NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title ヨウジウオの稚魚,仔魚について Author(s) 田村, 修; 力丸, 喬 Citation 長崎大学水産学部研究報告, v.5, pp.70-74; 1957 Issue Date 1957-02-28 URL http://hdl.handle.net/10069/31963 Right This document is downloaded at: 2016-07-11T17:19:35Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 7 0 B u l l e t i no ft h eF a c u l t yo fF i s h e r i e s,NagasakiU n i v e r s i t y ,N o .5 ,1 9 5 7 ヨ ウ ジ ウ オ の稚 魚 、 仔 魚 に つ い て 田 村 On the Larvae and Osamu 修 Young TAMURA ・ 力 丸 of a Goby, and 緒 喬 Syganus Takasi schlegeli KAUP RIKIMARU = " ヨウジウオの数種については既に内,外国民産卵習性等の報告があり,叉最近タツノオトシ f の稚魚絡の 研究報告が出されているがヨオジウオの稚,仔魚については末だないようである。 筆者等は 1 9 5 6 年1 0月初旬より 1月余,福岡県粕屋郡志賀町志賀島の惇多湾に臨む海岸で地曳網に入った抱 仔中のヨウジウオを得て,仔魚を摘出飼育し,その成育変態過程を観?こので乙 q乙報告する。 本研究にあたり種々便宜を計って戴いた阿曇志賀町町長,長沢事業課長はじめ志賀島水族館の方 J, 号 日下 部志賀町公民館主事,資料の採集l 乙快く御協力下さった志賀島-の地曳網の方々に深謝の意を表する。 材料及び方法 1 9 5 6 年1 0月1 3日1 5 時ごろ,地曳網で抱仔中の雄ヨウジウオ数尾を得たのでその中割合発育し 7 こ仔魚(出産 前約 8--9日〉のもの 1尾より仔魚を育児袋より摘出して飼育した。 仔魚ははじめ普通海水と等調海水(普通の海水をほぼ 2倍に薄めたもの〕に分けて飼育し,等調海水に飼育 した方は徐々に塩分を濃くして 1 0日自には普通海水に戻したが,両者とも別に差異〈発育度,へい死率 e t c . ) を認めなかったので、乙乙には特に記述しない o 信,乙の実験の前 1 週間余無記録で観察したのがこの報告の契機である。 0 数尾ホルマリン固定して保存し,他は再び、海へ帰してやった o 食性等から水族館に長 使用した親魚の中 3 く飼うのはや L 困難のようである。親魚は数ヶ月間は特別餌を与えずとも生かし得る。 棲息場及び産卵期 北海道から九州、H 乙至る各地の沿岸に極めて普通に見られ,朝鮮元山にも分布する。志賀島におけるヨウジ ウオの棲息場を土地の漁師の話や地曳網の様子からみると,波静かな内湾で,干潮線からしばらく下るとそ O 千 F i g . 1. 志賀島に於けるヨウジウオの棲息地 発採集と飼育:1 9 5 6 年 2月号 乙から先はアマモ,ホン〆ワラ,ヤツマタモク,ノ コギリモク等の褐藻類が生い繁っていて,そ乙には 小アジ,セイゴ〈スズキの 6-15cmのもの),カ ワハギ,ベラ類,オコゼその他の沿岸性の小魚類が して志賀島におけるヨウジウオの産卵期は 9. . . . . . . 1 1月 71 頓:と思われる。 産卵習性及び雌雄比 ヨウジウオをはじめヨウジウオ科の魚類の多くは雄に育児袋があり,雌から卵を受け,卵が購化して仔魚 が泳ぎ出すまでこれを保護する奇習でよく知られている。 雌 雄’比 ヨウジウオ類の一一一LPt SyngnathUS eariforniensisの 18 20 28 XI 7 Total 2∩ 2﹂3に﹂51 13 20 22バ什り01 i56X 6 0∩﹂・112∩︶ 一fi一一 u♀161葡欝懸鷺竃環繍三蓋手麗齢 i3 1 32 1 4s sex ratio .1 loo ( 246 i が現われる。発生が進むに従いこの暗色域は次第にへこ み側摺が現われて原基が形成され,これが側方に向って 側櫻下に陥入してその容積を増す◎雌から卵を受けるこ ろになると,この袋は半ば膨れ上り血管が増加してふっ くらした外観を帯びて来る。雌雄iは体をS字型に曲げて 互に相手を抱擁し,雌は突出した輸卵管をこの袋の前端 にあるボタン孔のような開孔に差し込んで放秘する。卵 は次第に後方に移され黙読に満たざれる。卵の受精は育 児袋中で行われるものと思われる。