復習編 - Z会

TC1011HL1K1BA-001
復習編見本
小論文実践 テーマ型
セレクトシリーズ
社会について
近年、国民の間にさまざまな格差が生まれ、それが拡大しているといった指摘がさかんになされるようになった。
「格差社会」
「勝ち組/負け組」「下流社会」「不平等社会」などの言葉も生まれている。
あなたは、この「広がる格差」の問題についてどう思うか。具体的な問題点を取り上げ、その解決策を提示しなさ
い。字数は六〇〇字以内とする。
出題のねらい
出題の意図は、〈格差の拡大〉という問題を通して、日本社会の現状をみなさんなりに考察してもらうところにある。
階級意識の強い欧米各国や、古来の身分制度(カースト)が現在も続くインドなどと異なり、戦後の日本社会で
は、平等、つまり横ならびの意識が強かった。一九六〇~七〇年代では、国民の実に九割までが自分の生活レベルは
中流であると考えており、「一億総中流社会」ということばまで生まれる。だが、九〇年代はじめにバブル経済が終
わりを告げて以降、
「格差社会」「勝ち組・負け組」「不平等社会」といったことばがメディアをにぎわすようになった。
これはすなわち中流意識の崩壊を意味する。
この問題にはさまざまな側面があり、原因も多様だ。しかも他の社会問題と密接にかかわっており、単独の問題と
してとらえることはできない。したがって、格差の問題を考えることで、高齢化・少子化・晩婚化/パラサイトシン
グル・雇用対策・若者の人生観の多様化といった、日本の社会が現在抱えるさまざまな問題にも、自然と考察を広げ
ることになるのである。
みなさんもやがて、社会へ飛び出していくときが来るだろう。そのときに、もしも景気が悪かったら……。おそら
く、働きたい、あるいは働かねばならないのに思うように就職が決まらない、職が得られないという状況に直面する
ことになるかもしれない。だからこそ、これをけっして大人の社会の問題だ、大人が考えることだ、などとのんびり
構えてはいられないのである。ぜひいろいろな観点から検討してもらいたい。
TC1011HL1K1BA-002
理解のための材料を集める
童が、この制度によって学用品や給食費の援助を受けながら就学してい
るという。夏休みの間は給食が食べられないため、新学期にはきまって
体重が減っている子、数式などを小さな字で隅から書き詰め、ノートを
節約する子など、いまの日本に本当にそんな子がいるのかと疑いたくな
るようなショッキングな実状が報告されている。
なお、「文藝春秋」「月刊現代」「論座」といった月刊誌は図書館に置
かれていることが多いので、読みたいと思ったら、まず近くの図書館に
問い合わせてみるとよいだろう。
攻略の第一歩は、まず分析からである。さまざまな手段を用いて、集
められるだけの情報を集め、まずはテーマの理解につとめよう。
格差社会に関係する世の中の最新の動き・出来事・調査結果などを把
▽新聞・テレビから
格差社会についての全体像をつかむには、このテーマを扱った本や雑
握するなら、新聞やテレビがよい。速報性があるし、また、思いがけな
▽本・雑誌から
誌を読んでみるのが手っ取り早い。格差社会とはなにか、どんな議論が
い情報を得ることができるからだ。
議で二〇〇五年度のものづくり白書を了承したというニュースで、とも
こんな記事があった。「ものづくり白書
政府、閣議で了承」。政府が閣
たとえば、二〇〇六年六月一〇日の朝日新聞(朝刊)には、経済面に
な さ れ て い る の か と い っ た こ と が、 専 門 家 た ち の 対 談 や 作 家 の ル ポ ル
タージュなどを通して報告されている。
本については「参考図書」で紹介しているので、ここでは雑誌をピッ
クアップしてみよう。
打ち、格差社会についての特集を組んでいた。この特集は、格差社会の
・全国の製造業約四三〇社にアンケートしたところ、アルバイトなど非
問題にかかわる興味深い内容が書かれていたのである。
すると見過ごしてしまいそうな小さな記事なのだが、そこに、格差社会
頂点である「平成ニューリッチ」と、その逆の層をなす「下層社会」に
正社員の三八%が今働く勤務先で正社員になることを望んでいるが、
「文藝春秋」の二〇〇六年四月号(文藝春秋社)では、「大論争」と銘
切り込んだルポルタージュそれぞれ一本に加えて、新進気鋭の研究者や
