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温室効果ガス削減に利用可能なメタン酸化菌の
メタン消費能促進技術開発
京都大学大学院農学研究科
応用生命科学専攻
教授
阪井康能
○准教授 由里本博也
博士後期課程 井口博之
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新技術の概要
ビタミンB12またはその類縁体、およびそれらを
生産する微生物により、メタン酸化菌のメタン
酸化活性を向上させ、CO2に次ぐ温室効果ガス
であるメタンの環境中への排出削減に利用する。
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研究背景
メタンは二酸化炭素に次ぐ温室効果ガスであり、大気中のメタン濃度
上昇が地球の気候変動に大きな影響を与えることが予想されている。
メタンは土壌、湿地、湖沼、海洋など様々な環境から放出されるが、
人為的な発生源(水田、牧畜など)からの放出量も非常に多く、その
削減が課題となっている。
さらに近年、植物からメタンが放出されていることが明らかとなり、
環境中でのメタン放出と削減に関する研究が進められている。
自然環境中の様々なメタン発生源には、メタン酸化菌が棲息しており、
メタンが大気中に放出される前に酸化し、大気中のメタン濃度維持に
重要な役割を果たしている。
様々な環境中からのメタン排出削減のために、メタン酸化菌の
メタン酸化活性を高めることが期待される。
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研究背景
土壌、水圏、植物表層などのメタン発生源でメタン酸化菌による
メタン酸化を行うためには、菌そのものを散布するあるいは、
環境中に常在するメタン酸化菌のメタン酸化活性を向上させる
必要がある。
しかしながら、従来、このような効果をもつ化合物は知られていない。
温室効果ガス削減に利用可能なメタン酸化菌の
メタン消費能促進技術開発
メタン酸化菌に対して用いられるメタン酸化活性向上剤、
及びその利用
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C1化合物
メタン、メタノール、ホルムアルデヒドなど
C−C結合を持たない化合物
H
H C H
H
H C O H
H
H
メタン
メタノール
O
H C H
O
H C O H
H
H C N
H
ホルムアルデヒド
ギ酸
H
H
メチルアミン
クロロメタン,ジメチルスルフィド ・・・ etc.
C1微生物(メチロトローフ:methylotroph)
C1化合物を炭素源・エネルギー源として利用する微生物(細菌,酵母)
メタンを利用するもの→メタン資化性菌 or メタン酸化菌 (methanotroph)
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メタン酸化菌のメタン代謝と分類
NADH+H+
CH4
O2
sMMO
CytCred
TypeⅠ
H2O
NAD+
RuMP経路
CytCox
pMMO
O2
H2O CytC
CH3OH
CytCred
MDH
X
OX
HCHO
FADH XH2
NAD+
HCOOH
セリン経路
TypeⅡ
NADH+H+
FDH
TypeⅠ
Methylomonas, Methylobacter, Methylococcus, Methylomocrobium,
Methylocaldum, Methylosarcina, Methylosphaera,
Methylothermus, Methylohalobius, Methylosoma
TypeⅡ
Methylosinus, Methylocystis, Methylocapsa, Methylocella
CO2
ほとんどが偏性メタン資化性菌→メタン(メタノール)のみを炭素源とする
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生態系の炭素循環
C1微生物
15∼20億トンCO2/年
メタン
(CH4)
有機物
(-C-C-)
メタノール
(CH3OH)
ホルムアルデヒド
(HCHO)
光エネルギー
化学エネルギー
独立栄養生物
植物
ギ酸
水素
(H2)
(HCOOH)
二酸化炭素
(CO2)
メタン生成菌
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過去2000年間の温室効果ガスの濃度推移
2000
400
1800
二酸化炭素 (CO2)
メタン (CH4)
1400
1200
CH4 (ppb)
CO2 (ppm)
350
1600
300
1000
800
250
600
0
500
1000
1500
2000
西暦(年)
IPCC第4次評価報告書(2007)より
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メタンの温室効果と収支
メタンの温室効果
赤外線吸収
CO2
CH4
1
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植物からのメタン放出量
62∼236 Tg/year
(Keppler. et al. 2006)
温室効果寄与率
60.1%
19.8%
植物体
10∼45
メタン放出量
∼600 Tgyr-1
40 Tgyr-1
Tgyr-1
490 Tgyr-1
メタンシンク(Tgyr-1)
メタン放出源
メタン
・・・
水田、湿地、家畜、海底など
メタノール
OH ラジカル
メタン資化性菌
大気中に蓄積
(Houghton.et al. 2001)
•
•
植物からメタンが発生している
植物圏には多くの微生物が生息している
植物にもメタン資化性菌が
生息しているのでは?
