人材育成モデル 20Tips

省エネ事業推進事業者
人材育成モデル
(人材育成モデル 20Tips)
平成 28 年 7 月
札幌市 環境局 環境都市推進部
札幌市内の業務部門及び産業部門における省エネを推進するためには、事業者や事業所
に対して、省エネを外部から推進できる技術者(省エネ事業推進技術者)の存在が不可欠です。
また、同様に社内においても経営者や従業員に対して、省エネの提案をする技術者の存在も
不可欠です。
省エネ事業を推進する技術者には、空調・給排水設備や電気設備、建築などに関する専門
的知識はもちろんのこと、顧客(社内の場合は経営者)とともに省エネを推進するための提案力
や説明力、また社内や社外の関係者との調整など、さまざまな能力を持つことも必要になります。
本書は、「省エネ事業推進技術者」として必要な人材の育成モデルを具体的に 20 の能力
(20Tips)にまとめたものです。
○人材育成モデルの活用例
このモデルでは、次のような利用を想定しています。
・ 札幌市が行う事業者向けの省エネ技術者育成に関するセミナー等
・ 顧客への省エネ提案をしている事業者における技術者の育成
・ 社内の省エネ部門における技術者の育成
・ 技術者自身による省エネ分野の知識・技能の習得
○本書で使用する用語について
センスウェア
センスウェアとは、人の感覚を刺激することを通じて、新たなものの見方や物事に対する関わり方
を発見させる道具のことをいいます。
センスウェアを取り入れることで、省エネに関する運用管理の手法(ソフトウェア)や、省エネ機器
導入など(ハードウェア)とは別の切り口による、顧客への省エネ提案などを行うことができます。
「省エネ事業推進技術者」の人材育成モデル構築にかかる 3 類型
着眼点
具体例
・5S(職場環境改善活動)、QC(品質管理)活
動、「カイゼン」
仕組みの利活用
・エネルギー管理標準(手順書)
ソフトウェア
・自動制御(センシング、DR(デマンドレスポン
(コト)
ス)など)
知識領域(例) 各種管理手法+情報工学、制御工学、統計学など
・最新の省エネ製品導入
設備機器の高効率化
・製造ラインのリニューアル
ハードウェア
生産工程の見直し
・革新的な製品/プロセスの採用
(モノ)
知識領域(例) エネルギー工学(電気、熱)、機械工学など
・省エネ技術の探索と「新結合」
暗黙知を用いた最適解導出
・科学横断によるノウハウの構築
センスウェア
・“+α”の課題解決技能
(ヒト)
知識領域(例) 現場経験+心理学、MOT、コミュニケーション学
類型
1
2
3
2
○「省エネ事業推進技術者」の人材育成モデル
20 項目に関する説明一式を「人材育成モデル 20Tips」としてまとめました。
「Tip」とは英語で「内報」「情報」「助言」「ヒント」「秘訣」「こつ」などの意味を持つ単語です。
必要とされる部分をピックアップして活用ください。
センスウェア※
能力
常
識
単位・用語の説明
○
用語の取扱い
条件の明示
○
『コンサルであるかどうか』
を問う
表現の平易化
評価基準
知
性
○
○
実現手段の明示
他社事例の紹介
○
『省エネコンサルの技術力』
を問う
優先順位の提案
○
○
「北海道」という地域性
○
(相対的な)進歩性・非公知のノウハウ
○
『省エネコンサルのセンスウェア』
を問う
○
省エネ効果を高める代替案の提示
○
初期投資額を抑える代替案の提示
○
○
問題の可視化
データ集計による問題発掘
○
『省エネコンサルの柔らかアタマ』
問う
評価指標による多角的な評価
※本書では、センスウェアの要素から次の 3 種類に分けて示している。
知性…理解力、知識、経験
感性…感覚、創造、予見
心性…気力、誠実、利他
3
○
○
評価指標の明示
○
○
経営上の懸念(リスク)認識を低減させる
代替案の提示
さまざまな評価ツール・分析手法の活用
○
○
投資回収年数の算出
○
○
先進的な切り口での情報提供
経済性の評価
○
○
「各分野(電気・設備・建築など)のプロ」
たる行動
○
○
技術的な懸念(リスク)の説明
『省エネコンサルを使う価値』
を問う
○
○
運用改善による省エネの提案
心
性
○
顧客との対話
差別化
感
性
○
○
○
○
○
○
人材育成モデル 20Tips 01
センスウェア
評価基準
用語の取扱い
『コンサルであるかどうか』
を問う
常
識
能力
単位・用語の説明
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
国際単位系(SI 単位系)を使って、単位を正しく表現していますか?