ヨウジウオSyngnathUS schlegeli も大体上報告に似ているものと思わ れるが上報告によると “卵の受精は袋中の卵の発生の進行状態が袋の位置によって異る場合もあることから 幾回か繰り返して行われるものと思われる”とあるが,筆者等の観察した雄24個体では夫々ほy“同一stage であった。しかし発生のかなり進んだstageにあるもの㌧中にはいくらか発生の遅れたものも混っていたが これは多分生存競争上の落ご者となるものであろう。 ヨウジウオの雌雄比については,筆者等が調べた45尾中雌13,雄32で100(9):246(6)の割合となり,雄 が2倍以上にもなる。性別は育児袋の有無及び性巣に ll欝欝1難1麟 轡 成 魚 の 形 態 ヨウジウオにはかなりの種類がある。SPtng’nathUS B e ぬ 濯鯉騰て 雛 A ・7二 躍搬器鷺鵯翻羅煮1嘱 鱗断 つ ノ 。・、 ’。麟・ 購 ち む む む 断面は6角形を呈する。背鰭35∼41ケ条で通常肛門の 上方に始まり,8∼9個の二輪上にまたがる。吻は管 認・。。£, D 状で吻を除く面長より長く両顎は甚だ小さくて無歯。 腹鰭を欠く。梶鰭があり尾部を他物に巻きつけること 姦醗 .は出来ない。体輪数18∼20十39∼43。背鰭基底は背部 の水平面より寝起していない。鯉蓋部に水平隆起線が 。。軸1メ∼ ない。丁丁に眼点状斑点がない。体は暗褐色で往々小 白点を散布する。雄には尾部の長さの約3/5位の育児 o H 袋が肛門より後の腹面にある。 瀦離鑑欝鵬翼脚∴奮葺号 勧課鞍榊略 鱈馬κ 講 の漁師間でブ7“ 一一と呼ばれている。 Fig.2.’1 ee 丈献 6) 】「, 421∼422 育児袋内発生 72 琶 . ・ .気第. R. 、 ム. ttll怒’ wtk...i,’,9 N”N. 4/,,,e, ・c 、=一L一七} 毒r 難∼_H蘇 、:甕 葦嚢_夢 鞭一凱tt 無 Fig・3.育児袋内・の 変態 ﹁鰻. ・・奮議ミ漣簸’.、. \,脇 \ 領. ㍉慧 『響’ 73 じ㊤桑、 .卜。誌 ie? ’”轟K・・.. (=、・.[1/導・ナ・薄.,1,謹難擁 『’・’.頓い1∵’、・・噛斗・・溺,.tt じ’1 .、’ F≒一...一; 叡 ㌦ rth’霧. ・沁ミ㌦ ’ .‘’層‘ρ. lo孤 ..’f¶ ノロロ ,l P I.聾 ま じ 薩 。.泌 ..働ソ )>t’; /tt..彊瓦 、蟹 〆 ㌧ Fig.4.仔魚期の変態. 74 稚. 仔 魚 実験にとりかyるのが時期的に遅く,かつ入手した成魚の数が少かつア3Yめに卵内発生を詳しく観ること が出来なかった。このことも追って報告したいと思う。 Fig.2,(B)∼(1)は多数め雄…の育児袋から各stageのものをとり出して順序に並べたものである。 (H)あたりまでは卵膜を被っている・(A)は卵巣内の未受精熟卵で径℃4・0・8卑m・油i球甚だ多い。受精 後は大きな被膜がある。 Fig・3,4,(A)∼(0)の仔,稚魚は連続観察したものである。稚魚には鶏卵黄, brine shrimp及び ミジンコを与えてみたがとらず20日目ごろには全滅した。育児中の雄i数尾を飼育観察した結果,育児袋より 稚魚が泳ぎ出るのは(H)∼(1)のstageである。 (A)は全長5.3mmで産出前約8∼9日のものである。このころは未だ鰭条数,体節数等はつきりしな い。袋外(水中)に出しても運動性はない。(B)6.3mm,(C)は7.2mm,眼球に黒色色素が現われる。 (D)は7.8mmで開口し,背鰭条数も多くなる。体後部に6条の横帯が現われ,叉背鰭起部よりも前の上体 部に5ケの黒色斑点が現われる。このころになると水中でもやy活ばつに運動する。その運動は丁度ボーフ ラの様で体をくねらせては水面まで浮び上りまた静かに沈んで行く。(E)は8.5mmで卵黄も大部吸牧され て来る。腹部中央部に黒色部が見える。(F)は9mm,(G)は9.5mmで背鰭前背部に体節ごとに隆起し て来る。吻部が次第に伸びて来る。(H)は11mm,(1)は11.8mm,(J)は1 2.. 3mm,(K:)は12.8mm で口が大きく更に吻部が伸長する。(:L)は13.2mmで体が次第に角ばって来る。・このころになると游泳力 も出て背鰭を使って前方にすいすいと泳ぐ。(M)は13.6mm,(:N)は14mm,(0)は14.5mm。未だ吻 部は大きく.成魚の姿とは大部かけ離れている。どれ位の時日で成魚(P)と同じ様な形態になるのか続け て観察出来なかったのが残念であるo 文 献 1) 岡田,内田,松原:日本魚類図説, (1935). 2) 岡田,松原:日本産魚類検索, (1943). 3) 川本信之:魚類生理学, (1953). 4) :水産庁調査研究部:日:本産魚類産卵期. (1949) 5) 末広恭雄1魚類学,.(1951). 6) 松原喜代松:魚類の形態と検索,1,11,1“, (1955)
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