・正社員向けに能力講習などを行う企業は半数以上あるのに、非正社員
正社員登用制度がある企業は四四%にとどまる。
改革に棄てられた家
——
評論家四人による座談会から構成されている。その中から、ノンフィク
ション作家・佐野眞一氏による「ルポ下層社会
この記事から着想を得た小論文の例を「解答例1」に示した。記事の
向けに行っている企業は二割程度に過ぎない。
経済的な理由で就学が困難な子供の保護者が受けることのできる「就
内容を、論点を決める手がかりにし、そこから思考を展開したものであ
族を見よ」を紹介しよう。
学援助」という制度がある。東京都足立区では、およそ四人に一人の児
TC1011HL1K1BA-003
る。これについては、あとの項で改めて説明することにする。
▽インターネットで
インターネットも新聞やテレビと同様に新しい情報を得るのに役立つ
格差があることになるそうだ。
理解したことを整理する
いちべつ
情報は、ただ集めて読むだけでは、消化したことにはならない。すな
し直す作業が必要になる。具体的には、
が、さらに、新聞・テレビではなかなか知ることのできないようなこと
国会で格差の問題が問われたとき、当時首相であった小泉純一郎氏は、
格差社会の定義・格差社会の構造・議
わち理解して論じるまでにはいたらないのである。引き出しの中をどこ
ジニ係数を引き合いに出して、
「格差が大きい高齢者の層や所得が少な
論の状況・他の社会問題との関連など
所得・賃金・資産・地域等
を知ったり、また、手軽に調べものをしたりすることができる。読者登
い核家族・単身世帯が増加したことによって格差が広がっているように
の項目(見出し)を自分なりにたて、
成 し た も の で あ る。 ひ と 口 に「 格 差 」
経済的格差
に何があるかわかるように整理整頓するのと同様に、一瞥して中身が分
見えるだけ。つまり、格差拡大は見かけ上の現象だ」と説明して、野党
そこに情報を振り分けていったり、自
といっても、それには、所得・雇用機
雇用・正社員登用・能力開発
録をすると、登録時に記入したメールアドレス宛に読み物が配信されて
側の追及をかわした。そしてその後、自身が発行するメールマガジンを
分なりに考えた図やメモを入れ込んで
ところで、こうした一連の見解の拠り所となった「ジニ係数」とはな
会・資産・労働意欲・地域間等々さま
労働・就業・自己開発
かるよう、集めた情報を体系的に整理
通して、
いくとよい。その具体例を一つ紹介し
んだろう。たとえば「グーグル」という検索エンジンを利用するとしよ
ざまな面がある。それらをグループ分
B.機会格差
くるメールマガジンというものもある。
・格差は悪いことではない
よう。
下記の図は、出題者が得た情報から
・成功者をねたんだり、能力のあるものの足を引っ張るような風潮は慎
まねば
う。
「ジニ係数とは」と検索欄に入力して「 I'm feeling lucky
」のアイ
コンをクリックすれば、たちまち答えが示される。ジニ係数とは所得格
けし、さらに各グループの関係を示し
格差の構造を自分なりに整理して、作
差を表す代表的な指標で、格差がない完全に平等な集団では〇となり、
た。
といった発言をしている。
値が一に近いほど格差は大きくなる。たとえば、平均所得が五〇〇万円
でジニ係数が〇・四の集団では、二〇〇万円(五〇〇万円の四〇%)の
A.意欲格差
TC1011HL1K1BA-004
小論文の方向性(=論点)を決める
さて、いよいよ論述の具体的な作業に入る。
B.機会格差
(雇用・正社員登用・能力開発等)
バ ブ ル の 崩 壊 以 降、 不 況 を 乗 り 切
出題者が作成したメモには、「機会格差」の円のすぐ横に、先に紹介
A.意欲格差
(労働・就業・自己開発等)
・競争社会から逃避する若者
る対策として企業は雇用を控えた。
てある。出題者は、「機会格差」→「経済的格差」という図式とこの記
した二〇〇六年六月一〇日付朝日新聞(朝刊)の記事の内容が書き入れ
求職者(無職の人)
・非正規雇用者
事に注目した。
である。
さ
な様相を呈してくるだろう。こうした思考をまとめたのが「解答例1」
く可能性も否定できないのだ。もしそうなると、格差の問題はどのよう
たないということである。つまり、この状況がこのままずっと続いてい
