タイの集積地をいかに活用するか ~新興国・途上国

アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
タイの集積地をいかに活用するか
~新興国・途上国向け輸出拠点として~
株式会社日本総合研究所
調査部
上席主任研究員
大泉
啓一郎氏
日本総合研究所の大泉です。
今日はこのような会でお話させていた
だくこと、大変光栄に存じます。山梨総研
での講演は、今回で 3 回目となります、今
日の演題は「タイの集積地をいかに活用す
るか」です。
さて、私がタイに初めて参りましたの
は、京都大学大学院時代のことです。1986
年のことですから、ちょうど 30 年前のこ
とになります。その後、タイと日本の関係
は急速に深まりました。たとえば、毎年 200
万人の日本人がタイを訪れ、70 万人を超え
るタイ人が日本を訪れるようになりまし
た。タイ料理もすっかり日本に定着してい
ますし、タイでは日本食が大ブームです。
このようなタイと日本の関係の深化は、日本企業のタイ進出に影響を多分に受けていま
す。日本企業は、1985 年のプラザ合意以降、タイ進出を本格化させ、現在ではバンコク周
辺に一大集積地を形成しています。在タイ邦人数は登録ベースで 6 万人を超えています。
短期の出張者や観光客を合わせれば、10 万人をゆうに超えると思われます。バンコクの東
に位置するスクンビット通りには、日本人街が形成されています。
本日は、このように日本企業がタイに集結し、世界有数の集積地を形成していることをデ
ータでお示ししたいと思います。その上で、この集積地を用いて新興国・途上国向け輸出を
促すというビジネスモデルを提案します。そして、タイの生産拠点を強化するための、いく
つかの視点を提供したいと思います。お付き合いください。
1
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1.タイに集結する⽇本企業
さて、図表1は、日本の製造業の対タ
イ直接投資額の推移をみたものです。
1985 年のプラザ合意以降の円高のなか
で、わが国のタイ向けの直接投資金額
が右肩上がりで増加してきたことがわ
図表1 日本の対タイ直接投資の推移(製造業)
(億円)
4,000
3,500
3,000
かります。2015 年の対タイ直接投資額
2,500
は 3143 億円に上ります。
2,000
もちろんトレンドを詳細にみれば、
1,500
1980 年代後半、1990 年代半ば、2000
1,000
年代後半、そして 2010 年代以降の 4 つ
500
の投資ブームを確認することができま
0
す。それでも、全体としてみれば、右肩
上がりの増加傾向を示しているといっ
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
(資料)財務省、日本銀行統計より作成
2015
(年)
ていいでしょう。日本銀行統計によりますと、2015 年末のタイ向け直接投資残高(製造業)
は 3 兆 8,254 億円であり、アジアでは中国向けの 8 兆 6,294 億円に次いで多くなっていま
す。
注意してほしいのは、タイでは近年投資についてマイナス要因として作用する出来事が
多々あったにもかかわらず、日本から投資額は減少することなく、むしろ増加し続けたこと
です。たとえば、タイでは 2006 年の軍クーデターによってタクシン政権が崩壊して以降、
政局不安が続いています。また、2011 年には 100 年に 1 回という大洪水に見舞われ、日本
企業を含め多くの企業が被災しました。しかし、2000 年代後半の日本企業のタイ進出には
ほとんど影響はありませんでした。これは、日本企業にとってタイが投資先として根強い人
気があることを示すものといえましょう。
日本企業がタイを投資先として有望視していることは、国際協力銀行(JBIC)
『わが国製
造業企業の海外事業展開に関する調査報告書』
(2015 年度)からも確認できます。このなか
での中期的に有望投資先という問いに対して、タイは、インド、インドネシア、中国に次ぐ
第 4 位となっています。その理由として最も多いのは「現地マーケットの今後の成長性」で
あり、以下、
「安価な労働力」、「現地マーケットの現状規模」、「組立メーカーへの供給拠点
として」、
「第三国輸出拠点として」となっています。かつてタイは日本企業にとって「安価
な労働力」の供給地でしたが、現在では消費市場に注目する企業が増えているのです。
2
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タイにとっても、日本は重要なパート
図表2 タイにおける対内直接投資残高の国・地域別シェア
(2015年)
ナーです。図表2は、2015 年末のタイの
対内直接投資残高を国・地域別にみたも
のですが、日本は 644 億ドルで最も多く、
日本
35%
その他
27%
全体の 35%を占めています。第 2 位は
シンガポール(269 億ドル:15%)です
1,851億ドル
ヴァージン諸島
4%
が、その倍以上の水準にあります。
日本の製造業の対タイ直接投資残高
香港
5%
オランダ
6% 米国
8%
