11の機能的健康パターンの アセスメントについて 1 健 康 主観的情報 客観的情報 アセスメント 患者が自分の状態をどのように理解しているか 確認し,疾患,治療,健康上のリスク管理に関して誤解していること があれば明らかにする. 指示されている治療・療養計画の不履行とその理由を特定する. 健康教育の必要性を明らかにする. 知 覚 ・ ①全く不調を感じていなかっ た 健 ②透析の日は家に帰ると辛い ③食べたい時に食べる.暴飲 康 暴食には気をつけている.水 管 分をとりすぎないように注意 している 理 ④検査データや薬の内容,症 状などは記録している ①大学4年生の時,慢性腎炎と 診断される 母から勧められ受診する ②透析のない日に1度に3回分 の食事を準備するなどしてい た ③エネルギー制限なし.塩分7 g,食事するテーブルに測り をおいて水分量を測定してい る ④検査データ,薬,自分の症 状を記載しファイルしている ①最初の頃は,慢性腎炎が 大変な病気であるという受 け止めはなかった ②透析によって身体が疲れ ることを理解し,自分でコ ントロールしていた ③透析患者に必要な食事制 限は守られていないが,自 分の方法でコントロールし ている ④自分の体の状態を把握す ることができている 2 主観的情報 客観的情報 アセスメント ①9時頃朝食,13時頃昼食, 19時頃夕食,透析の日は透析 から帰宅してすぐに夕食をと ることもある. ②身長154cm,体重46.5kg, BMI19.6 ③前腕にシャント形成あり 皮膚の委縮あり 机の角に手をぶつけて出血が 止まらなかった ④TP6.7mg/dl ①摂取エネルギーは不明で はあるが,自分で考えて必 要なエネルギーを摂取して いる ②標準である ③皮膚が傷つきやすい状態 であり,また透析をしてい ることから出血しやすい状 態である ④総タンパクは保たれてい る 栄養摂取量,食事時間 摂取する食物と水分の内容 皮膚の状態 ①食べたい時に食べる.時間 栄 をあまり気にしない ②体重の増加には気をつけて いる 養 ③皮膚が弱くなってきている ・ 代 謝 3 主観的情報 客観的情報 アセスメント 摂取量と排泄量の測定から,水分バランスの情報を得る. 尿失禁,便失禁の有無について. 排便コントロールがされているか. ①トイレには1日に2回ほど行 く程度である ②透析をしているから殆ど排 尿はない 排 泄 ①排便は規則的にある ②透析にて除水をおこなって いる. 1日の水分摂取量は不明. ③BUN76mg/dl eGFR4.5ml/min/1.73m2 クレアチニン8.03mg/dl ①排便コントロールは図れ ている ②透析により水分バランス が保たれている ③腎機能は低下している 4 主観的情報 客観的情報 アセスメント 必要な運動量が得られているか. 転倒.転落のリスクはないか. 外出や受診の際にはどのようにしているか 介護サービスなど,どの程度ニーズを満たしているか. 日常生活動作について 運動と娯楽について 活 動 ・ 運 動 ①自分でできることは自分で 行っている ②透析以外の日は書類の整理 や趣味の手芸をして過ごす ③時々,ヘルパーさんと一緒 に買い物に出かける 買い物に行かないときは買っ てきてほしい物をリストにし て渡す ⑤家事は体調の良い時は自分 でする ①入浴は夫と共に入っている. ①自分にできること,出来 排泄はキャスター付きの椅子を ないことを判断し日常生活 利用するなどして自分で行って を送ることができている いる. ②娯楽をもっている 衣服の着脱は自分で行っている. ③介護サービスを利用し日 家の中ではシルバーカーを使用 常生活に必要なものに関し し歩行している.外出の際は車 ては,欲求を満たすことが 椅子を利用している できている ②弁当袋や透析に使用する枕カ ④貧血により転倒,転落の バーなど自分で作っている リスクあり,転倒,転落し ④骨粗鬆症,フォサマック内服 た際には骨粗鬆症により重 中 症化する可能性がある 6 RBC3.45 ×10 /μl Hb9.7g/dl ⑤夫に頼ることにより,家 Ht29.2% 事は充足されている ⑤家事の殆どは夫が担っている. 