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平成 28 年度 労働基準監督官A本試験(専門試験[多肢選択式]
) 講評
№
科目
出題内容
正解
正答率※
講評
A
【労働法】
就業規則,休憩・休日・休暇,労働契約の成立,解雇,年少者,労使紛争の解決手段からの出題であった。就業規則,休憩・
休日・休暇,労働契約の成立,解雇,労働安全衛生,
(№1~№4と№6)の問題については,選択肢には細かい情報が入って
いるものの,正解肢が基本事項であったため,ここは全問正答したいところであった。№5の年少者の問題は肢2と肢5が条
文の詳細を問うていたため,最後に2択で迷ったかと思うが,正答率が比較的高く,感覚的に肢2を誤りと判断できた人が多
かったようだ。№7の労使紛争の解決手段については,本年の講座で余力があったら取り組んでおくようにと指摘していたた
め,正答率も低く,ここは落としても仕方がない問題であったと思う。ただし,次年度以降については,№7は労使紛争の解
決手段についての基本的な事項を確認できる問題であるといえる。
【労働事情】
出題構成・出題数は例年通りであった。労働経済白書や同白書で取り上げられている統計データを押さえておくことが必要で
ある。難易度について,№8の就業構造は昨年度同様,標準的な難易度で,なかでも非正規雇用の現状を様々な角度から問う
内容も盛り込んでいる点は例年通りである。№9の雇用失業情勢では失業の現状を問う内容が主となるもので,いずれも主要
な論点といえる。№10 の労働時間は例年通り総実労働時間や休暇取得の現状等を中心に問われているが,なかでも休暇取得の
現状は細かなところまで問われており,関連する統計を詳細に押さえておくことが求められる内容であった。№11 の賃金は現
金給与総額を企業規模別や産業別などの点から問う内容や,雇用形態別あるいは就業形態別に賃金の動向を問う内容も例年の
傾向どおりである。№12 の労働組合・労使関係は労働組合員数とその内訳や,推定組織率については例年通りであるが,労使
関係に関する実態については,関連する統計の内容を中心に詳細に問われており,やや難であった。
【憲法】
形式面として,全4問のうち,組合せ問題が3問,正誤問題が1問であった。内容面として,人権の2問は,主要判例の知識
で十分正解に達することができる内容であり,また,統治の2問も,条文の理解と若干の判例の理解が問われているにすぎず,
多少知識が曖昧でも,消去法により正解に達することができる。さらに,国会から直近5年間連続出題されており,過去問を
こなしてきた受験生にとっては容易に正答できたと思われる。結論として,受験生にとっては取り組みやすい問題であったと
思われる。
【行政法】
形式面として,全4問とも組合せ問題であった。内容面としては,講学上の行政立法と行政手続法の行政指導の基礎知識が問
われている。救済法では,取消訴訟における原告適格の有名判例と,国家賠償法1条・2条の有名判例が,それぞれ正面から
問われている。出題の仕方がきわめてオーソドックスで,過去問の焼き直しと思えるほど繰り返されている感がある。練習豊
富な受験生にとっては十分な結果が残せたのではないかと思われる。
【民法】
各分野の出題数は,総則1問,物権1問,債権総論1問,債権各論1問,親族・相続1問だった。また,全5問中4問が組合
せ問題なので,すべての記述の正誤を判別できなくても,肢を利用することで正解を出せる問題が多い。次に,各問題を概観
すると,№21(制限行為能力者)
,№22(不動産物権変動)
,№23(債権者代位権・詐害行為取消権)は,どれも基本的な知識
を問う問題なので,確実に正解したい。これに対して,№24(売買契約)は,正解肢は基本的な知識を問うものであるが,他
の肢はマイナーな知識を問うものが多く,消去法で解こうとすると苦労することになる。№25(婚姻)は,婚姻・離婚に関す
る条文・判例の知識が幅広く問われているので,家族法が手薄な受験生にとってはすこし難しく感じたと思われる。
【刑法】
全3問のうち,各分野の出題数は,総論1問,各論2問であった。また,他の法律科目と異なり,3問すべてが単純な正誤問
題であり正確な知識が要求されている。各問題を概観すると,№26 の正当防衛・緊急避難の各要件に関する判例は比較的有名
であり,正解率は高いと思われる。№27 の汚職の罪の問題は,マイナーな箇所であり,また,細かく正確な判例の知識が要求
されており,難問といえる。№28 の窃盗罪は,主に「占有」に関する有名判例が問われている。受験生の多くが個人的法益に
対する罪,とりわけ財産罪を重点的に学習していることにかんがみると,本問の正解率は高いと思われる。全体としてオーソ
ドックスな感があるが,№27 を正解できるかどうかが他の受験生と差をつける「鍵」となりそうである。
【経済学】
経済理論:出題数はミクロ経済学とマクロ経済学とも例年通りであった。難易度について,ミクロ経済学(№29~33)は全体