を業種別にみると、輸送機械が 1 兆
3,046 億 円 と 圧 倒 的 に 多 く 、 全 体 の
33.0%を占めています。そのほか電気機
シンガポール
15%
(資料)タイ中央銀行
械、鉄・非鉄が多く、この 3 業種で全体の 64.4%を占めています。
図表3は、BOI(タイ投資委員会)が認可した日本の投資認可案件(1973 年~2014 年)
を業種別(7 区分)、年代別に区分・整理したものです。上位 3 業種については網掛けしま
した。
図表3 日本の投資認可件数(業種別比率)
(%)
1970-74
1975-79
1980-84
1985-89
1990-94
1995-99
2000-04
2005-09
2010-14
農業・農産物
0.0
16.7
17.8
11.7
8.6
4.2
4.4
3.7
2.6
鉱物・セラミック・基礎金属
0.0
0.0
8.9
4.4
2.7
3.6
2.2
3.1
2.9
軽工業
0.0
16.7
20.0
19.9
11.9
4.4
4.5
3.0
2.5
機械・輸送機器
50.0
27.8
31.1
23.3
23.3
31.9
40.8
39.6
45.3
0.0
22.2
11.1
28.4
39.2
34.2
27.3
18.0
16.9
化学工業・製紙
33.3
16.7
6.7
10.8
11.5
15.7
12.1
12.1
12.0
サービス、公共事業
16.7
0.0
4.4
1.5
2.7
5.9
8.7
20.5
17.7
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
電気機械
全体
(注)網掛けは上位3業種
(資料)タイ投資委員会資料より作成
一般機械・輸送機器が一貫して高いシェアを維持していることが目に付きます。
日系自動車メーカーのタイ進出の歴史は古く、1957 年のいすゞ自動車の進出を皮切りに、
1961 年に三菱自動車、1962 年に日産自動車、日野自動車、トヨタ自動車と日本自動車メー
カーは早い時点からタイに進出してきました。当時タイ政府が自動車の輸入を制限する一
方で新産業投資奨励法のなかで自動車産業を投資奨励対象にしたことが、国内市場の獲得
を狙う日本の自動車メーカーの進出を促したといわれています。また、タイは農業国であり、
農産品を運ぶためのピックアップトラックの需要が他国よりも大きかったという理由もあ
りました。
3
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それ以降約半世紀にわたって、部品メーカー(Tier1)、部品生産の機械メーカー(Tier2)、
生産機械・設備のメインテナンス会社(Tier3)のほか、物流会社など(Tier4)の関連企業
の進出が続き、現在では、タイは東南アジア最大の自動車メーカーの集積地となっています。
タイは「アジアのデトロイト」と呼ばれることもあります。
そのほかの業種をみますと、1980 年代までは農業・農産物と軽工業が多く、1980 年代後
半以降に電気機械が増えるなど、進出企業の業種の変化が確認できます。さらに 1990 年代
後半から化学工業・製紙が、2000 年代後半からサービス・公共事業が増加するというトレ
ンドがあります。これは、タイの農業国から工業国へ、そして工業部門では、労働集約的産
業から技術・資本集約的産業へと移行していくことを反映したものといえます。そして現在
は、産業構造のサービス化を背景とする進出が加速しています。とくに、近年は、日本の外
食産業の進出は著しく、タイで日本のチェーン店を多く見つけることができます。
さて、日本企業のタイ進出の特徴は、バンコク周辺に集中している点にあります。このこ
とは中国と比較するとわかりやすいでしょう。中国向け直接投資は、北京、天津、上海、重
慶、武漢、広州など中国全土に広く分散しているのに対して、タイではバンコク周辺にその
ほとんどが集中しているのです。
これはタイ政府がバンコク周辺に外国企業を誘致した結果ではありません。むしろタイ
政府はバンコクから距離が離れた地域への投資を、税率の軽減やインフラの使用料の割引
きなどを通じて積極的に誘致しようとしてきました。しかし、日本企業は港湾へのアクセス
や関連企業との関係からバンコク周辺の工業団地を選択したのです。
図表4は、投資認可案件の立地場所の推移をみたものです。
図表4 日本の直接投資I認可件数(地域別)
(件)
1970-74
1975-79
1980-84
1985-89
1990-94
1995-99
2000-04
2005-09
2010-14
合計
バンコク・メガリージョン
6
15
36
421
416
762
1,0 24
1,32 6
2 ,32 4
6,330
バンコク
1
5
4
59
36
61
73
18 4
27 7
700
近郊5 県
4
9
26
262
192
196
2 28
25 9
41 1
1,587
サムットプラカン
2
4
16
118
55
67
68
97
193
620
サムットサコン
0
0
2
9
6
4
9
13
9
52
パトゥムタニ
1
3
7
124
128
122
141
142
197
865
ナコンパトム
0
1
0
9
2
0
6
3
5