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新技術の基となる研究成果・技術
多様な自然環境中からメタン酸化菌を単離する過程で
明らかになったこと
・Type I およびType II に属するメタン酸化菌が土壌中だけでなく、植
物葉などの植物圏や、その他のさまざまな環境中に広く棲息している。
・Type I メタン酸化菌の生育とメタン酸化活性を、ビタミンB12およびそ
の類縁体が促進する。
・ビタミンB12およびその類縁体を生産するSinorhizobium 属など、
多種の根粒菌によって構成されるRhizobiaceae(リゾビウム科)に
属する細菌との共培養によっても同様の効果が得られる。
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新技術の基となる研究成果・技術
ビタミンB12およびその類縁体、およびこれらを生産する微生物と
の共培養により、メタン酸化活性を向上させたメタン酸化菌を調整
することが可能になる。
これを様々な環境中に散布することで、メタンの放出を削減できる。
ビタミンB12およびその類縁体、およびこれらを生産する微生物を
散布することにより、環境中に常在するメタン酸化菌のメタン酸化
活性を向上させることができ、環境中のメタン消費の向上に利用
できる。
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従来技術とその問題点
特開2005-118009 「メタン酸化菌保持担体およびその製造方法、
製造装置並びにメタン発生抑制方法」
メタン酸化菌を多孔質の担体に固定化し、これを用いてメタン
を酸化する。この担体を土壌に散布あるいは鋤込むことにより、
土壌中から放出されるメタンを酸化する。
メタン酸化菌を保持した担体を作製する必要があり、菌のみを
散布するよりもコストがかかる。
散布できる環境が土壌などに限られ、大規模メタン発生源であ
るとされる植物表層には使用できない。
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新技術の特徴・従来技術との比較
土壌、水圏、植物表層などのメタン発生源でメタン酸化菌による
メタン酸化を行うためには、菌そのものを散布するあるいは、環境中
に常在するメタン酸化菌のメタン酸化活性を向上させる必要がある。
環境中に微生物を散布する場合には、その微生物が定着するか
どうかが重要であるが、
・ メタン酸化菌は、土壌や植物圏に広く棲息しており、メタン排出削減
を行う環境に定着しやすい。
・ メタン消費を促進するSinorhizobium属をはじめとするRhizobiaceae科
に属する細菌も、土壌、特に植物圏に棲息する微生物であるので、
これらの環境に定着しやすい。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• ビタミンB12およびその類縁体により、メタン酸化菌
のメタン消費能が向上する。
• ビタミンB12およびその類縁体を生産する微生物との
共培養により、メタン酸化菌のメタン消費能が向上
する。
• メタン酸化菌は土壌や植物圏に広く生息し、メタン
排出削減が必要な水田や植物表層に定着しやすい。
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想定される用途
• メタン消費能が向上したメタン酸化菌を調整し、
これを様々な環境に散布して定着させ、メタン
排出を削減する。
• ビタミンB12およびその類縁体を散布することに
より、環境中に常在するメタン酸化菌のメタン
酸化活性を向上させる。
• ビタミンB12およびその類縁体を生産する微生物
を散布して定着させ、環境中に常在するメタン
酸化菌のメタン酸化活性を向上させる。
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想定される業界
・ 利用者・対象
環境ビジネス
農業関連
化学・生物系企業
バイオベンチャー
・ 市場規模
メタンは温室効果ガスの排出権取引の対象となるので、
排出権ビジネスにおいても需要が見込まれる。
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実用化に向けた課題
メタンは、不活性の温室効果ガスであり、かつ、森林や水田など、
植物圏近傍からの排出量が大きい。
本発明では、もともと広く自然界に生息するメタン酸化菌の酸化
活性を高めようとする点、化合物、もしくは、植物に定着しやすい
微生物を利用しようとする点に新規性がある。
ただし、今回の実施例では、in vitroでのメタン消費効果の評価
のみであり、大規模な自然環境中での評価は行っていない。
実用化に向けて、植物表層への散布や土壌への散布による
効果を検証していく必要がある。
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企業への期待
• 密閉チャンバーなどを利用したメタン削減
効果の検証
• 水田や圃場などでのメタン削減効果の検証
• メタン酸化菌や根粒菌の大量培養系
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称
:メタン酸化菌に対して用いられるメタン
酸化活性向上剤、及びその利用
• 出願番号
:特願2010-●●●●
• 出願人
:京都大学
• 発明者
:阪井康能、井口博之、由里本博也
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お問い合わせ先
関西TLO株式会社
アソシエイト
大西
晋嗣
TEL 075-753-9150
FAX 075-753-9169
e-mail ohnishi@kansai-tlo.co.jp
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