(第1ヴァイオリン フォアシュピーラー) Vol.54 2013年9月号 PDFファイル

NJP メンバーの宝物
~メンバーが大切にしている秘蔵の品、それにまつわる思い出を紹介するコーナー~
Vol.54 「子ども時代のヴァイオリン」
~堀内麻貴(第1ヴァイオリン フォアシュピーラー)
ヴァイオリンを始めた4 歳の時に手にした最初のヴァイオリン、サイズは1/10 です。ヴァ
イオリンを始めたおかげで今の自分があることを思い出させてくれる、私の宝物です。
父がヴァイオリンが好きで、若い頃は趣味で弾いていたらしいのですが、子どもが生まれ
たら習わせたいと思っていたようです。小さいころは、母がレッスンに付き添い、家では父
が手取り足取り練習に付き合ってくれました。練習が嫌いだった私は逃げ回り、父に叱ら
れて、押入れに楽器を隠されたこともあります。
藝高をめざすようになって、本格的に練習をするようになりましたが、「音楽をやりたい」と
いう気持ちが高まったのは、藝大に入ってからでした。プロのオーケストラにエキストラで呼
んでいただく機会も多く、素晴らしい指揮者や演奏家に出会い、それまで知らなかった作曲
家や様々な曲との出会いがありました。その頃から、オーケストラに入りたい、という気持
ちが強くなったように思います。大学院を卒業して暫くしたころ、NJP のフォアシュピーラー
のオーディションがあることを知り、一つのチャンスと思って受けました。
幸い入団できてから早くも27年、ヴァイオリンとの付き合いも今年で半世紀を迎えます。
50年を振り返るといろいろありましたが、自分が一番好きなことを仕事として生活ができる
こと、そして音楽でお客様に喜んでいただけることは、なんと幸せなことかと、音楽家という
すばらしい職業への道を両親が導いてくれたことに感謝しています。先日、雑談の折りに
父から「ほかの人生があったと思うか」と聞かれて、「音楽家になれて本当に良かったと思
う」と答えましたが、それが本当のところです。この先、年をとっても、できるだけ長くヴァイ
オリンを弾いていたいと思いますし、技術的にも音楽的にも、進歩できるものならしたいと
思っています。
NJPも、クリスティアンが監督の任期を終えて、新しい門出を迎えましたが、これからもお
客様の心を動かす演奏をお届けしたいですね。どうぞご期待ください。
(2013年9月号)