最近の静岡県金融経済の動向

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2016 年 7 月 14 日
http://www3.boj.or.jp/shizuoka/
日本銀行静岡支店
最近の静岡県金融経済の動向
本稿は、16／5 月を中心とした金融経済統計、および直近の企業ヒアリング
をもとに取りまとめている。
（概況）
県内の景気は、基調としては緩やかに回復しつつある。この間、6月短観で
みた企業の業況感は、為替円高や熊本地震の影響等から、幾分慎重化している。
最終需要の動向をみると、設備投資は、大・中堅企業の製造業を中心に一
段と増加している。また、雇用・所得環境が緩やかに改善する中、住宅投資
は持ち直しているほか、個人消費も、一部に弱めの動きがみられるが、全体
として持ち直しつつある。さらに、公共投資は下げ止まっている。他方、輸
出は、先進国経済の回復は続いているものの、新興国経済の一段の減速の影
響等から、やや弱めの動きとなっている。
こうした下で、企業の生産は下げ止まり感が窺われる。
雇用・所得をみると、労働需給はタイトな状況が続いているほか、所得面
は、一部に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している。
消費者物価（除く生鮮食品）は前年を下回っている。
１．需要項目別の動向
（１）個人消費・・・一部に弱めの動きがみられるが、雇用・所得環境が緩や
かに改善する中、全体として持ち直しつつある
百貨店売上高はやや弱めの動きとなっているものの、スーパー売上高は緩
やかに持ち直している。また、旅行取扱額は、国内旅行を中心に持ち直して
いるほか、県内の旅館・ホテルの宿泊客数や観光施設の入込客数は増加して
いる。
この間、乗用車新車登録台数をみると、軽乗用車はなお弱めの動きとなっ
ているものの、普通・小型乗用車は持ち直している。また、家電販売は、住
宅投資が持ち直している中、緩やかに持ち直しつつある。
（２）公共投資・・・公共工事請負金額は下げ止まっている（前年比：
16／5 月▲19.8％→6 月▲5.4％）
1
（３）設備投資・・・大・中堅企業の製造業を中心に、生産性向上関連や研究
開発関連の投資がみられるなど、一段と増加している。ただし、中小企業で
は慎重なスタンスを維持している（設備投資額前年度比＜短観＞：15 年度実
績＋9.6％→16 年度計画＋9.1％）
（４）輸出・・・先進国経済の回復は続いているものの、新興国経済の一段の
減速の影響等から、やや弱めの動きとなっている（輸出額前年比：16／4 月
▲3.1％→5 月▲4.8％＜速報＞）
二輪車等は持ち直しつつあるほか、自動車部品は、新興国経済の一段の減
速の影響等はみられるものの、北米向けの増加から、下げ止まりの兆しが窺
われる。
一方、自動車は、新興国経済の一段の減速や海外生産シフトから、減少し
ている。また、一般機械、電気機械は、欧州向けの緩やかな増加は続いてい
るものの、新興国経済の一段の減速等から、やや弱めの動きとなっているほ
か、楽器は持ち直しの動きが足踏みしている。
（５）住宅投資・・・雇用・所得環境の緩やかな改善もあって、持ち直してい
る（新設住宅着工戸数前年比：16／4 月＋16.1％→5 月▲5.1％）
２．生産、雇用・所得、物価の動向
（１）生産・・・下げ止まり感が窺われる（鉱工業生産指数＜季節調整済＞前
月比：16／3 月＋0.6％→4 月＋3.5％＜速報＞）