26
ノンタブリ
1
1
1
2
1
3
4
4
7
24
周辺4 県
1
1
6
100
188
505
7 23
88 3
1 ,63 6
4,043
アユタヤ
0
0
2
32
73
182
241
238
420
1,188
チョンブリ
1
1
1
25
64
149
225
360
653
1,479
ラヨン
0
0
2
13
18
127
188
187
404
939
チャチュンサオ
0
0
1
30
33
47
69
98
159
437
その他
0
3
9
51
130
234
231
232
364
1,254
全体
6
18
45
472
546
996
1,2 55
1,55 8
2 ,68 8
7,584
(注)網掛けは上位3地域
(資料)タイ投資委員会資料より作成
4
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図表中では、バンコク、近郊 5 県(サムットプラカン県、サムットサコン県、パトゥムタ
ニ県、ナコンパトム県、ノンタブリ県)、それを取り巻く周辺 4 県(アユタヤ県、チョンブ
リ県、ラヨン県、チャチュンサオ県)、それ以外に区分・整理しました(地理的な位置関係
は図表5)。また、バンコク、近郊5県、周辺4県をまとめて「バンコク・メガリージョン」
として示してあります。
図表が示すように、バンコク・メガリージョンにおける認可累計件数は 6,330 件と全体の
83.5%を占めています。
日本企業はバンコクとその周辺に集中しているのですが、詳細にみると時間とともに、そ
の進出地域が郊外へと拡大していることがわかります。
1980 年代まではバンコクと近郊 5 県(とくにサムットプラカン県、パトゥムタニ県)で
の投資案件が多かったのですが、それ以降は周辺 4 県(とくにアユタヤ県、チョンブリ県、
ラヨン県)の投資案件が多くなっています。周辺 4 県の投資認可件数は、1990 年代前半の
34.4%から 2010 年代前半には 60.9%に上昇しています。累計件数でみると、最も多いのが
チョンブリ県の 1,479 件で、次いでアユタヤ県の 1,188 件、ラヨン県の 939 件となってい
ます。いずれも周辺 4 県に属す県ですね。
このような日本企業の進出先の変化は、タイの工業地帯の拡大の動きと合致するもので
す。図表6は、タイの工業生産比率と一人当たり GDP(2014 年)の推移を県別にみたもの
ですが、日本企業の進出先の変化とほぼ同様のトレンドを描いていることがわかります。
近郊 5 県の工業生産比率は、日本企業の投資認可件数のシェアの動きと同様に、1995 年
の 31.9%から 2014 年には 25.4%に低下したのに対して、周辺 4 県は、これまた日本企業
の投資認可件数と同様に 27.0%から 31.3%に上昇しています。
全体でみると、バンコク・メガリージョンの工業生産比率は常に 7 割を超えています。タ
イの工業生産はバンコク周辺が担っているといっても過言ではありません。
5
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図表6 タイの地域別工業生産比率と一人当たりGDP
1995
2000
2005
2010
人口(1,000
人)
2013
一人当たり
GDP
(ドル)
バンコク・ メガリ ージョン
78.3
79.3
75.7
72.6
73.6
19,290
12,720
バンコク
19.4
20.6
16.4
12.9
15.3
8,515
14,229
近郊5 県
31.9
32.1
29.4
27.0
24.8
6,687
7,966
サムットプラカン
9.7
13.1
11.9
10.1
8.7
1,941
10,737
サムットサコン
7.4
6.5
6.9
6.5
6.1
921
10,513
パトゥムタニ
10.2
7.6
5.8
6.7
5.4
1,399
6,998
ナコンパトム
3.8
3.3
3.2
2.4
3.4
1,001
6,797
0.8
1.6
1.6
1.2
1.2
1,424
4,316
27.0
26.6
29.9
32.7
33.5
4,087
17,353
アユタヤ
6.3
7.4
6.6
7.9
7.0
870
12,875
チョンブリ
10.7
8.7
10.4
10.5
10.8
1,610
13,954
ラヨン
6.1
7.1
8.5
9.3
9.7
856
32,255
チャチュンサオ
3.8
3.4
4.4
5.0
6.1
751
12,850
その他
21.7
20.7
24.3
27.4
26.4
47,465
3,121
合計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
66,755
5,894
ノンタブリ
周辺4 県
(資料)NESDB, Gross Regional and Provincial Product
他の途上国と同様に、工業化の進展をテコにタイも経済成長してきたわけですが、それは
バンコク近郊と周辺地域の GDP を急増させました。
2014 年に一人当たり GDP が 10,000 ドルを超えた地域は、バンコクのほかにもサムット
