和文ダウンロード - 新日本有限責任監査法人

アナリティクスと
カスタマーエクスペリエ
ンスによる
顧客との信頼関係構築
序文
21世紀のテクノロジーによってもたらされた恩恵を、顧客は進んで利用しています。
顧客は購買の意思決定に必要な情報を以前とは比較にならないほど持っており、
簡単に他社に乗り換えられるため、企業にとって顧客のロイヤルティを維持すること
はこれまで以上に困難になっています。信頼を構築しそれを測定、管理するために、
チーフ・マーケティング・オフィサー(Chief Marketing Officer、以下「CMO」)は、
データやアナリティクスの力を利用する時代になっています。
Woody Driggs
究極の目標は顧客との関係や信頼の構築であるということをようやく理解し始めま
した。もはや製品やサービスの品質ではなく、企業は、成長性、収益性や効率性と
いったものでもありません。顧客は神様であり、顧客の体験こそ第一に考慮する必
要があります。
EY Advisory
グローバル・カスタマー・
プラクティスリーダー
顧客は、どんどん洗練されてきています。期待はさらに高まり、パーソナライズされ
た経験や、双方向のコミュニケーションを求めています。企業は、現状のデータとア
ナリティクスを活用して将来を予測し、顧客自身が気付く前に何を望んでいるかを知
る必要があります。
ビジネスでは、過去にあった出来事を分析するためにデータやアナリティクスを活用
することに意味があります。しかしそれ以上に、将来を予測するということに大きな
意味があります。より先進的なアプローチを取ることで、顧客を特定し、理解するた
めに価値のある洞察を導き出します。
Bruce Rogers
現在、二つのパラドックスがあることを認識する必要があります。一つは、カスタマー
エクスペリエンスの向上のため、マーケティング担当者はさまざまな事業部との協業
が必要であるということです。その責任はCMOに限定されるものではありません。信
頼の構築や喪失を防ぐためには、むしろ、エクスペリエンスのライフサイクルのさま
ざまな点において、複数の部門や事業部で責任を共有する必要があります。もう一
つは、モバイルデバイス、ソーシャルメディアや外部データの利用を、補完的な位置
付けではなく、標準的なものとすることが必要です。多くの企業に、顧客接点での価
値の重要性に対する認識が不足しており、オンラインプラットフォーム上で顧客の行
動を追跡している高い収益を挙げている企業に顧客を奪われています。
Forbes
チーフ・インサイト・
オフィサー
1
他社より先んじて、21世紀の顧客の期待に応えるため、目の前にある機会をつか
む時がきました。
はじめに
TVセット・トップ・ボックスと番組情報サービス提供企業、TiVoの
CMOであるIra Bahrは加入者数を数百万にするという大きな目標を
持っています。彼は、「我々の目的は、顧客の心理を読むことです。
私たちは、同じような感性を持つバーチャルな友人のようになること
を望んでいます。」 と述べています。TiVoでは、それはどんなテレ
ビ番組やコンテンツが望まれているかをユーザーより前に知ること
を意味します。そのために、顧客へのインサイトやアナリティクスに
よりパーソナライズな経験ができ、企業はユーザーを理解し、何を必
要とし、求め、また欲しているかを理解できるような信頼関係を構築
しています。
個人情報の漏えいや侵害に対する社会の関心が強まっている中、
顧客インサイト分析やアナリティクスは信頼関係の構築に活用する
ことができますし、またそうすべきです。大手ホテルチェーンのマー
ケティング部門のグローバル・バイス・プレジデントは、「ビッグデータ
は、個々のゲストにとってより身近でパーソナライズな経験を提供す
ることを可能にすることで、信頼の構築に役立っています。それは、
私たちが顧客のいうことに耳を傾けているということにもなります。」
と述べています。
今回、EYと Forbes Insightsは、企業が顧客との関係を管理するた
めにどのようにデータやアナリティクスを活用しているか、消費者が
簡単に比較し他社に乗り換えることができるデジタル環境が拡大して
いる世界でどのように顧客ロイヤルティを維持していくかといった課
題に対し、共同で調査を行いました。私たちは300名以上のエグゼク
ティブを対象に調査し、さまざまな産業の主要なマーケティングエグ
ゼクティブからインタビューにより定量的な情報を補足しています。
この調査は、多くの読者が現在興味を持っているであろう、以下の4
つの主要な課題について視点を提供しています。
►
企業は顧客をより深く理解するために、アナリティクスをどのよう
に活用するのか?
