株主総会

2015年春学期
「企業のしくみ」
第5回 株主総会(4章2節2項)
樋口徹
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4-2-2
第4回 株主総会(p.92)
補足④ 会社の機関(会社として意思決定を行い、業務を行う機関)
• 会社の機関として、意思決定あるいは業務執行する主体は
自然人 (人)または 組織体 である。
• 主な会社の機関には、株主総会、取締役、代表取締役、取締
役会、監査役、監査役会などがある。
※取締役や監査役は 自然人 であるが、取締役会や監査
役会は自然人の組織体(集合)である。
※この中で、全ての株式会社にある機関は 株主総会 と
取締役 である。
※その他は、委員会設置会社、大会社(公開会社、非公開
会社)、その他(公開会社、非公開会社)などの株式会社
の分類によって、不要な(義務付けられていない)場合や
設置が禁止されているものがある。
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株式会社の主な機関の関係
• 株主総会 は、株式会社の組織、運営、管理などの会社の基本
的な重要事項について意思決定を行う機関である(株主総会の設
置と年一回以上の開催が義務付けられている)。
※日常的な運営まで口出しすることは不適切
• 取締役会 あるいは 取締役 が日常的な業務執行の意思決
定を行う。取締役会を設置するには少なくても取締役が 3 人は
必要。
※取締役会を設置していない会社は、重要業務の執行に関する意思
決定を行う場合、取締役の過半数の承認が必要となる。
• さらに、取締役会が設置されている会社は、 取締役 の中から
代表取締役 を選定し、会社の業務を代表して行えるようになっ
ている。
※取締役会を設置していない会社は、取締役各自が会社を代表する。
• 株主総会は、会社経営が健全に進めるために、監査機関(監査役、
監査役会、会計監査人、会計参与など)を選任し、取締役や代表
取締役を監督する。
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株式会社の主な機関の関係図
株主総会(会社の所有者の集まりで、会社の所有者である
株主が、会社の基本に関する重大事項(組織、運営、
管理等)に関して意思決定を下す機関である。 )
選任
・
解任
選任
・
解任
報
告
取締役
(取締役会) 選定・解職
代表取締役
監
査
報
告
監査機関
日常業務の
監督と執行
従業員 (業務遂行)
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株主総会
• 株式会社は、株主総会を年 1回 以上開催することが法律上義務付けられている(会
社法第295・296条)。原則として、株主総会では、株式会社の組織、運営、管理その他
株式会社に関わる すべて の事項について決議することが認められている。
• しかし、 取締役会 設置会社においては、以下の法定事項と定款で定められた事項
しか決議することができないとされている(会社法第362条)。会社法上、株主総会でしか
決議できない法定事項は以下の通りである。
(1)役員(取締役や監査役など)および会計監査人の 選任・解雇 (会社法第329条)。
(2)資本金の額の 減少 、 定款 変更、 合併・分割 、解散など組織に関する重要事項
(会社法第447条)。
(3)その他、役員の 報酬額 の決定(同法第361条)、株式発行(同法第199条)、など。
※取締役会が設置されている会社では、株主総会で決議できる事項が上記法定事項と
定款に明記されている事項に限定されている。その最大の理由は、取締役会設置会社
は 規模 が大きいものが多く、重要事項を株主総会ですべて決議することは、非効
率的であるからである。それに対して、非取締役設置会社は小規模なものが多く、株主
総会が 万能 機関としてすべての事項を決定することができるようになっている
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法定事項以外の株主総会での決議事項
取締役会設置会社は、法定事項以外を決議する場合、全て
定款 で規定されていなければならない。
※取締役会設置会社では、所有と経営の分離を前提とし
て、法定事項以外は原則として取締役会で決議される。
例外事項が定款で定められることになる。
非取締役設置会社では、 株主総会 が万能機関として全
ての事項を決定することができる。
※非取締役会設置会社は小規模であることが多いから
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株主総会の決定事項
取締役会設置会社
(所有と経営の分離前提)
非取締役会設置会社
(小規模)
法定事項
法定事項以外は
全て定款に明記
法定事項以外も
全て決定可能
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議題の提案
• 株主は株主総会の議題(開催目的)を株式会社に要求(提案・請求)することがで
きる(会社法第303条)。
• 非取締役会設置会社は小規模なものが多く、すべての株主が 当日 でも議題
を提案することできるようになっている。