・ 昔は昔。今は今。少なくとも現在は国際単位系を用いることは必須です。
・ [MPaG]と[MPa]、[m3N]と[Nm3]など、同じなのか違うのかわからないような不親切な単位の表
記をしないよう、注意してみましょう。
・ もともとエネルギーの単位は多様であり、それがお客さまのエネルギーに対する理解を阻害
しているかもしれません。そのような「お客様目線」をもつことが必要です。
定義が確定していない用語を使っていませんか?
・ 「エネルギーマネジメント」「Iot」などの新しい用語は、人によって思い浮かべる内容が違うこ
とがあります。伝える相手と認識が違っていたら、話が通じません。自分が知っている言葉と
その意味を、伝える相手が同様に知っているとは限りません。
・ 新しい用語やお客様が普段使わない専門用語を使う必要がある場合は、用語の解説を加
えるなど、お客さまが誤解しないようにしましょう。
■考えてほしい事例
「デマンド監視装置とは何ですか?」と聞かれたら、どう答えますか?
「デマンドコントローラー」「電力見える化装置」と何が違うのですか?
同じものですか?違うとしたら、何が違いますか?ご説明頂けませんか?
世の中一般の表現と同じですか?
―――確認してみてください。
4
人材育成モデル 20Tips 02
センスウェア
評価基準
用語の取扱い
『コンサルであるかどうか』
を問う
能力
条件の明示
常
識
○
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
省エネ効果を推計する際、あくまでも「推計」であることを示していますか?
・ 多くの場合、省エネ効果を算出には、限られたデータと経験などに基づく「仮の値」を用いま
す。したがって効果の信頼性に不確実な部分が存在します。
・ 電力計で実測する場合でも、既に電力データの常時モニタリング装置(データロガー等)が
ある場合を除き、期間(例:7日間)を定めて計測します。当然ながら、その値が年間を通じて
必ず現れるわけではありません。
・ 測定データの期間、気温や湿度など、エネルギー消費(量)に影響をあたる外乱要因が存
在する場合には、必ずそのことを明示しなければなりません。
「条件が違うデータどうしを比較している」ように見えませんか?
・ エネルギー消費量の前日比較、前月比較、前年比較をする際には、それぞれに影響を与
える因子(気温や生産数量など)の条件が一致していないと、比較をする前提条件が異なる
ため、比較それ自体の信頼性がなくなります。
・ どうしても前提条件が違うエネルギー消費データを比較する場合、客観的に見て妥当と思
われる補正をかけること、そして「補正をかけていること」を明示すべきです。
■考えてほしい事例
「○万円の省エネ効果があります」と顧客である事業者に提案したとします。顧客から「その数
字、信用できるの?」と聞かれたら、どう答えますか?
また仮に「100%信用できるわけではない」と答えざるを得ないとき、併せて顧客である事業
者に対してどう説明しますか?
―――顧客とのやりとりを意識してみてください。
5
人材育成モデル 20Tips 03
センスウェア
評価基準
用語の取扱い
『コンサルであるかどうか』
を問う
能力
表現の平易化
常
識
知
性
感
性
○
○
心
性
■ポイント
わかりやすい言葉や文章を意識して用いていますか?
・ 省エネ(あるいはエネルギー)に詳しい事業者は、実はごく限られています。相手が省エネ
に詳しくないと思って、顧客との対話を図るべきです。
・ わかりやすい言葉や文章とは、話し相手である顧客である事業者の知識の範囲内まで噛み
砕いて説明されたものである、と考えてください。
・ 具体的には、(工学的に)間違った内容にならない範囲で意訳し、省エネ技術に詳しくない
人のことを考えて文書化や口頭説明をすることが必要です。
表現の平易化がどれだけ重要か理解していますか?
・ 顧客との良好な対話が行われるためには、送り手の意図や情報が、受け手も同じく理解され
るよう、話し方や文書表現などを選び伝える必要があります。
・ つまり、伝えたい情報を相手が理解できていなければ、その説明は適切ではないということ
になります。
・ 送り手の意図や情報が伝わらないということは、結局、省エネ事業推進技術者の努力の成
果が顧客に受け入れられないことを意味します。
■考えてほしい事例
省エネ提案中に、顧客である事業者の顔色を見て「相手に情報が伝わっているかな?」と考
えたことがありますか?また、もしそう感じた時に、顧客の理解度に合わせて、言葉遣いを変
えてみたことはありますか?