プラカン県、サムットサコン県、アユタヤ県、チョンブリ県、ラヨン県、チャチュンサオ県
の 6 県となっています。この一人当たり GDP が 10,000 ドルという基準は、世界銀行が「中
所得国」と「高所得国」とを区分する水準に相当します。つまり、タイは国としては中所得
国に属しますが、バンコクと6県は、そのなかの高所得地域として捉えるべき地域だという
ことです。
さて、私たちが海外出張の際に、前もって頭に入れておくデータのひとつに一人当たり
GDP があります。その国の経済水準を大まかに捉えるための指標ですね。タイの場合、一
人当たり GDP は 6,000 ドルですから日本の 6 分の 1 程度ということになります。しかし、
実際のバンコクは、先進国さながらの景観を持ち、日本と変わらない購買力を持つ人たちが
多くいます。一人当たり GDP は、このように私たちのビジネスの主戦場であるバンコクの
ことを表していないという点には注意が必要です。
他方、バンコク・メガリージョンを除く地域(人口:4.750 万人)の一人当たり GDP は
3,174 ドルとメガリージョンの 4 分の 1 であり、
この水準はインドネシアの一人当たり GDP
よりも低いのです。つまり、一人当たり GDP は、バンコク周辺だけでなく、地方の状況も
6
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示していないことになります。これはタイだけではありません。新興国・途上国に共通して
みられる現象です。
このように、タイ経済は、バンコクを中心に広がる「メガリージョン」がけん引していま
す。そして、このメガリージョンに向けて、地方から若い人たちがぞくぞくと移住していま
す。これによりバンコク周辺の生産性がさらに上昇するという循環が形成されています。私
たちが、タイにおける生産場所や市場規模を考える際にも、このメガリージョンの存在を見
極めることが重要です。他方、メガリージョンとその他の地域との間で所得格差が拡大して
いることにも注意が必要です。近年のタイの政治不安の原因のひとつは、このメガリージョ
ンと地方との対立にあると捉えることができます。
このように日本企業がおよそ四半世紀にわたってタイへの直接投資を継続してきた結果、
バンコク周辺に日本の工業地帯ともいえる集積地が形成されている事実を軽視してはいけ
ません。
世界経済に先行き不透明感が強まるなかで、まず考えるべきは、すでにある資産の有効活
用であり、製造業にとっては、タイにある日本企業の集積地を最大限活用することが重要だ
と考えるからです。
これまでタイの集積地は、日米欧の先進国向けの輸出拠点として活用されてきました。ま
た、2000 年代に入ると中国や ASEAN 域内の分業体制が深化し、タイの集積地はグローバ
ルサプライチェーンの重要な要素のひとつとなりました。このことは 2011 年の大洪水でグ
ローバルサプライチェーンが一時停止を余儀なくされたことからも明らかです。そして、こ
れからは、新興国・途上国向けの輸出拠点としての活用が重要な視点となります。
そのことを確認するために、すこし大きな話から始めます。
2.タイの集積地から新興国・途上国を狙う
図表7は、先進国と新興国・途上国の
名目 GDP(ドルベース)のシェアの変
化をみたものです。1990 年代まで、世
80
界人口の 20%程度しか占めない先進国
70
が、経済では世界全体のおよそ 80%を
口の 80%を占める新興国・途上国は世
30
界の 20%の富しか享受できていなかっ
20
60.7%
新興国・途上国
39.3%
10
0
れました。
います。図表が示すように、2000 年代
先進国
50
40
しかし、この構造は着実に変化して
見通し
60
占めていました。反対にいえば、世界人
たのです。これは「南北問題」とも呼ば
図表7 名目GDPのシェア
(%)
90
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
(注)数値は2015年
(資料)IMF, World Economic Outlook, April 2016
7
2015
2020
(年)
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に入って先進国のシェアは一貫した低下傾向をたどり、2015 年には 60.7%となっています。
これは、先進国経済が鈍化したからではありません。新興国・途上国経済が躍進した結果
と捉えるべきです。2000 年以降の新興国・途上国の年平均実質 GDP 成長率は 6%と、先進
国の同 2%を大幅に上回っています。最近は、新興国・途上国経済に陰りが出てきたという
見方もありますが、それでも成長率は先進国の倍の水準を維持しています。現在のトレンド
を延長すれば、2030 年までに新興国・途上国の経済規模は先進国を上回ることになります。
この新興国・途上国の経済規模の拡大は、生産規模の拡大と同時に、市場規模の拡大を示
すものもあります。つまり、2030 年までに新興国・途上国の市場規模は先進国を上回るこ
とになるのです。わが国では、少子高齢化や人口減少で国内市場に大幅な拡大が見込めない
