リサーチ TODAY 2016 年 7 月 15 日 東京の不動産は世界的に魅力がある 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 日本の不動産市場については、過熱感への懸念も根強いが、マイナス金利が下支え要因になっている 面もあるため、定量的な視点も含めた分析が重要になる。みずほ総合研究所は、不動産市場についてリポ ートを発表している1。今日海外マネーの動向が注目されているが、海外投資家の視点からみて日本の不 動産市場にどの程度の投資妙味があるかを考える必要がある。海外投資家は日本の株式市場だけでなく、 不動産市場においても売買両面から存在感を高めている。なかでも昨今は日本の不動産市場に対しアジ アからの影響が拡大している。ここでは東京のオフィス市場を中心に考えるが、海外投資家にとって東京の 不動産は引き続き一定の魅力を有する市場と考えられる。 下記の図表は、世界主要都市のプライムイールドを比較したものである。単純にイールドの観点から比較 すれば、東京は、他の都市に比べてキャップレートであるイールドが低いことから、割高との見方は根強い。 ■図表 主要都市のプライムイールド 7 (%) 6 5 4 3 2 1 フランクフルト ロンドン ニューヨーク 香港 シンガポール 東京 0 2012 2013 2014 2015 上海 2016 (年) (注)グレード A オフィスの利回り (資料)JLL よりみずほ総合研究所作成 一方、投資収益の観点からは、キャップレートと長期金利(10年国債利回り)との差をとったイールドギャ ップをみる必要がある。東京の場合は、低金利が続くことで、調達金利を勘案したイールドギャップが相対 的に高い。 1 リサーチTODAY 2016 年 7 月 15 日 ■図表:主要都市のイールドギャップ 5.0 (%) 4.5 フランクフルト ロンドン ニューヨーク 香港 シンガポール 東京 上海 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 2012 2013 2014 2015 2016 (年) (資料)JLL よりみずほ総合研究所 下記の図表は、オフィス市場の特性をグローバルに比較したものだ。横軸にイールドギャップで示される 平均収益率をとり、縦軸に賃料変化率の標準偏差で計測したボラティリティをとって、各都市をプロットして いる。右下に行くほど、ボラティリティが小さく収益率が高いため、投資妙味が大きい。この図表から、東京 の優位性は上位に位置することが分かる。東京は、アジアの主要都市の間でのみならず、ロンドンやニュ ーヨークよりも優位性が高い。こうした特性上、東京は海外投資家を引き付ける強みをもつと考えられる。 ■図表:主要都市のオフィス市場比較 25 モスクワ 20 ボ ラ テ 15 ィ リ テ 10 ィ 優位性大 シンガポール 香港 上海 5 ロンドン ムンバイ ニューヨーク 0 0 0.5 1 シドニー パリ 1.5 2 2.5 東京 3 フランクフルト 3.5 4 収益性・% (注)2011Q2~2016Q1 データで算出(ムンバイは 2012Q1~)。収益性はイールドギャップの期間平均値。 ボラティリティは各都市の賃料変化率から計算。 (資料)JLL よりみずほ総合研究所作成 1 市川雄介 「最近の不動産市場について」(みずほ総合研究所 『みずほリポート』 2016 年 6 月 30 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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