香醋から発見された新規抗肥満活性成分フレグライド 1 の作用 Effects of a newly anti-obesity active ingredient, fraglide-1, in fragrance vinegar (東京農大 1,北陸先端大 2) ○辻野義雄 1,2・高木昌宏 2 (Tokyo University of Agriculture1, JAIST2) Tsujino Yoshio1,2, Masahiro Takagi2 英文要旨: Zhenjiang fragrant vinegar is a traditional Chinese black rice vinegar with various health effects. We isolated and identified the novel compound 5-hydroxy-4-phenyl-butenolide from 8-years-old fragrant vinegar according to in vitro PPARγ activation, and named it fraglide-1. In this study, the vinegar including fraglide-1 was suggested to have anti-obesity effects on human. 1. 緒言 香醋は、中国で古代から用いられた食酢の一種で、健康維持に関する様々な有効性が示 唆されてきた。日本の本草学(薬物に関する学問)にも大きな影響を与えた中国本草学の集 大成である『本草綱目』(1596年)には、醋の薬用について「醋は腫れを鎮め、むくみを解消、 邪毒を殺し、色々な処方に用いる」と記載されている。香醋は、紀元前から作られており、初 めて文献に現れてからでも1,500年以上の歴史を持っており、「三国志演義」の中にも鎮江 香醋が登場している。我々は、糖・脂質代謝制御において重要な役割を担っているリガンド 要求性核内転写因子である PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ)の活性 化を指標とした細胞評価系(リガンドアッセイ)によって、この8年熟成恒順香醋の中から有効 成分(5-Hydroxy-4-phenyl-butenolide)を発見し、フレグライド1と名付けた。そして、C57BL/6J マウスに高カロリー食摂取による肥満モデルを作製し、フレグライド1の抗肥満効果を見出し た。本研究では、フレグライド1を含む香醋を用いて、ヒトにおける影響を検証した。 2. 実験 BMI 値が 25~30 の 30~60 歳の男女 40 名に対し、試験(ランダム化二重盲検並行群間比 較試験)を行いました。半数には「8 年熟成香醋」を、半数には「半年熟成香醋」を 12 週間連 続摂取していただき、摂取前と摂取 12 週後に内臓脂肪面積(CT スキャン)、摂取前と摂取 4 週間後、摂取 8 週間後、摂取 12 週間後に臨床検査値を調べた。 3. 結果と考察 被験者に対して 12 週間被験物質を投与し、半年熟成香醋(フレグライド 1 を 0.2μg/mL 含 有)群と 8 年熟成香醋(0.4μg/mL 含有)群を比較したところ、8 年熟成香醋群は半年熟成香 醋群に対して内臓脂肪面積を有意に減少させた(p=0.049)。 また、8 年熟成香醋群の摂取開始時と摂取 12 週後における内臓脂肪面積において有意な 減少(p=0.026)が確認されたが、半年熟成香醋群では確認されなかった。 ヒトにおいても、フレグライド1は濃度依存的に抗肥満作用を有する可能性を強く示唆した。 本研究により、Fraglide-1 を活用した新たな肥満改善食品の創出が期待される。
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