白門の由来 「創造的批判精神に基づく実学教育の伝統」

 「創造的批判精神に基づく実学教育の伝統」
中央大学は、1 8 8 5 年に英吉利法律学校とし
たとえば、社会的ニーズの高いテーマのもと
見の共有を図っており、拠点を開設することで、
て創立されました。創立に携わった若き法律家
に課題発見・問題解決型の学際的・学部横断的
よりいっそう、教育・研究・社会貢献活動を活
18人は、当時国内で主流だったフランス法では
教育を実施する
「FLP(ファカルティリンケージ・
発に展開しています。
なく、実社会と密接に結びついたイギリス流の
プログラム)
」などは、ディシプリンごとの学部
2 0 1 5 年、本学は創設1 3 0 周年を迎えました
経験主義、合理主義を基礎とした法律を学ぶこ
を単位としたわが国の大学教育のあり方に風穴
が、
これを機に2016年度を起点とする2025年
とこそが、わが国の司法制度の確立と近代化を
を開ける先駆的実験として、すでに1 0 年以上
度までの1 0 年間に重点的に取り組むべき課題を
達成するために必要であるとの考えに立ち、
「實
の歴史をもっています。また、民間企業だけで
中 央 大 学中長 期事 業計画「Chuo Vision 2025」
地應用ノ素ヲ養フ」
を建学の精神に掲げ、本学を
はなく、官公庁、法律事務所、国際関係機関等
として策定しました。新学部の創設、キャンパ
創設しました。時代におもねることのない創造
を実施先にして展開されているアカデミック・
ス整備、グローバル化の推進、スポーツ振興が
的批判精神に基づく実学教育は、本学のゆるぎ
インターンシップなども、全国の大学に先駆け
大きな柱です。本学は2 0 2 5 年の創立1 4 0 周年
ない伝統となり、本学はこれによってわが国大
て行われている実学教育の一つとして数えるこ
に向けて改革を推進し、世界に存在感のある大
学界のリード役となり、その社会的使命を果た
とができるでしょう。
学をめざします。
して参りました。
また、世界3 3 の国と地域、1 7 0 大学・研究
このような研究教育をめぐる施設整備も制度
今日中央大学は、こうした実学の伝統を具現
所と世界に広がるネットワークを持つ本学は、
の再設計も、学生と教職員だけでなく、本学の
化すべく、6 学部、大学院8 研究科、専門職大
国際連携推進の重点となる地域・国を
「環太平洋
卒業生や在学生のご父母との繋がり、多くの皆
学院3 研究科、4 附属高等学校、2 附属中学校、
地域」
として、組織体制、教育基盤および国内外
さまのご理解とご協力なしには推進することは
9 研究所を擁する総合大学、総合学園として、
のネットワークの整備に注力しています。これ
できません。私は、これまでの良き伝統を守り
多様な学問研究と幅広い実践的な教育に邁進し
に基づき、海外拠点としてハワイ大学マノア校
つつ
「オール中央」の体制を再構築し、新たな世
ています。現在、時代の要請に応え、実地応用
のほか、ASEAN 地域の中心に位置するタイのタ
紀において、創造的批判精神に基づく実学教育
の精神で人材を育成する校風は
「行動する知性。
マサート大学に海外拠点
「中央大学・タマサート
の伝統を継承し、いっそうの発展をめざして努
- Knowledge into Action - 」と い う ユ ニ バ ー
大学コラボレーションセンター」を設置しまし
力して参りたいと思います。
ティメッセージに受け継がれ実践されています。
た。現在、本学はタイにおいて多様な交流と知
はくもん
白門の由来
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中央大学を象徴して「白門」ということがあります。明
高い志をもった青年達が数多く集い、研鑽しあい、学窓
生のなかには私学出身者としてはじめて法学博士とな
治維新の余韻が残る 1 8 8 5(明治 1 8)年、1 8 人の若き
を巣立っていきました。昭和初年(1 9 2 0 年代)には、学
り、のちに「花の弁論」と謳われた弁護士の花井卓蔵や、
法律家達が「實地應用ノ素ヲ養フ」ことを旗印に、中央大
生歌に「白門」ということばがあらわれています。史実で
1 9 4 5(昭和 2 0)年、戦争が激しさを増すなか、身命を
学の前身である英吉利法律学校を創設しました。彼らは、
確認できる「白門」の初出です。作詞者は、後年、白色は
賭して翼賛選挙無効判決を下した大審院判事吉田久、ま
1950年宮城県生まれ。1973年中央大学商学部卒、1981年同大学院商学研究科博
当時国内で主流だったフランス法ではなく、実社会と密
徽章の白から、門は当時他大学でも言われた門を組み合
た戦前戦後を通じ一貫して国家主義を批判し自由主義思
士後期課程満期退学、1992年中央大学商学部教授、2003年中央大学商学部長、
接に結びついた英米法を学ぶことこそが、わが国の司法
わせたものと語っています。同時期、応援団が作った応
想に基づいて言論活動を続けた長谷川如是閑など、優れ
2005年学校法人中央大学理事、2013年中央大学全学連携教育機構長、2013年中
制度の確立と近代化を達成するために役立つと考え、英
援の小旗は「潔白を示す白で CHUO と染めた」とありま
た見識のある法曹家やジャーナリストとして歴史にその
央大学学友会副会長。2014年より現職。その他、英バーミンガム大学上級客員研
吉利法律学校での教育を通じて近代社会にふさわしい人
す。また、同窓会が白門会を名乗るようになっていくの
名をとどめた者も少なくありません。1 3 0 年を超える
究員(元)、比較経営学会(現・日本比較経営学会)理事長(元)、現在(中国・
材を育成しようとしたのです。新進気鋭の講師達による
もこの時期です。大学が公式に「白門」ということばを
歴史のなかで培われてきた批判精神を忘れない自由な学
北京)対外経済貿易大学客員教授、日本経済学会連合評議員、アジア経営学会評
熱心な講義、実学を重んじた教育を特色とする本学には、
使ったのは通信教育部の機関誌『白門』(1 9 4 9 年創刊)
風は、「白門」ということばとともに今も中央大学のなか
議員、Contemporary Asian Economy Research 誌国際編集委員など。専攻は比較
将来法律家として社会の正義・公正を実現しようという
が最初で、翌年には校歌の歌詞に登場しています。卒業
に確かに息づいています。
経済・経営論。
さ か い
総長・学長 酒
しょうざぶろう
井 正 三 郎
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