北欧史概説 2

バルト・スカンディア
における主権国家体制
『北欧史』 pp.129-159.
戦争と国家形成
• 16∼17世紀のバルト海世界に頻発する国際戦争
• カルマル連合解体以降のデンマークとスウェーデンの対立
• 宗教改革以後のバルト海東岸における旧ドイツ騎士団領をめぐ
るスウェーデン・ポーランド・モスクワの対立
•
スウェーデン王位をめぐるスウェーデン・ポーランドの対立
• 戦争に対応する国家形成
• 宗教改革による国王を頂点とした国家教会体制の確立
• 国内の人的・物的資源を動員可能な国家組織の模索
普遍君主と礫岩国家
• 神聖ローマ帝国の帝権やローマ・カトリック教会の教権の弱
体化→宗教的論理と軍事的実力に基づく「普遍君主」の模索
• 中世以来の独自の政体をもった様々な地域を包含する「礫岩
国家」の成立
• デンマーク王権を保護者とする「オレンボー君主国」(ヒー
ルスタート体制)
• スウェーデン王権を保護者とする「バルト海帝国」
「礫岩国家」としてのデンマーク
•ノルウェー王オーラヴ4世のデンマーク王即位(1376年)…1814年まで続く
デンマーク・ノルウェー連合王国の開始(→1536年以降は形式的にデン
マーク王国に統合)
•オルデンブルク伯クリスチャンのデンマーク王即位(1448)…1863年まで
続く「オレンボー君主国」の開始
•リーベ条約(1460)…ホルシュタインとシュレスヴィッヒの不分割を条件
にデンマーク王は神聖ローマ帝国からホルシュタイン伯とシュレスヴィッヒ
公を授爵(→ホルシュタインは1474年に公領へ格上げ)
•デンマーク・ロシア間の同盟締結(1773)…ロシア皇太子へオルデンブル
ク伯の地位を譲渡
•第二次スレースヴィ戦争(シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン戦争)のウィー
ン条約(1864)…シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン両公領をプロイセン・
オーストリアに譲渡
「礫岩国家」としてのスウェーデン
•エストニア支配(1561)…テウシナ条約でモス
クワ・ツァーリ国からの承認(1595)→エスト
ニア総督の統治
•ポーランドとの同君連合(1592∼99)…
「ヴァーサ君主国」
•リヴォニア支配(1629)…アルトマルク条約で
ポーランドからの承認→リヴォニア総督の統治
•北ドイツの諸領邦(1648)…ウェストファリア
条約(オスナブリュック条約)で神聖ローマ帝
国の諸侯から承認→ポンメルン総督などの統治
•デンマークとの抗争(→後で説明)…スカン
ディナヴィアの領土を獲得
•シュトラルズント・ヴィスマル以外はニュース
タード条約(1721)で喪失
デンマークにおける宗教改革
• クリスチャン2世
• 最後の連合王→スウェーデンの離反、ルター派容認の姿勢…貴族・聖職者の反感→廃位・追放
(1523)→神聖ローマ皇帝カール5世の後援を得てノルウェー侵攻・幽閉(1532)
• フレゼリク1世
• 制限された王権…ルター派布教禁止の一方でH.タウセンの保護、ルター派の是非をめぐるオーゼ
ンセ議会(1526-27)の開催
• 伯爵戦争(1534-36)
• スレースヴィ公クリスチャン(ルター派)の国王選出→オルデンブルク伯クリストファ(旧勢力
→クリスチャン2世の復位を主張)との対立
• クリスチャン3世
• カトリック司教(ルンド・ロスキレ・リーベ)逮捕→コペンハーゲン議会(1536)…伯爵戦争の
責任をカトリック教会のものとして教会領を没収
• ヴィッテンベルク派による教会法とコペンハーゲン大学再興(1537)、C.ベーダセンとB.バラ
ディウスによる『クリスチャン3世欽定訳聖書』(1550)
• 即位憲章(1536)…ノルウェーの王国参事会を廃止し、デンマーク王国に併合
スウェーデンの宗教改革
• グスタヴ1世ヴァーサ
• 財政負担の拡大→教会からの借金と寄付(1522-24)
• ダーラナ農民の蜂起(1525-26)→ヴェステルオース議会(1527)…教会
財産譲渡
• 福音主義宣言(1536)…L.アンドレイとO.ペートリによる『グスタヴ・
ヴァーサ欽定訳聖書』(1540-41)
• 初期ヴァーサ朝
• ポーランド王ジグムント3世のスウェーデン王即位(1593)
• ウップサーラ宗教決議(1595)…カトリック礼拝の禁止→教会法の制定
は1687年まで遅れる
• ストーンゲブローの戦い→シーギスムンド王の廃位決議(1599)
バルト海世界における
主権国家間の主な国際戦争
• リヴォニア戦争(1558∼83)→モスクワ・ツァーリ国への対抗を目的としたフィンラン
ド大公ユーハンとポーランド王女カタジナの結婚(ポーランドではリトアニアとのルブ
リン合同)→ヤム・サポルスキ条約(1582)/プリューサ条約(1583)
• バルト海世界におけるスウェーデン・ポーランド・ロシア間の抗争の開始
• 北方七年戦争(1563∼70)→シュテッティン条約(1570)
• スウェーデンの「帝国」化の開始
• 三十年戦争(1618∼48)→デンマーク参戦(1625∼29)→スウェーデン参戦(1630∼
48)→ウェストファリア条約(1648)
• ドイツ諸侯としての「スウェーデン王」→バルト海世界の覇権
• 大北方戦争(1700∼21)→ニシュタット条約(1721)
• 「バルト海帝国」の崩壊、ロシア帝国の勃興
デンマーク・スウェーデン間で
行われた主な戦争
• カルマル戦争(1611∼13)→クレーネト条約
• デンマーク王権の拡大の契機、スウェーデンの国制改革の契機
• トシュテンソン戦争(1643∼45)→ブレムセブルー条約
• スウェーデンの版図拡大
• カール・グスタヴ戦争(1657∼60)→ロスキレ条約(1658)、コペンハーゲン条
約(1660)
•
スウェーデンの版図最大化、デンマーク王権の危機→絶対王政確立
• スコーネ戦争(1675∼79)→フォンテーヌブロー条約(1679)
• スウェーデンにおける1680年代の改革事業と絶対王政の確立