ことから新興国・途上国の市場の開拓・確保が重要であるといわれますが、この人口問題を
抜きにしても、急拡大する新興国・途上国の市場を開拓・確保することは、日本企業の持続
的な成長には不可欠な戦略といえます。
実際、新興国・途上国の輸入は、経済規模の拡大とともに急増しています。
新興国・途上国の輸入額は、2000 年の 1 兆 4,800 億ドルから 2015 年には 6 兆 3,400 億
ドルへと 4 倍以上になりました。その結果、新興国・途上国の輸入が世界全体に占める割合
は、同期間に 22.3%から 38.0%に上昇しています。
他方、日本の新興国・途上国向け輸出をみると、2000 年の 1,220 億ドルから 2011 年に
3,700 億ドルに増加したものの、2015 年には 2,720 億ドルに減少しています。日本が新興
国・途上国への輸出機会を捉えているとはいいがたい状況にあります。
図表 8 は、新興国・途上国の工業製
図表8 新興国・途上国における工業製品輸入のシェア
品輸入における相手先別シェアを日本
(%)
と中国、ASEAN、タイについて示した
25
ものです。
日本のシェアが 1995 年の 16.7%か
ら 2014 年には 8.0%と一貫して低下
日本
20
中国
15
していることがわかります。これに対
して、中国のシェアは同期間に 2.5%
ASEAN
10
から 19.6%に急上昇しています。ま
た、ASEAN とタイも緩やかながら上
昇傾向にあります。
中国や ASEAN 諸国などの新興国・
途上国の輸出工業製品の価格競争力に
タイ
5
0
1995
2000
2005
2010
(注)ASEANはタイを除くASEAN加盟9カ国
(資料)UNCTAD
日本は太刀打ちできません。また、近
年は、工業化の進展により、新興国・途上国の資本集約的・技術集約的製品の輸出も急増し
ています。コモディティ化された製品の輸出の担い手は、先進国から新興国・途上国へと急
速に置き換わりつつあるのです。
8
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このような世界貿易の変化を考えますと、日本企業は、新興国・途上国の生産拠点を利用
した新興国・途上国の市場開拓・確保戦略が必要になります。そこで、新興国・途上国向け
の輸出拠点としてのタイの集積地の新しい役割が浮上するというわけです。
タイの輸出構造の変化について触れておきましょう。タイの輸出は 1970 年の 7 億ドルか
ら 2015 年には 2,071 億ドルに増加しました。
この過程で、工業製品の割合は 1970 年の 3.9%から 2015 年には 78.4%に飛躍的に上昇
しました。これはタイが農業国から工業
図表9 タイの輸出上位20品目(2015年)
国へと変貌したことを示すものといえま
しょう。そして、これには日本企業のタイ
進出が大きく貢献しているのは明らかで
す。
図表 9 は、2014 年のタイの輸出上位 20
品目をみたものです。
第 1 位がコンピュータ関連製品、第 2 位
が乗用車、第 3 位が貨物自動車(ピックア
ップ・トラック)、第 4 位が集積回路、第
5 位が石油精製品と、工業製品が上位を占
めています。
近年、自動車用部品の輸出が急増して
います。輸出額は 2000 年が 5 億ドル程度
HSコード
1 8471
2 8703
3 8704
4 8542
5 2710
6 8708
7 4001
8 1006
9 8415
10 7108
11 7113
12 3901
13 4011
14 8473
15 1701
16 1604
17 8525
18 1602
19 3907
20 8418
で、上位 20 品目に含まれていませんでし
(100万ドル、%)
金額 シェア
品目名
コンピュータ関連製品
乗用車
貨物自動車
集積回路
石油精製品
自動車部品
天然ゴム
コメ
エアコン
金
貴金属装飾品
エチレン重合体
タイヤ
コンピュータ関連部品
ショ糖
調整済魚
デジタルカメラなど記録媒体
調整肉
ポリアセタール
冷蔵庫
その他
合計
13,431
9,394
8,160
7,734
6,810
6,730
4,977
4,544
4,526
3,738
3,641
3,403
3,403
3,325
2,628
2,625
2,265
2,187
1,901
1,817
113,646
210,883
6.4
4.5
3.9
3.7
3.2
3.2
2.4
2.2
2.1
1.8
1.7
1.6
1.6
1.6
1.2
1.2
1.1
1.0
0.9
0.9
53.9
100.0
た。しかし、それ以降一貫して増加し、
2015 年には 67 億ドルと、第 6 位まで順位
資料:UN、COMTRDEより作成
をあげました。そして、輸入額を上回るよ
うになっているのです
(図表 10)。これは、
図表10 自動車部品の輸出入
(100万ドル)
タイが自動車部品を輸入に頼る国から輸
9,000
出が可能な国へと変化したことを示すも
7,000
のです。もっと具体的にいえば、自動車の
6,000
裾野産業が集積してきたことを示すもの
4,000
です。
3,000
タイの輸出工業製品の技術水準も高ま
輸出
8,000
輸入
5,000