一般機械は、一部海外需要の減退等から、横ばい圏内の動きとなっている
ほか、楽器は持ち直しの動きが足踏みしている。また、紙・パルプ、加工鋼
材はやや弱めの動きとなっているほか、家具は減少を続けている。
一方、電気機械、缶詰は緩やかに増加しているほか、木材等は持ち直して
いる。また、織物は持ち直しの動きがみられているほか、二輪車・同部品、
飲料は持ち直しつつある。さらに、生コンクリート・セメントは下げ止まっ
ているほか、自動車・同部品は、内外需の弱さなどはみられるものの、在庫
調整の進捗から、下げ止まり感が窺われる。
（２）雇用・所得・・・労働需給はタイトな状況が続いている。所得面は、一部
に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している（有効求人
倍率：16／4 月 1.36 倍→5 月 1.35 倍）
有効求人倍率、新規求人倍率はともに高い水準を維持しており、労働需
給はタイトな状況が続いている。
2
常用労働者数は緩やかに改善している。一人当り名目賃金、雇用者所得は、
一部に足踏み感がみられるものの、全体として緩やかに改善している。この
間、春季賃上げ平均妥結額は前年を下回った一方、夏季一時金は、現時点で
前年を上回っている。
事業主都合による解雇者は前年を下回った。
（３）物価・・・消費者物価（除く生鮮食品）は前年を下回っている（指数・
前年比：16／4 月▲0.7％→5 月▲0.8％）
３．企業倒産、金融面の動向
（１）企業倒産
企業倒産（16／6 月、負債総額 10 百万円以上）をみると、件数（31 件＜前
年比：＋47.6％＞）、負債総額（50 億円＜同：▲40.7％＞）ともに総じて落ち
着いている。
（２）預金
預金は、法人、個人とも引き続き増加している（前年比：16／4 月末＋2.1％
→5 月末＋2.0％）。
（３）貸出
貸出は、法人、個人とも引き続き増加している（前年比：16／4 月末＋2.3％
→5 月末＋2.2％）。
（４）貸出約定平均金利
地元地銀・第二地銀 4 行ベースの貸出約定平均金利（総合、ストックベース）
は前月比低下した（16／4 月 2.156％→5 月 2.152％）
。
以
上
本件に関する問い合わせ先
日本銀行静岡支店営業課
TEL 054-273-4106、FAX 054-275-0001
3
静岡県内主要金融経済指標
計表1
個　人　消　費
百貨店売上高
前年比％（注1）
県
16/
1月
2月
3月
4月
5月
6月
内
▲ 0.8
2.0
▲ 1.4
▲ 2.5
▲ 5.1
n.a.
全
国
▲ 1.6
0.5
▲ 2.8
▲ 3.6
▲ 4.8
n.a.
資料出所
スーパー売上高
前年比％（注1）
乗用車新車登録台数
（含む軽）
前年比％
県　内
全
国
2.5
3.8
1.1
1.9
▲ 0.1
n.a.
2.3
3.1
▲ 0.3
0.8
▲ 0.8
n.a. p
県　内
全国
県内
全国
県内
▲ 1.0
▲ 6.6
▲ 9.1
0.1
▲ 3.9
▲ 5.3 p
▲ 4.4
▲ 7.5
▲ 9.3
2.2
▲ 1.4
▲ 5.6
8.7
▲ 1.5
▲ 0.0
10.8
6.6
3.0
1.3
▲ 4.1
▲ 2.7
8.4
7.3
3.6 p
▲11.1
▲12.1
▲18.9
▲13.1
▲17.7
▲16.7 p
▲13.0
▲12.8
▲19.4
▲ 9.1
▲17.3
▲23.4
0.2 p
38.2 p
2.9 p
▲ 1.6
4.8
n.a.
