平成 28 年度 財務専門官本試験(専門試験[多肢選択式] ) 講評 その① № 科目 出題内容 正解 正答率※ 講評 【憲法・行政法】 憲法:形式面として,全6問のうち,組合せ問題が4問,正誤問題が2問であった。内容面として,人権の3問は,主 要判例の知識で十分正解に達することができる内容であり,また,統治の3問も,条文の知識と若干の判例の理解が問 われているにすぎず,多少知識が曖昧でも,消去法により正解に達することができる。さらに,国会から直近5年間連 続出題されており,過去問をこなしてきた受験生にとっては容易に正答できたと思われる。結論として,受験生にとっ ては取り組みやすく,高得点を獲得することができるレベルであったと思われる。 行政法:形式面として,全8問中7問が組合せ問題であり,1問が正誤問題であった。また,例年,行政事件訴訟法か ら2問の出題が定番だったが,本年は3問出題されており関心の高さがうかがえる。内容面としては,講学上の行政立 法,行政行為の撤回といった典型的な行政作用と行政手続法の行政指導の基礎知識が問われている。救済法では,取消 訴訟の処分性,原告適格,客観的訴訟要件等の有名判例が,国家賠償法も1条と2条の有名判例が,いずれも正面から 問われている。出題の仕方がきわめてオーソドックスで,過去問の焼き直しと思えるほど繰り返されている感がある。 練習豊富な受験生にとっては十分な結果が残せたのではないかと思われる。 【経済学・財政学・経済事情】 経済学(№15~20) :出題数はミクロ経済学とマクロ経済学が各3題と例年通りであった。難易度も全体として標準的 であった。ミクロ経済学については,№15 は短期の総費用関数からさまざまな費用が導出できるかどうかが問われる標 準的な内容である。№16 は完全競争市場や独占市場,寡占市場のそれぞれの特徴を問う標準的な内容である。№17 の ゲーム論は初めての出題となったが,ナッシュ均衡とミニ・マックス戦略の結果を求める基本的な内容である。マクロ 経済学については,№18 は閉鎖経済かつ比例税のもとでの乗数効果を問う基本的な問題である。№19 は貨幣や金融政 策に関する標準的な難易度の問題である。№20 は金利平価説や相対的購買力平価説といった為替レート決定に関する主 要な論点を押さえておくことで解答可能な標準的な難易度の問題である。 財政学(№21~26) :出題数は6題と例年通りであるが,本年度は計算問題が出題されず,財政制度や財政事情を中心 とする出題内容であった。№21 は財政理論に関する古典的な学説を問う内容であったが,いずれの問題肢とも典型的な テーマである。№22 は税制の理論的内容を問う基本的な問題である。№23 の財政投融資に関する問題は,一部にやや 難しい内容を含むが,基本的な仕組みや現状を押さえておくことで解答可能な内容である。№24 の地方債に関する出題 は,協議制度のもとでの地方債の発行手続では議会での報告が求められている点と,協議制度の一部見直しの内容を押 さえておくことで解答可能である。№25 の我が国の財政事情は,国の一般会計当初予算の規模を中心に押さえておくこ とで解答可能である。№26 は地方財政の現状を問う内容で,地方財政計画の規模と内訳や地方の長期債務残高の現状な ど主要なテーマを中心に押さえておくことで解答可能であった。 経済事情(№27~28) :出題数は例年通り,日本経済と世界経済各1題であった。№27 の日本経済はいずれも主要な経 済指標の動向を問う内容で,内閣府「経済財政白書」で取り上げられた内容を中心に押さえておくことで解答可能であ った。№28 の世界経済は,主要国・地域の経済動向を問う例年の傾向と異なり,原油の需給や価格の動向等といった特 定のテーマを問う内容は難易度も高いものであった。内容としては「世界経済の潮流 2015 年Ⅰ」で取り上げられてい た原油価格の動向等を押さえておくことが求められるものであった。 【民法・商法】 民法:各分野の出題数は,総則1問,物権1問,債権総論1問,債権各論1問,親族・相続1問だった。また,全5問 中4問が組合せ問題なので,すべての記述の正誤を判別できなくても,肢を利用することで正解を出せる問題が多い。 次に,各問題を概観すると,№29(制限行為能力者) ,№30(不動産物権変動) ,№31(債権者代位権・詐害行為取消権) は,どれも基本的な知識を問う問題なので,確実に正解したい。これに対して,№32(売買契約)は,正解肢は基本的 な知識を問うものであるが,他の肢はマイナーな知識を問うものが多く,消去法で解こうとすると苦労することになる。 №33(婚姻)は,婚姻・離婚に関する条文・判例の知識が幅広く問われているので,家族法が手薄な受験生にとっては すこし難しく感じたと思われる。 商法:会社法から1問出題され,他の分野からの出題はなかった。もっとも,2012 年に手形法・小切手法からも出題さ れたので,準備はしておく必要がある。今年度の問題(株主総会決議取消しの訴え)は,判例や平成 26 年改正会社法 の知識も問うものだったので,商法が手薄な受験生にとってはかなり難しく感じたと思われる。 【統計学】 出題数は例年通り6題(№35~40)であった。難易度は基本から標準レベルであった。№35 は期待値,№36 は条件付 確率,№37 は分散といずれも基本レベルであった。№38 は正規分布に従うデータの平均や分散を求める標準レベルの 内容であった。№39 の区間推定の問題は,母平均の信頼係数の値に留意して信頼区間を求めるための公式を用いて解答 出来る内容であった。№40 は仮説検定における第1種の誤りと第2種の誤りについて問われたが,それぞれの誤りに関 する知識を問う内容であったため,この分野の学習をしている者には解答可能な内容であった。 憲法 14 条1項 3 A 2 信教の自由 2 A 3 経済的自由権 5 A 4 国会 5 A 5 条例 4 A 憲法改正 5 B 行政立法 4 B 8 行政行為の撤回 2 A 9 行政指導 4 A 10 行政事件訴訟 2 A 11 抗告訴訟の原告適格 2 A 12 抗告訴訟の客観的訴訟要件 1 A 13 国家賠償 3 A 14 国有財産法 1 C 15 費用曲線 4 B 16 市場メカニズム 4 A 17 ゲーム論 1 B 18 45 度線分析 5 A 19 貨幣・金融政策 4 A 20 為替レート決定のメカニズム 1 B 財政理論 4 B 税制 3 A 財政投融資 2 A 24 地方債 5 A 25 我が国の財政事情 3 A 26 我が国の地方財政の現状 2 A 27 我が国における最近の景気動向 4 B 28 原油の需給・価格等 5 A 29 制限行為能力者 3 A 30 不動産物権変動 1 A 債権者代位権・詐害行為取消権 4 A 売買契約 1 A 33 婚姻 5 B 34 株主総会決議取消しの訴え 4 C 35 期待値 5 A 36 確率 4 A 分散 4 A 38 正規分布 2 C 39 区間推定 5 B 40 仮説検定 2 B 1 6 7 憲法・行政法 経済学・ 21 財政学・ 22 経済事情 23 31 民法・商法 32 37 統計学 ※ 正答率(A:60%以上,B:40%以上60%未満,C:40%未満)は,LEC公務員試験 受験生応援企画『本試験無料成績診断』のデータ(5/31 時点)に基づいて算出しています。 本成績診断のご利用方法等の詳細は,LEC公務員Web サイトの専用ページ(http://www.lec-jp.com/koumuin/juken/seiseki/)にてご案内しています。 公務員試験対策 複写・頒布を禁じます
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