―――確認してみてください。
6
人材育成モデル 20Tips 04
センスウェア
評価基準
用語の取扱い
『コンサルであるかどうか』
を問う
常
識
能力
顧客との対話
知
性
感
性
心
性
○
○
■ポイント
相手に合わせたコミュニケーション方法を採用していますか?
・ 電子メールは便利です。しかし、顧客によっては無機質に感じたり、言い回しによっては誤
解を招いたりすることもあります。
・ 人間には表情があります。顧客である事業者の要望(ニーズ)が何なのかは、表情を読み取
ることでも把握することが可能です。
・ 信頼関係を構築する意味でも、(特に中小規模事業者には)直接会う機会を設けるべく、で
きるだけ顧客である事業者への訪問機会を作ってみて下さい。
相手の立場を意識した対話をしていますか?
・ 省エネ事業推進技術者の役割は「省エネへの誘導」であって、外部審査やサーベイランス
(観察)調査ではありません。ダメ出しはダメです。
・ 省エネ事業推進技術者の顧客の多くは法人です。しかし、打ち合わせなどで直接、対応す
るのは組織の中の個人です。省エネ事業推進技術者との対応により、対応者の組織(法人)
内での立場を失わせるようなものにしてはいけません。
・ 逆に、省エネ事業推進技術者は対応者の考えや思いが何か探っていますか?時には、対
応者の思いの実現に専念することも必要かもしれません。
■考えてほしい事例
顧客の元へ足繁く通っていますか?顧客である事業者の「顔色」が見えていますか?何に困
っているか率直に聴き出せる関係が築けていますか?
―――確認してみてください。
7
人材育成モデル 20Tips 05
センスウェア
評価基準
実現手段の明示
『省エネコンサルの技術力』
を問う
常
識
能力
運用改善による省エネの提案
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
省エネの方法論を正しく理解していますか?
・ 「何が問題なのかわからないのが問題」という事業者が多数います。まずは「現状把握を徹
底することが肝心です。そのための支援を省エネ事業推進技術者が担っても良いと考えま
す。
・ 「省エネはお金がかかるもの」と思い込んでいる事業者も多数います。まずは手元足元でで
きること、すなわち「ムリ」「ムラ」「ムダ」な運転を取り去ることが必要であることを伝えましょう。
・ たとえば、制御を伴わないデマンド監視装置を使用する場合、運用改善による効果や運用
方法が事業者に理解されない限り、その役割を果たすことはできません。なぜならデマンド
警報鳴動時の対応とは、「人力による機器停止」だからです。
・ 運用改善による省エネのツールとして、省エネ法では、ボイラーなどエネルギー使用に関係
する設備の運転管理、計測、保守点検等を文書化した「管理標準」の活用を義務としている
ことを知っていますか?単に「遵法対応」ととらえず、使える管理標準の策定・改善も省エネ
事業推進技術者の仕事です。
運用改善による省エネの「限界」を伝えていますか?
・ 運用改善による省エネ(あるいは節電)にも限度があります。運用改善によって経済的に可
能な省エネ手法が尽きそうになってきた場合には、設備投資の必要性を真摯に顧客に説明
すべきです。
・ 一方で、設備改善後の運用改善による省エネも重要です。新しい機械も入れた翌日から性
能劣化は始まります(運用改善の必要性は設備の新旧では不変)。
■考えてほしい事例
省エネの提案は「運用改善→小規模投資→大規模投資」の順になっていますか?
省エネ提案と称して、製品「売らんかね」になっていませんか?
―――確認してみてください。
8
人材育成モデル 20Tips 06
センスウェア
評価基準
実現手段の明示
『省エネコンサルの技術力』
を問う
能力
他社事例の紹介
常
識
○
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
「他社にできることが御社にはできていない」ことを訴えられますか?
・ 他社事例を示すことは、顧客における事業所での実行可能性の一端を示すものです。「な
ぜできないのか」を把握しつつ、できる方法を提供すべきです。
・ そのためには、省エネ事業推進技術者自身の技術能力を高めるとともに、経験した事例や
公知の事例を学び、文書や図表・数式などの記録を残し、後にいつでも利用できるようにし
ておく必要があります。
・ 他社事例は、組織における省エネを誘導する有力な道具です。実際に実行可能かどうか不
確実であっても「できそうだ」と思い込ませる効果があります。
事例の背景にある「苦労話」を紹介できますか?