2,000
1,000
-
っています。国際連合貿易開発会議
2000
(UNCTAD)は、技術水準により工業製
2005
注:自動車部品はHS8708
資料:UN,COMTRADEより作成
品を①労働集約的・資源集約的工業製品、
2010
2015
(年)
②低技術集約的工業製品、③中技術集約的工業製品、④高技術集約的工業製品の4つに区分
しています。
9
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
図表 11 は、これらの輸出比率の変
化をみたものです。たとえば、労働集
図表11 技術水準別工業製品の輸出比率
100
約的・資源集約的工業製品と低技術集
90
約的工業製品を合算したシェアは、
80
1995 年の 35.4%から 2014 年には
60
16.7%に低下しています。他方、中技
50
術集約的工業製品と高技術集約的工
40
業製品を合算したシェアは同期間に
30
64.6%から 83.3%に上昇しています。
このように輸出に占める工業製品
の割合が上昇するだけでなく、中間財
高技術集約的工業製品
70
中技術集約的工業製品
低技術集約的工業製品
労働集約的・資源集約的
工業製品
20
10
0
1995
2000
2005
2010
(資料)UNCTAD
が増え、技術水準も高まるという特徴
を持っているのです。
さて、タイの新興国・途上国向け輸出
の現状を確認しておきましょう。タイの
新興国・途上国向け輸出は、2000 年の
図表12 タイの新興国・途上国向け輸出
(10億ドル)
(%)
60
ASEAN
160 億ドルから 2014 年には 1,120 億ド
100
ルに増加しました(2015 年は 1,020 億
80
ドルに減少)。輸出全体に占める割合は
その他
120
中国
50
タイの輸出に占めるシェ
ア(右目盛)
40
60
30
40
20
20
10
2000 年 の 22.1 % か ら 2014 年 に は
49.9%(2015 年は 49.4%)に上昇しま
した(図表 12)。
国別にみると、中国向けが 233 億ドル
と最も多く、以下、マレーシア、インド
0
0
1995
2000
2005
2010
2015
(出所)UN、COMTRADE
ネシア、ベトナム、フィリピンの順とな
っており、東アジア諸国が上位を占めています。なかでも ASEAN 新興国・途上国(シンガ
ポールを除く)を合算すると 450 億ドルとなり、中国の水準を上回っています。その他新興
国・途上国向けは、国ごとの金額は小さいものの、全体では 340 億ドルとなっています。
新興国・途上国の輸入市場では中国が圧倒的な競争力を持っています。中東やアフリカ向
けは、輸送コストが高いにもかかわらず、中国製品がシェアを急上昇させていることは、中
国よりも同地域への距離が近いタイにとって輸出を拡大させる余地があることを示すもの
と考えるべきです。
ASEAN 新興国・途上国向け輸出と比較して、タイとその他の新興国・途上国との間にサ
プライチェーンが構築されていないことが、同地域向け輸出が伸び悩む原因のひとつとい
えますが、これらの地域でも工業化が進み始めていることを考えれば、原材料や中間財の輸
出の可能性は広がるはずです。この好機を見逃してはなりません。
10
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
タイがその他新興国・途上国向けの輸出を強化するためには、ASEAN 域内の分業体制を
活かした輸出も検討すべきです。たとえば、近年のタイの賃金上昇に伴う価格競争力の低下
が問題となるのであれば、近隣諸国を活用した新しいサプライチェーン、いわゆるタイプラ
スワンなどのビジネスモデルが有効です。
タイプラスワンとは、タイにある生産拠点のうち労働集約的な工程だけを、近隣諸国に移
転するというビジネスモデルのことです。サプライチェーンの拡張といえます。この点では、
政治リスクなどに配慮し、同じ生産拠点を中国本土にも構えるというチャイナプラスとは
大きく異なります。
このビジネスモデルは、タイの大規模
な生産拠点を持っていることを前提とす
るもので、バンコクの日本企業に特有に
ビジネスモデルです。また、近隣諸国の
カンボジアやラオスが国境に工業団地を
建設したことも、このビジネスモデルの
実現を後押ししています(図表 13)。
一般的に低所得国の工業団地はインフ
ラ整備が遅れるという問題があります
が、カンボジアやラオスの国境にはタイ
での経験を生かした工業団地が建設さ
れ、質が担保されています。加えて、重
要なのは、タイの生産拠点から原材料を
運んで、国境で加工し、もう一度タイの
生産拠点に戻すというビジネスモデルで
は、輸送にはタイの道路しか使わなくて済むという利点があります。ご存じのように、タイ
では 100 キロ近くを出せる道路が国境まで続いています。
現在は、ラオスとカンボジアがタイプラスワンの担い手ですが、今後はミャンマーが重要
な役割を果たすに違いありません。また現在は、国境の工業団地が重要な生産拠点になって
いますが、今後道路整備が進めば、プノンペンやホーチミン、ヤンゴンとの役割分担も可能