►
企業は顧客との長期にわたる信頼関係をどうやって構築できる
か?
►
企業は顧客が必要とすることを、押し付けがましくなくサポートす
るために、どうやって顧客データを活用することができるか?
►
マーケティング担当者は、「私たちはあなたを知っているし、あな
たのどんな決定にもお役に立ちたいと思っている。」 と顧客に
伝えるために、どうやってアナリティクスを一貫して活用すること
ができるか?
2
調査概要
マーケティング担当者やエグゼ
クティブは、顧客の信頼を高め
パーソナライズされた関係を構
築することに、データやアナリ
ティクスが重要であると認識し
ています。
大手ホテルチェーンのマーケティング部門のグローバル・バイス・プ
レジデントは、「私たちにとって、ゲストがもう少し情報を提供してく
れて、さまざまな会話をしてくれるようになることが重要なのです。
そうしてくれたゲストには、そのお礼として、ほんのわずかでもゲス
トにとって身近で、パーソナライズな何かを提供したいのです。」 と
述べています。同時に、企業がアナリティクスを戦略として受け入
れるには、他の戦略的目標と同じように、いくつかの困難がありま
す。企業のエグゼクティブは、顧客が現在そして将来において何を
望んでいるかを理解するためには、顧客接点のいくつかの点で改
善が必要であること、そして要望に応えて信頼関係を構築するため
には、顧客データを慎重に活用することが必要であることを認識し
ています。エグゼクティブは、あるべき将来像を想定しているもので
すが、同時にそれが実現するまでには時間がかかるということも理
解しています。
この調査報告のために行った分析により、現状と理想との差を説明
する5つの重要なインサイトが明らかになりました。多くの組織の上
級幹部が取るべき先進的なアプローチが示されています。
「ビッグデータは、個々のゲストにとっ
て身近で、よりパーソナライズな経験
を提供することで、信頼の構築に役
立っています。それは、私たちが顧客
の言うことに耳を傾けているということ
でもあります。」
大手ホテルチェーンのマーケティング部門のグローバル・
バイス・プレジデント
3
重要なインサイト
最高マーケティング責任者(CMO)の
多くは、顧客との信頼関係の構築は、
最重要事項であると考えています。
CMOの91%が、顧客との信頼関係の構築は、戦略的・競争的ビ
ジョンにおける重大なマーケティング課題であると感じています。
マーケティング担当者にとって、いまだにお客様は神様です。最新
のアナリティクスやデータの技術をすべて採用し活用することにより、
戦略的ビジョンにカスタマーエクスペリエンスを含めていると、CMO
の87%が述べています。
Ira Bahrによると、信頼は「優れた製品やサービスの副産物であり、
実績から生まれるものです。もし、あなたが常に優れた製品やサー
ビスを提供していれば、人々はあなたを信頼するでしょう。でも、あ
なたが誰かに、あなたを信頼してほしいと正面から伝えても、たぶ
んあなたの真意は伝わらないでしょう。」
「信頼は、優れた製品や
サービスの副産物であり、
行為から生まれるもので
ある。もし、あなたが常に
優れた製品やサービスを
提供していれば、人々は
あなたを信頼するでしょう。でも、あなた
が誰かにあなたを信頼してほしいと正
面から伝えても、たぶんあなたの真意
は伝わらないでしょう。」
Ira Bahr, TiVo, CMO
顧客はより洗練されてきています。彼らの期待はより高くなり、会社
との直接的な関係により、常に変化しています。「次世代の信頼構
築は、可能な限りパーソナライズな経験を提供することにより顧客と
の1対1の関係を育てていくことです。」 と、Citi Retail Servicesの
マネージング・ディレクターでありCMOのMolly McCombeは述べて
います。
企業は、データとアナリティクスが信頼の源になると見ています。同
時に、企業が収集した顧客データは、特別なものです。情報が安全
に管理され、正しく利用されているという信用の下に、顧客から提供
されているからです。Molly McCombeは、「私たちは、集めたデータ
は顧客との適切なコミュニケーションや商品・サービスを提供するた
めだけに利用することを、パートナー企業が、きちんと説明するため
のお手伝いをします。こうすることで、顧客に自身が情報を管理して
いるという感覚をもたらし、また、同意の上でパーソナライズしたアプ
ローチを通して、ブランドへの信頼を勝ち取ることに役立ちます。」と