• しかし、取締役会設置会社は、提案できる株主や提案期限が 会社法 によっ
て規定されている。
•
取締役会 が、議題提案者が議題提案の権利を有しているのか、そして、提
案された議題を株主総会で決議することが適正かを事前に判断しなければなら
ない。
• さらに、株主総会の議題を事前に全株主に 周知 させるには時間が必要であ
る。このような手順を経て、株主総会において当該議案が審議されることになる。
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株主の株主総会 議題 の提案権
取締役会設置会社
株主
議題
提案
(請求)
取締役(会)
不
適
切
な
議
題
却下
適
切
な
議
題
議題
(招集
通知
掲載)
非取締役会設置会社
議決権の1%以上を保有
あるいは300株(定款で変
更可能)以上を保有してい 全ての株主が議題を
る株主(公開会社は6か月 提案できる。
前から引き続き保有が必
要となる)
株主総会開催の 8 週間
前に取締役に請求しなけ
ればならない。
当日でも可能
議題として適切と判断されるには2条件が必要。
①会社法や定款に記載されている事項 かつ
②提案者がその議題に議決権を有する
※議題とはテーマに関するもので、議案 とは異なる。
議案は議題に沿って、具体的な案を出すことである。 9
議案の提案
• 採用された議題に関して、要件を満たしている議案を 株主 が提出することが認
められている(会社法第304条)。
• 議題と同様に、取締役会設置会社においては、議案の事前提案に関して、提案でき
る株主や提案期限が 会社法 によって規定されている。
• 株主総会の当日に議案を提案するには、以下の3つの 条件 を満たさなければな
らない。これらの条件は、議案を 精査 するための調査時間の確保、株主総会の
欠席者への配慮、無駄な議案の 繰り返し 審議の回避などのために設けられて
いる。
①議案が株主総会の 議題 に関するもの
②その議案が法令や 定款 にしていないもの
③その議案が過去3年間に 10 %以上の同意を得られなかったものでないこと
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株主の株主総会 議案 の提案権
株主
議題
提案
(請求)
取締役(会)
適切な
議題
議題(招集
通知掲載)
議案
提出
株主
取締役会設置会社
非取締役会
設置会社
議決権の1%以上を保有あるいは300株
全ての株主が
(定款で変更可能)以上を保有している
議題を提案で
株主(公開会社は6か月前から引き続き
事
きる。
保有が必要となる)
前
株主総会開催の8週間前に取締役に請
求しなければならない。
当日でも可能
全ての株主が以下の条件を満たせば議案を提
出できる
当 ①議案が株主総会の議題に関するもの
日 ②その議案が法令や定款にしていないもの
③その議案が過去3年間に10%以上の同意を
得られなかったものでないこと
※①議題に沿う議案しか出せないのは、調査時間や欠
席者への配慮が必要であるからである。③は無駄な
議案を繰り返し扱わないようにするためである。
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株主総会での決議
• 株主総会では、議題に沿った議案について決議が行われる。
• 議決権の 行使 は、株主総会出席、代理人に委任、書面、電磁的な方法などによっ
て行うことができる。
• 議案の重要度に応じて、承認する基準は大きく異なる(会社法第309条)。
(1)一般的な決議方法は、 普通決議 と呼ばれるものである。この決議では、①議
決権を有する株主の 過半数 が出席し(定足数の要件)、②出席者の 過半数
が承認すれば、議案が承認されることになる。ただし、 定款 によって、定足数の
要件を軽減や撤廃することあるいは普通決議で決議できない事項が設定されている
ことが定められている場合がある。
(2)定款の変更や株主から株式を有償で取得する場合などには、普通決議より厳しい
特別決議 と呼ばれるものが行われる。この決議では、議決権を有する株主の過
半数が出席し、出席者した株主の議決権の 3分の2以上 の承認が必要となる。
定款に明記することによって、定足数の要件を3分の1まで軽減することができる。
他には、特別決議より厳しい決議方法で 特殊決議 と呼ばれるものがある。この決
議では、議決権を有する株主の半数以上が出席し、その議決権の3分の2以上(特
別多数の要件)で承認される場合、あるいは、総株主の半数以上が出席し、総株主
の議決権の 4分の3 以上で承認される場合などがある。
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議決権行使の方法
1. 株主総会に出席
2. 代理人 に委任
3. 書面(一定の期日まで)
第三百十一条 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要
な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権
行使書面を 株式会社 に提出して行う。
4.電磁的 方法(株式会社承諾後、一定の期日まで)