体調の良い時は自分でできる所 は行う 5 主観的情報 客観的情報 アセスメント 睡眠の質,量 1日の中での休息とリラクゼーションの時間 睡眠障害 睡眠補助の使用,薬剤あるいは夜の日課 ①夜間に眠れないということ は以前に比べ減ってはきてい 睡 るが,時々,痛みや痺れで眠 れないことがある 眠 ・ 休 息 ①ユーロジン内服 両上肢の肩から腕にかけての 痛みと手足の痛みと痺れあり ロキソニンテープ貼与,リリ カカプセル,ボルタレンSRカ プセル内服 ①痛みにより,睡眠障害が 生じているが睡眠薬,鎮痛 薬を内服し対処することが できている. 睡眠時間,睡眠の質に関し ては不明 6 主観的情報 客観的情報 アセスメント 視覚,聴覚,味覚,触覚,運動感覚,臭覚の適切さ 眼鏡や補聴器など,現在使用している補助具と補償 疼痛をどのようにコントロールしているか 見当識,記憶,推論,判断,意思決定などの認知機能能力 認 ①痛みがずっと続いている ③死ぬ日が訪れたら,皆にあ 知 りがとう,いい人生だったい いたい ・ 知 覚 ①両上肢の肩から腕にかけて の痛みと手足の痛みと痺れあ り ロキソニンテープ貼与,リリ カカプセル,ボルタレンSRカ プセル内服 ②眼鏡をかけている パソコンを使用して文書を作 成したり,読書をすることが できている ④最終学歴は大学院卒業 ①鎮痛剤内服しているが, 痛みが消失することはなく 持続している ②視覚は眼鏡を使用するこ とで問題ない ③自分の現在の状態から自 分の気持ちを整理すること ができている ④思考,認知レベルは高い と考えられる 7 主観的情報 客観的情報 アセスメント 自己同一性,自己尊重,自己像 自己能力 気分の状態 自 己 知 覚 ・ 自 己 概 念 ①私に生命ある限り,きちん と前向きに生きていこうと思 わせてくれた言葉が「透析患 者は病人ではない.ただ,腎 臓があるいという障害がある だけだ」である.障害者とい う言葉はマイナーなイメージ があるが,一生病人やと思っ て生きていくよりは腎臓が悪 いだけやと思って生きている ほうが自分にとって良かった. 病人ではないのこの言葉は私 が前を向いて生きていくここ ろのよりどころになっている. ②透析に行きたくないと1度だ け夫にだだをこねたことが あった ③泣いたり,ぐちぐち言って いる自分は嫌いで,周りの人 たちも巻き込んで笑顔にする のが本来の自分 ①病気になった自分を肯定 的に捉え,さらには前向き に生きていくという気持ち を持つことができている. ②自分の気持ちの落ち込み を他者に伝えることができ ている ③自分がどのような人間で 今後,どのように生きてい きたいか考えることができ ている 8 主観的情報 客観的情報 アセスメント 役割に対する満足と不満 役割遂行 役割葛藤,緊張,または喪失 ①51歳までは大学で数学科の ①現在は,講師は辞め,日常 非常勤講師として勤務し,研 生活も手助けしてもらい,家 役 究集会にもよく出かけていた. 事に関しても殆ど,夫が担っ 日常生活においても自立し, ている 夫との関係は良好 割 家事全般も担っていた ②夫は大学教授 家事全般を担いながら,妻の 関 介護も行っている ヘルパーは利用している 係 ①病気によって,役割が失 われたことによる喪失感が あるのではないか,しかし, 夫との関係は良好なことか ら,現在の状況に関して充 足していると考えられる ②夫の役割が大きくなって いる可能性はあるがヘル パーを利用するなどして対 処はしている 9 主観的情報 客観的情報 アセスメント 生殖に関する問題 性別の自己認識 性的関係 性 ・ 生 殖 ①頭髪はきれいに整容し,口 ①女性らしさが保たれてい 紅をつけている る ②夫のことを名前で呼び,関 ②夫婦関係が保たれている 係は良好である 10 主観的情報 客観的情報 アセスメント ストレッサーとストレス耐性 コーピング・パターンとその有効性 コ ー ①以前は透析時間が5時間だっ ①月,水,金4時間30分の透析 ①長期にわたって行ってい ピ たが,現在は4時間30分で30分 を行っている ン グ ・ ス ト レ ス 耐 性 という時間が耐えられない. 