・ 他社事例をそのまま真似しようとすると、実はうまくいかないことがあります。他社事例を元に
省エネを成功させるには、他社事例の「成功事例」ではなく、その底流にある「失敗事例」を
読み解くが必要です。
・ 省エネ事業推進技術者の役割は省エネへの誘導であり、その実行の支援にあります。その
成功確率を高めるためには、着実に失敗確率を減らす「失敗のノウハウ」の蓄積が必要です。
■考えてほしい事例
参考になる他社事例をどのように集めたらよいですか?
また省エネ事業推進技術者自身の経験を事例とするとき、どのような着眼点で形式知化するこ
とが必要ですか?
―――重要な問いです。確認してみてください。
9
人材育成モデル 20Tips 07
センスウェア
評価基準
実現手段の明示
『省エネコンサルの技術力』
を問う
常
識
能力
優先順位の提案
知
性
感
性
○
○
心
性
■ポイント
お客様に「手の付けドコロ」を示していますか?
・ 道内有数のエネルギー多消費企業でない限り、省エネのネタを複数指摘したところで、一
度にすべて着手することは物理的に不可能です。そのため、技術的かつ経済的に合理的
な優先順位を決め、“誘導”していくのが省エネ事業推進技術者の役割といえます。
・ 優先順位の決定にあたっては、一般的には、エネルギー多消費設備を主たる対象にします。
同じ労力をかけたとしても、より大きな省エネ効果を得られるためです。
・ エネルギー価格やCO2排出量など、別の評価指標でエネルギー管理をされている事業者
に対しては、それに合った優先順位の提案も検討すべきです。
優先順位は顧客のニーズに合っていますか?
・ 省エネを実施するための優先順位は、必ずしも経済性ばかりではありません。技術的に見
た実行可能性、あるいは、事業への影響の大小などで評価されることもあります。
・ 優先順位付けは、省エネ事業推進技術者が顧客の実態に合わせて見つけていくものです。
その見つけ方と順番に、省エネ事業推進技術者の技量が問われます。
■考えてほしい事例
「まずはココから省エネを進めてみてはいかがでしょうか」と自信をもって言えますか?言えな
いとしたらそれはなぜですか?
―――確認してみてください。
10
人材育成モデル 20Tips 08
センスウェア
評価基準
実現手段の明示
『省エネコンサルの技術力』
を問う
能力
技術的な懸念(リスク)の説明
常
識
知
性
感
性
心
性
○
○
■ポイント
技術的に不可能な省エネの提案をしていませんか?
・ 省エネは、「技術的かつ経済的に可能な範囲で」実施します。少なくとも、技術的な検証が
十分でない提案を顧客にすることは、お客様に(経済性ではなく)不確実な情報を提供する
ことになってしまいます。
・ 技術的な検証が十分でない省エネ提案により、顧客に不利益が発生した場合、その責任の
有無にかかわらず、省エネ事業推進技術者としての役割に大きな影響を及ぼします。
・ したがって、技術的な懸念が見られる省エネ提案には慎重を期すべきであり、またその懸念
を明示した経済性の提案も必要です。
技術リスクを徹底的に調査していますか?
・ いかなる技術領域においても、「こうすれば絶対大丈夫」ということはありません(「想定外」を
想定することは不可能です)。しかし、実証実験や文献調査などによって、技術的な懸念次
項をできる限り減らす方法はあります。
・ 想定すべき技術的懸念は、設備の破損(例:ポンプ破損など)から健康被害(例:LED 照明
など)までさまざまです。幅広い知見の研鑽と、それぞれの技術力に応じた対応が必要です。
■考えてほしい事例
提案先の事業者において想定された「技術的な懸念」が、ほかにはありませんか?ご自身で
も調べてみましょう。
11
人材育成モデル 20Tips 09
センスウェア
評価基準
差別化
『省エネコンサルを使う価値』
を問う
能力
「各分野(電気・設備・建築など)のプロ」
たる行動
常
識
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
「各分野(電気・設備・建築など)のプロ」にふさわしい態度を示していますか?