述べています。
4
多くのCMOは、顧客の信頼がどこで
失われてしまうのかを理解するのに
苦労しています。顧客接点において
不愉快な経験に対処できているのは
約半数にすぎません。
信頼の喪失
所属する事業部や企業がカスタマー・ライフサイクルのどの時点
で信頼の喪失が起きるのかを把握している、と回答しているのは、
3分の1弱です。エグゼクティブによると、残された謎は、信頼を失
うことが企業のブランドにどのような影響をもたらすかということで
す。回答者の34%が、その点について“非常によく”理解している
としていますが、残りの3分の1は、なぜ顧客との関係がうまくい
かなくなったのかを理解しようとしているところです。
このような発見は、次のような疑問を提起します。なぜマーケティン
グ担当者は、顧客との接点やチャネルに投資をしているにもかか
わらず、信頼を生み出したり失ったりするポイントを理解するのが
難しいと感じているのでしょうか? そして、この問いからは、次の
ような疑問が浮かびます。マーケティング担当者は、顧客が興味を
持つものや望んでいるコミュニケーション方法に、投資できている
のでしょうか?
34%
30%
信頼の喪失がブランド価
値にどう影響するかをよ
く理解している。
信頼 が失 われ る カス タ
マーエクスペリエンスのタ
イミングを理解している。
エクゼクティブは、モバイルやソーシャルと比較して、
対面での顧客接点がより信頼できるとしています。
73% 60%
エグゼクティブは、モバイルやソーシャルコミュニケーショ
ンと比較して、対面での顧客接点がより信頼できるとして
います。
シニア・エグゼクティブは、対面営業が最も信頼できるとしており、
ほぼ4分の3(73%)が、うまくいっていると語っています。それに対
して、60%のエグゼクティブは、マーケティング戦略について説明
でき、モバイルについても適切な行動ができると語っています。特
にモバイルやデジタルの急激な普及や、今や消費者の多くが毎日
利用することとなったスマートフォンの普及を考えると、この割合は、
対面での顧客接点に関する回答に比べると低いと言えるでしょう。
例えば、モバイルクーポンなどのように、スマートフォン特有の機
能を活用した場合、26%のエグゼクティブがうまく対応できている
と回答したのに対し、19%がまったく対応しないと語っています。も
ちろん、モバイルクーポンより適切な他の選択肢を提供している企
業もあります。しなしながら、より一般的な洞察としては、顧客との
接点において、もっとモバイルを理解し計画することが重要である
と言えるでしょう。
対面営業
モバイルアプリ
68%
5
ソーシャルメディア
「信頼を得ようとするよりも、顧客にとって信頼が
意味することを提示すべきです。それには顧客に
一方的に話をするのでなく、対話をすることが重
要なのです。」
Molly McCombe
Citi Retail Services、マネージング・ディレクター、CMO
カスタマーインサイトの情報源
カスタマーインサイトを得るための情報源としてソーシャルメディアで
の交流を活用している企業は回答者の44%にすぎず、モバイル
データについても回答者の28%しか活用していません。68%の回
答者がマーケティング戦略がうまく機能しており、ソーシャルメディア
を活用していると回答しています。ここでの結論として、エグゼクティ
ブは信頼構築のための顧客接点として新しい方法を模索するよりは、
依然としてかなり旧来の方法に頼っていると言えます。
44%
28%
ソーシャルメディア
モバイルデータ
モバイルクーポンに対する評価
26%
19%
非常に有効
導入しない
全体として、エグゼクティブは新しいメディアと旧来のメディアの間で
板ばさみになっていると言えます。信頼とブランド価値を構築するこ
とは21世紀においては、よりソーシャルなモデルへ移行し、顧客接
点における双方向コミュニケーションの重要性を強調することを意味
します。それに加え、リアルタイム性は依然としてマーケティング担当
者にとってチャレンジです。たった51%の回答者しか、実際の顧客と
の接点における不愉快もしくはうまくいかなかったカスタマーエクスペ
リエンスに対処できていません。これらの迅速な軌道修正ができて
いる企業は、信頼構築やブランド価値の向上を得ることができるで
しょう。
「企業はインタラクションこそが重要だと認識し、信頼に基づき関係を
コントロールできる状態に顧客を誘導しなければなりません。信頼を