第三百十二条 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるとこ
ろにより、株式会社の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決
権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社
に提供して行う。
2 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株
式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んで
はならない。
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決議の方法
普通決議 :通常の決議方法(定款に定めのある場合などを除く)
①議決権を有する株主の過半数が出席(定足数の要件)し、
②出席者の過半数が承認すれば、承認。
※定足数の要件は定款で軽減や撤廃が可能
特別決議 :普通決議より厳しい決議方法
①議決権を有する株主の過半数が出席(定足数の要件)し、
②出席者した株主の議決権の 3分の2 以上の承認が必要。
※定足数の要件は3分の1まで軽減が可能
特殊決議 :特別決議より厳しい決議方法
議決権を有する株主の半数以上が出席(定足数の要件)し、出
席者の議決権が全体の3分の2以上(特別多数の要件)承認。
または
総株主の半数以上が出席し、総株主 の議決権の 4分の3 以
上で承認(小規模株主多数が反対している場合有効になる)。 14
決議例(定款による変更なし、議決のある株主は11人で皆同等)
普通決議(取締役の選任など)
①定足数の要件:
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人以上の出席が必要
②出席者の過半数で承認:6人出席した場合、その中の
4
人の承認で決定
特別決議(新株の有利な金額での発行)
①定足数の要件:6人以上の出席が必要
②出席者の議決権の3分の2以上: 6人出席した場合、
4
人の承認で決定
特殊決議(非公開会社への転換など)
A
①定足数の要件:6人以上の出席が必要
②出席者の議決権が全体の3分の2以上: 6人出席した場合、
で決定
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人の承認
または
B ①定足数の要件:6人以上の出席が必要
②出席者の議決権の4分の3以上: 6人出席した場合、
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人の承認で決定
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補足⑥ 1株1議決権の原則
ある株式会社が10000株(議決権)発行していて、Aさんがその内
1000株(議決権)所有していたら、10%の議決権を持つことになる。
しかし、例外的に認められない場合がある。
1. 当該会社の議決権の25%以上を保有し、経営を実質的に支配
することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主
(株式会社)は議決権を行使できない(= 相互保有株式 )。
2. 定款で 単元 株式を定めている場合の単元未満株(例.定款
で100株を1単元とした場合、50株では議決権は認められない)
3. 自己 株式(金庫株)
4. 議決権制限株
5. 基準日 以降に発行された株式
等
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ダイエー60年の歴史に幕 イオンが完全子会社化
「日本経済新聞」電子版( 2014年9月14日)
イオンは24日、ダイエーを2015年1月に完全子会社にすると正式
発表した。18年度をメドに総合スーパー「ダイエー」の店舗名を廃止
し、イオングループの新ブランドに集約する方針。完全子会社化で
事業効率化を図る。「 流通革命 」を掲げ価格決定権をメーカー
から 小売業 に移したダイエーの店舗名は約60年の歴史に幕を
閉じる。
同日の記者会見でイオンの岡田元也社長は「ダイエー(の立て直
し)は待ったなし。イオンと一体になって対処していきたい」と語った。
ダイエーは11月26日に臨時 株主総会 を開く。株主の承認を受
けたうえで12月26日付で同社株は上場廃止になる予定。イオンは株
式交換方式で来年1月1日にダイエーを完全子会社にする方針。交
換比率はダイエー株1株に対し、イオン株 0.115 株を割り当てる。
ダイエーは首都圏、関西圏で食品に特化したスーパーの運営会
社として存続するが、新たな店舗名で再スタートを切る。イオンはグ
ループ内のスーパー再編に向け、3年間で約300億円を投資する。
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ダイエーとイオンの株価の比較
※完全子会社化により株式の交換比率はダイエー:イオン=0.115:1
(この比率を算定したのは、SMBC日興証券と野村證券)
もし、株主だったら納得しますか?
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