機械理工学・マイクロエンジニアリング・航空宇宙工学専攻 熱物理工学 2016(松本担当分)講義資料 Follow-up Document 2016/08/02 松本充弘 [email protected] *レポートの提出状況は別紙の受講者リストで確認してください.間違いがあれば松本まで. 最終回のレポート課題について 課題 一次元井戸型ポテンシャル中の粘性支配 FP 方程式 𝜕𝑃 1 𝜕 𝑑𝑈 𝜕2 = [ ( 𝑃) + 𝑘𝐵 𝑇 2 𝑃] 𝜕𝑡 𝛾 𝜕𝑥 𝑑𝑥 𝜕𝑥 の数値計算により,確率分布や非平衡エントロピーの時間変化を調べる. ○レポートから(高 狄さん) *一部を抜粋 まず,各温度におけるステップ数による確率分布 の変化を考察する.ステップ数が大きいときほど より Boltzmann 分布(平衡状態の確率分布)に近 づくことを確認した,温度が大きいほうがより顕著 である. 各温度についても比較を行う.温度が低い時に は確率分布が1重井戸の Boltzmann 分布である が,温度が上昇すると 2 重井戸の Boltzmann 分 布が見られる.これは,温度上昇とともに粒子の 運動エネルギーが大きくなり,井戸の間を遷移す ることが出来たと考えられる. 非平衡エントロピーの時間変化を entropy.jpg に 示す.ここで,T=5 のエントロピーの時間変化の 輸出が-1.#INF0 となった,原因が不明.T=10 以 上なら問題なし.このグラフより,温度の上昇に 従って平衡に収束速度が速くなることが分かる. 温度が上昇によって分子の運動は激しくなるた め,より早く平衡状態に近づくと考えられる. 松本のコメント:T=5 でデータがおかしくなったのは,拡散項(∝ 𝑇)にくらべて移流項が相対的に大 きいため,陽解法による数値計算が発散したためと思われます(データファイルの INF は,数値 が計算機で扱える範囲を超えたこと ≒infinity を意味します) .時間刻みを小さくするのがいいで しょう.もっといいのは,陰解法をつかうことでしょうけれど.. . エントロピー変化に関して,低温(たとえば T=10)では時間が経過してもゼロに収束していない ことに注目してください.ここで求めた非平衡エントロピーは, 「平衡状態のエントロピーとの差」 ですから,平衡分布に到達できないときは負の値のままになります. 「低温でポテンシャル障壁を 乗り越えられない」という現象が,エントロピーにもきちんと現れているのがポイントです. 熱物理工学 講義資料 1 ○レポートから(杉野択真さん) *一部を抜粋 計算精度を高めるため、時間刻みのオーダを一桁下げて 0.0000002 としました。(途中省略) この結果から、 T=20 の時は試行回数 10 万回後も粒子はほとんど x 正領域には移動しておらず、エント ロピーも徐々に増大しているものの -0.1 より少し大きいくらいからはなかなか増大していないことが分かり ます。これは温度が小さいため粒子ポテンシャルの井戸間をほとんど超えるこができないためと考えられ ます。温度 T の値を大きくすると共に 10 万回施行後の粒子分布関数形状は equil のグラフに近くなり、 温度が大きいほど粒子がポテンシャルの井戸から井戸に頻繁に移動していることが確認できます。 ○レポートから(Chen Cong さん) *一部のみ 温度を 400 以上にした場合,確率が激しく振動する様になり, P4 に載るグラフのようになった.その理由については良く分 かりません. 松本のコメント:このような不自然な振動現象も,陽解法で はよく見かけるものです.やはり,時間刻みが大きすぎ ることによる数値誤差でしょう. ○レポートから(西岡寿朗さん) *一部を抜粋 松本のコメント:はい,Boltzmann がエントロピーの微視的表現 𝑆 = 𝑘𝐵 log 𝑊 (Boltzmann の原理) を提唱し,Shannon が情報理論への一般化を行って以降,いろいろな分野でこのような考え方が 広く応用されています. 熱物理工学 講義資料 2 ○レポートから(新井希さん) *一部のみ (前半省略)温度が高いほど平衡に向かう速さが大きいと考 えられる。低温ではポテンシャルの寄与が大きく障壁を超え られないためなかなか平衡に達することが出来ない。その一 方で高温では障壁を難なく越え,少ない時間で平衡に達し ている。しかしながらさらに高温になると P の漸近する先と Peq が大きく異なってくる。これは温度 2500 にて見られるように, 高温ほど顕著になる。step 数や刻み幅を変えても状況は好転 しなかった。原因は不明であるが刻み幅を変えても変化が無 かったことからモデル由来な誤差ではないかと考えられる。(以下省略) 松本のコメント:高温でのちょっとおかしな挙動は,やはり数値誤差だろうと思います.拡散項(∝ 𝑇)が 非常に大きくて,1ステップの間に大きく変化してしまうため,2重井戸の空間構造が正しく反 映されなかったのだろうと推測されます.時間刻みを T に反比例する程度に小さくする必要があ りそうです. 熱物理工学 講義資料 3
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