得ようとするよりも、顧客にとって信頼が意味することを提示すべき
です」と McCombeは述べています。「それには顧客に一方的に話を
するのではなく、対話をすることなのです。」
回答者のうち、
51%
だけが、顧客との接点
におけるネガティブなカ
スタマーエクスペリエン
スに対処できていると述
べています。
6
「昨日までビッグデータと言われて
いたものは、今日では単なるデー
タにすぎません。よりリッチなデー
タであっても。実際に変化している
のは、我々が得られる顧客像であ
り、日々進化しています。これがよ
り豊かなカスタマーエクスペリエン
スの創造を可能にしています。」
Ira Bahr, TiVo, CMO
多くのCMOは、データとアナリティクス
は信頼の構築と評価のための重要な
ツールだと述べています。
エグゼクティブは、手元にあるデータとアナリティクスを、顧客の理解
と信頼の構築のためにもっと活用することができるはずです。回答者
のうちわずか38%しか、カスタマーエクスペリエンスのライフサイク
ルにおいて信頼を喪失している場面の分析にアナリティクスを活用し
ていません。
しかしながら良い点としては、少なくとも回答者の半数は先進的なア
プローチを取っており、データを用いて顧客との信頼関係を構築する
能力が、向こう2年のうちに差別化要因として最重要なものになると
述べています。マーケティング担当者はまた、ブランド価値のバロ
メーターとしてアナリティクスの価値を見いだしています。約4分の3
の回答者が、顧客接点を通してブランドプロミス(ブランドの約束)が
守られているかどうかの確認にアナリティクスを活用していると回答
しています。
McCombeが指摘したように、顧客がショッピングにどのようなデバイ
スを用いているかを理解することは、カスタマーエクスペリエンスに
とって重要です。「小売業者のWebサイトからモバイルショッピングを
頻繁に行う顧客は、そのサイトがモバイルデバイスに十分適応し使
いやすいことを期待します。それが実現されていないということは、
小売業者が顧客の買い物の方法や、究極的には顧客そのものを理
解していないというシグナルを顧客に発していることになるのです。」
と彼女は述べています。
アナリティクスの実際の導入では、例えば顧客とのインタラクションに
おけるパーソナライズされたオファーの実現などについて、多くの企
業は後れを取っています。わずか52%の企業のみが、パーソナライ
ズされたオファーの提供を実現しています。これはパーソナライゼー
ションへの取組みが急速に進められていることを考慮すると意外な
数字かもしれません。約4分の1がこの分野での取組み強化を予定
していると回答しています。
7
B2Cビジネスに関して、Ira Bahrは次のように述べています。昨日
までビッグデータと言われていたものは、単なるデータにすぎませ
ん。よりリッチなデータになっていますが、実際に変化しているのは、
「我々が得られる顧客像であり、日々進化しています。」これがより
豊かなカスタマーエクスペリエンスの創造を可能にしています。「今
では、我々は特定の顧客がどの商品をどのようなデバイスで見て
いるかを知ることができます-多くは家庭からのモバイルアクセス
だったり、TVやモバイル機器の外出先での使用だったり-こういっ
た理解が、より豊かなカスタマーエクスペリエンスの実現に役立ち
ます。」
B2B企業のCMOにアドバイスする立場にある、テクノロジー企業の
シニア・バイス・プレジデントは、営業職員にとってどの顧客にどの
商品をいくらで勧めるべきかを知る方法はカスタマーインテリジェン
スをおいて他にはないと述べています。
信頼
52%
38%
52%
戦略的・競合的なビジョン
において顧客との信頼関
係が重要である。
カスタマーエクスペリエン
スのライフサイクルにお
いて、信頼を損ねている
箇所を特定するためにア
ナリティクスを活用すべき
である。
パーソナライズされたオ
ファーを顧客に提供して
いる。
8
ほとんどのエグゼクティブは、カス
タマーインサイトを深めるためにア
ナリティクスを活用したり、顧客行
動を理解するために社外データの
利用を拡大したりすることに、大き
な可能性があると信じています。
マーケティング担当者は顧客を理解していますが、もっと深く理解す
ることができるはずです。約4分の3は、購買行動や購買チャネルに
ついて顧客の好みやニーズを把握していると回答しました。商品や
サービスの特徴に関する好みやニーズも把握しているという回答が、