15/ 12月
16/
1月
2月
3月
4月
5月
設
建築着工床面積
前年比％
前年比％(注3、4）
0.6
▲23.0
7.0
7.7
16.1
▲ 5.1
全
国
▲ 1.3
0.2
7.8
8.4
9.0
9.8
資料出所
県
内
全
▲16.9
2.0倍
▲ 0.6
2.5倍
▲14.4
▲32.6
県
15年度
16年度計画
資料出所
投
県内
国
全産業
6.5
15年度
▲11.9
▲12.4 16年度計画
20.7 資料出所
▲23.2
15.0
4.6
9.6
9.1
製造業
13.8
17.1
17.1
業
収
▲ 3.2
1.8
▲ 0.4
日本銀行静岡支店
益
前年度比％
内
全産業
製造業
1.6
▲ 0.7
▲ 8.9
2.0
▲ 4.7
▲ 9.8
全国
非製造業
▲ 0.1
18.0
▲ 5.5
全産業
製造業
5.9
4.8
▲ 7.2
11.2
▲ 2.9
▲ 9.3
日本銀行静岡支店
非製造業
2.2
10.8
▲ 5.8
日本銀行
pは速報値、rは改訂値
(注1）店舗調整後ベース
(注2）旅行取扱額の県内は4社ベース
（注3）県内の建築着工床面積は公共と民間の合計のうち非居住用
(注4）全国の建築着工床面積は民間のうち非居住用
(注5）全国企業短期経済観測調査、設備投資は土地投資を含む（リース会計対応ベース）
計-1
前年度比％
全国
非製造業
全産業
4.3
5.0
0.4
製造業
6.8
9.1
6.0
日本銀行
全
国
2.5
3.2
5.1
n.a.
n.a.
n.a.
日本銀行国土交通省
静岡支店
資
設備投資額（注5）
14年度
経常利益（注5）
14年度
備
国土交通省
企
前年比％
全国
日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会
新設住宅着工戸数
旅行取扱額
前年比％（注2）
県内
住　宅　投　資
内
軽乗用車新車販売台数
日本自動車販売協会連合会静岡県支部、静岡県軽自動車協会
経済産業省
県
乗用車新車登録台数
（除く軽）
前年比％
非製造業
3.1
2.9
▲ 2.5
計表2
輸　出　入（注1）
県
16/
輸　出　額
輸　入　額
公共工事請負金額
前年比％
前年比％
前年比％
内
全
▲13.5
3.5
3月 ▲ 1.7
4月 ▲ 3.1
5月 p ▲ 4.8
6月
n.a.
県
内
▲12.9 ▲11.2
▲ 4.0 ▲10.7
▲ 6.8 ▲11.0
▲10.1 p ▲21.6
▲11.3 p ▲ 0.7 p
n.a.
n.a.
1月
2月
資料出所
国
全
国
▲17.8
▲14.2
▲14.9
▲23.3
▲13.8
n.a.
15/ 12月
16/
1月
2月
3月
4月
5月
常用労働者数（注3）
全産業前年比％
内
県
1.25
1.24
1.25
1.27
1.36
1.35
内
▲ 5.4
▲19.7
▲ 0.7
28.7
▲19.8
▲ 5.4
▲ 2.6
3.5
2.5 ▲ 0.5
▲ 2.2 ▲ 2.9 ▲ 5.2
2.8
5.0
0.6
3.8
2.1
10.6 p
3.5 r
0.5 p ▲ 2.4
1.4
n.a. ▲ 2.6
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
1.27
1.0
1.28
0.2
1.28
1.3
1.30
1.4
1.34 p ▲ 0.2 r
1.36
n.a. p
資料出所
物　静岡市
15/ 12月
1月
2月
3月
4月
5月
資料出所
用
・
所
雇用者所得（注3）
全産業前年比％
県内
2.3
2.1
1.9
2.1
2.0 p
1.9
▲
▲
▲
▲
全　国
4.8
4.8
2.2
1.4
2.5 r
n.a. p ▲
価
全　国
▲0.1
▲0.2
▲0.2
▲0.6
▲0.7
▲0.8
0.1 16/ 3月
6月
0.0
0.0 9月予測
▲0.3 資料出所
▲0.3
▲0.4
業
況
7
3
▲ 3
解雇者
▲
▲
▲
▲
全　国
5.9
4.6
0.9
0.0
2.7 r
n.a. p
感
11
7
▲ 2
日本銀行静岡支店
総務省
pは速報値、rは改訂値
（注1）県内の輸出入は清水港、田子の浦港、御前崎港、静岡空港の4港合計値
（注2）鉱工業指数は、10年基準
（注3）事業所規模5人以上、10年基準
（注4）消費者物価指数は、10年基準
（注5）全国企業短期経済観測調査
計-2
事業主都合による
前年比％
県内
0.0
0.0
0.7
1.5
0.0 p
0.2
非製造業
2
▲ 2
▲ 4
▲ 0.3
▲ 0.2
2.9
▲ 1.7
0.4
n.a.