になってくるでしょう。タイの生産拠点のコスト競争力を強化するために、タイプラスワン
は重要なビジネスモデルなのです。
11
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
3.タイの新成⻑戦略と⽇本企業
タイの集積地を生産・輸出拠点とするためには、タイ自身の生産性を一段と引き上げるこ
とも不可欠です。
この観点から、最近タイ政府が発表した成長戦略を評価したいと思います。
現在、タイでは「第 12 次国家経済社会開発計画(2017~2021 年)」の作成が大詰めを迎
えています。そのなかでタイの国際競争力を強化するための中期成長戦略が急速に具体化
しています。同計画の最終案はまだ発表されていないものの、これまでの NESDB(国家経
済社会開発庁)や BOI のさまざまな会議での発表を踏まえると、高所得国への移行戦略が
盛り込まれることは確実です。
たとえば、NESDB は第 12 次 5 カ年計画中の実質 GDP 成長率の目標を 5.0%とし、タイ
を 2026 年頃に世界銀行が定義する「高所得国」に移行したいとしています。
その実現には、「中所得国の罠」を回避することが必要です。中所得国の罠とは、世界銀
行が 2007 年に発表した『東アジアのルネッサンス』のなかで提示した概念で、労働集約的
産業・天然資源集約的産業で成長してきた中所得国が、技術革新や産業構造の高度化、人材
育成などへの努力を怠れば、高所得国へ
の移行が困難になるというものです。
図表14 タイと中所得国の実質GDP成長率の推移
(%)
たしかに、1970 年代以降のタイの経
15
済成長率をみると、1970~2000 年の年
10
平均成長率は 6.6%と中所得国の平均成
5
長率 4.6%を 2%ポイント上回っていた
0
1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
のに対して、2000~2014 年の年平均成
長率は 3.9%と、中所得国の 5.9%を 2%
ポイント下回っています(図表 14)。
中所得国の罠を回避し、高所得国へ移
行するためには、産業構造の高度化が不
▲5
▲ 10
(年)
タイ
中所得国
▲ 15
(資料)World Bank, World Develpment Indicators
可欠なのです。
この観点から、2015 年 11 月の閣議において今後の成長をけん引する産業として 10 業種
をあげ、承認しました。
(1)次世代自動車工業」、
(2)スマート・エレクトロニクス、
(3)
その 10 業種のうち、
富裕・医療・健康ツーリズム、
(4)農業・バイオテクノロジー、
(5)未来食品を経済成長
の持続性確保のための産業として育成し、
(6)ロボット産業、
(7)航空・ロジスティック、
(8)バイオ燃料・バイオ化学、
(9)デジタル産業。
(10)医療ハブは、タイ経済の飛躍的
な成長を実現し、高所得国へ移行させるための未来産業と位置付けています。
これらの産業を育成するために、政府は 2015 年 9 月に「クラスター政策(Cluster policy)」
を発表しました。クラスター政策とは、指定産業の育成と競争力強化を、それに適した地域
12
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
において集中的に進める政策をいいます。
「自動車・部品」、
「電気・電子・通信機器」、
「環境に配慮した石油化学および化学製品」
、
「デジタル産業」を「スーパークラスター」と呼び、「農産物加工」、
「繊維・衣服」を「一
般クラスター」として政策を詰めています。「環境に配慮した石油化学・化学製品」が、前
述の 10 業種に含まれていないにもかかわらず、スーパークラスターの対象に指定されたの
は、現時点において同製品がタイの主要輸出品であるためと考えられます。
また閣議決定では未来産業に指定されたデジタル産業が、スーパークラスターの対象と
なったのは、近年世界中で起こっているデジタル社会への対応がタイにも不可欠と判断し
たからでしょう。このようにクラスター政策の対象は、今後変わる可能性があるので注意し
てください。
図表15 スーパークラスターの対象地域
このようなクラスター形成による産
業育成策は、実はタイにとって新しい戦
チェンマイ(デ)
略ではありません。2000 年代初頭、タ
クシン政権時代に、クラスター戦略の祖
であるハーバード大学のマイケル・ポー
ター教授を顧問に招いて、育成産業の選
定とクラスター形成のための施策を検
討したことがあります。当時は、「食品
アユタヤ(自・電)
加工」、
「自動車組み立て」
、
「ファッショ
パトゥムタニ(自・電)
ン産業(繊維・衣類、宝石・宝飾品、皮
ナコンラチャシマ(自・電)
プラチンブリ(自・電)
チョンブリ(自・電・化)
革)」
、
「観光産業」、
「ソフトウェア開発」
チャチュンサオ(自・電)
ラヨン(自・電・化)
の 5 業種が指定されました。しかし、詳
細な政策は作成されず、その後の政局不
安のなかで政策そのものが立ち消えに
なっていたのです。
図表 15 は、スーパークラスター対象
地域を図示したものです。①自動車・部
プーケット(デ)
品、②電気・電子・通信機器の対象地域
