伝わるビジネス文書のヒント

漢字の使いすぎに注意
3 形式名詞と存在に関する言葉
矢張り私共が経費を少な目に見積
さ ら に 、﹁ 見 積 も っ た 事 ﹂ の
もった事が、問題の根底に有ると
﹁事﹂で す が、こ こ で は、﹁私 ど も﹂
考える物です。
が行ったこと全体を名詞化していま
報告書の一文ですが、漢字が多す す。このように文法的に働くだけで
ぎて、読むのに疲れそうです。今回 具体的な意味を持たない﹁こと﹂は
は、漢字と仮名の使い分けについて 形式名詞といい、原則として仮名書
考えましょう。
きします。﹁事に当たる﹂﹁事は重大
1 漢字の使い方にはルールあり
だ﹂などと比較するとその違いが分
漢字と仮名の使い分けについて一 かります。
応の目安となるのは、平成二二年に 次に﹁根底に有る﹂の﹁有る﹂で
内閣訓令として示された﹁公用文に す が、存 在 に 関 す る 言 葉︵﹁あ る﹂
お け る 漢 字 使 用 等 に つ い て﹂で す。 ﹁いる﹂﹁ない﹂など︶は原則として
文 化 庁 の H P で 誰 で も 閲 覧 で き ま 仮 名 で 書 き ま す。同 じ よ う な 例 に、
す。そこでは、原則として漢字で書 変化を表す﹁なる﹂があります。
くものと、原則として仮名で書くも 最 後 に﹁考 え る 物 で す﹂の﹁物﹂
のとの例が具体的に挙げられていま ですが、先の﹁こと﹂と同じように
す。その訓令をもとに、最初の例文 形式名詞ですので、ここも仮名書き
を添削してみましょう。
します。
2 原則として仮名で書くもの
以上の添削の結果、最初の例文は
まず、冒頭の﹁矢張り﹂です。こ 次のようになります。
れは仮名で書く副詞の例に挙げられ
やはり私どもが経費を少なめに見
て い る 一 つ ︵ 他 は ﹁ か な り ﹂﹁ ふ
積もったことが、問題の根底にあ
と﹂﹁よ ほ ど﹂の 三 つ︶で す の で、
ると考えるものです。
仮名で書きます。
次 は﹁私 共﹂と﹁少 な 目﹂で す。 すっきりと読みやすくなりました。
﹁ど も﹂や﹁め﹂な ど の 接 尾 語 は 仮 パソコンを使うと簡単に漢字変換
名で書きます。同じように仮名で書 できるため、つい漢字を使いたくな
く 接 尾 語 に、﹁惜 し げ も な く﹂﹁弱 りますが、読み手のことを考えて漢
字と仮名を使い分けたいものです。
み﹂などがあります。
熊谷 芳郎(日本語検定委員会主任研究員)
伝 わるビジネス文 書 のヒント
第355号 10
は こ だ て
法人ニュース
平成28年 8 月 1 日