別紙1 論 文 審 査 の 要 旨 報告番号 甲 第 2795 号 論文審査担当者 氏 名 平沼 主査 教授 美島 健二 副査 教授 桑田 啓貴 副査 准教授 宮本 洋一 克洋 ( 論 文 審 査の 要 旨) 学 位 申請 論 文「 Expression of nephronectin is enhanced by 1α,25-dihydroxyvitamin D 3 」 に つ い て , 上 記の 主査 1 名 , 副 査 2名 が 個 別に 審 査 を行 っ た . こ れ まで 筆 者ら は , 活性 型 ビ タミ ン D 3 に Integrinα 8 β 1 に 結合 す る細 胞外 基 質 で あ る Nephronectinの発 現 を 強く 促 進 させ る 作用 を 見 出し て き た . 本 研究 で は 活性 型 ビ タミ ン D 3 の骨 芽 細 胞 にお け る Nephronectinの 発現 誘 導能 に つ いて 検 証 した . すな わ , マウ ス 頭 蓋冠 由 来骨 芽 細 胞 株 MC3T3-E1細 胞 を 用い , 活 性型 ビ タミ ン D 3 と, そ の 構造 類 縁体 で あ る EB1089およ び Calcipotriolを処 理 し 24時 間 培 養し た . そ の 結 果, 活 性 型ビ タ ミン D 3 お よび そ の 構造 類 縁体 を 処 理 し た細 胞 で Nephronectinの 発現 の 上昇 が 認 めら れ た . 次 に , 活 性 型 ビタ ミ ン D 3 によ る Nephronectinの発 現 制 御が ビ タ ミン D受 容体 を 介し て 行 われ て いる 可 能 性を 検 討 する た めに , ビ タ ミ ン D受 容 体に 対 する siRNA導入 後 に活 性 型ビ タ ミ ン D 3 に よ り誘 導 され る Nephronectinの 発 現 量 を 検討 し た . 結 果 とし て , siRNA処 理に よ りビ タ ミ ン D受 容 体の 発 現が 低 下 した 細 胞に お い て 活 性 型ビ タ ミン D 3 に よる Nephronectinの 発 現 誘導 は 抑 制さ れ , 骨 芽 細 胞株 に お いて 活 性型 ビ タ ミ ン D 3 はビ タ ミン D受容 体 を 介し Nephronectinの 発 現 を濃 度 及び 時 間 依存 的 に 制御 し てい る こ と が 示唆 さ れた . 本論文の審査において, 副査の桑田委員および宮本委員から多くの質問があり, その一部とそ れ ら に 対す る 回答 を 以 下に 示 す . 桑田委員の質問とそれらに対する回答: 1. 細 胞 表面 に 発現 し てい る イ ンテ グ リン α 8 β 1 の 組 み 合わ せ の 生 物 学 的意 義 を 説明 し なさ い . ( RGD 配 列 を 有 す る イ ン テ グ リ ン に は , 殆 ど の 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス タ ン パ ク 質 が 結 合 す る こ と が 知 ら れ てい る . α と βの 2 種 類 の 組み 合 わせか ら な り , α 8 β 1 は 主 に間 葉 細 胞に 局 在し , 上 皮- 間 葉 細 胞間 の 相互 作 用 が報 告 さ れて い る . ) 2. 今 回 実験 に 用い た MC3T3-E1 細胞 と はど の よう な 細 胞で す か , 説 明 しな さ い . ( マ ウ ス頭 蓋 冠由 来 の 細胞 株 と して , 骨芽 細 胞 の分 化 誘 導を 検 討す る 実 験に 多 用 され て いま す .) 3. ActinomycinD を添 加 した 際 の 細胞 へ の影 響 に つい て , どの よ うな 機 序 で転 写 を 阻害 す るの か . ( 転 写 阻害 剤 であ る ActinomycinD は , DNA の 2 本 鎖 に 結合 す るこ と で , 複 製 や 転写 に関与する酵 (主査が記載) 素 の 働 き を妨 げ る . DNA の グ ア ニン 塩 基と 結 合 する こ と で , DNA 依 存性 RNA ポ リメ ラ ー ゼを 阻 害し , 転写が抑制される. 