ば、これは「機会格差」→「経済的格差」の図式が改善されるめどが立
れるのか見通しは立っていないということを示唆している。言い換えれ
し
の、企業の雇用は相変わらず抑えられたままで、この状況がいつ改善さ
かに多いかということ、また、景気は回復しているといわれているもの
記事は、働く意欲が十分にあるのにその機会が与えられない人々がい
(アルバイトや派遣で働く人)と
↓
・労働意欲や自己開発意欲が乏
しい若者
⇔
・学生起業家
い っ た 就 業 機 会 に 恵 ま れ な い 人 が、
求 職 者・ 非 正 規 雇 用 者 と 正 規 雇 用
↓
「 仕 事 」 に 対 す る 意 欲 の 格 差 が 社会問題になるほど増加した。
みられる。
↓
経 済 的 格 差 は、 雇 用 等 の「 機 会 」
↓
資産に格差が生まれる。
労 働 に 対 す る 意 欲 の 欠 け る 人 と、されて働く人とでは、所得や賃金・
意 欲 的 な 人 と で は、 所 得 や 資 産
に格差が生まれる。
↓
経済的格差は、
「意欲」の格差に をめぐる格差に起因する。
う す る と、 格 差 の 問 題 を 文 字 通 り「 俯 瞰( 高 い と こ ろ か ら 一 望 す る こ
注意しながら各項目を配置し、それぞれ箇条書きに要点をまとめた。こ
格差について整理した図を紙の真ん中に描き、その周りに相互の関連に
モは、一枚の紙にコンパクトにまとめるとよいだろう。出題者の場合は、
めることで、ようやく論述のスタート地点に立てる。なお、これらのメ
こうした作業を通じて〈格差社会〉というテーマについての理解を深
ね上がったままの完全失業率が続いている様な現状を考えると、格差拡
呼 ば れ る 人 た ち が 出 現 し、 そ の 一 方 で、 バ ブ ル 終 焉 期 の 二 倍 以 上 に 跳
自適の生活を送っているリタイヤシニアなどの「平成ニューリッチ」と
は見かけに過ぎないと主張した。だが、IT長者や、定年退職して悠悠
内閣府と小泉首相はジニ係数を論拠にして、指摘されている格差の拡大
格差の有無(=格差の拡大を認めるか認めないか)の論争に着目した。
という、当時首相であった小泉氏の国会答弁が引き金となって起こった、
一方、
「解答例2」では、
「格差は言われているほど広がってはいない」
と)
」でき、格差問題のどんな点に着目するかを考える際にたいへん役
大を単なる見かけの問題として片付けるわけにはいかないだろう。少な
起因する。
立つ。
TC1011HL1K1BA-005
くとも、
「一億総中流社会」といったことばが生まれるほど横ならびを
重んじていた戦後の日本社会が、これまで経験したことのないような状
況である。だからこそこれほど問題視されているのだ、という言い方が
できるだろうと考えた。そこで、格差はたしかに拡大しているというこ
アメリカ・メジャーリーグに見る「格差」
世界に数あるプロのチームスポーツの中でも、選手たちの年俸が高額
とを前提にし、それはよいことなのか、あるいは悪いことなのかを考え
てみる。競争意識が社会に活力をもたらすならば、ある程度の格差は必
な こ と で 知 ら れ て い る の が、 ア メ リ カ の メ ジ ャ ー リ ー グ ベ ー ス ボ ー ル
ていねん
要である。だが逆に、格差が大きすぎては下の層が諦念を抱き、意欲を
(MLB)。個人の年俸が大きく異なるのはもちろん、チーム間にも「格
差」は存在している。
失ってしまう恐れもある。したがって、論じるべきは、格差の是非では
なくそのあり方だ。
「解答例2」は、ここから思考を展開させた。
松 井 秀 喜 選 手 の ほ か、 球 界 一 の 高 給 取 り で あ る ア レ ッ ク ス・ ロ ド リ
ゲ ス や デ レ ク・ ジ ー タ ー な ど、 メ ジ ャ ー を 代 表 す る ス タ ー プ レ ー ヤ ー
が 所 属 す る ニ ュ ー ヨ ー ク・ ヤ ン キ ー ス の 二 〇 〇 六 年 の 年 俸 総 額 は な ん
と 一 億 九 八 七 〇 万 ド ル( 約 二 三 五 億 円 )
。これは二位以下を大きく引
き 離 し て 一 位 だ と い う。 一 方、 年 俸 総 額 が も っ と も 低 い の が 一 九 九 三