（a×b）
業況判断 D.I.（注5）
県内
製造業
全国
全産業前年比％
｢良い｣-｢悪い｣回答社数構成比％ポイント
全産業
県内
得
静岡労働局、静岡県、厚生労働省
消費者物価指数
（除く生鮮食品）
前年比％(注4）
16/
全国
静岡県、経済産業省
一人当り名目賃金（注3）
全　国
在　庫
全　国
（常用雇用指数　a）（名目賃金指数　b）
季調済倍
全　国
県内
前月比％
県　内
雇
県
季調済
生　産
東日本建設業保証、
北海道建設業信用保証、
西日本建設業保証
清水税関支署、財務省
有効求人倍率
鉱工業指数(注2）
公　共　投　資
全国
全産業
7
4
2
日本銀行
2.3
2.1
2.7
3.7
2.0
1.7
県内
全　国
▲ 9.1
▲ 7.6
2.6
▲18.4
▲15.7
▲15.9
▲ 2.7
▲ 8.6
▲10.8
▲ 5.8
▲ 3.9
▲ 8.2
計表3
倒　産（注1）
件、億円、前年比％
件　数
16/
1月
2月
3月
4月
5月
6月
資料出所
前年比
19 ▲24.0
27
50.0
25
8.6
12 ▲52.0
35
66.6
31
47.6
負債総額
31
29
28
17
87
50
前年比
▲51.0
50.0
▲ 2.8
▲57.4
3.1倍
▲40.7
東京商工リサーチ静岡支店
実　質　預　金 (注2）
末残前年比％、億円
県　内
15/
12月
16/
1月
2月
3月
4月
5月
月末残高
銀　行
2.4
2.4
2.5
2.5
1.0
0.4
1.9
1.8
2.1
1.8
2.0
1.6
214,741 139,479
貸
出 (注3）
末残前年比％、億円
地　銀・
第二地銀
都　銀
信　金
県　内
銀　行
7.7
2.0
2.4
2.8
3.3
6.9
2.3
2.5
2.8
3.3
▲ 7.6
1.9
2.2
2.6
3.2
1.7
2.0
2.2
2.5
3.0
▲ 2.9
2.7
2.8
2.3
2.7
▲ 9.0
3.6
2.7
2.2
2.7
18,203 115,985 75,262 135,574 98,273
資料出所
都　銀
地　銀・
第二地銀
信　金
14.0
2.0
1.5
10.0
2.5
1.5
8.6
2.6
0.9
4.4
2.9
1.3
▲ 1.9
3.4
1.4
0.8
3.1
0.7
10,985 86,198 37,300
日本銀行静岡支店
貸出約定平均金利
銀　行　券
億円
（ストックベース）
（注4）
水準％
地　銀・
第二地銀
16/
1月
2月
3月
4月
5月
6月
資料出所
2.159
2.164
2.145
2.156
2.152
n.a.
信　金
1.681
1.676
1.653
1.646
1.635
n.a.
受入額
支払額
1,515
820
920
798
1,189
823
670
1,176
1,342
1,671
798
1,408
受払(▲)
超過額
845
▲ 356
▲　422
▲　873
391
▲　585
日本銀行静岡支店
（注1) 倒産は負債総額10百万円以上の合計
（注2）集計値は県内所在店舗ベース、実質預金＝表面預金（譲渡性預金は含まない）－小切手･手形
（注3）集計値は県内所在店舗ベース
（注4）地元16行庫の県内所在店舗ベース
計-3

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