ほぼ同じ割合でした。一方で、約30%のエグゼクティブは、商品・
サービス提供部門よりも自社の能力について悲観的な回答をしてい
ます。顧客の購買力や価格感受性を把握することについても同様の
ことが言えます。
エグゼクティブは自社のアナリティクス活用能力ついてもっと深い理
解と強い自信を持たなければなりません。これは顧客をより深く理解
するためのステップとなります。3分の1強(37%)の企業が自社の能
力は業界の平均レベルであるとし、4分の1の企業がグローバルの先
進企業と同じレベルだと回答しています。アナリティクスを顧客とカス
タマーエクスペリエンスを理解するために活用するには、エグゼクティ
ブはトライ・アンド・エラーのアプローチを取る必要があります。37%
が、顧客とのコミュニケーションを個別化し、また接点を広げるための
アナリティクスの活用能力があると回答しています。これは、多くの
マーケティング担当エクゼクティブがマーケティングの次の大きなトレ
ンドがパーソナライゼーションであると回答していることから考えると、
低い割合だと言えます。
%
37
顧客とのコミュニケーションを個
別化し、また接点を広げるため
のアナリティクス活用の能力が
ある。
%
26
アナリティクス活用能力におい
てグローバルの先進企業と同
じレベルである。
9
%
69
カ ス タマ ーエクス ペリエン ス の
パーソナライゼーションへの取組
みを強化している。
エグゼクティブは、データや持っているツール全てを、カスタ
マーエクスペリエンスの向上に役立てたいと考えています。約
70%の回答者が、カスタマーエクスペリエンスを顧客の行動に
応じてパーソナライズすることに今以上に集中すべきだと回答
しています。しかしながら、そのようにデータをより高度な方法で
活用しようとすれば、やり方を変えなければなりません。CMOオ
フィスで遅れている取組みの一例が、セグメンテーションです。
いまだに顧客の分類を性別や年齢などの要素だけで行ってい
る場合があります。
約40%のエグゼクティブが6~12カ月後までには行う予定があ
るものの、現時点ではセグメンテーションを行っていないと回答
しています。約3分の1が顧客や商品・サービス、活動の分析に
いまだ先進的なアナリティクスを導入していないと回答していま
す。調査では、エグゼクティブがアナリティクスの流れに乗りた
いと望んでいることが明らかになりました。データに関する取組
みを強化する予定がないと答えた回答者は、ごくわずか(8%未
満)にすぎません。
リアルタイムアナリティクスが業界標準になるまでにはまだいく
つかの段階があります。デジタルチャネルを利用し、セグメン
テーションやコンテンツのパーソナライズ、自動メッセージ送信
を 活 用 し て い る エ グ ゼ ク テ ィ ブ は 50 % だ け で 、 3 分 の 1 強
(36%)が、ある程度は活用していると回答しました。
49%
36%
デジタルチャネルのデータ
を、セグメンテーションやコ
ンテンツのパーソナライズ、
自動メッセージ送信にかな
り活用している。
デジタルチャネルのデータ
を、セグメンテーションやコ
ンテンツのパーソナライズ、
自動メッセージ送信にある
程度活用している。
現時点では顧客セグメン
テーションや、商品、サー
ビスのカスタマイズを行っ
ていない。
37%
顧客や商品・サービス、活
動の分析にいまだ先進的
なアナリティクスを導入し
ていない 。
41%
10
マーケティング担当のエクゼクティブ
は、カスタマーエクスペリエンスを向上
するために、より幅広い事業部門とコ
ラボレーションしています。
11
カスタマーエクスペリエンスがマーケティング部門以外の部門とのコ
ラボレーションを必要とし、その責任も広範な部門にわたるという状
況に同意または強く同意している回答者は67%です。マーケティン
グにおけるデータとアナリティクスのより有効な活用は、マーケティ
ング担当者がカスタマーエクスペリエンスをコントロールするために
役立つでしょう。
同時に約20%が、マーケティング部門だけでカスタマーエクスペリ
エンスをコントロールできるかどうか、分からないと回答しています。
マーケティング部門だけでカスタマーエクスペリエンスのコントロー
ルが可能と考えているエグゼクティブは13%にすぎません。
カスタマーエクスペリエンスに関する責任はマーケティング部門のみでは管
理できず、広範な部門にわたる。
67
そう思う
%
20
%
分からない
13
%
そう思わない
12