年 に 創 立 さ れ た フ ロ リ ダ・ マ ー リ ン ズ。 そ の 額 は 一 五 〇 〇 万 ド ル( 約
一七億六〇〇〇万円)弱で、実にヤンキースの十三分の一以下である。
これほど年俸が違えば、実力にも天と地ほどの差がありそうなものだ
が、現実にはヤンキースは毎年優勝しているわけではない。日本のプロ
野球にも同じような格差は見られるが、お金をかければ必ず勝てるとは
限らないのがスポーツの面白さだろう。
ただ、年俸ほど実力に差がつかないのは、MLB機構の工夫によると
こ ろ も 大 き い。 た と え ば、 年 俸 総 額 が 極 端 に 高 い 球 団 は、 機 構 に 対 し
ほ てん
て「 ぜ い た く 税 」 な る も の を 支 払 わ な け れ ば な ら ず、 そ れ が 年 俸 総 額
の 低 い 球 団 に 補 填 さ れ る 仕 組 み に な っ て い る( ち な み に ヤ ン キ ー ス の
二〇〇六年のぜいたく税は二五億円以上!)。全国中継のTV放映権も、
TC1011HL1K1BA-006
に分配。さらに、新人選手を獲得するドラフト制度も、前年度の下位球
機構が一括してテレビ局と契約し、放送試合数も中継料も各球団に平等
い、高い戦力を維持できるのだ。
重視されない点に注目して選手を獲得するために、低い年俸で選手を雇
備に左右されるため重視しない。このように、旧来の野球の価値観では
い成績を残せなければ、ファンはもっと離れ、球団経営は苦しくなって
ネスとしてとらえすぎ」という批判もあるだろう。しかし、チームがよ
こうしたやり方には「ファンが選手に愛着を感じない」
「野球をビジ
団から優先的に有望な選手を指名できる。これらの制度によって、ML
Bの戦力は均衡を保っているのである。
資金力が勝敗を決めるとはかぎらない
を保っているチームもある。オークランド・アスレチックスの年俸総額
チームが倒す。これも、メジャーリーグの野球を見る上でのひとつの醍
大金でスター選手をかき集めるチームを、少ない資金で戦力を整えた
しまう。そう考えれば、これは最善の策ともいえる。
は、例年ヤンキースの半分以下だが、グラウンドの上では毎年のように
醐味といえるかもしれない。
こうしたMLB全体の制度とは別に、独自の球団経営で毎年高い戦力
優勝争いを演じている。球団経営をテーマにしたノンフィクション『マ
ネー・ボール』によると、貧乏球団ともいえるアスレチックスが強さを
維持できる秘密は、球団経営の責任者であるゼネラルマネージャー、ビ
俸は高くない)を組み合わせてチームを編成。それで若手が順調に育て
い若手選手を獲得する。そこにピークを過ぎたベテラン選手(彼らも年
氏は、選手の年俸が高くなるとトレードで放出し、代わりに実績の少な
このチームにはスター選手が少ない。人件費がかさむからだ。ビーン
▽「中央公論」編集部編『論争/中流崩壊』
(中公新書ラクレ 二〇〇一
に強まっていると指摘する。
く人々が知識エリートという階層を相続していく傾向が現代日本では戦前以上
年 ) 筆者は社会調査を綿密に解析し、そこから、専門職や企業の管理職につ
▽佐藤俊樹『不平等社会日本 さよなら総中流』
(中公新書 二〇〇〇
リー・ビーン氏のユニークな戦略にあるという。
ば、人件費を抑えながらよい成績を残すことが可能になるというわけだ。
徹底的に分析した。その考え方によれば、たとえばバッターには、打率
らない競技」と定義し、統計学的な考えに基づいて勝率を上げる方法を
年 ) 「 下 流 」 と は、 働 か な く て も ラ ク に 過 ご せ る か ら 働 か な い 人。 働 い て も
▽三浦展『下流社会 新たな階層集団の出現』
(光文社新書 二〇〇五
文を集めている。格差社会問題の理解に役立つ一冊。
年 ) 二〇〇〇年に発表された「中流崩壊」をめぐる論文の中から、主要な論
よりもフォアボールを含めた出塁率の高さを求める。十回の打席で三本
ラクにならない下層とは異なるとし、こうした下流意識がいまの若者(=団塊
また、ビーン氏は、野球を「二十七個のアウトを取られるまでは終わ
のヒットを打つ選手より、ヒットは一本でもフォアボールを四回選んで
ジュニアと呼ばれている)に蔓延していると説明している。視点がユニークで
あつし