・ 電気・設備・建築など専門分野の技術者の場合、その分野における専門家としての知識・技
能があることが、省エネ事業推進技術者の前提となります。
・ 省エネ以前に各分野の専門家として、その分野に関係する機器や設備(例:電気設備、空
調設備など)を扱い、危険を発見すれば除去できるだけの技術的知識が不可欠です。
・ 電力計や温度計などを適切かつ迅速に設置し、省エネルギーのためにデータを取得するこ
との必要性を顧客に伝えるとともに、顧客の実情に合わせた計測期間及び計測器を選定、
提案し、課題発掘に努めて下さい。
・ 負荷変動が激しく運転時間が一定でない設備、あるいは(特に製造業の場合)休日時に生
産と無関係に作動している補機類などがある設備には、できるだけ個別に計測器を設置し、
省エネのネタを探しましょう。
各分野に関する新しい知識やコンセプトについて研鑽を重ねていますか?
・ 電気や空調などの使用に関する技術面の変化は目覚ましいものがあります。「昔はこうだっ
た」といった過去の記憶にとらわれず、世の中の最新情報を常に意識する進取の精神が必
要です。
・ 具体的には、例えば、平成 26 年度改正施行「省エネ法」を踏まえた蓄電池・蓄熱空調の取
扱い、新電力の採用、再生可能エネルギー電気など、顧客の関心がありそうな分野の情報
収集をして下さい。
■考えてほしい事例
顧客から「太陽光発電を省エネになるように使いたい」と聞かれたら、どのような提案を考えま
すか?さまざまな切り口から、顧客の利益を意識した提案を考えてみて下さい。
12
人材育成モデル 20Tips 10
センスウェア
評価基準
差別化
『省エネコンサルを使う価値』
を問う
常
識
能力
「北海道」という地域性
○
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
道外のコンサルにはない技術的知見はありますか?
・ 北海道では、ロードヒーティングなど、東京などの大都市圏ではお目にかからない設備があ
ります。北海道「ならでは」の知見は、他社との差別化になります。
・ 空調については、道内の顧客の好みと、ヒートポンプなどの最新技術との「すり合わせ」が必
要です。エネルギー消費が少ない(あるいは効率が高い)ことのみで省エネ提案をすること
が果たして適切か、考えてみましょう。
・ 一般的に、道内企業と道外企業では、年間を通じた最大需要電力の発生時期や時間が大
きく異なることが知られています。具体的には、「冬」をにらんだ対策が不可欠です。
熱利用設備についての技術的知見はありますか?
・ 道外の企業に比べると、道内企業における燃料消費量は相対的に多いと思われます。どの
分野のプロであっても、熱の省エネに詳しい必要があります(お客様の関心が高いです)。
・ 例えば、「“電気の専門家”なのに蒸気にも詳しい」という意外性は、省エネ事業推進技術者
に対する顧客の評価を高めることにつながります。
■考えてほしい事例
顧客にとっての最適なロードヒーティングの使い方を提案できますか?逆に、従来は除雪を
優先しロードヒーティングを使用していない事業者に対し「価値のある」ロードヒーティング(あ
るいは代替技術)を提案できますか?
―――頭の体操をしてみて下さい。
13
人材育成モデル 20Tips 11
センスウェア
評価基準
差別化
『省エネコンサルを使う価値』
を問う
常
識
能力
(相対的な)進歩性・非公知のノウハウ
知
性
感
性
○
○
心
性
■ポイント
顧客の琴線に触れそうな提案をしていますか?
・ 市販の書籍で調べればわかるような一般的な提案ではなく、顧客である事業者の実情にあ
った提案をすることが重要です。特に製造業は、自社の省エネが(設備構成として)特殊で
あると考えている場合が多いため、顧客の事業内容や実情をしっかり把握した上での提案
がより必要です。
・ 省エネ事業推進技術者は顧客の知識レベルや対象の施設の規模などを冷静に見極めた
提案が求められます。「ウチは省エネをやりつくした」という顧客の反応に惑わされず、現実
に即した提案とその伝え方に留意しましょう。
従来技術の組合せで「新しさ」を提案できていますか?
・ 「新しさ」とは常に「革新的な技術」を指すものではありません。「新結合」という言葉に代表さ
れるように、従来技術を組み合わせる方法で、顧客に最適な提案をすることも可能です。
・ そのためには、必要な技術の探索及びその調整役を省エネ事業推進技術者が担う必要が
あります。特許技術なども含めたノウハウを得ましょう。
■考えてほしい事例
道内のみならず、道外の展示会などに参加し、道内企業で活用可能な技術情報を自ら収集
していますか?また、単に「知っている」のではなく、その技術(ソリューション)をいつでも使え
るような人脈を確保していますか?
