法を身につけることができた。
米国留学: 米国にて肝胆膵外科に関連する研究をしてみたい。
米国での研究の目標
肝臓再生機構の研究
術後肝不全の克服
臓器移植に頼らない治療法の開発
組織再生と癌化のメカニズムの共通点は?
•肝再生、発生の研究をしている研究室を探す
•何人かの肝臓の基礎研究を行っている先生に相談
Fox Chase Cancer Center, Philadelphia, USA
Ken Zaret laboratory
Cell and develomental program
研究内容
•Chromatin remodelingによる転写調整の機構
•肝臓、膵臓初期発生時の分子機構の解明周囲臓器との相互作用
留学決定までの流れ
Application letterの送付
•ポスドクとしてのポジションに応募をしたい旨を伝える
•自分の履歴(Curriculum Vitae(CV)) 送付
•2通程度の推薦状を添える
Dr. Zaretとのinterview: たまたま、日本での講演で来日
の機会があり、そのときに始めて面会した。
Accept !!
今思うと・・・・・
• CVにはかけるだけの業績を詰め込む。Co-authorでも
何でもよい。ある程度の業績があることは、採用に有
利に働く。
• インタビューの時に、やはり、最低限の英語は会話で
きた方がよい。でも、いわゆる中学生レベルで十分。
文法的に間違っても、話そうとする姿勢が大事。
• 自分のこれまでの業績を遠慮無くアピールすること。
• 経済的なこともずけずけと質問してかまわない。たと
えば、給料はどのくらい?など。
Philadelphia, Pennsylvania
NewYork
Philadelphia
Washington DC
City of Brotherly
Love
Center City
(Philadelphia美術館前)
四大スポーツのチーム
Local foods
Liberty Bell
Pretzel
Philly Cheese Stake
Established in 1927
as Institute of Cancer Research
Philadelphia chromosome (CML)
Discovery of HBV (Dr. Blumberg)
Two hit theory (Dr. Knundson)
etc.
研究室に所属した時点での研究室の構成
Principal Investigator (PI): KS Zaret
ポスドク:
3(私を含む)
大学院生:
3
研究助手:
2
合計9人
このサイズでもFCCCの中では大きな研究室
大学の研究室やNIHの研究室でもほぼ、同様
→1人1人が独立したテーマをもって研究を進める
研究室には日本人はいない。
研究所:PI 1人、ポスドク4人
Facilities
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Annimal facility
DNA sequencing facility
DNA synthesis facility
Cell culture facility
Bio-imaging facility
DNA array facility
Flow cytometry facility
etc.
それぞれのfacilityに専門家、
アシスタントがいる。
それぞれの研究室の研究費
から利用に応じて課金され
る仕組み。
研究室のスケジュール
• 8:30-19:00程度が通常の勤務時間、週末は
時々出勤した。
• Lab. meeting, Journal club
– 週一回、順番で(大体2ヶ月に一回程度)
• FCCC post-doc presentation(年1回)
• Post Doc day (年1回)
• 学会の出席(年1-2回)
– 交通費、宿泊費、学会費は出してくれる。
Kenneth S. Zaret lab.
Critical Roles of Endothelial Cells
in Liver and Pancreas Development
Hideyuki Yoshitomi#*, Kunio Matsumoto**,
and Ken Zaret#
#Fox
Chase Cancer Center, Philadelphia, USA
**Kanazawa University, Japan
Endothelial Cells at the Onset of
Liver Morphogenesis
E8.5
S.T.M.
hepatic endoderm
E9.0
S.T.M.
endothelial cells (PE-CAM immunostaining)
Endothelial Cells at the Onset of
Liver Morphogenesis
E9.5
liver bud
S.T.M.
