ロコモーティブ症候群と運動器不安定症〜介護予防のために はじめに

ロコモーティブ症候群と運動器不安定症〜介護予防のために
■はじめに
日本は、今後超高齢社会を迎え、2025 年には人口の 29%が 65 歳以上の高齢者となり
ます。老いてもなお健康を維持し、介護の必要のない状態=「健康寿命」をのばすことが、
個人にとっても社会にとっても大変重要なこととなっています。
■寝たきり予防と整形外科
介護が必要な状態になるきっかけで一番多いのは、
「脳血管性疾患」いわゆる「脳卒中」
や「脳梗塞」などで、第二位は「高齢による衰弱」です。そして第三位が「骨折、転倒」
です。更にそれに続く原因は「関節症」(いわゆる関節の老化現象)です。
すなわち、整形外科で扱う運動器の障害も介護が必要になる大きな要因になっており、
筋力の低下やバランス能力の低下を防止することは、
「健康寿命」をのばすために必要なこ
とです。
■ロコモーティブ症候群
このような運動器の衰えを未然に発見し、予防をするために、「ロコモーティブ症候群
(ロコモ)」という概念が日本の整形外科医の団体(日本整形外科学会)より提唱されまし
た。
ロコモは、「骨、関節、筋肉など運動器の機能の退行変性によって、自立度が低下し、
介護が必要になったり、寝たきりになる可能性が高い状態」と定められています。ロコモ
は徐々に進行することから、自分でチェックすることが重要で、以下に挙げられる状態に
あてはまるものがあるなら、ロコモになっている可能性が高いといわれてます。
1
2 キロ程度の買い物をして、持ち帰るが困難である。
2
家のやや重い仕事(掃除機の使用や布団の上げ下ろし)が困難である。
3
家の中でつまずいたり滑ったりする。
4
15 分くらい続けて歩けない。
5
横断歩道を青信号の間に渡りきれない。
6
階段を上るのに、手すりが必要である。
7
片脚立ちで靴下がはけない。
■運動器不安定症
さらには運動器の衰えが進行し治療の必要な状態となったものを一つの病気ととらえ、
「運動器不安定症」という名称がつけられました。運動器不安定症とは、
「高齢化によりバ
ランス能力および移動能力の低下が生じ、閉じこもりや転倒のリスクが高まった状態」の
ことを指します。
例えば、骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折で背中が曲がっていたり、変形性膝関節症で膝
の痛みのために、家の外には出ることが出来なかったり、そばで見ていても倒れそうだな
と感じるような状態のことです。
「運動器不安定症」は、高血圧症や、糖尿病と同様に治療の必要な病気であり、その診
断を確定するための定義が定められました。
まずは、運動機能低下をきたす疾患が存在することが大前提となります。運動機能低下
をきたす疾患には脊椎圧迫骨折や下肢骨折、これらの原因ともなる骨粗鬆症・関節リウマ
チ・変形性関節症などがあります。部位では腰や膝が要注意だといわれています。
それに加えて、日常生活自立度判定がランク J または A(生活自立から順寝たきり)
であることもしくは運動機能評価テストの項目を満たすことが条件となります。
運動機能評価テストは二つの方法があります。一つはバランス能力を確認する「開眼片
脚起立」で、二つ目はトータルな歩行能力を見る6メートルの歩行テストです。開眼片脚
起立とは、目を開けたまま片脚立ちが 15 秒以上できるかどうかで判定します。6メート
ルの歩行テストとは、椅子に座った状態から 3 メートル先の目標までの往復が 11 秒以上
かかるかどうかで判定します。
■治療としてのリハビリ
高血圧症や、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の予防のために食生活を改善したり、
運動療法が推奨されています。同じように運動機能の低下を防ぎ、介護予防に取り組むこ
とが必要です。生活習慣病の改善には薬物治療も重要ですが、整形外科で行う治療で特徴
的なものはリハビリテーションです。
リハビリといってもホットパックや電気治療などの消炎鎮痛処置のみならず、ロコモや
運動器不安定症を予防して、
「健康寿命」を伸ばしていくために、運動器疾患に対するリハ
ビリ、「運動器リハビリテーション」の必要性がクローズアップされてきています。
運動機能の衰えは各人で様々であり、運動器リハビリは画一的にやっていただくもので
はなく、各人にあった運動を処方して日常生活で実践してもらうことが必要です。運動療
法を処方したり、その成果を確認していくことは、これからの整形外科医の仕事として大
切になってくると思います。
ロコモーティブ症候群や運動器不安定症について詳しく知りたい方は、日本整形外科学
会のホームページをご覧ください。色々と予防のための運動療法のご案内もあります。
http://www.joa.or.jp/jp/public/index.html