―――確認してみてください。
14
人材育成モデル 20Tips 12
センスウェア
評価基準
差別化
『省エネコンサルを使う価値』
を問う
常
識
能力
先進的な切り口での情報提供
知
性
感
性
心
性
○
○
■ポイント
先進的な話に興味がある人に“コンセプト”を語れますか?
・ 顧客が知りたいのは、「このごろ」の話だけではありません。「これから」がどうなるかも知りた
いと考えています。エネルギー関係の話題でも、今後さまざまな不確実性が存在しているこ
とを、顧客は敏感に考えています。
・ そのためには、省エネ事業推進技術者は技術的な見地から、今後の動向を自分なりに予見
する想像力を持つことが必要です。顧客の要望(ニーズ)にただ「わかりました」と答えている
だけでは、省エネ事業推進技術者の役割としては不十分です。
・ 省エネ事業推進技術者は常に、顧客よりも専門分野に詳しくあるべきです。そのための自
己研鑽(スキルアップ)を常に心がけることが、省エネ事業推進技術者の重要な素養です。
顧客の「声」から新しい提案を想像できていますか?
・ 一方で、要望は要望として受け止めつつ、従来の提案が常に最適かを考える必要がありま
す。また、批判的思考(クリティカル・シンキング)が必要です。
・ 省エネ事業推進技術者は顧客より専門分野に詳しくあるべきですが、それでも全知全能は
ありえません。ある時にはプライドを捨てて、自分の無知識を受け入れて、顧客の声に真摯
に耳を傾ける謙虚さも必要です。
■考えてほしい事例
革新的な考えに共鳴する顧客と正々堂々と渡り合うことはできますか?
―――確認してみてください。
15
人材育成モデル 20Tips 13
センスウェア
評価基準
経済性の評価
『省エネコンサルのセンスウェア』
を問う
能力
投資回収年数の算出
常
識
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
投資回収年数法を用いて、投資回収年数を算出できますか?
・ 初期投資(イニシャルコスト)については、参考見積りの取得などを通じて、できるだけ妥当な
金額を積算する必要があります。
・ 維持費(ランニングコスト)については、照明設備など省エネ効果の観点で不確実性が少な
いもの以外では、ある程度慎重な積算が求められるかもしれません。
投資回収年数が極端に長い提案をしていませんか?
・ 積算方法が妥当であっても、積算結果が顧客にほとんど意味のなさない(投資回収年数が
20 年以上)ものになっていたとしたら、優先順位付けという観点からも提案自体をすべきで
ないと思われます。
・ ただし、投資回収年数が 20 年以上であったとしても、省エネという意味での費用対効果とは
別の価値があるのであれば、それを明示して提案することはあってよいでしょう。
■考えてほしい事例
「変圧器の省エネ提案」をどう顧客に伝えますか?
省エネ効果が小さくとも、顧客の関心を誘う提案を検討してみて下さい。
16
人材育成モデル 20Tips 14
センスウェア
評価基準
経済性の評価
『省エネコンサルのセンスウェア』
を問う
常
識
能力
省エネ効果を高める代替案の提示
○
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
設備改善後のより良い“運用改善による省エネ”を提案していますか?
・ インバータによるポンプの省エネなど、設備改修後も調整(チューニング)によって省エネ効
果を最大化できる余地がある場合があります。それによって、顧客の投資回収年数を当初
見込みよりも短くすることができます。
・ 上記のような「制御」が、運用改善による省エネの価値を高めます。
・ 制御の方法は、さまざまなメーカーが技術革新にしのぎを削っています。自社にない技術を
顧客が求めていたら、最適解を探してみましょう。
・ 最適解を検討する意味は、お客様にとって実現不可能であると思われた設備投資が、実は
省エネ事業推進技術者の力量によって実現可能になる、ということにあります。それは省エ
ネ事業推進技術者が提供する大きな付加価値と信用の醸成につながります。
■考えてほしい事例
上記の例以外に、設備改修後に省エネ効果をより大きくできる事柄はありますか?そしてそ
のための具体策を理解していますか?
―――確認してみてください。
17
人材育成モデル 20Tips 15
センスウェア
評価基準
経済性の評価
『省エネコンサルのセンスウェア』
を問う
能力
常
識
初期投資額を抑える代替案の提示
知
性
感
性
○
○
心
性
■ポイント
「初期投資(イニシャルコスト)を少なくする提案」とは何かわかりますか?
