Indicators Update

経済分析レポート
2016 年 7 月 29 日
全7頁
Indicators Update
6 月消費統計
家計調査に見る個人消費は非常に緩やかな増加基調を維持
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 岡本 佳佑
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

2016 年 6 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲1.1%と 2 ヶ月
連続で減少した。一方、振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住
居等)は同+0.4%と 2 ヶ月ぶりに増加した。

実質消費支出の動きを費目別に見ると、「諸雑費」(前月比+11.4%)、「保健医療」
(同+6.3%)などが前月から増加した一方、「交通・通信」(同▲8.1%)、「住居」
(同▲13.1%)、「被服及び履物」(同▲14.3%)などが減少した。

先行きの個人消費は、緩やかながら拡大基調をたどると見込んでいる。労働需給のタイ
ト化や、マクロの賃金(=一人当たり賃金×雇用者数)が増加していることなどが好材
料だ。さらに、政府が 2017 年 4 月から実施予定であった消費税増税の延期を決定した
ことで、短期的には消費者マインドが改善し、個人消費が押し上げられるとみている。
しかし、消費税増税の延期は、将来の増税への懸念等から家計に財布の紐を締めさせ、
中長期的には個人消費を下押しする可能性がある点にも留意しておきたい。
図表 1:各種消費指標の概況
2016年
出所
3月
4月
5月
6月
前年比
▲ 5.3
▲ 0.4
▲ 1.1
▲ 2.2 総務省
実質消費支出
家計調査
前月比
0.5
0.2
▲ 1.5
▲ 1.1 総務省
実質消費支出(除く住居等)
前月比
▲ 0.7
2.9
▲ 2.0
0.4 総務省
前年比
▲ 1.0
▲ 0.9
▲ 2.1
▲ 1.4 経済産業省
商業動態統計 小売業
前月比
1.5
▲ 0.1
▲ 0.1
0.2 経済産業省
消費総合指数
前月比
▲ 0.0
0.1
0.3
内閣府
百貨店売上高
前年比
▲ 2.9
▲ 3.8
▲ 5.1
▲ 3.5 日本百貨店協会
コンビニエンスストア売上高
前年比
▲ 0.1
0.9
▲ 0.3
0.8 (一社)日本フランチャイズチェーン協会
スーパー売上高
前年比
▲ 0.3
▲ 0.7
▲ 1.3
▲ 0.5 日本チェーンストア協会
外食売上高
前年比
1.8
3.0
0.6
2.0 (一社)日本フードサービス協会
旅行取扱高
前年比
5.1
1.6
#N/A
観光庁
(注)百貨店売上高、コンビニエンスストア売上高、スーパー売上高の前年比は店舗数調整後。
(出所)各種統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2/7
2016 年 6 月の実質消費支出は前月比▲1.1%と 2 ヶ月連続で減少
2016 年 6 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲1.1%と 2 ヶ月連続で
減少した。一方、振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は同+
0.4%と 2 ヶ月ぶりに増加した。需要側統計である家計調査に見る個人消費は、非常に緩やかな
がら増加基調にあると評価できる。
10 大費目別の動き:4 費目が前月から増加
実質消費支出の動きを費目別に見ると、前月から増加したのは 10 大費目中 4 費目、
「諸雑費」
(前月比+11.4%)、「保健医療」(同+6.3%)、「光熱・水道」(同+2.4%)「教育」(同
+3.3%)であった。「諸雑費」や「保健医療」が前月比で比較的大きく増加しているが、特に
目立った特徴は見られず、一時的な振れによるものであると考えられる。
一方、「交通・通信」(前月比▲8.1%)、「住居」(同▲13.1%)、「被服及び履物」(同
▲14.3%)、「家具・家事用品」(同▲10.8%)、「食料」(同▲1.7%)、「教養娯楽」(同
▲0.3%)が前月から減少した。「交通・通信」では自動車等購入が大きくマイナスに寄与した
とみられる。引き続き、軽自動車の販売不振が影響しているようだ。また、「被服及び履物」
の下落率の大きさが目立つが、特に洋服への支出が伸び悩んだもようである。6 月は上中旬に気
温が高かったものの、百貨店の夏物セール前倒しに伴い、下旬に洋服の買い控えが起きた可能
性が指摘できる。
図表 2:実質消費支出の推移
図表 3:実質消費支出の費目別寄与度
(2010年=100)
115
(前月比、%、%pt)
5
110
3
105
1
-1
100
-3
95
-5
90
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
実質消費支出
15
実質消費支出(住居等を除く)
(注1)季節調整値。
(注2)「住居等」とは住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金。
(出所)総務省統計より大和総研作成
16
(年)
-7
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
13
食料
家具・家事用品
交通・通信
諸雑費
14
住居
被服及び履物
教育
消費支出
(出所)総務省統計より大和総研作成
15
16
光熱・水道
保健医療
教養娯楽
(月)
(年)
3/7
供給側統計に見る個人消費は依然として力強さに欠ける
2016 年 6 月の商業動態統計を見ると、名目小売販売額は季節調整済み前月比+0.2%と 3 ヶ月
ぶりに増加した(図表 4)。昨年後半から続いた名目小売販売額の減少基調は春先に止まったも
のの、力強さに欠けた状況が継続している。
内訳を見ると、前月から増加したのは「燃料小売業」(前月比+3.0%)のみであった。ガソ
リン価格の上昇などが販売額増加の追い風となったもようである。
