こちら

平成 28 年度総会開催報告
7 月 21 日(木)に東京秋葉原コンベンションホールにおいて,庄山悦彦副会長,須藤亮運
営委員長,会員企業 45 社・機関(委任状含む)他が出席して平成 28 年度総会を開催しま
した.伊藤洋一文部科学省科学技術・学術政策局長を始めとして,非会員企業他からの出
席を含めて 110 名の参加がありました.
初めに,庄山悦彦副会長から次のような挨拶がありました.
J-PARC/MLF では学術分野ならびに産業利用分野において,それぞれ成果が挙がりつつ
あり,昨年度も「Nature」や「Science」など国際的に著名な学術誌に成果が掲載されて
いる.産業利用においては,J-PARC センターのご支援により,Li イオン電池や触媒など
の分野で製品成果があがりつつあることに感謝したい.イノベーションを生み出すために
は,破壊的な材料技術の革新が必要で,そのためには高度な計測・評価技術が必須であり,
J-PARC/MLF と JRR-3 の中性子の利用に大いに期待を懸けている.そうした中で昨年は
水銀ターゲットの不具合などが原因で J-PARC/MLF の運転時間が少なかったのは大変残
念である.早期に 1MW を達成していただきたいのは当然のことであるが,成果を挙げる
ために安定運転を最優先にしていただきたい.平成 20 年以来,延べ 1,565 件の課題が採択
されたが,そのうち産業利用が 27.8%を占めており,成果専有での利用割合が 28.4%もあ
る.このことは中性子の利用が製品開発に大いに役立っていることの証しである.企業各
社には,J-PARC/MLF をさらに一層利用していただき,さまざまな製品開発や技術開発に
活用して,事業の拡大,引いては国益増大に活用していただきたい.
来賓として伊藤洋一文部科学省科学技術・学術政策局長に次のような挨拶をいただきま
した.
J-PARC においては,中性子ターゲット容器の不具合とその対策のため昨年の利用運転
時間が大きく減少し,残念に思っております.今年 2 月より利用運転を再開していますが,
今後も安定的な利用運転を行いつつ,段階的にパワーアップをするという施設側の挑戦に
対し,技術的ハードルを乗り越えてほしいと思っています.また,J-PARC と両輪をなす
JRR-3 については,一刻も早い再稼働を期待しております.一方,J-PARC を用いて多く
の社会的・経済的に高インパクトな成果が生み出されていることは,利用者の皆様方の日々
の努力の賜物と思います.例えば、高性能タイヤの開発や鉄系超伝導材料の研究は,J-PARC
と他の共用施設を相補的・相乗的に用いられた好例と認識しております.多くの大学や企
業が最先端の研究開発リソースを持ち寄り,まさに「共創の場」として J-PARC が活用さ
れていることに文部科学省の立場からも大変喜ばしく思います.J-PARC が世界トップレ
ベルの研究拠点として最大限のポテンシャルを発揮していくこと,さらに,様々な世界規
模の課題の解決にも貢献していくことを期待しています.
続いて,須藤亮運営委員長から次のような挨拶がありました.
住友ゴムが J-PARC と SPring-8,ならびに京コンピュータを連携活用して低燃費で耐摩
耗性に優れたタイヤ用新材料の設計システムを開発し,花王が小角散乱技術を利用して界
面活性剤を開発したことなどは,J-PARC/MLF の産業利用が深化していることを示してい
る.また,東工大の菅野教授が世界最高のリチウムイオン伝導率を示す超イオン伝導体を
発見したことは将来の産業応用に繋がる期待が大きく大変喜ばしいと思っている.このよ
うに中性子の産業利用が拡大する中で,文部科学省には,利用時間を増やすための 9 サイ
クル運転のための予算措置と,学術成果を挙げるために研究スタッフを充実させる施策を
お願いしたい.同時に,成果を着実に挙げるために,J-PARC/MLF が安定的に運転できる
ようにしていただきたい.これからの産業創出においてはオープンイノベーションが必要
であり,そのために J-PARC/MLF を活用するだけでなく,関係者が議論する場を作って
イノベーションを産み出して貰いたい.
庄山悦彦副会長
須藤 亮運営委員長
伊藤洋一文科省科政局長
総会会場の様子
総会の議事においては,第1号議案「平成 27 年度事業報告及び決算報告について」(監
査報告を含む),第 2 号議案「会員の入退会について」
,第 3 号議案「平成 28 年度事業計画
及び収支予算について」,第 4 号議案「会則の改訂について」
,その他「平成 28 年度の体
制」の各項目について審議と報告があり,審議項目については全て承認されました.