37年間透析している 得にこの1,2年は痛みが強く て,眠れなかった朝に透析へ 行く時,夫に「もういや~~ 透析行きたくない」とだだを こねたことがあった ②現在の正直な心境は「もう, 透析をやめたい」勿論,死は 覚悟できているが,苦しい思 いをして死ぬのは絶対にいや. 楽に死ねるのなら,今すぐに でも死にたいと思うことが 時々ある.その反面,明日も この先も,天国からお迎えが 来るまで日まで,透析を受け ながら,明るく笑顔が溢れる 日々を生きていきたいと思う. る透析が強いストレッサー となっている. ②有効なコーピングは持ち 合わせていないが,自分の 現在の気持ちの葛藤を表出 することはできている. 11 主観的情報 客観的情報 アセスメント 病気の原因についての考え方 死後の処置 将来に向けた計画 スピリチュアルあるいは宗教 価 ①透析を導入するときに言われ ①透析導入時の主治医からの言 ①透析導入時に主治医から た 「 10 年 は 生 き ら れ る 」 の 葉 言われた言葉が現在も透析 値 「は」に背中を押されて透析を を受けていく上での支えに なっている ・ 受ける決心ができた ②死ぬ日が訪れたら,皆に「あ ②死という将来にむけて明 確に自分のあり方を話すこ 信 りがとう,いい人生だった」い いたいと思う とができている 念 活動-運動 自分にできることできない ことを判断し,娯楽をもちな がら日常生活を送ることが できている 貧血等から転倒の危険性あり 認知-知覚 睡眠-休息 思考,認知レベルは高く自分 の状態を認知できている 痛みの持続がある 睡眠障害はあるが内服で コントロールできている コーピングストレス耐性 透析が強いストレッサーとなっている 明らかなコーピングはないが自分 の葛藤について話すことができている セクシャリティ-生殖 女性らしさが保たれている 健康知覚-健康管理 自己知覚-自己概念 役割-関係 自分の方法でコントロールし, 自分の状態を把握できている 前向きな気持ちをもちながら 自分の生き方について考える ことができている 妻としての役割喪失はあるが 夫との関係から充足されている 排泄 腎機能は低下しているが 透析により水分バランスが 保たれている 価値-信念 栄養-代謝 皮膚が傷つきやすく,出血 しやすい状態である 栄養状態は保たれている 死について自分の考えを 話すことができている 全体像の記述 問題であると考えるパターンを中心に置き,そのパターンに関連する パターンは何かを考える また,関係性のつよさも考える パターンの関連性について記述していく 問題と考えるパターンが最後になるように記述する K氏は,認知・思考レベルが高いことから自分の方法で健康管理し,状態を 把握することができており,排泄,栄養状態は保たれている.また,娯楽を もちながら,日常生活を送ることができてる.しかし,転倒の危険性,出血しや すい状態にある.痛みの持続があり,睡眠障害に影響を及ぼしているが,内服 にてコントロールできている. K氏は死について話したり,前向きな気持ちを持ちながら自分の生き方について 話すことができている.そのため,長期にわたる透析がストレッサーとなっている 可能性はあるが,対処することができていると考えられる 看護診断 コーピング/ストレス耐性 アセスメントのまとめ ストレスに対処できている ウエルネス問題 促進準備状態 コーピング促進準備状態
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