一方、「機械器具小売業」(前月比▲3.3%)、「自動車小売業」(同▲2.2%)、「各種商
品小売業」(同▲1.5%)、「織物・衣服・身の回り品小売業」(同▲1.2%)、「その他小売
業」(同▲0.7%)、「飲食料品小売業」(同▲0.5%)が前月から減少した。「自動車小売業」
については、4 月に大幅増となって以降、緩やかな減少が続いている。「織物・衣服・身の回り
品小売業」については、前頁で指摘した百貨店によるセール前倒しの影響に加え、円高などに
よって訪日外国人客が高額商品の購入を控え始めていることなどが背景にあると推測される。
図表 4:商業動態統計の推移
(前月比、%、%pt)
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
13
14
各種商品小売業
飲食料品小売業
機械器具小売業
燃料小売業
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
15
16
織物・衣服・身の回り品小売業
自動車小売業
その他小売業
小売業計
(月)
(年)
4/7
消費者マインドは前月から改善したが、横ばい圏からの域は出ていない
2016 年 6 月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前月差+0.9pt と 2 ヶ月連続で上昇
した(図表 5)。指数の内訳を見ると、「耐久消費財の買い時判断」(同+1.9pt)、「雇用環
境」(同+0.8pt)、「暮らし向き」(同+0.7pt)、「収入の増え方」(同+0.3pt)と、4 項
目の全てが前月から上昇した。ただし、消費者態度指数に見る消費者マインドは前月から改善
しているが、横ばい圏の域は出ていない状況だ。
「資産価値」に関する意識指標は同+0.3pt と、2 ヶ月連続で上昇した。6 月初旬に発表され
た米 5 月雇用統計の結果を受けて米国の利上げ観測が後退し、日経平均株価は一時調整したも
のの、6 月半ば頃に上昇に転じたことが好感されたものと考えられる。
図表 5:消費者態度指数の推移
(前月差、pt)
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
2013
2014
暮らし向き
雇用環境
消費者態度指数
2015
2016
(pt)
48
46
44
42
40
38
36
34
32
30
(月)
(年)
収入の増え方
耐久消費財の買い時判断
消費者態度指数(水準、右軸)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
先行きの個人消費は緩やかな拡大基調をたどる見通し
先行きの個人消費は、緩やかながら拡大基調をたどると見込んでいる。労働需給は引き続き
タイトであり、パート・アルバイトの賃金が緩やかな増加基調にあることが、先行きの個人消
費を下支えする要因になると考えられる。加えて、非製造業を中心とする企業の労働需要の増
加から雇用者数が継続的に増加しており、マクロの賃金(=一人当たり賃金×雇用者数)が押
し上げられている点も好材料だ。さらに、政府が 2017 年 4 月から実施予定であった消費税増税
の延期を決定したことで、短期的には消費者マインドが改善し、個人消費が押し上げられると
みている。しかし、消費税増税の延期は、将来の増税への懸念等から家計に財布の紐を締めさ
せ、中長期的には個人消費を下押しする可能性がある点にも留意しておきたい。
5/7
消費・概況①
実質消費支出の費目別寄与度
実質消費支出(家計調査、二人以上世帯)
(前月比、%、%pt)
(2010年=100)
115
10.0
110
5.0
0.0
105
-5.0
100
-10.0
95
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
食料
家具・家事用品
交通・通信
諸雑費
15
住居
被服及び履物
教育
消費支出
90
12345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
112
1 12345678910
11 2123456 (月)
16
(年)
光熱・水道
保健医療
教養娯楽
10
11
12
13
実質消費支出
14
15
16
(年)
実質消費支出(住居等を除く)
(出所)総務省統計より大和総研作成
(注1)季節調整値。
(注2)「住居等」とは住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金。
(出所)総務省統計より大和総研作成
費目別実質消費①
費目別実質消費②
(2010年=100)
150
125
140
120
(2010年=100)
115
130
110
120
105
110
100
100
95
90
90
80
85
70
80
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
13
食料
14
住居
光熱・水道
15
家具・家事用品
16
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
(月)
13
(年)
被服及び履物
保健医療
14
交通・通信
15
教育
16
教養娯楽
(月)
(年)
諸雑費
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
基礎的支出と選択的支出
勤労者世帯の実質可処分所得と平均消費性向
(%)
86
(2010年=100)
104
(前年比、%)
10.0
84
102
82
100
80
98
78
76
96
5.0
0.0
-5.0
74
94
72
92
-10.0
70
90
68
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6
13
14
勤労者世帯の可処分所得
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
15
平均消費性向(右軸)
16
(月)
(年)
