社会保険ワンポイント情報 - 法人社会保険料適正化プロジェクト

2015.03.10
全国社会保険料適正化ネットワーク
社会保険ワンポイント情報
2号
今月のテーマ
複数の会社に勤務している場合
2箇所以上の会社に所属して給与をもらっている場合、通
常はいずれか加入要件を満たしている会社で社会保険に
加入します。加入要件は、1日または1週間の所定労働時
間が一般社員の3/4以上で1ヶ月の所定労働日数が一般
社員の3/4以上あること(これらの要件を満たさない場合で
も、就労形態や職務内容等を勘案して常用的に雇用関係
があると認められれば加入できることがありますが、原則
はいずれの会社でもこの要件を満たさない場合は、国民
健康保険に加入することになります。)、となっています。
所属している2箇所以上の会社で、いずれの会社において
も加入要件を満たしている場合は、2箇所以上の会社に所
属することになった日の翌日から10日以内に「2以上事業
所勤務届」を提出し、該当する会社でのすべての報酬を合
社会保険料按分計算
社会保険料ですが、複数の会社の役員報酬の額を合算して、
各会社の役員報酬の額に応じて配分した金額がそれぞれの会
社での社会保険料となります。たとえばA社・B社・C社それぞ
れの会社の役員となっている者の報酬が、10万円、20万円、30
万円だったと仮定します。
3ヵ所からの役員報酬の合計は60万円ですので、合算額の標
準月額報酬は59万円(健保・厚生)となります。社会保険料はそ
の標準報酬月額によって算出された保険料額を、各会社の報
酬月額の比率で按分し算定します。
A会社 10万円
B会社 20万円
C会社 30万円
合計60万円
(健保・厚生の報酬月額)
〇各事業所での保険料は
A会社=標準報酬月額×保険料率×10万/60万
B会社=標準報酬月額×保険料率×20万/60万
C会社=標準報酬月額×保険料率×30万/60万
この額をそれぞれの事業主と折半して支払います。
つまりどこの会社で役員報酬を支払ったとしても、その役員報
酬の合計分にかかる社会保険料を負担しなくてはならないこと
になります。
また標準月額の随時改定ですが、その役員報酬の月額総額で
はなく、各会社において2等級以上の差額が生じた場合にのみ
随時改定となり、その場合改定のあった会社のみ届出を提出
することになります。
算した額により一つの標準報酬月額が決められ、保険料
は会社毎の報酬月額で按分されることになります。ただし、
それぞれの会社の管轄する年金事務所が異なっていたり
(協会けんぽで会社管轄所在地が都道府県をまたがって
いる場合)、健康保険組合が異なる場合は、一つの保険
者を選択し、選択した年金事務所長等に「保険者選択届」
を提出します。
労務管理のポイント
複数の会社に勤務する場合、社会保険については社長で
ある場合等の限られた場合であり、実務ではほとんど発生
しません。ただ非正規労働者の増加等により、複数の会社
をかけもちで働く人が増えています。平成18年に労災保険
法が改正(複数就業者の事業場間移動中の労災、単身赴
任者の住居間移動中の労災)され、徐々に複数事業所で働
く場合に対応した制度が整いつつあります。そこで複数会
社をかけもちしている場合の労務管理のポイントをご紹介し
ます。
<雇用保険>
雇用保険被保険者の資格取得には「1週間の所定労働時
間が20時間以上」かつ「31日以上引き続きの雇用見込み」
の要件があり、一般的には主として生計を維持する賃金を
受ける事業所の使用者が資格取得を申請することになりま
す。二つの勤務先で同時に資格取得となることはありませ
ん。
<時間外労働>
時間外労働についてですが「労働時間は、事業場を異にす
る場合においても、労働時間に関する規定の適用について
は通算する。」(労働基準法第38条1項)と規定しており、こ
れは同一の事業主に雇用されている場合はもちろんのこと、
「異なる事業主に雇用されている場合」についても適用され
ることには注意が必要です。1日8時間を超えた場合には割
増賃金の支払いが必要になります。つまり第一事業所で5
時間、第二事業所で5時間労働であった場合、合計労働時
間が8時間を越える部分から割増賃金の対象となり、この
場合、第二事業所での2時間分について割増賃金の支払
い義務が生じることになります。