【緒言】頸部聴診法は患者への

論文内容要旨
論文題名
Accuracy of Cervical Auscultation in Detecting Dysphagia
(摂食嚥下障害における頸部聴診法の診断精度について)
掲載雑誌名 Journal of Oral Rehabilitation
投稿中
口腔リハビリテーション医学
野末
真司
内容要旨
【緒言】頸部聴診法は患者への侵襲が少なく、食事場面で施行可能な唯一
の嚥下障害スクリーニング法である。頸部聴診法の診断精度は複数の報告
があるが、感度は 62~95%、特異度は 50~92%とばらつきが大きい。そ
の要因として評価法が統一されていないことが考えられる。今回、われわ
れ は 嚥 下 前 後 の 呼 気 音 の み (Expiratory Sound: ES) 、 嚥 下 音 の み
(Swallowing Sound: SS)、嚥下前後の呼気音と嚥下音(ES+SS)の 3 種類の
音響サンプルを嚥下障害の聴覚的判定の対象とし頸部聴診法の診断精度
に音響サンプルの違いがどのように影響するかを調査した。
【方法】嚥下造影検査(VF)前に咽頭喉頭の貯留物を排出・吸引し、咽喉頭
がクリアな状態で検査を開始した。聴覚的判定試験に用いる音響サンプル
は患者 46 名の VF 時に記録した嚥下音(SS)および嚥下前後の自発的な呼気
音(ES)とした。なお、VF 検査試料はバリウム含有ヨーグルト状食品 3cc
とした。VF 画像の診断は歯科医師 3 名が Penetration-Aspiration scale
(PAS)を用いて行い、PAS1, 2 を「許容群」とし、PAS3-8 を「嚥下障害群」
と分類した。聴覚による嚥下障害有無の判定は歯科医師 10 名と言語聴覚
士 2 名が ES、SS、ES+SS の 3 種類の音響サンプルについて行った。判定は
1 か月間隔をあけて 2 回施行した。頸部聴診法の診断精度を検討するため
に各音響サンプルの判定について VF 所見との感度、特異度を分析した。
また、検者内誤差を比較するために 2 回の判定の一致率、および一致した
判定の VF 所見と感度、特異度を分析した。
【結果】許容群は 30 サンプル、嚥下障害群は 16 サンプルであった。各音
響サンプルの聴覚判定の感度は 1 回目が ES:57.6%、SS:72.3%、ES+SS:
81.2%、2 回目が ES:59.9%、SS:71.6%、ES+SS:83.9%であった。特
異度は 1 回目が ES:54.3%、SS:49.6%、ES+SS:46.9%、2 回目が ES:
51.0%、SS:51.7%、ES+SS:44.1%であった。2 回の判定の一致率は ES:
72.5%、SS:81.2%、ES+SS:80.1%であった。一致した判定の感度は ES:
60.3%、SS:76.6%、ES+SS:89.8%で、特異度は ES:53.7%、SS:50.3%、
ES+SS:44.5 であった。
【考察】今回、われわれは、それぞれのサンプルについて VF 時に記録し
た音響サンプルから 3 種の音響サンプルを編集し、2 回の聴覚による嚥下
障害の判定実験を行い、感度、特異度、判定一致率、および一致した判定
の感度、特異度を調査した。その結果、ES と比較し、感度・特異度とも
に高い SS、あるいは特異度は劣るが感度の高い ES+SS を対象とした聴覚
的判定が、嚥下障害スクリーニング方法として適していると考えられた。
なお、2 回の聴覚判定が一致したサンプルの感度についても、他のサンプ
ルに比べ ES+SS が有意に高かった。一方、ES+SS では特異度は最も低かっ
たが、異常を検知するスクリーニング検査では、ES+SS で検査を行うこと
が有用であることが示唆された。しかしながら、嚥下音は嚥下試料の性状
によって長さや音圧が変わることが知られており、様々な食形態が混在す
る場合の診断精度については、今後さらなる検討が必要であると思われた。