自社の持つ貴重な顧客情報
とアナリティクスを活用して顧
客の信頼を勝ち取るために、
先進的な企業はどのような
アプローチを取っているので
しょう?
Spotlight 1
C360:ゲストをより深く理解して
もてなすためのデータ活用
「C360は、データを集約し、カスタマーインサイトを得るため
の包括的なグローバルデータベースであり、私たちのすべ
ての部門で利用しています」 と大手ホテルチェーンのマー
ケティング部門のグローバル・バイス・プレジデントは述べて
います。このシステムは、企業が顧客を理解すればするほ
ど、よりパーソナライズなサービスを提供でき、さらにリピー
ターの獲得につながるというシンプルな考えから成り立って
います。ダイレクトメールから客室エンターテインメントに至
るまで、すべてのコミュニケーションチャネルで、データベー
スから得られたカスタマーインサイトを利用しています。まさ
に、ビッグデータをスマートデータとして活用しています。
マーケティング部門のグローバル・バイス・プレジデントは、
ホテルチェーンを単なる接客業ではなく、ビッグデータやモ
バイル機器、ソーシャルメディア、アプリケーションを活用し、
すべてのホテルブランドのカスタマーエクスペリエンスを管
理するテクノロジー企業だと考えています。現状では、顧客
がオンラインでよく利用するFlyerTalkのようなSNS上で、存
在感を発揮することが重要なのです。
「私たちは、ダイレクトメールか
ら客室エンターテインメントに至
るまでのすべてのコミュニケー
ションチャネルで、データベース
から得られたカスタマーインサ
イトを利用しています。まさに、
ビッグデータをスマートデータと
して活用しています。」
大手ホテルチェーン マーケティング部門の
グローバル・バイス・プレジデント
14
Spotlight 2
“ビッグデータ”vs“リトルデータ”
予測モデルとマン・マシーン・アプ
ローチによる意思決定の改善
誰もがビッグデータについて話しますが、あるB2B企業の
CMOを支援するテクノロジー企業にとって重要な点は、むし
ろ“リトルデータ”です。これは、あるテクノロジー系グローバ
ル企業のシニア・バイス・プレジデント(以下「SVP」)も同様
に、価値ある情報は社内データの中に隠れていると言及し
ています。「通常のビジネス活動で集められた取引データに
最新の予測モデルを適用することで、企業は、もっと顧客を
理解でき、その結果、高い収益を挙げることができます。」
と彼は述べています。適切なモデルを使うことで、企業が
ソーシャルやモバイルを深く探求しなくても、価値のある深
いインサイトを得ることができるという教訓が得られます。予
測モデルは、ビジネス上の意思決定にデータを活用する上
で、より効果的な方法とも言えます。彼から営業やマーケ
ティングの前線で働く社員に対してのアドバイスは、顧客
データとそれについてのインサイトを持つことです。それに
より最も効率的な方法で、可能な限り有意義で生産的な対
話をすることができるのです。「このマン・マシーン、または
専門家・モデルタイプのアプローチは、意思決定・収益改善
のためにデータからインサイトを得る方法なのです。」 と、
述べています。
15
「最新の予測モデルを通常のビジ
ネス活動で集められた取引データ
に適用することで、企業は、もっと
顧客を理解でき、その結果、高い
収益性を挙げることができます。」
テクノロジー系グローバル企業の
シニア・バイス・プレジデント
「リアルタイムはマーケティング担
当者が目指している未来です。」
コンピューター・セキュリティ・ソフトウェア系
グローバル企業のCMO
Spotlight 3
リアルタイムアナリティクス:
パターンを見分ける
「リアルタイムはマーケティング担当者が目指している未来
です。」 と、コンピューター・セキュリティ・ソフトウェア系グ
ローバル企業のCMOは述べています。彼女は、数年先に
はリアルタイムマーケティングが即座にパターンを認識する
ことを予想しています。もしある顧客が何らかの行動をする
と、マーケティング担当者はその行動をもっと早く特定して、
顧客に対しよりパーソナライズな商品やサービスを提供で
きるようになるでしょう。ソフトウェア製品のレビューを閲覧
するためにオンラインにアクセスし、SNS上でその製品に
対する意見や評価を見ている顧客に、ソフトウェアが自動
で製品を勧めるようになるのです。 「現在では人の手によ
る介入がありますが、今後より自動化が進むでしょう。」 と
