電子材料・デバイス技術専門委員会 次世代スケーラブル高集積化技術に関する調査 ■背景と調査の重要性 すべてのモノをつなぐ IoT(または IoE)時代の幕開けとともに、低コストで低消費電力、超小型・ 高集積エレクトロニクスシステムを用いた情報管理市場が追い風になっている。2020 年には全世 界で 500 億個のデバイスがつながれると予想されており、エネルギー効率がわずか 1%改善され るだけで 2760 億米ドルの経済効果、との報告もある(出典:シスコ、エコノミスト)。これらは、 エネルギー・交通・医療・食糧など社会のあらゆる分野において、モノの常時インターネット接 続を可能とするセンサ、得られた信号をリアルタイムで安全・安心に処理する高機能なネットワ ーク、および膨大なデータ・スレッドの高速処理が可能で、かつエネルギー効率の高いサーバシ ステムとそれを有するデータセンタに支えられている。 これまで日本の電子材料・デバイス技術はその市場ニーズ、研究開発・試作、製造において中心 的な役割を担ってきた。しかし、昨今のグローバル市場においてその製品開発、試作から製造に 至るエコシステムの鍵をにぎるのは、台湾、韓国、中国をはじめとするアジアの国々である。本 委員会では、日本の電子産業の復興・強化に向け、センサや MPU のモジュール化、システム化 による、IoT サービスの差異化につながるハードウェアの構築につなげるため、これらの国々を 含めた海外企業の実装技術やその開発の最新動向を調査し、ベンチマークと提言を行う。 一例として、ウェアラブル端末をはじめとする最新の生体および環境センシングでは、体積当た りのエネルギー効率を高めるための三次元積層や高密度実装技術が必要とされている。スマート フォンと同等の機能を生体に適用させるためには、エネルギー効率を 104 倍以上に改善する必要 がある。またビッグデータの中枢となるサーバやスーパーコンピュータでは、クロック周波数を 一定に保って高速処理を行うため、MPU コアは倍々ルールで増加し、最近では 512 コア以上の 製品化も行われている。回路規模の増大に伴いチップサイズが大型化し、消費電力は 300W/cm2 を超える高発熱体となるため、熱設計まで考慮した MPU モジュールの実装技術がますます重要 となる。 上記背景の下、平成 25 年度より、CMOS LSI、各種電子デバイス、受動素子および実装基板を 含めた高集積実装システムに関する動向調査を、 「次世代スケーラブル高集積化技術の調査分科会」 にて行ってきた。今年度は、これまで行ってきた調査項目:高集積実装技術に対する IoT 市場ニ ーズ、先端実装技術、各種製品における実装技術、設計技術、低コスト化に向けた製造技術と、 着目分野として追加した“極限環境で動作する電子機器の実装技術”について継続調査を行う。 新たなエネルギー資源の確保が不可欠な中、自然エネルギーの利用に加え、さらなる地球資源の 探索に向けた、極限環境動作の超小型電子機器の実装技術が重要と位置づけている。 平成 27 年度は委員長 1 名、幹事 2 名(企業 2 名)、委員 6 名(企業 6 名)、オブザーバ 1 名の計 10 名が分科会活動に参画した。高集積実装技術に対する IoT 市場ニーズ、各種製品の実装技術、設 計技術、先端実装技術、低コスト化に向けた製造技術、電子産業強化に向けた実装技術の研究試 作拠点と企業動向について、15 件のヒアリングと見学会を JEITA 及び協力企業・大学において 行った。平成 28 年度は、上記ヒアリング結果を踏まえ、更に調査を進める。 ■調査候補項目 2030 年の社会システムを見据え、それを支える電子機器・デバイスとその実現に向けた実装技 術を、材料・プロセス・製造技術を調査し、日本の電子産業強化のために今後必要となる実装技 術を抽出する。 1)高集積実装技術に対する IoT 市場ニーズ ・データセンタ:エネルギー効率/高速・高帯域・省電力技術 ・ネットワーク:高速信号伝送の限界と新技術(無線、光) ・センシング:センサーモジュール技術の現状分析と将来予測 ・人工知能:ディープラーニング、ニューロモルフィック ・セキュリティ:回路実装、認証デバイス ・ウェアラブル:各種材料・部品、実装フロアプランと集約限界 ・ヘルスケア:生体環境適合デバイス ・農業、水産業の工業化 2)各種製品における実装技術 ・自動車(電装) ・ネットワーク機器 ・電力制御機器 ・画像・映像機器:イメージセンサ ・セルラシステム:RF フロントエンド ・ロボット ・植物工場 ・小規模発電:熱、振動、光 他 ・メディカル機器 ・3D 形成機器:生体部品 ・極限環境対応機器:資源探査 3)設計技術 ・3D 集積対応 SI/PI/EMI シミュレーション技術 ・3D フローアデザイン:ロジック、メモリー ・異種機能デバイス統合設計技術 ・極限環境デバイス設計 ・ファシリティ設計:生活空間、建屋、服飾、人体 4)先端実装技術 ・3D、SiP、異種機能集積技術の動向 ・冷却・放熱技術:エネルギー効率、フォームファクタ ・接合(接続)技術:接合方法、接合材料 ・情報インターコネクション:有線、無線 5)低コスト化に向けた製造技術 ・製造コスト分析、動向:チップベース、ウェハベース ・製造装置の動向、新技術 ・プロセス:高速成膜・堆積・充填、高速加工 ・材料 6)電子産業強化のための実装技術 ・海外実装技術動向:アジア 韓国、台湾、中国、シンガポール 欧米(ジョージアテック、IMEC、フラウンフォーファ) ■参加企業:7 社(敬称略/順不同) 新日本無線、ソニー、東芝、日立製作所、富士通研究所、三菱電機、村田製作所 一般社団法人 電子情報技術産業協会 Japan Electronics and Information Technology Industries Association 〒100-0004 東京都千代田区大手町 1-1-3 Tel:03-5218-1059/Fax:03-5218-1078
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