園だより89 - 元住吉こばと幼稚園

園
だ
よ
り
元住吉こばと幼稚園
2016.6.30.№89
『夏 休 み、とっておきの絵 本 の面 白 さに心 惹 かれて… 』
園長 三宅悦子
梅雨の中、雨が止むと「雨、止んでるよ」と速く発見して「園庭に出たい」という気持ちでいっぱ
いの子ども達。外に出ると園庭中を走り回ったり、遊具や砂場で遊び始めたりしています。瞬時に
も自分のしたい事を実現して遊びたいというエネルギーが感じられます。そんな子ども達が夏休
みには、ご自宅で保護者の皆様とご一緒に過ごす 38 日間を迎えようとしています。子ども達の
エネルギーを毎日 24 時間受け止める役割は、保護者の皆様にとりましても大変なご苦労も多い事
と思います。どうぞ、お子様方も保護者の皆様も体力と持久力を蓄えてお臨み下さい。食事・睡眠
時間はその要となります。
“いのち”の安全と“こころ”の安心が保たれますことを願っております。
6月の絵本の会では、イギリスの絵本作家ジョン・バーニンガムの作品を紹介しました。
“ガン
ピーさんのふなあそび”で親しまれているバーニンガムは、デビュー作“BORKA はねなしガチョウ
のぼうけん”で 1964 年度のケイト・グリーナウェイ賞に輝きました。その後“ガンピーさんのふ
なあそび”(1970 年)でも同じ賞を頂いています。南の国へ家族と飛び立てない、はねなしガチョウ
が仕方なく歩いてやっとの思いで、波止場までたどり着き、ネコや船長と心を通わせて行きます。
そして最後にボルカは、ロンドンのキュー・ガーデンに住み着くことになりました。今でもキュー・
ガーデンには、ボルカを捜して子ども達が遊びに来る程、多くのファンに愛されている絵本です。
「はねなしガチョウ」といじめられ、ひとりぼっちになってしまったボルカが、自分で歩いて行
けるところまで行こうとする姿や、懸命に働く船の上のボルカ。そして最後に住むところを見つ
けてくれた船長との心の通い合いは、私達が“いのち”を守る、
“いのち”を支える為にどのような
援助や行動が必要かを教えてくれます。
“ガンピーさんのふなあそび”ではガンピーさんが「いいよ」と言って、小舟に乗せてくれるこ
とへの心地良さがあり、また順番にウサギやネコやイヌやウシ・ヒツジ・ヤギなどが乗って来て、
結局ひっくりかえってしまうガンピーさんの小舟。それでもみんなキラキラとしていて、お茶の
時間をみんなで楽しむ面白さに心が惹かれます。ガンピーさんが「いいよ」と応えてくれる許容
範囲の広さ深さに驚いてしまいます。かつて、少し牛乳をカーペットに垂らしただけで、子ども達
を責めたてていた自らを反省しながら、ガンピーさんの心の広さ深さを味わう事が出来る、とって
おきの一冊です。
ジョン・バーニンガムの絵本を9冊紹介したところで、絵本の会に出席して下さっているお母様
から、ジョン・バーニンガム「わたしの絵本、わたしの人生」という本を紹介して頂き降園時にお
貸し頂きました。その本によると、イギリスの戦時下(第2次世界大戦)で、父親は「良心的兵役拒
否者」を選び、家族がトレーラーハウスで田舎を転々とする生活をしていた事。9つもの学校に
通い寄宿舎生活をした事。バーニンガム自身も学校卒業後「良心的兵役拒否者」となって「農業・
林業・病院事業・慈善活動・社会事業のいずれか」に従事し、世界各地で2年半に渡って、体を
使った労働奉仕に務めた事。その後、イラストとグラフィック・デザインを学んで、イスラエルや
様々な国で仕事をし、地下鉄のポスターを描きながらデビュー作絵本“BORKA”を出版した事が
わかります。
あらゆる生活体験と各地域、各国で学んだ事、仕事をした事が、ジョン・バーニンガムの懐の
深い絵本、物語の安心感やユーモアにつながっているような気がします。バーニンガムの絵本に
触れると「ガンピーさんのようなおじいさんにはなれないかも知れないけれど、子ども達には、
ガンピーさんの懐の深さ、楽しさを届けてあげたい。」と思うのです。
絵本は私がもっていないものをも、子ども達の心に届ける事ができる不思議な力をもっています。
夏休み、コミュニケーションが上手にとれなくなったら、絵本の力を借りて、子ども達が安心す
る居場所をつくってあげましょう。
1学期の間のご協力、お心遣いを心より感謝申し上げます。ありがとうございました。良い
夏休みをお過ごし下さい。