H27 海洋科学部(後期日程「小論文」)解答例

Ⅰ
問1
警視庁型の研究
問題を詳細に検討して分類整理し,文献をよく調べて,未知の課題を見つける。それに
ついて理論的な考察をして,どういう実験をしたら目的の知識が得られるかを検討する。
そのとおりの実験を行い,結果を報告する。
(99 字)
アマゾン型の研究
アマゾン上流の人跡未踏の土地や,物理の実験室など,いかなる場所においても,ある
かないか分からない新しいものを探すことであり,題目が与えられるのではなく,地域が
与えられるような研究。
(90 字)
問2
解答例1
警視庁型の研究は,社会共通の問題を研究題目として,それを解決する方法を見つけて
いく。前例に沿った手法で多くのデータを解析することによって,研究成果が得られると
予想されるため,組織的にも取り組みやすい。一方,研究を行っている途中で予想外の出
来事が起きた場合,純粋に警視庁型の手法だけではデータから外されてしまう。予想外の
出来事には新事実,発見の可能性が含まれており,アマゾン型の意欲を持って,取り組む
べきである。ところで,本随筆が記された昭和34年当時はアマゾンの自然破壊もまだ大
きな問題となっていない時代と考えられる。現在では研究計画において環境リスクや,コ
ストパフォーマンスの面から十分な警視庁型の調査が必要である。また一方で,コンピュ
ーターの進歩により大量のデータ処理が可能な今日の企業間競争では,差別化のためのア
イディアをアマゾン型の研究によって構築していくことも必要と考えられる。
(394 字)
解答例2
著者は,自然は人間が想像する以上に,深くかつ複雑なものであり,固定した目的を持
たずに,自然に即して,その神秘を探るというやり方の研究は,不必要になることは永久
にないであろうと記している。つまり,警視庁型の研究のように,研究を実行する以前の
文献整理や実験手順の計画段階で結論を把握してから行うのではなく,未知の科学の原理,
原則をこれまでの主観にとらわれずに探し出すことこそが本当に必要な研究だと考える。
これらを踏まえると,警視庁型とアマゾン型の研究それぞれの特徴を十分理解し,多くの
警視庁型の研究において多用されている緻密な分析装置や手技手法をアマゾン型の研究に
利用する。これにより,従来のアマゾン型の研究のみでは得られなかった結果や新たな原
理や原則を発見できる可能性があり,このように両者の間で利点と欠点を補いながら進め
る研究が,よい研究だと思われる。
(376 字)
Ⅱ
問1
欧米各国で無駄にされた食料エネルギー量は,全世界平均より多く,アメリカの値が突
出している。一方,開発途上国で無駄にされた食料エネルギー量は,全世界平均より少な
い。しかし,先進国の日本で無駄にされた食料エネルギー量は,開発途上国であるエクア
ドルやウガンダと同水準で,全世界平均より少ない。また,中国で無駄にされた食料エネ
ルギー量は,欧米各国の値よりやや少ないが,全世界平均とほぼ等しい。
(192 字)
問2
(1)
解答例1
小売店においては,食料が無駄に破棄される原因の一つに,消費者の需要があるにもか
かわらず品切れにより販売できる機会を逸してしまうのを防ぐため,必要以上に多く仕入
れた食料が売れ残ることがある。小売店での廃棄量を減らすために,小売店は需要に見合
った量を仕入れ,売れ残る商品の量を減らす努力が必要である。また,消費者においては,
品揃えの良さだけでなく,環境などへの配慮も考えて商品を購入すべきである。
(196 字)
解答例2
農業や漁業などによって生産された食料には形状,色,成分などにばらつきがある。規
格外の食料は小売店で販売しにくいので,出荷されず破棄されることがある。また,一次
産品を原料とし加工食品を製造する際,品質を一定にするため,規格外の原料が破棄され
ることがある。このような破棄を減らすためには,規格外の食料を流通するようにしたり,
規格外の原料を用いた加工製品を開発するなどの有効利用の取り組みが必要である。
(198
字)
。
(2)
解答例1
一般家庭では,一週間分の食料を一度にまとめて購入した場合,必要以上に食料を購入
してしまい,消費期限までに食べきれなかった食料や食べ残しが発生し,それらの食料が
廃棄されることがある。このような不具合を減らすためには,それぞれの食料の消費期限
を把握して計画的に消費したり,必要な量だけをこまめに購入するようにしたり,献立表
を作成して計画的に食料を購入したりするなどの工夫が必要である。
(190 字)
解答例2
一般の消費者が小売店などで野菜,果物,魚介類等を切り分けず,まるのままで購入し
た場合,調理の仕方によっては可食部も廃棄される場合がある。この場合,消費者は可食
部を無駄にしない調理方法などを身につけ,可能な限り部位を利用することが重要である。
また,非可食部や万が一食べ残しが出た場合でも,それらを家庭菜園などの有機肥料にす
るなど,できるだけ廃棄せず有効利用するように工夫すべきである。
(191 字)
Ⅲ
解答例1
x の名称:投げたところからボールまでの水平距離
y の名称:地面からボールまでの垂直距離
この図は屋外でボールを斜め上に投げたときのボールの軌道を表しており,x軸は投げ
たところからボールまでの水平距離,y 軸は地面からボールのまでの垂直距離である。も
し空気抵抗がないと仮定すると,x軸方向のボールの位置は一定の速さで進む。一方,ボ
ールの高さは上昇を続けるが,時間の経過と重力により徐々に上昇の速度が低下しある高
さで上昇から下降へと変化する。したがって,xの値が増加すると,y の値はあるところ
まで増加するが,その後,減少するので上に凸の曲線になる。なお,図中の曲線が左右対
象でないのは,屋外で強い追い風が吹いていたためと考えられる。
(269 字)
解答例2
x の名称:人間の年齢
y の名称:握力の平均値
この図は人間の年齢と体力の関係を表した一つで,x軸は人間の年齢,y 軸は握力の平
均値を示したものである。握力は筋力の指標の一つで,持久走などが持久力の指標として
用いられ,体力は年齢によって変化する。人間は生まれて間もないころは自力で移動する
こともできないが,成長して体も大きくなるにつれて筋肉もつき体力は増加する。しかし,
平均的には体力の増加は 20 歳代で止まり,このころより老化が始まる。老化の進行の速さ
には個人差があるが,年齢が増えるとともに徐々に体力は低下してゆく。したがって,年
齢と体力を示す握力の関係を描くと,図に示す一つのピークを持った曲線になり,そのピ
ークの位置は中央付近より左側となる。
(298 字)