出塁する選手を評価するのだ。ピッチャーに関しては、確実にアウトが
ある。
まんえん
奪える三振を重んじる一方、勝利数は他のピッチャーの援護や味方の守
TC1011HL1K1BA-007
■解答例1について■
解説で示した図のうち、
「機会格差→経済
解
答
例
■解答例1■
所得格差はなぜ生まれるのか。それは、所得を得る機会、つまり就業の機会にそもそも
の格差があるからだろう。昨今、フリーターやニートの増加が社会問題となっている。い
まの若者は働く意欲に欠けるとの批判の声も多いが、原因は若者の就業に対する意識の変
的格差」に焦点をあてた。
[序論]
化だけにあるのではない。長引く不況のため、企業が正規の雇用を控え、就職がかなりの
狭き門となっていることもまた大きい。
「機会格差」をとりあげることを表明し、
その格差が、当事者の意識と同時に社会の
このまま企業の正規雇用が制限される状
[本論]
ある。したがって、子供が、進学し高等教育を受ける機会を得るのはまず無理だろう。と
ず難しい。また、結婚したとしても、子供の養育費をわずかな収入でまかなうのは困難で
を重ねていくとどうなるだろう。収入が十分でないために、結婚して家庭を築くことはま
もし、フリーターやニートたちがこのまま正規雇用や就業の機会に恵まれないまま年齢
況がつづくと、フリーターやニートの増加
なると、その子供が、高い賃金を得られるような職には就くことはほとんど不可能である。
状況に起因することを指摘する。
は将来的にどのような問題を生み出してい
そのような職には高い知識が求められるため、高学歴者の中から採用されることが多いか
らだ。つまり、非正規雇用者の家庭では、その子もまた正規雇用のレールに乗れない可能
くかをシミュレートする。
[結論]
性が高い。このまま正規雇用枠が抑えられる状態が続けば、経済的な格差が世代をまたい
(一行二〇字詰換算六〇〇字)
このような格差スパイラルともいうべき事態に陥らないよう、機会が均等に与えられる
で固定化し、再生産され続けてしまうおそれがあるのである。
本 論 で 導 き 出 し た 懸 念 が 現 実 の も の と
ならないよう、いまやるべきことを述べて、
結びとする。
ための対策を早急にとるべきだと思う。
TC1011HL1K1BA-008
■解答例2について■
「格差の是非」という視点から論じた。た
だし、立場としては是でも非でもない。自
分なりの見解に到達するための足がかりと
■解答例2■
賃金や資産の格差は、言い換えれば競争の結果である。資本主義をとる日本の社会に多
少の経済的格差はあって当然だし、そもそも格差を完全になくすことは不可能だ。
ここで経済的格差の一切ない社会を想像してみる。生活も教育も、あらゆることのレベ
[序論]
一〇〇個販売した人と一個販売した人の報酬が同じなら、人々のやる気はそがれる方向に
が、これは裏返せば、熱心さやひたむきさが報われない社会だともいえる。同じ商品を
ルが同じなのだから、焦りや嫉妬といったマイナスの感情とは無縁でいられるだろう。だ
経済的格差が生み出される社会システム
進むだろう。それにともない、国家としてのエネルギーは低下し、やがて国民全体が貧し
して、この視点を採用した。
をまずは受け入れ、そのうえで、問題のあ
さにあえぐことになる。これまでの日本は、平等感や横ならび意識が重んじられてきたが、
これからのグローバリゼーションに対応し、国際競争力を高め、人々の活力を維持するた
りかを探っていくことを表明する。
[本論]
めには、ある程度の格差を認め、そのうえで進んでいく考え方を受け入れざるを得ないの
ではないだろうか。
横ならびを重視する日本社会であるが、
はたして格差がゼロであることがほんとう
問題なのは、当事者たちがその格差を挽回できない状態にあるという点である。努力し
た者に理不尽あるいは不合理な思いを抱かせる社会は危険だが、同時に、格差によって低
によい社会をつくるといえるのかを考える。
[結論]
所得層が無気力や絶望感を抱くような社会であってもならない。格差を意欲を生むバネに
(一行二〇字詰換算六〇〇字)
換えて、誰もががんばるチャンスを与えられる社会こそ理想だと、私は考える。
格差があることを受け入れ、それをいつ
でも挽回できる機会にあふれる社会こそが
理想だという結論に導く。