彼女は予測しています。B2B企業のCMOをクライアントと
するテクノロジー企業のシニア・バイス・プレジデントも同様
に、顧客の嗜好の予測に、リアルタイムでパターン認識し
予測するソフトウェアが将来広く利用されると考えています。
「数年前までは、企業は、データ・アナリティクス・ツールを
主に過去に対して適用していて、何が起きたかを知らせる
だけのものでした。」 と述べています。
16
「ビッグデータは、ただの“データ”で
す。データに生命を吹き込み、価値を
生み出すのは、顧客との対話を生み、
インタラクションを増やすことができる
能力です。それができている企業は
単に大量のデータを持っているので
はなく、“生きたデータ”を持っている
のです。」
Molly McCombe、Citi Retail Services、
マネージングディレクター、CMO
結論
「ビッグデータは、だたの“データ”です。データに生命を吹き込み、
価値を生み出すのは、その顧客との対話を生み、インタラクション
を増やすことができる能力です。それができている企業は単に大
量のデータを持っているのではなく、“生きたデータ”を持っている
のです。」 とMolly McCombeは述べています。消費者は、購買
活動や消費パターンにおける21世紀のテクノロジーとの結合をよ
り深めており、ブランドや購入への期待を高めています。そのため、
彼らは常にその点で抜きんでる企業を探しています。
エクゼクティブにとって、データとアナリティクスの活用は、ようやく
幼年期を過ぎて思春期に差し掛かってきたところです。顧客の理
解とターゲティングに、より洗練されたアナリティクスをもっと幅広く
活用することができるでしょう。
モバイルと、モバイルほどではないにしろソーシャルメディアを使い
こなしている企業は、まだ少数派です。価値が認められ、重要な情
報を持ち、潜在的なインサイトを含んでいても、これらの活用はま
だ限定的です。一方、この分野での成功企業は、パーソナライズ
マーケティングの戦略に沿って、オンラインプラットフォームを横断
して顧客の行動を追跡しています。
例えば、この調査でインタビューしたあるソフトウェア系グローバル
企業のCMOは、ウェブサイトへアクセスする月間数百万のユニー
クビジターをどのように分析するかを説明してくれました。各インプ
レッション(表示回数)は、顧客がウェブサイトで何を見てどう行動
したかに関する有用なデータを含んでいるものとみなされます。企
業はそのデータを活用して、特定の顧客に特定のタイミングで、説
得力のある商品やメッセージを届けます。「そうして、ユーザーがモ
バイルフォン、タブレットやPCにソフトウェアをインストールしたかど
うかを確認するのです。」 と彼女は述べています。
17
全体として、顧客との主なタッチポイントは、デジタル時代以前と変
わっていないことが明らかになっています。61%の回答者が顧客
と対話するのは営業員であると述べています。ここでのインサイト
は、主要なチャネルである営業員への投資に加えて、モバイルの
ような急成長の分野でどう補完していくかをエクゼクティブは考える
べきだということです。
さらに、エグゼクティブは、営業員やマーケティングチームがより
パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供できるよう
に、データやアナリティクスの活用を推進すべきです。これらは、あ
るテクノロジー企業のシニア・バイス・プレジデントが指摘したよう
に、営業員が、顧客の購入意向やブランドスイッチのタイミング、適
正な価格などについて理解することを助けます。言い換えると、ア
ナリティクスとマーケティングとデジタルの統合が、信頼を構築し、
ブランド価値を高めるための鍵なのです。
消費者は、購買行動や消費パターンにお
ける21世紀のテクノロジーとの結合をより
深めており、ブランドや購入への期待を高
めています。そのため、彼らは常にその点
で抜きんでる企業を探しています。
調査手法
この調査は300を超える回答に基づいています。52%
の 回答 者は 、売上 高 10億 ドル以 上で 従業員 数が
1,000人以上(21%は5万人以上)の企業に所属して
います。
約半分の回答者は経営幹部であり、財務(13%)、経
営(17%)、IT(20%)、マーケティング(49%)、戦略
(1%)の分野におけるエクゼクティブです。
Contacts
EY
Forbes
Woody Driggs