・ 一般的には、補助金などの支援策の活用、あるいは ESCO 事業などが考えられます。
・ しかし省エネ事業推進技術者の役割として、技術面から初期投資を低減する方策を検討す
ることも重要です。
・ 例えば、設備更新を「必要なところに必要なだけ」実施できる提案をするため、技術的に確
証がある範囲で、より安価な方法を模索する、といったことも考えらえます。
・ 技術面からの初期投資の低減を検討する意味は、お客様にとって実現不可能であると思わ
れた設備投資が、実は省エネ事業推進技術者の力量によって実現可能になることにありま
す。それは省エネ事業推進技術者が提供する大きな付加価値と信用の醸成につながりま
す。
■考えてほしい事例
インバータによるポンプの省エネを提案するとき、初期投資を低減できる技術的なポイントは
何でしょうか?
また、技術以外の部分で初期投資を低減できる方法はありませんか?検討してみて下さい。
18
人材育成モデル 20Tips 16
センスウェア
評価基準
経済性の評価
『省エネコンサルのセンスウェア』
を問う
常
識
能力
知
性
経営上の懸念(リスク)認識を低減させる
代替案の提示
感
性
心
性
○
○
■ポイント
「主観的割引率」を低減するような切り口を顧客に提供できますか?
・ 一般的に設備投資額を分析する場合、初期投資額(イニシャルコスト)と維持費(ランニングコ
スト)から、投資回収年数を算出します。
下記のグラフの場合、1000 万円÷450 万円=2.2 年で回収
単位:万円
投資額
維持費
維持費の削減額
1200
リスク
800
450
450
450
450
500
500
500
500
1年目
2年目
3年目
4年目
1000
400
0
初期投資額
・ 「主観的割引率」とは、将来の価値(上記では削減額 450 万円)を、現在の価値としていくらと
感じるかの割合のことをいい、仮に顧客が感じる主観的割引率が 30%とすると、上記の場合、
現在の価値が 315 万円(450 万円×70%)と感じることになり、回収に 3.2 年程度(1000 万円÷
315 万円)かかると感じていることになります。
・ 主観的割引率が低くなれば、(想定した期間で確実に回収できると感じるため)最終的な投
資に対する意思決定の結果が大きく変わります。
・ 「主観的」とあるとおり、割引率の決定は恣意的です。逆に言えば、省エネの提案の良し悪
しによっては、恣意的な部分を「悲観的(ネガティブ)」から「楽観的(ポジティブ)」に変えること
ができます。
・ ちなみに「主観的割引率」の本質は「リスクの認識」です。投資をともなう省エネ提案を上手
に行い、将来の維持費等の不明確な部分(投資リスク)を低減できると「認識させる」かが、投
資を伴う省エネ提案が受け入れられるかどうかのカギになります。
■考えてほしい事例
省エネ投資を意思決定する際に認識される「リスク」とは何でしょうか?
―――熟考してみてください。
19
人材育成モデル 20Tips 17
センスウェア
評価基準
問題の可視化
『省エネコンサルの柔らかアタマ』
を問う
常
識
能力
評価指標の明示
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
「ものさし」がなければ、省エネかどうか評価できないことを理解していますか?
・ 評価指標を設定しない限り、省エネ改善効果を定量的に測定できません。
・ 一般的には「エネルギー消費原単位」や「電気料金」などで省エネ評価しますが、評価指標
はそれだけではありません。
・ 例えば、CO2 排出量、負荷率(変圧器の場合)、COP(空調熱源の場合)などが考えられま
す。組み合わせて活用し、問題解決の道具として下さい。
評価指標によって、省エネ行動自体が変化することを理解していますか?
・ 省エネは、最終的には「ヒト」が行うものです。「ヒト」は、組織や自らの利益のために、評価指
標に沿った行動をとる場合が少なくありません。
・ 一方、評価指標の妥当性が担保されないと、「ヒト」の行動は適切にならない可能性がありま
す。具体的には、努力の成果が反映されにくい指標の運用をすると、「ヒト」はかえって省エ
ネへの意欲を失ってしまうことがあります。
・ したがって省エネ事業推進技術者は、技術的な側面からその妥当性を検証する力量が必
要です。
■考えてほしい事例
「何を以て省エネといえるのですか?」と聞かれたら、どう答えますか?またその妥当性や指
標の問題点を指摘できますか?
―――確認してみてください。
20
人材育成モデル 20Tips 18
センスウェア
評価基準
能力
問題の可視化
『省エネコンサルの柔らかアタマ』
を問う
データ集計による問題発掘
常
識
○
知
性
感
性
心
性
○
■ポイント
エネルギーデータの集計による「見える化」手法を理解していますか?