的に標準的だが,№30 は従価税の課税後の需要曲線の関係式を立てることが求められる点でやや難であった。マクロ経済学(№
34~37)は全体的には標準的であるが,№36 はやや難で,与えられた条件から損失関数の変化分をとったうえで損失関数の値
が最小化するための条件を検討することが必要である問題であった。また,№37 の成長会計の問題では,コブ=ダグラス型生
産関数のもとで資本分配率や労働分配率を適切に求められるかどうかがポイントとなった。
経済事情:出題数は例年通り日本経済と世界経済ともに2題ずつであった。№38 と№39 の日本経済に関する出題は内閣府「経
済財政白書」で取り上げられている内容を押さえておくことで解答可能な内容である。一方,世界経済のうち,№40 の原油の
需給や価格の動向等といった特定のテーマを問う内容は,例年の傾向とはやや異なっており,難易度も高いものであった。内
容としては内閣府「世界経済の潮流2015 年Ⅰ」で取り上げられていた原油価格の動向等を押さえておくことが求められるもの
であった。№41 はユーロ圏の経済動向を問う出題であったが,主要な経済指標の動向を中心に押さえておくことが求められる
内容であった。
【労働経済・社会保障】
労働経済:労働事情を含めると本年度は№42 から№44 の3題の出題となった。№42 の失業者の理論は,失業者から就業者とな
った者と就業者から失業者となった者とが一致する状態を自然失業率の水準をふまえて適切に捉えられるかどうかを問う内容
で,やや難であった。№43 のジョブ・サーチ理論は平成25 年度以来の出題となり,求職活動に伴う限界期待収益と限界費用と
の関係を問う内容であるが,初見の場合には難しい内容であった。№44 は労働経済等の現状を問う内容であったが,肢1の東
京圏への人口の転入超過数や肢4の訪日外国人消費の総額の動向等を問う内容は,やや細かな内容であったが,日頃から関心
をもってこれらの動向を押さえておけば解答可能な内容である。
社会保障:本年度は№45 と№46 の2題が社会保障に該当する出題内容となった。これらのうち,№45 は少子化等の現状,№46
は社会保障の現状につき,それぞれ関連する統計数値の動向を問う内容であり,傾向および難易度とも例年通りであった。
【社会学】
本年の労働基準監督官本試験の社会学は計2問であったが,いずれも例年に見ないほど難易度の低いものであった。№47 は,
G.ジンメルの社会学における代表のひとつである『社会学』を知らなくてもAとBの肢の解答がわかれば楽に解けるもので
ある。また№48 も人名と著作の組み合わせのうち正しいものを選べばよいのであり,彼らの著作を知らなくてもその名称から
正誤が十分推測が可能なものであった。各問及び2問全体の難易度の評価もA[易問]であるといえる。
1
就業規則
3
2
休憩・休日・休暇
3
A
3
労働関係の成立・展開
1
A
4 労働法
解雇
1
A
5
年少者
5
A
6
労働者の安全と衛生
5
A
7
労使紛争の解決手段
4
B
8
我が国の就業
4
A
9
我が国の雇用失業情勢
4
B
10 労働事情
我が国の労働時間等
2
A
11
我が国の賃金等
3
C
12
我が国の労働組合・労使関係等
2
B
13
信教の自由
2
A
経済的自由権
5
A
国会
5
A
条例
4
A
行政立法
4
B
行政指導
4
A
抗告訴訟の原告適格
2
A
20
国家賠償
3
A
21
14
15
憲法
16
17
18
19
行政法
制限行為能力者
3
A
22
不動産物権変動
1
A
23 民法
債権者代位権・詐害行為取消権
4
A
24
売買契約
1
A
25
婚姻
5
B
26
正当防衛・緊急避難
3
B
27 刑法
汚職の罪
1
A
28
窃盗罪等
1
A
29
需要の価格弾力性
4
A
30
従価税
5
B
31
費用曲線
4
B
32
市場メカニズム
4
A
33
ゲーム論
1
B
34
貨幣・金融政策
4
A
35 経済学
為替レート決定のメカニズム
1
A
36
フィリップス曲線
3
C
37
成長会計
3
A
38
我が国における最近の景気動向
4
A
39
我が国の経済
4
A
40
原油の需給・価格等
5
A
41
最近のヨーロッパ経済の状況
5
B
42
失業者の理論
4
B
43
ジョブ・サーチ理論
4
C
労働経済・
44 社会保障
我が国の労働経済等
2
A
45
我が国の少子化等の状況
1
B
46
我が国の社会保障
2
C
G.ジンメル
5
A
フランクフルト学派
4
A
47
48
社会学
※ 正答率(A:60%以上,B:40%以上60%未満,C:40%未満)は,LEC公務員試験 受験生応援企画『本試験無料成績診断』のデータ(5/31 時点)に基づいて算出しています。
本成績診断のご利用方法等の詳細は,LEC公務員Web サイトの専用ページ(http://www.lec-jp.com/koumuin/juken/seiseki/)にてご案内しています。
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