は同じ 7 県(アユタヤ県、パトゥムタニ
県、チャチュンサオ県、チョンブリ県、
ラヨン県、プラチンブリ県、ナコンラチ
(注) 自:自動車・自動車部品、電:電子・電気・通信機器、化:環境に配慮した石油化学・
化学製品、デ:デジタル産業
(出所)筆者作成
ャシマ県)です。
「環境に配慮した石油化学・化学製品」は、チョンブリ県、ラヨン県です。
これらはいずれもバンコク周辺の県です。他方、「デジタル産業」は、バンコク周辺ではな
く、北部のチェンマイ県と南部のプーケット県を対象とする点で異なります。
スーパークラスターに該当する投資については、最長 8 年間の法人税免除と、その後最長
5 年間の法人税の 50%免除を受けることができます。さらに、未来産業に関わるもので、と
13
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
くに重要と認められた投資については、財務省が 10~15 年間の法人税免除を検討すると思
います。加えて、高い技術力を有するとみなされた外国人は、個人所得税が免除され、長期
滞在が認可されます。タイ政府の力の入れ方がわかりますね。
他方「一般クラスター」である農産物加工や繊維・衣服についても、3~8 年の法人税の
免除とその後 5 年間の 50%免除が適用されています。このことは、タイがいまだ労働集約
的な産業も必要としていることを示すものです。
一方、クラスター政策では、クラスターを支える①知的基盤産業(研究開発や設計、人材
育成センターなど)や②輸送関連産業(鉄道、港湾、物流センターなど)への投資にも優遇
税制が適用されます。そのほか、資金面や人材面でクラスター政策を支えるよう支援する方
針です。2015 年 12 月の閣議では、クラスター政策を支える基金(100 億バーツ)の設立が
承認されました。また、
「人材移行戦略(Talent Mobility)」として、官僚や大学研究者を民
間企業へ派遣する制度を検討しています。
日本企業は、生産性向上のためにクラスター政策の活用を検討すべきでしょう。クラスタ
ー政策の対象地域は、日本企業の集積する県と重なっているからです。実際のところ、タイ
政府は、クラスター政策を成功させるためには、日本企業との関係強化が不可欠と考えてい
るはずです。クラスター政策の対象地域が、日本企業の進出の多い地域と重複しているのは
そのためと考えられます。いずれにせよ、タイ政府のクラスター政策と日本企業の集積地強
化策は共栄関係を築くことができるのです。
もちろんクラスター政策が効果を発揮するために、取り組まなければならない課題は数
多くあります。とくに中所得国であるタイは、財政面や人材面での制約が強いという問題が
あります。物流インフラの整備は、日本のインフラ輸出の拡大につながるのです。それを日
本企業の今後の活動につながるように設計できれば、国益にもかなうものとなります。また、
日本政府は、アジア地域において今後 3 年間で 4 万人の産業人材育成を実施することを発
表しています。これもクラスター政策と連携させることができれば、クラスター政策の人材
供給だけでなく、日本企業の人材育成にも効果をもたらすことができます。タイに R&D 機
能を移転しようとする企業は、最大限、その恩典を得られるよう工夫すべきでしょう。
もちろん、クラスター政策はスタートしたばかりであり、対象産業や優遇措置、その適用
条件は確定的でない箇所が多々あります。したがって、クラスター政策を日本企業にとって
も使い勝手の良いものにするためには、日本の官民とタイ政府の継続的な対話が重要とな
るのです。
14
アジアフォーラム21
ANNUAL REPORT
おわりに
これまでタイにおける日本企業の拠点は、主として先進国向けの生産・輸出拠点として活
用されてきました。また、2000 年代には中国を含めた東アジア域内での分業体制を深化さ
せてきました。そして、世界経済の成長の担い手が新興国・途上国に移行しつつあることを
勘案すれば、日本企業はタイ集積地を新興国・途上国向けの輸出拠点として活用すべきであ
ると、話申し上げました。
タイからの新興国・途上国向け輸出、とくに東アジア以外のその他新興国・途上国向け輸
出は、拡大の余地を残しています。この可能性を現実のものにしていくためには、生産拠点
の競争力強化と同時に、販路拡大・輸出戦略を立案・実施する組織を強化する必要がありま
す。これまで生産面を重視したタイの拠点に新しい機能を付加する段階に突入していると
捉えるべきと考えます。
おりしも、2015 年1月からタイ政府は、地域統括のための「国際統括本部(International
Headquarter)」
(IHQ)、物流機能集約のための「国際貿易センター(International Trading
Center)」
(ITC)の設置について優遇措置を拡大しています。これらの活用も検討すべきで
しょう。
タイでも少子高齢化が進んでおり、国内市場の拡大が期待できなくなったとして、タイ地
場有力企業も海外への進出に乗り出していることも見逃せません。彼らが持つ独自の人的
ネットワークを販路拡大に活用すべきでしょう。
ご清聴ありがとうございました。
(2016 年 6 月 13 日開催)
15