E10.0
developing
blood vessels
endothelial cells (PE-CAM immunostaining)
Genetic Mutations Affecting
Endothelial Cell / Blood Vessel Development
Mesoderm
Angioblast
Endothelial
Cell
flk-1 (VEGF-R2)
null mutation
Lack of endothelial cells
Lethal at E9.5-10.5
(Shalaby et al. Nature 376:62-)
Blood vessel
Mature Blood vessel
Summary
flk-1 -/- の胚では原腸細胞から肝芽細胞への
分化は起こるものの、その臓器形成が行われ
ない。
血管内皮細胞が肝臓の臓器形成を制御して
いる。
Liver Bud Explant System
E9.5 embryo
AFP in situ
72 hr culture
hepatic cells
liver bud
dissection
culture
filter membrane
10% calf serum
+ 0.2% Matrigel Transwell
fibroblastic cells
total cell area
Vascular Network Formation within LB Explants
endothelial cells (PE-CAM positive)
2 hr
9 hr
culture period
24 hr
Co-localization of Endothelial and Hepatic Cells
flk-1 +/- liver bud explant, 72 hr culture
b-gal staining
(endothelial cells)
+ Alb in situ
(hepatic cells)
Impaired Hepatic Cell Growth in LB Explants from flk1 -/- Embryos
hepatic cells / total
P = 0.87
30
P = 0.0025
(%)
20
fold
25
15
20
10
15
10
5
5
0
+/+,+/-
-/-
N=9
N=8
0
+/+,+/-
-/-
N=9
N=8
Manuscripts
Liver Organogenesis Promoted by Endothelial Cells Prior to Vascular
Function
Kunio Matsumoto, Hideyuki Yoshitomi, Janet Rossant, Kenneth S. Zaret
Science 294, 559–563 (2001).
Endothelial Cell Interactions Initiate Dorsal Pancreas Development by
Selectively Inducing the Transcription Factor Ptf1a
Hideyuki Yoshitomi and Kenneth S. Zaret
Development, 131:807-817 (2004)
An endothelial-mesenchymal relay pathway regulates early phases of
pancreas development
Jacquemin P, Yoshitomi H, Kashima Y, Rosseau GG, Lemaigre FP, Zaret KS
Dev Biol 290:189-199 (2006)
Thank you everybody!!
Kenneth Zaret
Roque Bort
Amelie Calmont
Aidan Peterson
Kimberly Tremblay
Pilar Santisteban
Richard Gregory
Stefano De Renzis
Isabel Cuesta
Robert Lin
Christine Matullo
Nicholas Bianco
Joonil Jung
Pascale Bosard
Lisa Cirillo
Jennifer Rossi
Dina Chaya
Ryan Galager
Kunio Matsumoto
Osaka Univ., Japan
Masaru Miyazaki
Nobuyuki Nakajima
今後の目標
• 肝臓、膵臓の再生機構の解明
– 再生における幹細胞の働き
– 周囲間質細胞、特に血管内皮細胞の役割
• 肝臓、胆道、膵臓癌における周囲間質細胞と
癌細胞との相互作用の解明
– 新しい分子標的治療の開発
米国の生活
• 収入
– 1年目:$18,000 →4年目:$24,000 (NIH grantで決められ
ている)
– 家賃:$600 アメリカの大都市としては安い。
– 生活費:日本に比べると安い。外食はほぼ同じ。
• 家族
– 渡航時:妻のみ→半年間、語学学校通学、その後、地元
の料理学校→レストランで勤務
– 2001年 長女出産:アメリカと日本の医療事情の差に驚き
• Day care(保育所)は施設が充実、ただし、入所待ち多し。
米国留学の感想
• 新しい分野の勉強が出来た。
– 発生学にはこれまで全くタッチしたことがなかった。
– epigeneticsの分野のさわりを勉強することが出来た。
• アピールの重要性
– 発表をとても重要視する。
• スライドの校正、発表の仕方 等々
• 多くの友人
– 海外の研究者との関係
– 国内でも多くの友人が出来た。外科、内科、基礎研究者
留学を考える人へ
• 覚悟は必要、でも、是非チャレンジを。
– 収入や、言葉が通じないなどつらいことも多い。
• 研究留学を考えているなら、学位取得後1-2
年がよい。
– やはり、基礎的な研究手法を身につけていくと、
楽。無給の実験助手の身分は(私は)あまり進め
られない。→発表などの場が少なくなる。
• 自分を過大と思われるぐらいしっかりアピー
ルをすること。
千葉大学臓器制御外科学 教授
中島伸之先生
~2001年
宮崎勝先生
2001年~