・ 省エネデータの見せ方に「QC7つ道具」が用いられていることはよく知られています。
・ しかし「QC7つ道具」は「集計結果の見える化」であって、そこから読めることを見出すのが
「分析」です。区別しましょう。
QC7つ道具とは…主に品質管理においてデータの表現に用いる図表
特性要因図、パレート図、チェックシート、ヒストグラム、
散布図、管理図、層別
エネルギーデータの集計だけでは分析とは言えない理由がわかりますか?
・ エネルギーの使用量は、エネルギー消費と密接に関係を持つ値(例えば工場であれば生
産量など)や実際の人の行動によって定まります。
・ エネルギー使用量のみに着目して集計をしても、本質的な問題が見えてこない可能性があ
ります。
・ 省エネ事業推進技術者の力量は、データ集計によって得られた情報をいかに、実態に即し
て「料理」できるかにかかっています。
■考えてほしい事例
データの集計をする大前提として「データ」に着目します。
1時間に3個の製品を製造する機械あったとします。その待機電力を測定しようとしたとき、何
分ごとのデータが取得できる電力量計が必要ですか?
また、データ集計の視点で見たとき、その時間軸での電気計測をする理由は何ですか?検
討してみて下さい。
21
人材育成モデル 20Tips 19
センスウェア
評価基準
問題の可視化
『省エネコンサルの柔らかアタマ』
を問う
常
識
能力
評価指標による多角的な評価
知
性
感
性
○
○
心
性
■ポイント
設備・機器ごとの新たな指標で、エネルギー使用状況を分析できますか?
・ 省エネ事業推進技術者の能力としては、従来活用されている事業所全体の(つまり「マクロ」
的な)指標とその組合せによる評価のみならず、個別具体的な設備機器に特化した(「ミクロ」
的な)指標を使った分析が必須です。
・ 最もミクロ的な評価指標は「(エネルギー)単価」です。また、圧縮空気を使用している工場
の場合、圧縮空気の容積あたりの製造単価を使うなどにより、単位あたりの生産物に対する
エネルギー消費や製造コストに占める割合などを算出できます。
・ また、圧縮空気を使用している工場における、圧縮空気原単位の算出によって、気温や室
温の変化に伴う空気密度の変化と消費電力の関係を把握することができます。これを他の
空気圧縮機の運転と比較することで、複数の工場で同時並行できる省エネを検討できます。
・ 最終的に省エネ事業推進技術者は、顧客に対して「それらを管理すること」と、今までよりも
エネルギー使用状況が悪くならないようにする(歯止めにする)仕組みとして活用して頂くこ
とを勧めるところまで、フォローすべきです。
他工場とのベンチマーキングとその難しさを理解できていますか?
・ 「ベンチマーキング」は複数設備での比較もできますが、他工場に所在する同様の設備で
の比較が可能です。しかしその場合、生産品目などの条件が異なることが考えられるため、
補正係数等の検討が必要です。
■考えてほしい事例
省エネのターゲットとなる設備機器のエネルギー使用状況について、エネルギー費とは別の
指標で評価した結果を顧客に伝えていますか?
―――確認してみてください。
22
人材育成モデル 20Tips 20
センスウェア
評価基準
問題の可視化
『省エネコンサルの柔らかアタマ』
を問う
能力
常
識
知
性
さまざまな評価ツール・分析手法の活用
感
性
心
性
○
○
■ポイント
メーカー等が頒布している分析ツールを活用したことがありますか?
・ 空気圧システムや蒸気システムなどの専門メーカーは、各々の省エネデータ分析に活用で
きるさまざまな分析ツールを無料で提供しています。
・ 「餅は餅屋」であり、質の高い省エネ提案に有効活用することができます。
・ ただし、当該ツールを活用する際には、そのツールを活用するために必要な情報を顧客か
ら得ることが重要です。したがって、省エネ提案の際には、あらかじめ関連するデータを顧
客から得る必要があります。
「使えるツール」を見つけ出す能力がありますか?
・ 前述の例に関連しますが、顧客の省エネという観点でも問題解決を図るためには、分析の
引き出しをたくさん持つことが不可欠です。
・ そのためには、統計学など、エネルギーとは「別の」分野の知見も生かすなど、省エネ事業
推進技術者としての見識を幅広く持つことが求められます。
■考えてほしい事例
省エネ事業推進技術者として、普段どのような分析ツールを活用していますか?
―――「引き出し」の数を確認してみてください。
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