長時間処理により細胞に毒性を与えるが, 今回は細胞毒性に影響のない条件 で行った. ) 4. こ れ ま でに 報 告さ れ て いる Npnt の骨 芽 細胞 に おけ る 役 割を 説 明せ よ . ( Npnt を 過 剰 発現 さ せた 骨 芽 細胞 で は分 化 が 促進 さ れ る事 が 報告 さ れ てお り , また そ の作 用 はサ イトカイン刺激によって分化を阻害された細胞でも回復がみられることから , 骨芽細胞の分化誘 導 に 促 進的 な 作用 が あ る事 が 示 唆さ れ てい る . ) 宮本委員の質問とそれらに対する回答: 1. 骨 芽 細 胞に お ける Npnt の 発 現 制御 に 着目 し た 理由 を 説 明せ よ . ( Npnt は 骨 芽細 胞 におけ る 分 化を 誘 導す る 作 用が 知 ら れて お り , ま た ビタ ミ ン D 受容 体 が発 現 し て い る 事も 知 られ て い るの で , 今回 活 性型 ビ タ ミン D 3 に よ る Npnt の 発 現制 御 機 構を 検 討す る にあ た っ て 適切 な 細胞 で あ ると 判 断 した た め . ) 2. Npnt の 骨組 織 ある い は骨 芽 細 胞に お ける 役 割 につ い て はど の よう な 報 告が あ る か , 説 明せ よ . ( Npnt を 過 剰 発現 さ せた 骨 芽 細胞 で は分 化 が 促進 さ れ る事 が 報告 さ れ てお り , また そ の作 用 はサ イトカイン刺激によって分化を阻害された細胞でも回復がみられることから , 骨芽細胞の分化誘 導 に 促 進的 な 作用 が あ る事 が 示 唆さ れ てい る . ) 3. 腎 臓 の 一部 の 細胞 も VDR を 持 ちま す が , 骨 芽 細胞 と 同 様の 発 現制 御 が 予想 さ れ るか , 説明 せ よ. ( 生 体 にお け る腎 臓 に 対し て の 活性 型 ビタ ミ ン D の 作 用 に 関し て , カ ルシ ウ ム の再 吸 収が よ く 知 られているが, 腎臓の発生には直接的な関連性は無い事から , 細胞外マトリックスタンパク質で あ る Npnt の 発 現に は 関連 性 は 少な い と予 想 さ れる . ) 美島委員の質問とそれらに対する回答: 1. Nephronectin を 発 現 し て い る 細胞 は どの よ う なも の が ある か ? ( 骨 芽 細胞 に 多 く発 現 して い る . ま た , 硬組 織 以外 で は 腎臓 の 尿 管上 皮 細胞 で 発 現し , 後 腎 間葉 細 胞 の イ ンテ グ リン α 8 β 1 部 位 に 接着 す る事 が 知 られ て い る . ) 2. Nephronectin に よ る 骨 芽 細 胞 分化 誘 導の メ カ ニズ ム に つい て 述べ よ . ( Nephronectin が RGD 配 列 を 介し て 細胞 表 面の イ ン テグ リ ンα 8 β 1 部 位 に 結 合し た 後 , 細胞 内 で MAPK 経 路 の 活 性 化を 介 し て骨 芽 細胞 の 分 化を 促 進 する 事 が知 ら れ て い る . ) 3. Nephronectin の プ ロ モ ー タ ー 領域 に は VDR の Binding region が 存 在 し て い る か . ( Npnt 遺 伝 子 の 転写 開始 点 か ら上 流 3kbp の 位 置 に VDRE の 存 在 が 予想 さ れ てい た が , レポ ータ ー ア ッ セイ に て確 認 し たと こ ろ , 3kbp 以 内 の 位置 に は 確認 で き な か っ た. そ の 為 , 3kbp よ り 上 流 に 存 在 する と 考え ら れ る. ) 主 査 の 美島 委 員は , 両 副査 の 質 問に 対 する 回 答 の妥 当 性 を確 認 する と と もに , 本 論文 の 主張 を さ ら に 確認 す るた め に 上記 の 質 問を し たと こ ろ , 明 確 か つ適 切 な回 答 が 得ら れ た . 以 上 の審 査 結果 か ら , 本 論 文 を博 士 (歯 学 ) の学 位 授 与に 値 する も の と判 断 し た . (主査が記載)
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