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
基礎的支出
(出所)総務省統計より大和総研作成
15
選択的支出
16
実質消費
(年)
6/7
消費・概況②
大型小売店業態別商品販売額
商業動態統計小売業販売額の推移
(前月比、%、%pt)
(2010年=100)
130
10.0
7.5
125
5.0
120
2.5
0.0
115
-2.5
110
-5.0
105
-7.5
100
-10.0
95
-12.5
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
15
各種商品小売業
飲食料品小売業
機械器具小売業
燃料小売業
16
(年)
90
85
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
織物・衣服・身の回り品小売業
自動車小売業
その他小売業
小売業計
13
14
合計
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
業種別小売販売①
業種別小売販売②
(2010年=100)
120
(2010年=100)
130
115
120
110
110
105
100
100
90
95
80
90
70
85
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
15
小売業計
織物・衣服・身の回り品小売業
その他の小売業
(年)
16
スーパー
60
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
(年)
16
15
百貨店
13
14
15
16
(年)
各種商品小売業
飲食料品小売業
自動車小売業
機械器具小売業
燃料小売業
その他小売業
(注)その他小売業は二輪自動車小売業、自転車小売業、家具・じゅう器小売業など。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
(注)その他の小売業は自動車小売業、機械器具小売業、燃料小売業、その他小売業。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
GDPベースの民間最終消費支出と消費総合指数
消費者マインド
65
48
(兆円)
330
60
46
325
114
55
44
320
112
50
42
315
110
45
40
310
108
40
38
305
106
35
36
300
104
30
34
25
32
295
102
290
100
285
98
(DI)
20
(DI)
30
12345678910
112
1 12345678910
112
1 12345678910
11 212345678910
11
1 212345678910
112
1 12345678910
11 2123456 (月)
10
11
12
13
14
15
景気ウォッチャー調査 現状判断DI 家計動向
景気ウォッチャー調査 先行き判断DI 家計動向
消費者態度指数(訪問調査、右軸)
消費者態度指数(郵送調査、右軸)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
16
(2005年=100)
116
(年)
96
280
05
06
07
08
09
10
民間最終消費支出
(出所)内閣府統計より大和総研作成
11
12
13
14
消費総合指数(右軸)
15
16
(年)
7/7
消費・協会統計
新車販売台数
テレビ消費額と出荷台数
(万台)
40
(万台)
21
19
35
17
30
25
20
15
10
250
200
15
150
13
100
11
50
9
0
7
-50
5
12345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
12123456 (月)
10
11
12
13
14
15
16 (年)
普通乗用車+小型乗用車
(前年比、%)
300
-100
12345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 2123456 (月)
11
12
13
家計調査
軽自動車(右軸)
14
15
家計消費状況調査
16
(年)
JEITA
(注)家計調査と家計消費状況調査の値は当該CPIで実質化。
(出所)JEITA、総務省統計より作成
(注)季節調整は大和総研。
(出所)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会統計より大和総研作成
百貨店売上の寄与度分解(品目別、全店舗ベース)
スーパー売上高の寄与度分解(品目別、全店舗ベース)
(前年比、%)
15
(前年比、%)
15
10
10
5
0
5
-5
0
-10
-15
-5
-20
-25
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
(年)
13
14
15
16
衣料品
身の回り品
食料品
食堂喫茶
商品券
総額
(出所)日本百貨店協会統計より大和総研作成
雑貨
サービス
-10
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
(年)
13
14
15
16
家庭用品
その他
食料品
衣料品
住関品
サービス
その他
総販売額
(出所)日本チェーンストア協会統計より大和総研作成
コンビニ売上高(店舗数調整前)
外食市場売上高
(前年比、%)
10
(前年比、%)
8
8
4
6
4
0
2
0
-4
-2
-4
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
客数
15
客単価
売上高
(出所)日本フランチャイズチェーン協会統計より大和総研作成
16
(年)
-8
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 (月)
13
14
客数
15
客単価
(出所)日本フードサービス協会統計より大和総研作成
売上高
16
(年)