Hannah Seligson
Principal and Global Lead of the Customer Practice
EY Advisory
Report Author
Kristen Vennum
Kasia Moreno
Principal
EY Advisory
Editorial Director
Tarun Chadha
Ross Gagnon
Executive Director, Experience Led Transformation Lead
EY Advisory
Research Director
Christer Johnson
Bruce Rogers
Principal and Advanced Analytics Lead
EY Advisory
Chief Insights Officer
Sylvain Maquet
Senior Manager, Customer Practice
EY Advisory
Lisa Mukherjee
Manager, Customer Practice
EY Advisory
EY Japan
お問い合わせ先 E-mail : [email protected]
野村 昌信
Executive Director, Customer Practice Lead
EY Financial Service Advisory Co., Ltd.
吉本 司
Partner, Customer Practice Lead
EY Advisory Co., Ltd.
清水 健一郎
Principal, Analytics Lead, Advisory Services
Ernst & Young ShinNihon LLC
Kevin Hensel
Senior Manager, Analytics Lead, Financial Services Advisory
Ernst & Young ShinNihon LLC
18
EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory
EYについて
EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの
分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービ
スは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさま
ざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出
していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のた
めに、より良い社会の構築に貢献します。
EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワーク
であり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独
立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有
限責任会 社であり、顧客サ ービス は提供 していません。詳しくは、ey.comをご 覧
ください。
EY Japanについて
EY Japanは、EYの日本におけるメンバーファームの総称です。新日本有
限責任監査法人、EY税理士法人、EYトランザクション・アドバイザリー・
サービス株式会社、EYアドバイザリー株式会社などの13法人から構成さ
れており、各メンバーファームは法的に独立した法人です。詳しくは
eyjapan.jpをご覧ください。
© 2016 Ernst & Young ShinNihon LLC.
All Rights Reserved.
ED None
本書は一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務およびその他の専門的な
アドバイスを行うものではありません。新日本有限責任監査法人および他のEYメンバーファームは、
皆様が本書を利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。具体的
なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。
本書はEHG no. BT0517の翻訳版です。